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新型インフルエンザのワクチン作り準備 4社に研究費 indexへ

 新型インフルエンザの発生に備え、総合科学技術会議(議長、小泉首相)は25日、必要な量のワクチンを安全、迅速に製造、供給できる体制作りを準備することを決めた。国立感染症研究所や東京大学医科学研究所、ワクチンメーカー4社に、緊急研究費を交付して、ワクチン原液の試作品製造などを進める。
 新型インフルエンザが発生すれば、ウイルスを特定し、弱毒化してから、鶏卵の中で培養してワクチンをつくるが、製造には数カ月かかる。安全なワクチンを迅速に安定して生産できるよう、効果的な品質管理法を研究するほか、すぐにウイルスを特定、弱毒化できる技術開発も行う。研究費は科学技術振興調整費1億円程度を使い、年内にも交付額を調整、決定する。

子供襲うインフルエンザ脳症で指針 「疑い」も早期治療 indexへ

 乳幼児に多く、死亡率が高いインフルエンザ脳症について、医師向けの初の診断・治療指針を厚生労働省の研究班(主任研究者=森島恒雄・岡山大教授)が作った。発症1〜2日目に治療を始めれば、死亡や重度の後遺症を大幅に減らせるとして、疑わしい段階でも抗ウイルス薬「タミフル」の服用やステロイドの短期集中投与をすぐに始めることなどが柱だ。家族にとっても対応などの参考になりそうだ。
 初期対応、診断指針、治療指針などの5項目で構成。
 初期対応では、明らかな意識障害がある場合、かかりつけ医らは救急対応ができる大規模な医療機関へ患者をすぐに紹介する、とした。
 けいれんや異常言動・行動は、脳症以外でも起きる。そこで、けいれんの持続時間が長く、左右非対称の部位で起きる場合は、大規模病院へすぐに紹介する。短時間で単純なけいれんの場合は、様子を1時間程度は見て、意識障害がないと確認できなければ紹介する。異常言動・行動が断続的でも1時間以上続く場合は同じだ。
 親が子どもをすぐに高度な医療機関へ連れて行くべきかの目安にもなる。
 送られた医療機関は意識障害の程度や頭部CT検査で診断。インフルエンザ脳症と確定できない疑い例でも、治療を始める。体温が41度以上▽下痢がある▽症状を悪化させる一部の解熱剤を使用した、などの場合は特に注意が必要としている。
 治療では、ウイルスの増殖を抑えるタミフルを投与し、炎症を抑えるステロイド薬「メチルプレドニゾロン」の短期集中投与などを実施する。約200人を対象にした調査では、ステロイド投与は発症3日目以降に開始しても約8割の患者が死亡または重度後遺症を残してしまうが、1日目に始めれば、ほぼゼロに、2日目なら半分程度になる。
 タミフルは服用後の異常行動による死亡例が報告されているが、森島さんは「因果関係がはっきりしない。異常行動は脳症でよく見られる症状でもあり、タミフルが重症化を防ぐと期待される」とする。
 〈キーワード・インフルエンザ脳症〉 インフルエンザの合併症。炎症性物質の影響で血管の外へ水分が漏れるなどし、脳が腫れる。主に5歳以下の子どもが発症し、けいれんや意識障害、異常言動・行動といった症状が出る。日本で多く報告され、毎年100〜500人がかかると推定される。死亡率は30%、後遺症の残る子どもは25%とされたが、最近は治療法が進み、死亡率が下がってきた。

診療報酬、引き下げ方向盛る 基本方針を了承 indexへ

 厚生労働省の社会保障審議会医療部会は24日、06年度の診療報酬改定について、改定率引き下げの方向をにじませた基本方針案を了承した。同審議会医療保険部会でもこの案が了承されれば、両部会の連名で基本方針としてとりまとめる。
 診療報酬改定の議論はこれまで、中央社会保険医療協議会(中医協)が主導していたが、汚職事件を契機とした中医協改革の一環で、改定の基本的な方向を社会保障審議会が示すこととされ、両部会で議論されていた。
 基本方針案では、報酬改定について「保険財政の状況、物価・賃金等のマクロの経済指標の動向、全国の医療機関の収支状況等を踏まえ」るとして、引き下げを求める財務省などの主張に沿った表現が盛り込まれた。
 そのうえで、患者の生活の質を高める医療や、重点的に配分すべき分野には手厚くすることを強調。具体的には、生活習慣病の「指導管理料」のような患者にわかりにくい項目の整理▽詳細な治療内容がわかる領収書の発行や平均入院日数の短縮などにつながる診療報酬の評価を高める▽産科や小児科医療などへの重点配分、などを求めた。

O157感染で3歳男児死亡 大阪・高槻の児童養護施設 indexへ

 大阪府高槻市保健所は23日、市内の児童養護施設に入所している児童13人が腹痛や下痢の症状を訴え、うち3歳の男児が死亡した、と発表した。死亡男児を含む3人から腸管出血性大腸菌O(オー)157が検出された。同保健所は集団感染の可能性もあるとみている。
 症状が出たのは、社会福祉法人「大阪府衛生会」が経営し、アレルギー体質や食事療法の必要な児童らを療養する施設「健康の里」(入所者77人)の2〜7歳児。
 同保健所によると、9日に3人の児童が下痢などを訴え、その後、ほかの児童に広がった。19日に市内の医療機関から「児童の便からO157が検出された」と連絡があり、調査をしたこの時点で12人に腹痛や下痢の症状が出ていたという。
 死亡した児童は同日から下痢症状が出て翌20日に血便が出たため市内の病院に入院したが、23日午前に死亡した。ほかに2歳と5歳の女児が同様の症状で入院しており、2歳児からはO157が検出された。また、病院に通院している5歳の男児からもO157が検出されており、同保健所はほかの児童についても検査を進めている。症状が出たほかの児童は回復しているという。
 同保健所は、発症者が散発的に出たことから、菌が施設の食事からではなく、外から持ち込まれた可能性もあるとみて原因を調べている。

タミフル備蓄量、厚労省計画の0.4% 本社全国調査 indexへ

 新型インフルエンザの流行に備え、有効とされる治療薬「タミフル」を備蓄しているのは、42都道府県(宮崎は非公表)で、計約3万7000人分にとどまっていることが、朝日新聞社の全国調査で分かった。厚生労働省は、都道府県に計1050万人分の確保を求めているが、約0.4%しかない。財政難や購入の難しさなどが理由だ。発生時の対応策をまとめた行動計画は、年内に23都県が策定を終える見込みだが、医療機関との調整などはさらに時間がかかりそうだ。
 都道府県の担当者に、新型インフルエンザ対策を聞き取り調査した。宮崎は「混乱を避けたい」として、備蓄量は公表しなかった。
 厚労省は今年になって、都道府県の備蓄について、市場流通分以外に確実に使用できる量の確保(人口比で約3.7%の3日分)を求めてきた。さらに、今月14日にまとめられた政府の行動計画では5日間投与で1050万人分まで引き上げられた。
 調査結果では、自治体が確保している量は、愛知、岐阜、兵庫、福岡、佐賀の5県はゼロで、42都道府県で計3万7407人分だ。この中には卸売業者に購入予約している「流通備蓄」なども含まれる。直接、購入し手元にある買い上げ備蓄は、32都道府県で計7587人分にとどまっている。また、42都道府県中、29都府県が鳥インフルエンザの防疫従事者用などだ。
 確保方法も、新型インフルエンザ対策用で買い上げ備蓄していると回答したのは、栃木と広島だけ。福島は、業者に管理料を払い新型用として6600人分を確保している。
 自治体にとって、備蓄が難しい原因は、まず財政難。タミフルの薬価は1カプセル約364円で、国の要請する1050万人分を備えるには薬価で382億2000万円が必要だ。そのため「備蓄は国でやるべきだ」(高知)などの声がでている。
 タミフルは、中外製薬がスイスのロシュ社から毎冬、通常のインフルエンザ用として1200万人分を確保している。流行時期を過ぎた時点の残量は400万人分。政府の計画では、新型インフルエンザ用で2500万人分が必要と想定し、残りの2100万人分を国と都道府県で半分ずつ備蓄する。現在、国の備蓄もない。
 都道府県がこれから大量に流通市場から購入すると、通常のインフルエンザ用が不足する。そのため、「流行期が終わってから購入することになるだろう」(千葉)、「市場が混乱する」(滋賀)などの意見がある。
 また、大流行するまで段階ごとの対応策を定めた行動計画(マニュアル)をすでに策定しているのは宮崎、広島両県だけ。年内に策定見込みは、東京、新潟、岐阜、奈良など21都県にとどまる。
 「病床の稼働が90%以上の病院が多く、どうベッドを確保するか、調整が難しい」(茨城)という声もあり、策定を難しくさせている。
 〈新型インフルエンザ〉 人のインフルエンザウイルスと鳥インフルエンザウイルスが、人や豚の体内で混じって出現する可能性などが考えられる。厚生労働省は大流行した場合、4人に1人が感染し、国内でも最大で外来患者が約2500万人、死亡者が64万人になると推定している。治療は、従来のインフルエンザに使う薬タミフルが新型にも有効とみられる。

示談金総額は約10億円 弘前病院の放射線事故 indexへ

 青森県弘前市の国立病院機構弘前病院で91年から99年にかけて患者276人が放射線の過剰照射を受けていた医療事故で、示談金の総額が約10億円に上ることがわかった。
 今春まとまった事故調査委員会の最終報告書によると、過照射を受けた患者276人中、肋骨(ろっこつ)骨折など副作用による障害が明白な患者は41人、過照射による影響が疑われる患者は89人だった。この結果を受けて国立病院機構は障害の程度などに応じて補償額を算定し、病院職員が患者を訪ねて謝罪し、示談交渉を行ってきた。
 病院側によると、すでに亡くなっている患者の遺族も含めて、11月中旬までに全276人の患者関係者との面談を終了。数件を除くと、示談は合意に達し、現時点で示談金の総額は約10億円に上るという。

レセプト完全オンライン化へ 2010年度末めどに indexへ

 厚生労働省は、病院が医療費などを保険請求する際の診療報酬明細書(レセプト)を、2010年度末をめどに完全電子化してオンライン化する方針を固めた。これまで紙のレセプトが主流で、非効率などの批判があった。06年度にもオンライン請求による医療費の支払いができるよう省令を改正し、大病院と薬局から始め、今後5年かけて段階的に診療所まで広げる。整備を経済的に後押しするため、導入した医療機関は診療報酬で評価することも検討している。
 オンライン化は、18日の与党社会保障政策会議で「計画的な実施を目指す」とされたほか、政府のIT戦略本部や規制改革・民間開放推進会議からも求められていた。オンライン化で医療費の誤った請求や無駄遣いをチェックしやすくなるほか、病気の傾向を分析して保健指導に役立てるなどの取り組みも可能になるとされる。
 レセプトは医療機関が作成し、患者の病名や検査、投薬など治療内容が記載されている。支払機関に送られてチェックを受けた後、国民健康保険や政府管掌健康保険、健康保険組合などの公的医療保険に送られ、医療費が医療機関に支払われる仕組みになっている。
 レセプトの審査をしている社会保険診療報酬支払基金はすでに、健保組合などの保険者に対して電子データで提供できるようにする方針を決めているが、医療機関から支払機関へのレセプトについては、電子化されているのは病院で2割程度、医療機関全体では1割程度にとどまっていた。

入院患者あたりの看護師、実働数に合わせた表示に改定へ indexへ

 「患者2人に看護師1人」と表示しているのに、実際は患者10人を1人で受け持ち? 病院の案内板などに掲示義務がある看護師の配置基準の書き方が「誤解を与えている」として、厚生労働省は来年4月から、看護師の勤務実態に合った書き方に改めることを決めた。具体的な書き方などを今後、検討する。
 配置基準は医療法で決められており、入院患者総数(病床数)に対する看護師の割合を「2対1」や「3対1」などと表記し、患者に知らせることを求めている。
 しかし、実際は看護師は1日3交代で勤務していることが多い。そのため、例えば入院患者が30人いる病院で15人の看護師がいると、現在の表記では「2対1」になる。日勤、夜勤、深夜勤などの勤務実態や1人当たりの労働時間を考慮に入れると1日(24時間)に働く職員数はのべ9人、同じ勤務帯で働く職員は3人になるため、実際の配置割合は「10対1」になる計算という。
 入院患者や家族にとっては、常に患者2人に看護師1人が配置されていると誤解しやすく、「ナースコールの応答が遅い」「そんなに人手はいない」といった不満や疑問につながっていた。
 中央社会保険医療協議会では、患者が病院を選択する重要な情報でもあるとして各勤務帯で看護師1人が受け持つ患者数を示すなどの方法が必要だとの意見が出ていた。

小学生のアトピー、昼休みシャワーで改善 厚労省研究班 indexへ

 アトピー性皮膚炎の小学生に学校の昼休みに数分のシャワーを続けてもらったところ、症状が大幅に改善したことが厚生労働省研究班の調査でわかった。福井市で開かれている日本小児アレルギー学会で19日、望月博之・群馬大講師(小児生体防御学)が発表した。設備や学校の協力が必要だが、患者や家族には朗報になりそうだ。
 アトピー性皮膚炎は十数%の小学生が悩んでおり、近年治りにくくなっているともいわれる。体育などで汗やほこりが皮膚に付いて、刺激でかゆみが増し、繰り返しひっかくことも悪化の原因の一つと考えられている。
 そこで、望月さんらは昨年と今年、症状が悪化しがちな6〜7月の6週間に、群馬県内の小学校7校の協力を得て、アトピー性皮膚炎の児童延べ53人(平均8.8歳)を対象に、平日の昼休みに3〜5分ほど温水のシャワーを学校で浴びてもらい、効果を調べた。いずれも症状が安定している児童で、期間中は治療内容を変更しなかった。
 全身を25の部分に分け、場所ごとに強い症状は2点、弱い症状は1点、症状なしは0点と、計50点満点で評価したところ、全員が改善し、シャワー実施前は平均11.2点だったのが6週間後には4.0点と、7.2点も症状が軽くなった。

ぜんそく薬テオフィリン、「乳幼児への使用は慎重に」 indexへ

 ぜんそくの薬として広く使われている「テオフィリン」について、乳幼児には慎重な使用を求める改訂版ガイドラインを日本小児アレルギー学会がまとめ、福井市であった学会シンポジウムで20日、発表した。
 テオフィリンは気管支を広げる効果があり、安価なことから、β2刺激薬やステロイド薬と並び、国内で広く処方されてきた。ところが、乳幼児がけいれんを起こして死亡や重度の後遺症につながる例が報告され、対応を迫られていた。
 欧米ではけいれん多発が問題となり、使用が制限され、あまり使われていない。
 改訂版ガイドラインは、小児ぜんそくの発症のピークにあたる乳児(2歳未満)でテオフィリンの副作用の危険性が特に高いとして、ほかの薬の効果が十分でない時に、専門医が検討し、血中濃度を観察しながら使うとしている。発熱時などは中止・減量を検討する。
 同学会は、日本小児神経学会、日本小児救急医学会などとともに厚生労働省研究班を組織し、けいれんの発生状況やメカニズムを調査している。

副作用情報、患者の生死や性別も公表へ 厚労省 indexへ

 インフルエンザ治療薬のオセルタミビル(商品名タミフル)の副作用情報などへの関心の高まりを受けて、厚生労働省は副作用情報の公表方法を見直す方針を決めた。報告のあった医薬品や医療機器の副作用は、患者の生死や性別など個別症例の詳しい情報をすべて公表する。来年1月から医薬品医療機器総合機構のホームページ(HP)に掲載される。
 副作用情報は、服薬と症状との因果関係が否定できないと判断された場合に国に報告される。製薬会社などを通じて寄せられた副作用の件数は同機構のHPに掲載されるが、患者の生死や年齢などの詳細は、一部を除き公表されていない。
 厚労省は「死者が何人いるのかさえわからない」との批判を受け、見直す方針を決めた。今後は報告があったすべての症例について、死亡や回復などの経過や年齢・性別、病名と、併用した薬などを公表する。昨年4月以降の情報にさかのぼって公表し、非公表だった医療機器の不具合に関する個別情報も開示する。
 04年度の場合、同機構が公表した副作用の個別症例は1872件だったが、見直しで2万5142件に増える。医療機器による不具合も1万5714件が公表される見通しだ。
 ただ、服薬と副作用との因果関係が否定的と判断された場合は報告義務がなく、原則的に公表の対象とはならない。

タミフル服用と死因との因果関係、米FDAは結論出さず indexへ

 インフルエンザ治療薬タミフル(一般名オセルタミビル)を服用した日本人の子ども(16歳以下)12人が死亡した問題に対し、米食品医薬品局(FDA)は18日の「小児科助言委員会」で、副作用に関する監視を今後2年間継続するなどの対策を報告、了承された。死亡との因果関係については「タミフルの安全性を脅かす証拠は不十分」としつつ、明確な結論は出さなかった。
 日本人の子どもに死者が集中している点について、同委員会では、日本の際立って高い使用量との関係が指摘された。FDAによると、過去5年間の日本の子どもへの使用量は、米国の13倍にものぼる。
 また、FDAのマーク・ゴールドバーガー抗菌薬部長は「(東洋人だけに延命効果のある可能性が示唆されている)抗がん剤イレッサのような例もある」と述べ、遺伝的素因が影響している可能性を指摘した。
 同委員会のロバート・ネルソン委員長は会議後、「死亡はインフルエンザという病気そのものに由来するもので、薬が原因ではないだろう」と述べ、因果関係に否定的な見方を示した。
 しかし、FDAは「十分な証拠を得るためには、さらに2シーズンは必要だ」と主張。副作用の監視を続け、2年後に改めて報告をすることで了承された。
要だとの意見が出ていた。

「重大な懸念ない」 タミフル服用患者死亡例で官房長官 indexへ

 安倍官房長官は18日の記者会見で、新型インフルエンザ対策で備蓄が進むオセルタミビル(商品名タミフル)を服用した日本人の子ども12人の死亡例があるとした米食品医薬品局(FDA)の報告について、「死亡例は厚労省でも把握している。専門家の意見を聴取し、そのうえで適切に処方すれば、タミフルの安全性に重大な懸念がある状況ではないと認識している」と述べた。

タミフル服用患者の死亡例、世界で71人 米FDA報告 indexへ

 インフルエンザ治療薬オセルタミビル(商品名タミフル)を服用した日本人の12人の子ども(16歳以下)が死亡した問題で、大人も含めた死者は世界で71人にのぼることが、米食品医薬品局(FDA)の調査でわかった。18日に開かれた「小児科助言委員会」に報告した。ただ、17歳以上の死者の4割は米国人だった。子ども向けの使用は日本が米国と比べ際だって多く、同委員会は使用量と死者数の関係などについて検討する。
 FDAによると、17歳以上の死者はこれまでに58人。ほかに年齢不詳が1人いた。米国以外の国籍は明らかにされていない。
 タミフルの製造元のスイス製薬大手ロシュによると、タミフルは米国では99年から、日本では01年から使われ始めた。過去5年のタミフル使用量は日本が世界の77%、米国が20%を占める。また、FDAによると、過去5年の子どもの使用量は日本が米国の13倍にのぼった。
 このため同委員会は、使用量の差と、死亡例や神経・精神に異常を示した症例数などと関係があるのかどうか、検討を進める。FDAによると、神経・精神に異常を示した子どもは32人いて、うち31人は日本人だった。
 また、日本人と欧米人とでタミフルの体内での代謝のされ方が異なるという見方もある。
 FDAはこうした点もふまえ、タミフル服用の副作用かどうかを今後2年間かけて詳しく調べるとしている。
 ロシュによると、日本ではこれ以外にも、子どもの死亡が1例あるといい、大人も含めた全体の死者数も今後増える可能性がある。

日本でタミフル服用の子ども12人死亡 米FDA報告 indexへ

 インフルエンザ治療薬オセルタミビル(商品名タミフル)を服用した日本人の子どもに12人の死亡例があるとして、米食品医薬品局(FDA)は18日に開かれる「小児科助言委員会」に、これらの症例を報告する。FDAはすでに製造元のスイス製薬大手ロシュと、日本の厚生労働省からの報告を受けており、これらをもとに助言委員会でタミフル服用との因果関係を検討する。
 FDAは他の7種の小児薬と並んで、タミフルについて副作用が疑われる各国の小児の症例を、昨年3月〜今年4月の13カ月間にわたり集めた。
 それによると、現時点で12の死亡例があり、いずれも日本での症例だった。内訳は、突然死が4人、心肺停止が4人、意識障害、肺炎、窒息、急性膵炎(すい・えん)による心肺停止が各1人。
 ただ、FDAは「そのうち多くの症例は、他の薬を使っているなどタミフル以外の医学的状況があったり、詳細が不明だったりするため、タミフルとの因果関係を現時点で判断するのは難しい」としている。
 また、異常行動や幻覚など、神経や精神の異常を示した症例が32件あり、このうちの31件は日本での症例だった。アレルギーのような皮膚の超過敏反応も12件中11件が日本での症例だったという。
 日本のタミフル使用量は、世界の7割程度を占めている。

抗がん剤過剰投与で女子高生死亡 元教授の上告棄却 indexへ

 埼玉医大総合医療センター(埼玉県川越市)で00年、女子高校生(当時16)が抗がん剤の過剰投与により死亡した事故で、最高裁第一小法廷(甲斐中辰夫裁判長)は、業務上過失致死罪に問われた元教授の川端五十鈴被告(70)の上告を棄却する決定をした。禁固1年執行猶予3年(求刑禁固2年)とした二審・東京高裁判決が確定する。決定は15日付。
 川端元教授は当時の耳鼻咽喉(いんこう)科科長。主治医や指導医=ともに有罪確定=と違い、直接治療はしていなかった。
 第一小法廷は「元教授は、経験の浅い主治医らを指導する立場にあり、ミスを予想してただす義務があった。自ら抗がん剤の投与計画を検討したり、副作用への対応を指示したりしていれば、命は救えた」と述べた。
 一審・さいたま地裁判決は罰金20万円を言い渡し、二審・東京高裁はこの判決を破棄して禁固刑に変更した。

がん検診 結果5カ月放置 130人分、数人は陽性 indexへ

 中央官庁や大手企業などの健康診断や人間ドックを受託している医療法人社団「同友会」(本部・東京)が、約130人分の大腸がんの検査結果を受診者に通知せず、約5カ月にわたって放置していたことが16日、分かった。この約130人の中には、陽性反応が出た人も数人含まれており、長期にわたって精密検査など必要な処置が施されないままになっていたことになる。同会は同日、通知漏れのあった大手百貨店に謝罪し、内部に調査委員会を設置。原因究明するとともに、ほかにも同様の報告漏れがないか調査を始めた。
 同友会の説明によると、同会は今年5月、神戸市の大手百貨店の社員約300人の定期健康診断を受託。うち約240人が検便による大腸がん検査を受診した。同会は便の潜血検査を外部の検査会社に再委託し、5月末、フロッピーディスク(FD)で検査結果を受け取った。ところが、検査会社側のミスで、FDには約130人分の検査結果が抜け落ちていた。同会は気付かないまま、約130人について大腸がん検査結果の項目が空欄になったまま、健康診断結果の通知書を作成し、6月初め、受診者に送付した。
 同会は9月初め、検査会社から請求書を受け取り、請求内容に約130人分の大腸がんの検査結果が含まれていないことに気付いた。検査会社から不足分の検査結果をFDで取り寄せたが、事務処理上のミスで受診者に通知しないまま放置していたという。
 同会の渡辺新吉・渉外担当専務理事は「二重のミスが重なった。受診者の皆様にご迷惑をおかけし申し訳ない」と話している。

高脂血症薬に心臓病防ぐ効果 日本で8千人臨床試験 indexへ

 コレステロール値を下げる高脂血症薬を使うと、日本人で心臓病の発生を減らす効果があることが、約8000人の患者が参加した臨床試験で分かった。日本人を対象にこの薬を使う人と使わない人を比べた大規模臨床試験は初めて。中村治雄・防衛医科大名誉教授らが16日、米テキサス州ダラスで開かれた米国心臓協会学術集会で発表した。
 中村さんらは総コレステロール値が220〜270ミリグラム(血清1デシリットル当たり)の男女7832人(平均年齢58歳)の協力を得て、全員に食事療法をしたうえで、半分の人にはコレステロールを下げる薬を飲んでもらった。
 5年以上経過を追った結果、心筋梗塞(こうそく)や狭心症などの心臓病を起こす発症率は、薬を飲んだ場合が飲まない場合に比べて33%少なかった。これに脳梗塞を加えた動脈硬化性の病気全体の発症率でみても、30%減った。
 今回の臨床試験で使われたのはプラバスタチン(商品名メバロチン)という高脂血症治療薬で、日本では89年、三共が発売し、医師が処方する薬として広く使われている。欧州で実施された大規模臨床試験では心臓病を予防する効果が確かめられてきた。欧米に比べて日本では心筋梗塞などによる死亡率が低く、食生活も違うため、日本人にも病気を防ぐ効果があるのかを厳密な臨床試験で確かめる必要があるとされてきた。

医療費抑制 患者負担窓口80円増/保険料・税280円減 試算、実態と隔たり? 厚労省「単純」に計算 indexへ

 厚生労働省試案に盛り込まれた医療費抑制策を実施すると、08年度の患者の窓口負担は74歳以下で1人当たり月80円増えるのに対し、保険料や税負担が同280円減るなどとする試算を同省がまとめた。ただ、患者負担は制度改革による影響額を単純に人口で割っただけ。実際の負担は人によって大きく異なるため、「実態とかけ離れている」との声も出そうだ。
 試算は、試案に盛り込まれた「短期的な抑制策」を実施する前提。一定以上の所得がある高齢者の窓口負担の2割から3割への引き上げ▽長期入院高齢者の食住費の自己負担化▽高額療養費の自己負担限度額引き上げなどを織り込んだ。
 これらの施策によって医療保険からの給付費が減るため、国民の保険料と税負担は年間約4000億円減ると試算。現行のままでは74歳以下の保険料・税負担が平均で月1万9160円のところ1万8880円になり、75歳以上の世代では同平均1万2520円が1万2250円になるとした。
 一方、患者負担については、74歳以下で現行のままだと月3320円が改正後は3400円。75歳以上では同平均6500円から7040円で540円の負担増とした。
 しかし、例えば食住費が自己負担化されると、患者負担は現行だと材料費2万4000円(月額)のみの負担から、改正後は調理コストと光熱費なども加わるため、さらに3万2000円(同)を負担することになる。一定所得以上の高齢者の窓口負担は1.5倍になるため、例えば1万円を払っていた人であれば5000円の負担増になる。このため、負担増の実態を反映しない試算の方法には疑問の声も出そうだ。

医師数増加でも産婦人科、外科医など減少 厚労省調査 indexへ

 全国で医師数が増え続ける一方、産婦人科医や外科医、内科医は減少している――。厚生労働省が17日発表した04年医師・歯科医師・薬剤師調査でこんな傾向が明らかになった。地域別では全国的な増加傾向のなかで、青森、山梨の2県では人口10万人当たりの医師数が減少。特定の診療科や地域で医師が不足している「医師の偏在」を改めて浮き彫りにしている。
 調査によると、全国の医師数は27万371人で、前回調査の02年に比べ7684人の増。実際に医療施設で働いている人は25万6668人で、そのうち病院(20床以上)が16万3683人(平均年齢42.1歳)、診療所(19床以下)は9万2985人(同58.0歳)だった。
 診療科別にみると、循環器科や消化器科(胃腸科)は前回調査より7%程度増えているのに対し、産婦人科は4.3%(455人)、外科は2.6%(628人)、内科は1.4%(1034人)の減。一部地域で医師不足が指摘されている小児科は1.4%(196人)増えた。
 人口10万人に対する医師数は東京が264.2人で最も多く、最も少なかったのは129.4人の埼玉。前回に比べて減少したのは青森、山梨の2県のみで、それぞれ0.8人、0.6人減った。
  医療施設で働いている女性医師は4万2040人で前回より3230人増。20代では女性医師が35.3%を占めた。歯科医師は9万5197人、薬剤師は24万1369人で、それぞれ前回より2323人(2.5%)、1万1625人(5.1%)増えた。

魚の油、心臓病予防に効果 2万人規模の研究で確認 indexへ

 イワシやサバなどの青魚に多く含まれる油の成分をとると心臓病になるのを減らす効果があることが、日本人約2万人を対象にした大規模臨床試験で確かめられた。横山光宏・神戸大教授(循環器病学)らが、米テキサス州ダラスで開催中の米国心臓協会学術集会で14日、発表した。
 横山さんらは総コレステロール値が250ミリグラム(血清1デシリットル当たり)以上の男女1万8645人を対象にした。全員にコレステロールを下げる薬を処方した上で、半数の人には魚の油成分、イコサペンタエン酸(EPA、エイコサペンタエン酸ともいう)を抽出した高純度のカプセル薬も毎日飲んでもらった。
 約5年間の追跡期間中に心臓突然死や心筋梗塞(こうそく)などの心臓病が起きた人の割合は、EPA薬を飲まなかった人では3.5%、飲んだ人では2.8%。EPA薬の服用には、こうした心臓病のリスクを19%減らす効果があったという。
 日本では欧米に比べて心筋梗塞などの死亡率が低い。魚を多く食べる食生活が一因と指摘されていたが、大規模な臨床試験で確かめられたのは初めて。今回の臨床試験に使われた薬はすでに、高脂血症などの治療薬として医療現場で医師が処方している。

抗てんかん薬注射後に死亡、医師らを書類送検 警視庁 indexへ

 東京都大田区の医療法人城南福祉医療協会「大田病院」(村岡威士院長)で01年9月、品川区の主婦(当時62)が抗てんかん薬を注射された直後に死亡した医療事故で、警視庁は15日、担当した内科の男性医師(41)と女性看護師(48)を業務上過失致死の疑いで書類送検した。2人は容疑を否認しているという。
 大森署の調べでは、医師は同年9月30日、てんかんの発作を訴えて来院した主婦に抗てんかん薬「アレビアチン」を注射するよう看護師に指示。副作用による嘔吐(おうと)で窒息するおそれがあったにもかかわらず、看護師に経過観察を指示するのを怠った。看護師も注射後、観察結果に応じて適切な処置を施す注意義務を怠った。2人の過失の競合で約5時間後に主婦を窒息死させた疑い。

誤診の医師に禁固1年求刑 割りばし刺さり死亡の事故 indexへ

 杏林大学病院(東京都三鷹市)の耳鼻咽喉科(じびいんこうか)医師だった99年7月、割りばしがのどに刺さった男児(当時4)を誤診して死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた医師根本英樹被告(37)の公判が14日、東京地裁であった。検察側は「医療従事者として、診察時に頭蓋(ずがい)内損傷を疑うことは十分できた」として禁固1年を求刑した。
 この事故で死亡したのは杉野隼三(しゅんぞう)ちゃん。在宅起訴された根本医師は公判で「過失はなかった」と無罪を主張している。
 論告で検察側は「隼三ちゃんは意識レベルが低下してぐったりした状態だった。頭蓋内が損傷した可能性を認識できたのに、被告は必要な診察や検査を何一つしていない」と批判した。
 検察側によると、隼三ちゃんは99年7月10日、転倒して綿あめの割りばしがのどに刺さり、同病院に運ばれた。根本医師は刺さったままのはしに気づかないまま、頭部をCTスキャンで撮影したり、脳神経外科医に引き継いだりせずに、傷口に消毒薬を塗るなどしただけで帰宅させ、翌日、頭蓋内損傷で死亡させたとされる。

後発品の普及へ処方箋変更 厚労省が薬剤費抑制案提示 indexへ

 厚生労働省は、医療費抑制の柱の一つとなる薬剤費の抑制案をまとめた。特許が切れた新薬(先発品)と同じ有効成分で売り出される安価なジェネリック医薬品(後発品)の使用を増やすため、医師の処方箋(せん)を変更することや、後発品がある先発品の価格の下げ幅を大きくする案を盛り込んだ。
 社会保障審議会医療保険部会に案を示した。
 後発品は患者負担も減るため厚労省が普及策をとってきたが、市場での割合は03年度で16%(数量ベース)。50%前後の欧米よりかなり低い。
 厚労省案では、処方箋に新たに「後発品へ変更可」「変更不可」のチェック欄を設け、医師が先発品名で処方しても、「変更可」にチェックすれば患者は後発品を選べるようにする。
 後発品が出た場合の先発品の価格については、従来4〜6%引き下げていたが、さらに下げ幅を拡大する案と、後発品の市場価格に連動して先発品価格が下がる案を示した。ただ、財務省や与党の一部が提案する市販薬に類似した医薬品を保険対象外などとする案については「適用範囲を決めるのが難しい」とした。
 また厚労省は診療報酬改定について、小児科や救急医療など必要な分野への配分の必要性や、コンタクトレンズの処方に伴う検査のあり方を見直す考えなども示した。

医療関連死で初の解剖実施 都内の病院で indexへ

 明らかな医療過誤とはいえないが、診療行為に関連した死亡例の原因を調べる「医療関連死調査分析モデル事業」の1例目の解剖が、今月1日に東京都内の大学病院で行われたことがわかった。この解剖結果や臨床経過に基づき、評価委員会が3カ月以内に死因や再発防止策を盛り込んだ報告書をまとめ、医療機関と遺族に渡す。
 解剖されたのは、都内の病院で内視鏡による総胆管結石除去手術を受けた60歳代の男性。術後に腹膜炎を併発し、別の病院で手術から約2カ月後の先月末に死亡した。
 男性が死亡した病院は病死と断定できない「異状死」として警察に届けたが、検視などの結果、モデル事業の中で死因を調べることになった。
 同事業は厚生労働省の補助を受けた医学会が実施主体となり、9月から東京都、愛知県、大阪市、神戸市の4カ所で受け付けを開始した。死因解明を望む遺族の希望に応え、同様の事例の再発防止に役立てるとともに、公的な死因究明システムをつくるための課題をさぐっている。
 死因究明の手続きは、まず遺族の同意を得た医療機関が地域の大学法医学教室などに置かれた受付窓口に調査を依頼。コーディネーター役の調整看護師が調査担当医とともに医師や遺族から聞き取りを行い、カルテの内容などを調べる。遺体の解剖は法医と病理医が2人で行い、関係診療科の医師も立ち会う。
 今後、対象地域を9カ所に増やし、年間200例の調査を目標にしている。医療機関向けにモデル事業の説明会も計画している。

人工心肺活用、7人に1人が社会復帰 札幌の病院 indexへ

 通常の救急治療では心拍が戻らない心肺停止患者に対して、心臓手術後の血流維持に使う小型の人工心肺装置も駆使して救命を図った結果、ざっと7人に1人は社会復帰を果たした。そんな成果を13日、札幌市立札幌病院の医師が、米国心臓病協会で発表する。血流を維持し、脳などが酸素不足で死ぬのを防いだのが功を奏したと考えられている。
 使ったのは経皮的心肺補助(PCPS)と呼ばれる装置。本来は心臓手術の後、補助人工心臓装置に代えて一時的に、血流を維持することなどに使われる。
 太ももの静脈から細長い管(カテーテル)を心臓まで入れ、酸素不足となった血液を抜いて、人工肺で血液に酸素を入れた上で動脈に戻し、ポンプで循環させる。
 心臓が停止した場合、何も処置をせずに3分間たつと死亡率は約50%になる。心臓マッサージなどで血液の循環をある程度保つことはできるが、血中の酸素不足や血流の減少などで、心拍が戻らないままだと死亡率は徐々に高まる。
 札幌市では札幌医科大学が88年、札幌病院が91年から救急外来に導入。心臓マッサージなどに加えてPCPSを使い、脳などの組織や臓器が酸素不足で死ぬのを防ぎ、その間に心拍再開を目指してきた。88〜05年2月に両施設で268人に使ったところ、73人(27.2%)が命を取り留め、39人(14.6%)は3カ月以内に社会復帰を果たした。
 台数に限りがあるため、札幌病院救命救急センターでは使用基準をつくり、薬物投与や、心臓への電気ショック(除細動)など通常の救急治療をしても心臓が動き出さないとの前提の下で、心停止60分以内、患者が70歳以下などの条件を満たした場合に限って、使うことにしている。
 PCPSを救命用に使う試みは関東や関西などの一部の医療機関でも実施されている。装置が数十万円するほか、短時間での操作に慣れも必要といい、発表した鹿野恒医師は「すべての病院ができるわけではないが、今まで『お手上げ』とされた心肺停止患者でも、助かる可能性があることを示すことができた。今回の治療が、一般の蘇生術に比べても脳死や植物状態などの後遺症が増えるとは考えていない」という。

「タミフル服用で行動異常死」学会報告 専門家は疑問視 indexへ

 インフルエンザ治療薬オセルタミビル(商品名タミフル)を服用した患者の中高生2人が異常行動を起こした後に死亡した事例がある、とNPO法人「医薬ビジランスセンター」(大阪市)の浜六郎理事長(医師)が12日、津市で開かれた日本小児感染症学会で報告した。浜理事長は「異常行動は薬の副作用」と指摘するが、厚生労働省研究班の専門家はインフルエンザがきっかけで起きる脳炎・脳症の前にも異常行動が出ることがあるとして、副作用との見方に否定的だ。
 浜理事長の報告によると、04年2月、17歳の男子高校生がタミフル1錠を飲んだ約3時間半後、素足で家を飛び出し、塀を乗り越えてトラックにはねられて死亡した。05年2月には、14歳の男子中学生がタミフル1錠を飲んだ2時間後、寝ていた部屋から見当たらなくなり、マンションの下で転落死しているのが見つかった。
 浜理事長は「副作用で異常行動が起きたと考えるのが自然。インフルエンザは安静にすることが大事で、薬に頼るべきではない」と言う。これに対し、厚労省インフルエンザ脳炎・脳症研究班に所属する横浜市立大学の横田俊平教授(小児科)は「発熱や他の薬の影響なども考える必要があり、副作用と判断するには科学的根拠が薄い」と話している。
 販売元の中外製薬によると、タミフルは昨シーズンは大人を含め約1000万人分が使われたとみられる。また、研究班によれば、インフルエンザにかかった子どもの9割に処方されているという。
 厚労省は昨年6月、「医薬品・医療用具等安全性情報」で、タミフルを服用した10代の女性が窓から飛び降りようとして母親に制止された例などを報告。薬品の添付文書でも副作用として意識障害などの神経症状が追加された。
 今回のケースについて、同省安全対策課は「高校生のケースは製薬会社から報告を受けた。服用との因果関係ははっきりしないが、異常が認められた場合は十分に観察してほしい」と注意を呼びかけている。

日本医科大「手術ミス」内部告発 医師が逆転敗訴 名誉毀損高裁認定 indexへ

 手術で第1助手を務めた男性医師(47)が、死亡した患者の遺族や報道機関に「手術でミスがあった」と内部告発したために名誉を傷つけられたとして、日本医科大学(東京都文京区)と執刀医が、この医師を相手に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が9日、東京高裁であった。江見弘武裁判長は、請求を棄却した一審判決を変更。「告発内容は真実ではなく、真実と信じる相当の理由もなかった」として違法性を認め、医師に計550万円の支払いを命じた。医師側は上告する方針。
 判決によると、同大付属病院で97年、あごの骨折を修復する手術を受けた20代の女性が2日後に急死。医師が、遺族や報道機関に「手術中にあごの骨を固定するワイヤがミスで脳に刺さった」などと証言。マスコミに大きく報じられた。
 江見裁判長は「報道で大学や執刀医の社会的評価は低下した」と認定。その上で、医師が根拠とした手術中のX線写真について「画像が不鮮明で、ワイヤが刺さっていると積極的に裏付けるものとは評価できない」と述べた。

大病院初診、保険外に 紹介ない場合 厚労省方針 indexへ

 厚生労働省は、200床以上の大病院を医師の紹介状なしに受診した外来患者について、初診料を保険診療の対象から外し、患者の自己負担を増やす方針を固めた。負担を増やすことで大病院への患者の集中を防ぎ、まず地域の診療所で診てもらい、必要なら紹介状をもらって大病院に行くという流れを促す狙いだ。9日の中央社会保険医療協議会(中医協)に提案した。来年4月の診療報酬改定での導入を目指す。
 現在、大病院の初診料は原則2550円だが、医療保険の対象で会社員なら自己負担3割のため、実際に窓口で支払うのは765円。厚労省案が導入された場合、現行の初診料のままなら、紹介状のない患者は2550円全額負担を求められる可能性がある。
 ただ、どこまで患者に負担を求めるかは病院ごとの判断。初診料の減収分を患者負担に転嫁できずに収入減となる病院もあるとみられ、病院側から不満の声が出ることも予想される。一方で大病院志向の背景には初期診療を担う診療所の力量不足を心配する患者心理もあるといわれ、患者側の反発を招く可能性もある。
 厚労省は、大病院への患者の集中が「3時間待ちの3分診療」という状況を招き、本来求められている高度・専門的な治療にも支障が出かねないとして、診療所と病院の機能分担、連携態勢作りを後押ししている。
 診療報酬に基づく初診料を、診療所は2740円と、病院より手厚くしているほか、紹介状がない大病院の外来患者については、保険診療に上乗せして病院が独自に設定した特別な初診料を患者に請求できる仕組みも96年に導入した。
 しかし実際には、上乗せの初診料をとっている病院は一部で、同省の04年調査では、全国の大病院2916施設のうち1138施設にとどまった。請求額を低く抑える病院も多く、1500円までが半数以上の651施設を占め、5001円以上の病院はわずか4施設だけだった。保険診療だけで比べた場合、患者の窓口負担は大病院の方が軽いため、むしろ病院の外来患者が増えているとの指摘もある。
 厚労省は、紹介状のない患者の初診料を、現行の特別な初診料の中に含めて徴収してもらう方針。保険でみる初診料の診療報酬についても、病院と診療所間の格差を是正する方向で検討している。
 〈キーワード・診療所と病院〉 医療機関は、クリニックや医院を名乗る「診療所」(19床以下)と「病院」(20床以上)に分かれ、病院でも200床以上は「大病院」に分類される。厚労省は、診療所が初期診療、大病院は入院や救急救命など高度・専門的医療を担うよう、次期医療制度改革でも機能分担や連携態勢づくりを打ち出した。しかし、病院で専門医療に携わったあと開業医に転じるケースが多いため、広く様々な病気を診る初期診療を担える医師の育成や、診療所の機能強化を求める意見も根強い。

看護師の就業意識、3分の2が「やりがいは感じるが不満あり」 indexへ

 NTTレゾナントと三菱総合研究所は2005年11月8日、看護師の就業意識についての調査結果を発表した。8割の人がやりがいを感じているが、不満を持っているケースも多く、3人に2人が「やりがいは感じるが、仕事へは不満はある」と感じていることが分かった。
 インターネット調査サービス「gooリサーチ」の登録者のうち看護師を対象に聞いた。有効回答者数は166人(男性10.2%、女性89.8%)。
 「やりがい」と「不満」の2つの面からの質問に対し、「やりがいは感じるが、仕事へは不満はある」と答えた人は66.3%で全体の3分の2にのぼる。また、「やりがいはあまり感じておらず、仕事への不満もある」が9.0%で、合わせて4分の3が仕事に不満を持っていた。
 逆に、次に「やりがいを感じており、特に不満もない」は13.9%、「やりがいはあまり感じていないが、特に不満はない」が10.8%だった。
 仕事への不満の内容(複数回答)は、「労働がきつい(体力的に重労働)」(44.8%)、「同じ職場内の人間関係が悪い」(40.8%)、「ストレス解消がなかなかできない」(37.6%)、「勤務時間が長く、プライベートの時間が持てない」(36.8%)、「急患対応など勤務時間が不規則で、プライベートの予定が立てにくい」(34.4%)の順。また、自由回答では労働内容の割に賃金が安いとする声も多かった。
 不満やストレスの解消に向けて必要な情報は、「看護をする上での基本的な知識」が44.0%、「患者のケアなど、多くの病院でのノウハウ」が37.4%、「医薬品・医療機器などの最先端の知識」が32.5%だった。よいと思う情報収集手段は「書籍やマニュアルなど」が57.0%、「看護師のためのコミュニティサイト(PC)」が56.3%など。
 また、医療過誤の原因については、「コミュニケーション不足」と「業務多忙による注意力の低下」とする意見がそれぞれ75.9%にのぼり、解決策には8割以上が「看護師の人員増」をあげた。さらに転職を経験した人も6割弱にのぼり、流動性も高いことが分かった。

担当医、従来の投薬量と間違える 虎の門病院の医療事故 indexへ

 薬の過剰投与による事故があった虎の門病院(東京都港区)は8日、山口徹院長らが記者会見し、薬の切り替えをした際に担当の女性研修医(27)が投薬回数と量を従来の薬と取り違えたことを明らかにした。60代の患者は依然、意識不明の重体という。
 同院によると、10月29日、1日3回投与の薬から1日1回で使用量も少ない「ペンタミジン」に変えた際、研修医は同じ量と回数を投与するよう誤って指示し、通常の5倍の投与量となった。31日、患者の容体が急変してミスに気がついた。

肺炎治療薬の過剰投与で患者が重体 東京・虎の門病院 indexへ

 東京都港区の虎の門病院(山口徹院長)が先月、60代後半の男性患者に肺炎治療薬「ペンタミジン」を過剰投与した結果、男性が重体になっていることが分かった。病院は投薬ミスを認め、都と警視庁赤坂署に報告した。
 病院などによると、10月下旬、肺がんで8月から入院していた男性に通常の5倍の「ペンタミジン」を3日間にわたって投与した。担当医の指示のミスとみられるという。
 患者は容体が悪化して意識障害、多臓器不全となり、7日現在も重体。病院は過失を認め、家族に謝罪したという。
 ペンタミジンは、過剰投与すると低血圧などの副作用を引き起こす恐れがあるとされている。

小児科・産婦人科、減少止まらず 厚労省調査 indexへ

 医師不足が深刻な「小児科」や「産婦人科」を置く病院が減り続けていることが、厚生労働省の04年医療施設(動態)調査・病院報告でわかった。全国で小児科がある病院は、前年比1.6%減の3231カ所で、産婦人科は3.6%減の1469カ所だった。ともにピークだった90年と比べると、小児科が21.6%減、産婦人科が32.9%減となり、歯止めがかからなかった。
 精神病院や結核療養所を除く一般病院のうち小児科は40.4%に置かれており、前年比0.4ポイント減。産婦人科は18.4%で同0.5ポイント減だった。一方、循環器科は、前年比80カ所増の3674カ所、リハビリテーション科は同69カ所増の4989カ所、神経内科は同48カ所増の1742カ所で増加が目立った。
 病院(ベッド数20床以上)全体は9077カ所で前年と比べて0.5%の減で、このうち一般病院も0.6%減の7999カ所だった。診療所(19床以下)は同1.0%増の9万7051カ所で、88年以降増え続けている。
 1日のうちに病院の外来を訪れる平均患者数は、00年の約181万人をピークに減っており、04年は約161万人で同3.2%減った。都道府県ごとに人口10万人に対する割合でみた場合、1日の外来患者数はもっとも多い高知県が1913.3人、もっとも少ない埼玉県は981.2人だった。
 入院患者の平均入院日数は、36.3日で前年より0.1日短くなった。このうち、一般病床は20.2日で前年比で0.5日短くなったのに対し、療養病床は172.6日で0.3日伸びた。

十分な看護「できている」は1割未満 看護職員調査 indexへ

 患者を十分に看護できていると感じる看護職員は1割に満たず、仕事を辞めたいと思うことがある人は7割を超す――。日本医療労働組合連合会(医労連)が全国の組合員らに実施したアンケートで、こんな実態が浮き彫りになった。人手不足や仕事の忙しさを理由にあげる声が多く、医労連は「患者の命と安全を最優先する観点からも、看護師の増員が必要だ」としている。
 調査は00年に続き2回目。今年8〜10月に約1万7000人(平均年齢35.8歳)から回答を得た。「十分に看護を提供できている」と答えた人は8.6%(00年は7.7%)で、依然、1割を切っており、64.2%が「十分にできていない」と答えた。
 また、「この3年でミスを起こしたり、起こしそうになったりしたことがある」のは86%に上った。ミスの内容は質問しなかったが、このうち83.7%が原因に「医療現場の忙しさ」をあげた。
 業務量が「最近増えた」としたのは62.1%で、00年の54.5%を上回った。残業時間は、調査時点の1カ月の平均が9.5時間で、0.5時間の増。20時間以上は13.3%だった。
 「仕事をやめたいと思うことがある」と答えた人は72.5%で、5年前から8ポイント増えた。「仕事の忙しさ」(35.8%)、「仕事の達成感がない」(21.6%)を理由にあげる人が多かった。

35都道府県が医師確保策 一方で「悲鳴」も 本社調査 indexへ

 医師が偏在し、特定の診療科や地方で医師不足が深刻化している問題で、35の都道府県が「奨学金制度」などの独自策を導入、医師確保を急いでいることが朝日新聞の調査でわかった。一方で40都道府県が「不足感がある診療科の診療報酬での優遇」など、偏在解消に向けた国の政策誘導を求めた。各地で「自治体の努力には限界がある」との声が根強い。
 調査は10月、都道府県の医師確保策の担当課に質問票を郵送し、全都道府県から回答を得た。
 医師確保が困難な中、青森など16県が医学生を対象に地元で一定期間働くことを義務づけた「奨学金制度」を、山形など12道県が全国から医師を公募、一定期間採用する「職員枠での医師確保」策を導入・検討していた。
 宮城県は今年度、3年間の期間限定で医師を職員採用し、郡部の自治体病院や診療所に派遣する事業に乗り出した。
 青森県は弘前大や市町村立の病院関係者らと協力し、9月に「医師支援機構」を設立した。自治医大出身者やUターン希望の医師らを登録し、機構が派遣元になる仕組みで、将来は100人規模の医師確保を目指す。県職員として長く採用したいが、地方自治法上、派遣元の県が退職金を全額負担しなくてはならない。財政難の県は市町村との折半ができるよう特区申請する方針だ。
 国が医師配置の再検討などのために設立を求めた「医療対策協議会」は45都道府県ですでに設置。19道府県が「医師派遣システムの構築」を課題とし、大学病院の医局が担ってきた派遣機能の補完を目指している。
 一方で、各地からは悲鳴も聞こえる。
 アンケートでは、データがないなどとして回答を保留した5県を除く42都道府県が「医師確保が難しい」と回答。絶対数か診療科による偏りかの違いはあるが、医師不足が全国で問題化していることが裏付けられた。確保が難しい診療科では小児科(42都道府県)、産科(37同)、麻酔科(30同)が多くあげられた。
 医師の確保が難しい病院について41都道府県が「県庁所在地以外の自治体病院」をあげ、東京都を含む9都県が自由回答欄で「都道府県単位での医師確保には限界がある」と明記。40都道府県が「診療報酬上の優遇」、26府県が「医師不足地域での一定期間の勤務義務づけ」などの政策誘導を求めた。
 人口10万人当たりの医療施設で働いている医師数が121.8人(02年末現在)と全国で最少の埼玉県の担当者は、不足する診療科の診療報酬の引き上げを求め、「総医療費抑制の必要性はわかるが、診療科全体でバランスを取るなどして対応して欲しい」とした。
 青森県の担当者は医師配置のあり方にふれ「自治法の改正とともに、どうしても不足する診療科には医師を強制的にでも配置できるシステムが必要だ」とした。群馬県の担当者も「医師養成に多額の公費が投入されていることを考えれば、職業選択の自由という憲法上の問題は残るが、一定地域への勤務や必要な診療科目への誘導を行うべき段階だ」と指摘した。
 調査結果について厚生労働省医政局医事課の中垣英明課長は「診療報酬上の配慮は保険局にお願いしている。勤務地の義務づけなどは選抜や配置を公平に行うのが難しい。都道府県の中でも県庁所在地とそれ以外の地域での偏在がある。県立病院の医師配置の見直しなど、地方でできる努力もしてほしい」と話した。
 厚労、文部科学、総務3省は8月、医師が不足する診療科の対策として「診療報酬での適切な評価」などを検討課題にあげており、地方の声がどこまで反映されるか、来年4月の診療報酬改定が注目される。

■都道府県の独自策
奨学金制度                 (16県)
職員採用枠での医師確保          (12道県)
若い医師の研修体制の整備          (12道県)
医師のあっせん               (11道県)
地元出身の医師へのダイレクトメール送付   (10県)
他の都道府県にある大学医学部への医師派遣依頼(7道県)
自治体立病院の統合・再編          (4道県)
U・Iターン説明会              (4県)
その他                   (22都府県)

■国に期待する施策
不足感のある診療科の診療報酬での優遇     (40都道府県)
医師不足地域での一定期間の勤務義務づけ    (26府県)
国立大学の地元出身者枠の拡大         (24県)
医師不足地域の医療機関への診療報酬での優遇  (23道府県)
医学部募集枠自体の拡大            (21道県)
地方交付税などによる財政支援         (15道県)
その他                   (17都道府県)
※いずれも複数回答

乳がん検診、40、50代には超音波検診併用が有効 indexへ

 乳がん検診で乳がんと診断された人のうち、40代の2割近くと50代の約3割がマンモグラフィー(乳房X線撮影)では見逃され、超音波で見つかっていたことが、栃木県保健衛生事業団のまとめでわかった。昨年4月に国の指針が改正され、40歳以上はマンモグラフィー検診の対象となったが、まだ乳腺密度の濃い人もおり、がんが見落とされやすい。「超音波検診の併用が必要ではないか」と指摘する。
 4日から京都市で開催する日本乳癌(にゅうがん)検診学会で発表する。同事業団は00年度以降、マンモグラフィーと超音波の併用検診を導入している。00〜04年度に検診を受けた延べ6万9220人のうち、乳がんと診断された人は166人だった。
 40代でがんが見つかった42人のうち、マンモグラフィーでは発見できず、超音波のみで発見された人は7人(17%)、50代では56人中、16人(29%)に上った。
 マンモグラフィーは脂肪部分は黒く写るが、腫瘍(しゅよう)部分は白く写る。乳腺組織も白く写るため、乳腺密度の濃い人はがんが隠れて見えにくくなる。乳腺密度は女性ホルモンと関係し、年齢が上がるにつれ薄くなり、マンモグラフィーの効果が上がるとされる。
 一方、超音波は乳腺の濃さに影響されないが、がんを見つけられるかどうかは、撮影する技師の技量に非常に左右されるという課題がある。現在、厚生労働省の研究班が、指針の対象外となった30代も含め、超音波検診導入に向けての基準などを検討中だ。
 同事業団の市村みゆき・健診検査部長は「日本では乳がんにかかる人の割合は40代が最も多い。見落とさないためには超音波の併用を検討すべきだ」と話す。

防げ医療事故、異分野も知恵 初の学会設立へ indexへ

 相次ぐ医療事故を科学的に分析し、医療の安全策提言につなげることを狙って「医療の質・安全学会」(発起人代表=高久(たかく)史麿・自治医大学長)が、今月下旬に設立される。医療従事者だけでなく、品質管理を専門にする工学者や認知心理学者らも集まり、幅広い視点からの研究を目指す。医療事故の問題に真正面から取り組む、日本初の学会となる。500人規模でスタートする見込みだ。
 発起人は、長年この問題に取り組んでいる上原鳴夫・東北大教授(国際保健学)や飯塚悦功・東大教授(品質保証)ら8人。昨夏、日本医学会が医療の安全をテーマに開いたシンポジウムのメンバーが中心だ。同シンポで、安全を保つにはお金がかかることや、治療法や手技の標準化が質の向上につながることなどが医療以外の専門家から指摘され、「医療事故を減らすには学際的な研究が必要」と学会設立で合意した。
 新学会では、錯覚や錯視など人間の特性が医療事故とどう結びつくのか▽医療事故防止策が実際にどの程度、事故の削減につながっているのか▽医師によって異なる指示の出し方や表記の仕方などの標準化――などを研究する。
 例えば、医療事故防止のために「ヒヤリ・ハット事例」(事故寸前の出来事)を集めて改善策を講じるリスクマネジャーを医療機関に置いても、多忙な看護師長などに兼務させる例が多く、それではかえって事故を招きかねないとの指摘がある。
 また、投薬の指示では「10mg×3」(10mgを3回)、「10mg3×」(10mgを3回に分ける)などの紛らわしい書き方があり、ミスの温床といわれる。
 こうした事例を研究し、科学的な根拠が得られた問題点や改善策については医療従事者に研修をしたり、広く提言したりする。
 医療事故を巡っては、財団法人「日本医療機能評価機構」が昨年10月以降、大学病院や国立病院などを対象に報告を義務化しており、この1年間に1063件の報告があった。だが対象病院は全国の病床の約1割に過ぎず、この件数も氷山の一角と言われる。
 高久さんは「日本の医療事故対策は、データの裏付けがない。リスクマネジャーの問題のように、効果があると考えられていることが、かえって事故につながっているのではないかと思われるケースもある。医療の専門家だけで解決できる問題ではなく、様々な分野の人に参加してもらいたい」という。
 医療の質・安全学会は26日に経団連ホール(東京都千代田区)で、設立記念の国際シンポジウムを開催する。詳細は学会ホームページに掲載されている。

病院経営の収支改善、診療報酬減額に拍車 厚労省調査 indexへ

 厚生労働省は2日、病院や診療所の経営状況を示す最新の「医療経済実態調査」の結果をまとめた。前回の03年調査と比べると、病院は増収で、個人で開業する診療所は減収だったものの増益だった。政府は、06年度の診療報酬改定について、医療費抑制の観点から減額の方針を固めているが、調査結果を受けて、引き下げの議論に拍車がかかりそうだ。
 調査は2年に1回で、全国の医療機関や薬局から約6700カ所を抽出し、今年6月の1カ月分の収支状況を調査。約3700カ所から回答があった。
 04年度の診療報酬改定では治療行為などの「本体部分」の改定率は据え置かれたものの、国公私立を合わせた病院(ベッド数20以上)の1カ月の医業収入は、平均で前回比8.3%増の約2億6580万円。人件費や器具代、減価償却費などを引いた収支は約617万円の赤字だったが、赤字幅は同11.1%改善した。
 1人当たりの平均月収(税込み)は、病院長が同4.4%増の約196万円、勤務医が同5.2%増の約96万3000円、看護師は同0.3%減の約34万6000円だった。
 個人で開業する診療所(ベッド数19以下)の医業収入は同2.9%減の約657万円だったが、福利厚生費や医薬品費などを削減した効果で、収支は約229万円の黒字で同0.9%増えた。この中に開業医の収入も含まれている。
 診療科別では、個人が開業する診療所で、小児科の医業収入が同14.0%増の約614万円、収支は約267万円の黒字で同44.2%の大幅増。前回改定で小児医療に手厚い報酬をつけた効果が出たとみられる。
 一方、産婦人科は収支が約141万円の黒字だったが、黒字幅は同48.6%の大幅減。医師らの人件費が同30.0%増の約251万円に膨らんだ影響が大きかった。
 また、歯科では医業収入は同4.5%減の約403万円だったが、光熱水費や福利厚生の経費、医療事務委託費などを削減し、黒字幅が同11.0%増の約133万円となった。薬局は、医薬分業が進んでいる影響で、収入が同28.3%増の約1272万円、収支差も7.6%増の約72万円となった。
 同省では今後、この調査結果をもとに06年度診療報酬改定の見直し作業を本格化させるが、収支状況が改善されたことから、政府内の診療報酬引き下げを求める声が高まるのは必至。日本医師会は引き上げを求めており、今後、攻防が激しくなりそうだ。

抗がん剤、延命効果の確認義務付け 厚労省ガイドライン indexへ

 抗がん剤の有効性や開発効率を高めるために、厚生労働省は2日までに、臨床試験では延命効果の有無を確認することを義務づけるように、ガイドラインを改定した。患者の利益を最優先した新薬開発につなげるための方向転換だ。
 日本では従来、人体への安全性を確かめる第1段階の試験と、がんの縮小効果を確認する第2段階の試験で承認されてきたが、中には、縮小効果はあっても延命につながらなかったり、副作用の方が大きかったりする薬もある。今後は、原則として申請時に第3段階の試験で延命効果を中心とした評価成績を提出することを義務づける。海外のデータでも構わない。
 運用は来年4月から。まずは、非小細胞肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、など、原則的に患者数の多いがんなどから対象とする。
 今回の改定の背景には、日本と、米国と欧州連合(EU)との医薬品の審査体制の違いから、海外で検証されている薬の国内導入が遅れがちな現状がある。米国やEUの規制当局の評価方法とレベルを合わせることで、延命効果により科学的な根拠のある国内外の薬をがん患者に届けやすくなり、厚労省は、がん患者の利益を高めるとともに、国際競争力のある新薬開発にもつなげたいと考えている。

がん患者の「隠れ負担」は年間59万円 厚労省調査 indexへ

 がん患者が、治療に関連して払う年間の費用は約129万円で、その半分近くが医療費以外の「隠れ負担」であることが、厚生労働省の研究班(班長=濃沼信夫・東北大教授)の調査でわかった。がん患者が増える一方で、治療費の負担は重くなるばかり。調査結果は保険制度や自己負担の今後のあり方を検討する材料となりそうだ。
 国立がんセンターや大学病院、地域の拠点病院など全国20カ所で、患者約4000人から、領収書などに基づいて回答を記入してもらった。
 1人当たりの支出総額は平均で129万1000円。このうち病院で払う医療費や交通費など、公的保険がカバーする費用で、いったん患者が自己負担する分は69万7000円だった。これ以外に、健康食品や民間療法などに20万8000円、抗がん剤の副作用による抜け毛で使うカツラなどの装具に12万6000円、民間の医療保険料が26万円で、病院窓口で払う以外に計59万4000円の負担があった。
 一方、医療費が一定額を超えた場合に申請で還付される高額療養費制度の払戻金が25万5000円、その他の公的制度による減免や払い戻し7万8000円、民間保険の給付金が92万7000円と、民間保険が患者世帯の家計を支える実態が浮かんだ。
 ただ、民間保険に入っていない患者が20%おり、入っていても実際に給付を受けている人は半数。通院で抗がん剤治療を受ける人も多い中、入院で給付される保険に入っているなど、条件が実情にあっていない人もいるとみられる。
 濃沼教授は「今でも負担は重く、払える人と払えない人の格差が広がっている。民間保険が不可欠な実態だが、命にかかわる病気で公的保険の役割をどう位置付けるか考える必要がある」と話す。

麻酔の量10倍、1歳児死亡 千葉・松戸市立病院 indexへ

 千葉県松戸市上本郷の同市立病院(藤塚光慶院長)が今月12日に同市内の男児(1)の心臓手術をした際、予定の10倍の量の麻酔剤を投与したため意識障害などが起き、手術から11日後に男児が死亡したと28日に発表した。
 同病院によると、手術は、心臓外科医3人と麻酔科の女性医師(29)、看護師ら計11人があたった。麻酔科医が「プロポフォール」という麻酔剤を投与する機械の投与速度のダイヤルを誤って設定。手術中に7回設定したが、2回目以降はすべて誤った。その結果、3時間弱で、約244ミリグラムの麻酔剤を投与する想定だったところ、約10倍の約2366ミリグラムを投与してしまった。
 過量投与は2時間40分間続き、ほぼ手術が終了する段階で誤りに気づいた。麻酔科医は「数字のけたを読み違えた」と話しているという。
 男児は手術後、低血圧状態と意識障害になった。2日後には脳浮腫になり、意識が戻らないまま23日午後に死亡。病院は手術後、両親にミスを認めていた。麻酔科医は最近の2年半に105例の心臓手術を手がけるなど麻酔科医として経験豊富だったという。

レセプトを電子提供 効率的に医療費審査 支払い基金方針 indexへ

 診療報酬明細書(レセプト)の電子化が実現する見通しになった。レセプトの審査をしている社会保険診療報酬支払基金は、医療費を支払う健康保健組合などの保険者にこれまで紙で渡していたレセプト情報を、フロッピディスクなどの電子媒体でも提供できるようにする方針を決めた。06年4月から実施する。電子化で、健保組合などの保険者は医療費の誤った請求や無駄遣いいのチェックがしやすくなるほか、加入者の病気の傾向を分析して保健指導に役立てるなどの取り組みも可能になる。
 医療の効率化につながるため、厚生労働省も医療制度改革試案に推進の方針を盛り込んでおり、電子データ提供を認める通知を出す方針だ。
 支払基金は、サラリーマンらの加入する健康保険組合や政府管掌健康保険のレセプトの審査をしている。全国約22万の医療機関から送られるレセプトを毎月審査し、企業の健保組合などに医療費を請求し、病院への支払いも代行している。年間に約7億9千万件のレセプトを審査し、11兆円の支払いをしている。
 レセプトには、患者の病名や検査、投薬など治療内容が記載されている。病院から支払基金に対しては現在、印字や手書きした紙レセプトか、フロッピーディスクなどに記録した電子レセプトで保険請求ができる。しかし、支払基金から保険者への請求は紙レセプトに限られていた。
 レセプトの枚数は膨大な数にのぼるため、健保組合などにとっては、記載内容の独自点検や加入者の医療費動向などのデータを分析するのが難しいとの不満があった。電子化により、今後、健保組合などで独自の取り組みが広がる可能性がある。
一方、国民健康保険のレセプトは各都道府県の国民健康保険団体連合会が審査しているが、厚労省は今後、国保のレセプトについても支払基金での審査を可能にすることを検討している。
 医療分野はIT化が遅れている。同省は病院が支払基金に出す電子レセプトを06年度までに「7割以上」に引き上げる目標をたてているが、2割程度にとどまっている。
 また、電子化が進んでも、独自にデータ分析して活用することのできるのは大企業の健保組合などに限られるとの指摘もあり、保険者側の態勢整備も課題となりそうだ。

がんセンターでHIV感染の男性、国と製薬会社提訴 indexへ

 国立がんセンター中央病院(東京)に86年に入院し、エイズウイルス(HIV)に感染した山本義則さん(29)が27日、「感染は病院が投与した非加熱血液製剤が原因」として、国と製薬会社5社に損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。
 薬害エイズ被害者の救済は「提訴→和解手続き」の流れで進む。この枠組みで救済されるには、非加熱血液製剤を投与されたことの証明が必要となる。だが、山本さんらによると、病院側は入院中のHIV感染を認める一方、非加熱製剤の投与は「確認できていない」と説明している。
 このため、C型肝炎ウイルス(HCV)にも感染しているという山本さんは「別の病院での遺伝子解析の結果、米国由来の複数のHCVに感染しており、複数の人の血液でつくられる非加熱製剤が投与された可能性が高い」などと主張。「非加熱製剤からの感染と考えるべきだ」と訴えている。

駿河台日大病院からカルテ押収 入院患者死亡で警視庁 indexへ

 東京都千代田区の駿河台日大病院で今月、入院患者の男性(58)が死亡した問題で、警視庁は27日午後、業務上過失致死などの疑いで同病院を家宅捜索し、男性のカルテなどを押収した。
 捜査1課の調べでは、男性は入院中の今月3日、看護師が酸素ボンベのチューブの接続の仕方を誤り、呼吸できない状態になり、約8時間後に容体が急変し死亡したとされる。

杏林大で出産直後に母子死亡 遺族は「医療ミス」と提訴 indexへ

 杏林大学病院(東京都三鷹市)で03年、出産直後の女性と長女がともに死亡する事故が起きていたことが分かった。女性の両親と夫は26日、「医療ミスが原因」として病院を運営する学校法人に計約1億2300万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。警視庁は業務上過失致死の疑いで捜査している。
 同病院は高度な先進医療を提供できる特定機能病院に指定されている。原告側は「出産時、母子ともに死亡するのは極めて異例。高度医療を行う病院でなぜこんなことが起きたのか、裁判で明らかにしたい」と話す。
 死亡したのは、東京都稲城市の主婦坂井みな子さん(当時32)と長女。
 訴えなどによると、出産に備えて入院中の03年11月7日、坂井さんが発熱。翌日、長女が生まれたが、まもなく死亡。坂井さんも出産の約2時間半後に死亡した。
 家族は「帝王切開に切り替えなかったミスが原因」と訴える。病院側は「現時点では明らかな医療ミスではない」と話している。

酸素管の接続誤る、患者死亡 東京・駿河台日大病院 indexへ

 駿河台日本大学病院(東京都千代田区)は24日、脳出血で入院中の男性患者(58)の呼吸回路に酸素ボンベからのチューブが誤って接続されて容体が急変、患者が死亡した医療事故があった、と発表した。発生から2週間余たって病院に匿名のメールが届くまで担当部局から報告はなかったという。病院はミスを認めて内部調査を始めるとともに、警視庁に通報した。
 病院の説明によると、この患者は9月28日に入院し、深い昏睡(こんすい)状態が続いた。10月3日夕、CT検査のためにストレッチャーで病室から検査室に移す際、女性看護師が酸素ボンベからのチューブを誤って直接、患者の気管から出ていたチューブと接続。患者は息を吐くことが出来ない状態に陥って容体が急変し、別の看護師がチューブを付け替えたが約8時間後に死亡した。酸素チューブは本来、呼吸が出来るようにT字管と呼ばれる器具に接続しなければならない。
 同病院には副院長が委員長を務める医療安全管理委員会があり、事故などの報告マニュアルを作ってある。だが、今回は看護師の部局や担当医師から報告はなく、20日にメールで初めて発覚。翌21日に神田署に届けた。病院側は遺族におわびしたが、遺体はすでに火葬されているという。

3500万円支払いで和解 長崎大、術後右足を切断 indexへ

 長崎市の長崎大学付属病院(江口勝美院長)で、肋骨(ろっこつ)の矯正手術をした長崎市内の男性(25)が、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に感染し右足を切断することになったのは術後の対応が遅れたためだとして、国に約6300万円の損害賠償を求めていた訴訟で、長崎地裁(田川直之裁判長)で25日、和解が成立した。独立行政法人となった大学が、解決金として約3500万円を支払うことで合意した。
 訴状などによると、男性は98年8月、陥没した胸部を矯正する切開手術を受けた。術後にMRSAに感染したのが原因で呼吸困難となり、肺機能が低下。人工肺を右足大腿(だい・たい)部の動脈につないだが、動脈に血栓ができ、右足を切断した。
 カルテを基にした裁判所の鑑定では、MRSA感染や血栓に気づくのが遅れるなど、術後管理に問題があったと指摘していた。

50代以上の8%は呼吸器病 長崎大疫学調査 indexへ

 空気のきれいな九州の地域でも、治療を要する呼吸器病患者が50代以上の住民の8%を超すことがわかった。肺機能検査できちんと確認した疫学調査は日本では初めてで、世界でも数件という。千住秀明・長崎大医学部保健学科教授がデンマークで開かれた欧州呼吸器学会で発表した。
 千住さんらは長崎県田平町(10月から平戸市)の50代から70代の住民に、せきや息切れの有無をアンケートした。回答者1568人中418人が要検査対象となり、190人が実際に受診した。このうち肺気腫と慢性気管支炎を合わせた慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)患者は59人いて、誰もこの病気の治療は受けていなかった。患者は同町の50〜70代の人口の8.3%にのぼると推定できた。
 また、COPDと診断された率は、喫煙者で12.6%、非喫煙者で1.8%あり、喫煙者の危険性が高かった。
 「日本全体でもこれ以上の率のCOPD患者が治療されずにいる可能性がある。たばこ対策が重要で、各国の研究者からは今後の追跡調査を要望された」と、千住さんは話している。


病院側の賠償命令が確定 誤解させ、遺伝病の子出産 indexへ

 香川県観音寺市で起きた交通事故で病院に搬送された後に死亡した女性=当時(70)=の遺族が医療ミスが原因だとして、病院側に約6500万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(堀籠幸男(ほりごめ・ゆきお)裁判長)は20日までに、病院側の上告を退ける決定をした。約5500万円の支払いを命じた2審高松高裁判決が確定した。
 2審判決によると、事故は1998年に観音寺市で発生。ミニバイクで車と衝突した女性は市内の病院に運ばれ、入院中頭痛が続いたが、病院は容体が悪化するまでCT検査などをせず、女性は事故の翌月死亡した。
 2審判決は「医師が必要な措置を怠った」として原告敗訴の1審判決を変更。事故の相手方と病院側に賠償を命じ、病院側だけが上告した。

病院側の賠償命令が確定 誤解させ、遺伝病の子出産 indexへ

 長男と同じ病気の三男を出産した東京都の夫婦が「医師が遺伝のリスクについて誤った説明をした」として病院側に約1億6400万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(島田仁郎(しまだ・にろう)裁判長)は20日、双方の上告を退ける決定をした。
 三男の介護費用を含む計約4800万円の支払いを命じた2審東京高裁判決が確定した。
 2審判決などによると、夫婦の長男は運動障害などを伴う先天性の病気で、心身障害児総合医療療育センター(東京都板橋区)に通院していた。医師は病気の遺伝について「兄弟に出ることはまずない」と説明。二男は健常児だったが、その後生まれた三男は同じ病気と診断された。
 1審東京地裁判決は「不正確な説明で夫婦の判断に影響を与えた」として約1700万円の支払いを命令。2審判決は1審が認めなかった介護費用の賠償義務も認めた。

入院患者間違え投薬 隣のベッドに1週間 下関の国立医療センター indexへ

 山口県下関市の独立行政法人国立病院機構関門医療センターで、泌尿器科に入院していた男性(60)に処方した薬を、看護師が誤って隣のベッドの耳鼻咽喉(いんこう)科の入院患者に渡し、1週間のませ続けていたことが20日、分かった。
 間違って渡したのは排尿を促す薬など2種類。隣の患者は、自身の症状とは全く関係ない薬をのまされたが、容体に特段の変化はなかったという。ミスがあったことはすぐには患者側に伝わっておらず、佐柳進(さなぎ・すすむ)病院長は「渡し間違いも、連絡の遅れも病院側のミスで、大変申し訳ない」と陳謝した。
 男性は8月17日から23日まで7日間、尿管結石治療のためセンターに入院。この間全く薬を渡されなかったが、退院時の支払い請求には薬の代金が含まれていた。
 その後9月5日になって、知人を見舞うため同センターを訪問した際、顔見知りの看護師から「あなたに出すべき薬を、同室の患者に間違えて渡していた」と初めてミスを知らされた。
 佐柳院長は男性の退院時にミスを把握していたという。「すぐ知らせるよう指示したが、看護師サイドで後日知らせればいいと勝手に判断し、伝わらなかったようだ」と説明している。
 男性は「センターからは納得できる説明がない」と話している。

点滴チューブ外れ患者死亡 当時の看護師を書類送検 indexへ

 横浜旭中央総合病院(横浜市旭区)で2003年、入院していた男性の点滴チューブが外れて男性が死亡する医療事故があり、神奈川県警旭署は20日までに、当時の担当女性看護師(27)を業務上過失致死容疑で書類送検した。
 調べでは、看護師は男性患者の太ももに点滴の針を刺したが、その後、点滴のカテーテルの継ぎ目が外れたことに気付かず、03年6月16日に失血死させた疑い。
 病院側は救命措置をしたが、男性は死亡した。男性は同月9日、腎不全で入院、透析と薬剤点滴の治療を受けていたという。
 同年7月、病院と遺族の間で示談が成立。看護師は今年3月、退職した。病院は「このようなことが二度と起こらないよう指導徹底をしたい」としている。

副医長ら2人を書類送検 神戸市立病院の挿管ミス indexへ

 神戸市の市立中央市民病院で昨年12月、胃の腫瘍(しゅよう)摘出手術の術後処置を受けていた同市垂水区の女性=当時(56)=が死亡した医療事故で、神戸水上署は19日、業務上過失致死の疑いで同病院の外科副医長(38)と男性医師(27)=いずれも神戸市中央区=を書類送検した。
 調べでは、副医長らは昨年11月30日午前から、手術を受けた女性の首の右側から心臓近くの大静脈に達するカテーテルを挿入し栄養液などの投与を開始。カテーテルの先端が血管の外に飛び出していたため、栄養液などが胸腔(きょうくう)内に漏れて肺などを圧迫、呼吸障害で12月1日午前に死亡させた疑い。
 同病院は12月3日に医療ミスがあったことを公表した。

和歌山県を医療ミスで提訴 放射線過剰照射で indexへ

 和歌山県立医大病院で放射線の過剰照射を受け死亡した男性の遺族が19日までに、和歌山県に慰謝料や損害賠償など約5170万円を求め、和歌山地裁に提訴した。
 訴えたのは、2004年5月に死亡した和歌山市の男性=当時(70)=の遺族4人。
 訴えによると、男性は03年6月に咽頭(いんとう)がんと診断され、放射線治療として2.5グレイずつ4回の照射を受けるはずだったが、担当者が同年9月19、22日にそれぞれ4倍にあたる10グレイを照射。男性は1度は退院したが、容体が悪化し04年5月に咽頭出血で死亡した。
 和歌山県は同年8月、放射線の過剰照射で患者が死亡した可能性が高いとする結果を公表した。
 同病院から医療事故の届け出を受け、和歌山西署は業務上過失致死の疑いで捜査している。
 同病院病院課は「対応を検討中。コメントは差し控えたい」としている。

後発医薬品の名称統一、取り違え防止狙う indexへ

 特許が切れた新薬と同じ成分でつくる「後発医薬品」(ジェネリック医薬品)について、厚生労働省は、これまでメーカー各社が自由に決めていた名称を統一することを決め、都道府県に通知した。厚労省は薬の取り違え防止を理由に挙げているが、名前の紛らわしさがなくなれば、医師が処方箋(せん)を書く時に後発品を指定しやすくもなる。メーカー側は「普及の後押しになれば」と期待している。
 現在、使用が認められている後発医薬品は数千品目といわれる。最近は毎年200〜400品目ずつ増えている。効き目が優れ、「ヒット商品」となった新薬の場合は数十品目もの後発品が出ることも珍しくない。ブランド名や一般名と似た名称が多いが、中には似ても似つかない名前もあり、取り違えを誘発しかねないとの指摘が出ていた。
 例えば、高脂血症用剤の「プラバスタチン」(一般名)の場合、新薬は「メバロチン」がブランド名。後発品は「プラバチン」など一般名に似たものから、「メバスロリン」などブランド名に近いものまで、約50の名称がある。
 新たな方針では、後発品の販売名を、「一般名(正式名称)+薬剤の形+含量+会社名(屋号)」に統一する。単一の有効成分からなる薬が対象で、すでに使われている名称の変更は混乱を招くため行わない。
 後発医薬品は、新薬の特許が切れた後に、同じ成分と効能で売り出される。臨床試験などを省略して認可されるため開発期間が短縮されてコストも安くつき、価格は新薬の7割以下になる。
 欧米では、数量ベースで市場の半分近くを後発品が占めるが、日本では1割程度と言われる。普及が進まない理由の一つとして、名称が紛らわしく、医師が処方箋を書く時に指定しづらいと指摘されていた。

がん患者77人に「混合診療」 神奈川県立がんセンター  indexへ

 神奈川県立がんセンター(横浜市旭区)が公的な健康保険が利かない治療法を施した際に診察料などを保険請求していたことがわかった。一連の診療行為の中で保険が利く診療(保険診療)と利かない診療(保険外診療)を併用する「混合診療」は厚生労働省が原則として禁止している。同センターは17日、確認されただけで対象患者が77人に上ることを神奈川社会保険事務局に報告した。同事務局はカルテなどから事実と確認できれば、保険から払われた医療費の返還を求める。
 この治療は、がん患者の血液からリンパ球を取り出して培養し、点滴で患者の体内に戻す活性化自己リンパ球移入療法。
 同センターによると、施設内倫理委員会で進行胃がん患者への治療について審査、承認した96年4月以降だけで他のがんの患者を含めて77人に実施していた。
 この治療には公的保険が利かないため、本来保険が利く診察や検査の費用も保険請求できず、病院が負担するか患者に払ってもらうしかない。しかし、同センターでは再診料や処方料を保険請求していた。請求額は確認中だ。
 同センター臨床研究所でリンパ球の培養に携わり、今年3月に退職した元研究員によると、治療を始めたのは87年。複数の診療科で実施し、患者の総計は約130人になるという。
 はじめは培養に使う薬品が研究用として国内の製薬2社から無償提供されていたが、一部のがん治療薬として承認された後は供給が途絶えた。研究費で米国から輸入するようになったが、希望者が増えて賄いきれなくなり、01年3月以降、12人の患者に薬品や培養液などの費用負担を求めた。
 総額は約1059万円で、元研究員の個人名義の銀行口座を経由したり、直接支払ったりして薬品卸会社に代金を送った。
 同センターの西連寺意勲(さいれんじ・もとのり)病院長は「患者の自己負担分が病院の収入にならなければ、混合診療に当たらないと考えていた」と話している。

 〈混合診療〉 有効性や安全性が未確認の治療によって患者が不当に高い費用を請求されることを防ぐために原則として禁止されている。特定承認保険医療機関(131施設)が有効性や安全性などを確認する目的で行う「高度先進医療」(現在109種類)や差額ベッドなどに限り、保険診療と保険外診療の併用が例外的に認められている。

酸素不足で人工呼吸器の患者死亡 長野赤十字上山田病院  indexへ

 長野県千曲市の長野赤十字上山田病院(西沢啓治院長)は17日、人工呼吸器の酸素不足が原因で入院患者1人が死亡した、と発表した。病院によると、今月13日午後5時半ごろ、重症の肺炎で入院していた患者の人工呼吸器の警報が鳴り、看護師が駆けつけたところ、血圧が下がって低酸素血症の状態になっていた。心臓マッサージなどをしたが、患者は約1時間後に急性呼吸不全で死亡した。
 その後調査したところ、屋外の液体酸素のタンク(満タンで2200キロ)の残量が20キロになっており、患者に酸素が十分供給されていないことがわかった。タンクは5日に1回、業者が補給することになっていたが、9月29日を最後に、補給されていなかった。配送業者と納入業者の間に伝票の連絡ミスがあり、病院側も確認作業が不十分だったという。
 事故当時、病院ではほかに26人が酸素療法を受けており、うち6人が14日から17日にかけて死亡している。主治医は「事故が起きた時点で、酸素療法を受けている全員の血圧などを確認したが、影響はなかった」と話しているという。病院側は第三者による調査委員会を作って因果関係を調べる。

臓器移植意思表示カード、死後の連絡1千件超す  indexへ

 臓器移植の意思表示カードやシールを持っていて病気やけがなどで亡くなった人が、97年の臓器移植法施行後、1000人を超えたことが17日、日本臓器移植ネットワークの調べでわかった。うち600人余りが脳死での臓器提供希望者だったが、実際に脳死判定が行われたのは40例にとどまっている。
 同ネットが医療機関や警察、患者の遺族から任意で連絡があった件数を集計し、9月末に1001件に達した。
 意思の内訳は「脳死で臓器提供する」という記載をしていた人が626人。「臓器提供しない」は1人。「心臓停止後に臓器提供する」との人が68人。不明194人、記載不備112人だった。
 626人のうち、脳死で臓器提供できる大学病院などの医療機関で亡くなったのは308人。うち、心臓が止まる前に連絡があったのは183人にとどまる。実際に脳死判定された40人以外の患者143人について、脳死判定しなかった理由を尋ねたところ、鼓膜に穴があいていて判定に必要な医学的条件を満たさないなど「脳死と診断できなかった」が92人。「家族の承諾を得られなかった」が34人などだった。
 カードの配布は累計1億枚を超したとみられるが、内閣府の昨年の世論調査では所持率は10.5%。脳死を人の死とみなすことへの異論もある。
 同ネットは「患者の意思が臓器提供に結びついていないことも多い。提供したい人にはしてもらえるようなシステム構築を望む」と話している。

酸素不足で人工呼吸器の患者死亡 長野赤十字上山田病院  indexへ

 長野県千曲市の長野赤十字上山田病院(西沢啓治院長)は17日、人工呼吸器の酸素不足が原因で入院患者1人が死亡した、と発表した。
 病院によると、今月13日午後5時半ごろ、重症の肺炎で入院していた患者の人工呼吸器の警報が鳴り、看護師が駆けつけたところ、血圧が下がって低酸素血症の状態になっていた。心臓マッサージなどをしたが、患者は約1時間後に急性呼吸不全で死亡した。
 その後調査したところ、屋外の液体酸素のタンク(満タンで2200キロ)の残量が20キロになっており、患者に酸素が十分供給されていないことがわかった。タンクは5日に1回、業者が補給することになっていたが、9月29日を最後に、補給されていなかった。配送業者と納入業者の間に伝票の連絡ミスがあり、病院側も確認作業が不十分だったという。
 事故当時、病院ではほかに26人が酸素療法を受けており、うち6人が14日から17日にかけて死亡している。主治医は「事故が起きた時点で、酸素療法を受けている全員の血圧などを確認したが、影響はなかった」と話しているという。病院側は第三者による調査委員会を作って因果関係を調べる。

人工呼吸器はずれ、一時心肺停止 東北大病院で医療事故  indexへ

 東北大病院(仙台市青葉区)は15日、入院中の男性患者の人工呼吸器の接続部分が外れ、一時心肺停止になる医療事故があったと発表した。患者は蘇生措置を取った後、集中治療室で治療をしているが、一命をとりとめたという。
 同病院によると、医療事故に遭ったのは、宮城県内の80代の男性患者。7月上旬、転落事故で脊髄(せきずい)を損傷して呼吸不全に陥り、緊急入院した。しかし、今月13日夕方、人工呼吸器が何らかの原因で約25分間外れたという。発見後すぐに心肺の蘇生措置を取ったが、約10分間、心肺が止まっていたという。
 同病院は「別の救急の外来患者の対処に追われ、呼吸器が外れたことを知らせるアラームに気づかなかった」と説明している。

医師を書類送検/器具を誤挿入で患者死亡  indexへ

 医療器具を患者の体内に誤挿入して死亡させたとして、亘理署は13日、山元町高瀬の独立行政法人国立病院機構宮城病院の神経内科医(34)を業務上過失致死の疑いで仙台地検に書類送検した。
 調べでは、死亡したのは同病院の長期医療施設に入院していた仙台市太白区の男性患者(当時83)。
 医師は04年8月12日、患者の胃に直接、栄養食を注入するための医療器具「胃ろうボタン」(カテーテル)を交換した際、器具を十分挿入しなかった。正しく交換したか確認するのも怠ったため、注入した栄養食が腹膜内に入り、患者は腹膜炎を発病、同月14日に死亡させた疑い。
 同署によると、この器具は通常4カ月に1度交換し、体内に挿入後は回すなどの確認作業を行うという。医師は03年4月から同病院に勤務。事故当時まで器具の交換は4回経験していたという。

日赤に2770万円支払い命令 函館地裁  indexへ

日赤医療過誤訴訟  「止血措置せず」認定
 函館市の函館赤十字病院で動脈瘤(りゅう)の手術を受けた結果、意識障害などの後遺症が残ったとして、福岡県内に住む女性(56)と夫(56)が日本赤十字社(東京都)を相手取り約9千万円の損害賠償を求めた裁判の判決が13日、函館地裁であった。
 大久保正道裁判長は「医師が手術中に動脈瘤の破裂の危険性を十分に認識せず、止血措置をとらずに手術を行ったことは注意義務を怠った過失がある」とし、訴えの一部を認め、約2770万円の支払いを命じた。
 判決などによると、女性は渡島支庁上磯町に住んでいた00年1月、くも膜下出血と診断され、同じ月に函館赤十字病院で手術を受けた。この際、動脈瘤(りゅう)が破裂し、止血までに出血量約3200リットルにのぼり、脳全体に後遺症が残り、意識障害や四肢まひの後遺症を負った。

元准看護師に禁固8カ月の判決 医療事故で大阪高裁  indexへ

 京都府宇治市の宇治川病院で01年、当時6歳の女児が誤った薬剤を注射されて寝たきりになった医療事故で、業務上過失傷害罪に問われた元同病院准看護師南千代子被告(64)の控訴審判決が13日、大阪高裁であった。白井万久裁判長は「罪を争わない姿勢に転じた」などとして、禁固10カ月とした一審の京都地裁判決を破棄し、禁固8カ月(求刑禁固1年6カ月)を言い渡した。
 この事件では、誤注射後に適切な処置をしなかったとして、同病院の医師だった堀道輝被告(72)も業務上過失傷害罪に問われ、医師としては異例の禁固1年の実刑判決を受け、同高裁に控訴している。
 判決によると、南被告は01年1月15日、じんましんの治療に訪れた同府城陽市の会社員加藤嘉津緒さん(47)の次女美嘉さん(11)に、塩化カルシウム液と間違えて塩化カリウム液を注射し、手足が動かせなくなるなどの重い障害を負わせた。
 白井裁判長は、一審判決後に病院、堀被告側の保険から計2億円、南被告から100万円が女児側に支払われることになった点も考慮し、「執行猶予は相当ではないが、一審の刑は重すぎる」と述べた。

50代以上の8%は呼吸器病 長崎大疫学調査  indexへ

 空気のきれいな九州の地域でも、治療を要する呼吸器病患者が50代以上の住民の8%を超すことがわかった。肺機能検査できちんと確認した疫学調査は日本では初めてで、世界でも数件という。千住秀明・長崎大医学部保健学科教授がデンマークで開かれた欧州呼吸器学会で発表した。
 千住さんらは長崎県北松浦郡田平町(10月から平戸市)の50代から70代の住民に、咳(せき)や息切れの有無をアンケートした。回答者1568人中418人が要検査対象となり、190人が実際に受診した。このうち肺気腫と慢性気管支炎を合わせた慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)患者は59人いて、だれもこの病気の治療は受けていなかった。患者は同町の50〜70代の人口の8.3%にのぼると推定できた。
 また、COPDと診断された率は、喫煙者で12.6%、非喫煙者で1.8%あり、喫煙者の危険性が高かった。
 「日本全体でもこれ以上の率のCOPD患者が治療されずにいる可能性がある。たばこ対策が重要で、各国の研究者からは今後の追跡調査を要望された」と、千住さんは話している。

片頭痛、中学生の5% 名古屋市立大調査  indexへ

 中学生の20人に1人程度が、頭がずきずきと痛む「片頭痛」を患っていることをうかがわせる初めての大規模な調査結果を、名古屋市立大小児科グループがまとめた。大人よりやや少なめだが、周囲の理解不足から「仮病」と誤解されることもある。的確な診断と治療が行われなければ学業にも支障が出ると、専門家は指摘している。11日、京都市で開かれた国際頭痛学会で発表した。
 愛知県春日井市の中学生6869人(13〜15歳)を対象にアンケートし、6472人(男子3346人、女子3126人)から回答を得た。
 頭痛発作が1〜72時間続く、ずきずきと痛む、吐き気や光過敏があるなど、片頭痛の国際診断基準に当てはまったのは、男子110人(3.3%)、女子203人(6.5%)で、全体の4.8%だった。
 頭痛の継続時間は、過半数が1〜4時間未満。吐き気やめまい、耳鳴りなどを伴うことが多く、起こりやすいのは「睡眠不足のとき」や「ストレスがたまったとき」との答えが目立った。
 大人の片頭痛持ちは男性3.6%、女性13%で、全体の8・4%との報告がある。今回の結果はこれよりもやや低率だが、調査を担当した安藤直樹医師は「日本人は痛みを我慢させがちな上、子どもの頭痛があまり知られていないため、『仮病』だと思われることもある。それがストレスになり、学校生活に支障が出る可能性もある」と指摘する。
 藤田光江・筑波学園病院小児科診療部長は「子どもの頭痛は大人より軽いことが多く、痛みが始まって鎮痛剤をすぐ飲めば抑えられる。家族に片頭痛を持つ人がいる場合が7割を占めるので、心当たりがある場合は受診を」という。

日本国内6000人/100万人あたり47人 脳外科医の数「世界一」  indexへ

 100万人当たりの脳神経外科医を国際比較すると、日本が47人でずば抜けて多いことが、東京慈恵会医科大の大井静雄教授(小児脳神経外科)らの調査で分かった。6年前の前回調査の38人からさらに増えており、「世界一多いとみて、まず間違いない」という。脳神経外科医1人当たりの症例数が限られ、専門医としての質をどう保つのか、といった問題点も指摘されている。
 調査は欧米とアジアの主要な15の国・地域が対象で、実数では日本が約6000人で前回調査に続き、最も多かった。他国は米国が約4500人、イタリアが約1100人、インドが約950人などとなっている。
 人口100万比でも、韓国が前回の26人から38人に急増させて日本に迫ったものの、欧米諸国は10人台、韓国・台湾を除くアジア諸国は10人以下で、日本との差はむしろ広がった。欧米では育成数に枠を設けている国が多いのに対して、日本にはこうした枠がなく、希望者が自由になれるのが最大の理由とみられる。
 しかし、専門外科として「腕」への期待が高い分野にもかかわらず、1人の専門医が経験できる手術数は限られる。現場の悩みも深く、このほど日本脳神経外科学会総会を主宰した河瀬斌(たけし)慶応大教授は「最低限の一般治療技術を身につけた上で、より高度な領域の専門医をどう育てるか考えていく必要がある」という。

医薬品卸、大手は4グループに再編 indexへ

 医薬品卸の大手が、相次ぐ企業合併・買収(M&A)で4グループに再編された。ドラッグストアの増加に対応するため、化粧品卸など異業種との経営統合も進んでおり、規模のメリットをめざした医薬品卸業界の動きがさらに加速する可能性もある。
 クラヤ三星堂など全国の卸10社を傘下に持つ最大手、メディセオホールディングスが1日、日用雑貨・化粧品卸大手のパルタックと経営統合。雑貨を含め幅広く扱うドラッグストアとの関係強化が狙いで、売上高は医薬品卸として初めて2兆円を超える見込みだ。
 2位のスズケンは塩野義製薬系の卸を合併するなどして売上高をこの5年で約1・5倍に増やした。3位のアルフレッサホールディングスも広島市の中堅卸を完全子会社化した。スズケンは10年度に、アルフレッサは07年度に売上高2兆円の達成をめざす。4位の東邦薬品も今年3月、全国の地域卸6社と業務提携している。
 薬価引き下げを受け、納入先の病院や薬局からの値引き要求は強まっている。また、研究開発費の確保に懸命な製薬業界側はリベートなど卸への支援を抑えている。このため零細の卸企業の廃業も相次ぎ、日本医薬品卸業連合会によると、05年3月末の加盟社は142社と95年3月末の約半分まで減っている。

がん増殖止まり次々自滅 鍵握るタンパク質発見 米研究チーム indexへ

がん細胞の増殖を止める鍵になるタンパク質を、米ハーバード大の中谷善洋教授(分子生物学)らの研究チームが発見した。がん細胞内で、このたんぽく質「p600」の合成を妨げたところ、がん細胞は増殖を止め、次々と自滅したという。子宮がんや骨肉腫など、様々ながん細胞で効果を確認しており、新しい抗がん剤の開発につながると専門家は期待している。今週発行の米科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載される。
体内では、役目を終えたり、異常が見つかったりした細胞が増殖を止めて自ら死に、新しい細胞が生まれることで新陳代謝が繰り返されている。この細胞の自殺(アポトーシス)がうまく働かなくなると、細胞は無秩序に増殖し、がんになる。中谷教授らが発見したP600は、アポトーシスに深くかかわっているとみられる。
同教授によると、培養したがん細胞内のP600は、正常細胞と比べて異常に増えており、「自殺機能」が働かなくなっていた。そこで、p600の合成を妨げる特殊な手法で培養細胞中のp600の量を減らすと、がん細胞は次々と死んでいった。正常細胞には影響がなかったと、という。
子宮頸がん、骨肉腫、乳がん、直腸がんの細胞で、がん細胞は10%以下になった。胃、小腸、大腸、肺、卵巣、前立腺の各がん細胞では、同様のp600の異常増加が起きていることか分かった。中谷教授は「ほとんどすべてのがんで効果が期待できる」とみている。
ただ、人体への臨床応用には、P600に結びついて過剰な働きを抑え、しかも毒性のない物質の開発が必要になる。その後、健康人での安全性の確認、患者への治験などの段階を踏むことになる。
従来の抗がん剤の多くは、正常細胞のDNAにも影響を及ぼすため、副作用が強い。効果も限定され、薬だけで治癒可能なのは、血液やリンパ球などごく一部の特殊ながんだけで、より一般的な胃がんなど固形のがんを治癒する薬は、ほとんどないのが現状だ。

西ナイル熱、国内初の感染例 川崎の男性、米国で感染か indexへ

厚生労働省は3日、米国から帰国した川崎市に住む30歳代の会社員の男性が西ナイル熱を発症したと発表した。症状は軽症で、すでに回復している。国内で患者が確認されたのは初めて。西ナイル熱のウイルスは人から人には感染せず、人から蚊を介しての感染もないといい、厚労省は「この男性から感染が広がる恐れはない」としている。
厚労省は自治体と日本医師会に対し、この症例を報告するとともに、米国やカナダなどの流行地域への渡航者に対しても蚊に刺されないよう注意することを呼びかけている。
厚労省によると、男性は8月28日から9月4日まで、ロサンゼルスに滞在。同月5日に帰国する際、発熱や頭痛の症状があり、その後発疹が出た。7日に近くの病院を受診後、川崎市立川崎病院を受診。西ナイル熱の感染が疑われたため、国立感染症研究所で検査をしていた。
男性は「ロサンゼルスに滞在中に何度か蚊に刺された」と話しているといい、厚労省は、ロサンゼルスで西ナイル熱が流行していることや、発症までの潜伏期間が2〜6日あることなどから、「ロサンゼルスで蚊に刺されて感染した可能性が高い」とみている。
西ナイル熱は、国内ではこれまで感染例はなかったが、米国では今年、1804人が感染し、うち52人が死亡している。このうち約3分の1がカリフォルニア州に集中している。
西ナイル熱〉北米を中心に、アフリカや西アジアなどでも感染の報告がある。ウイルスを持った鳥や哺乳(ほにゅう)類から、蚊が媒介して人間に感染するとされる。発熱や頭痛、筋肉痛、吐き気などの症状が出るが、8割の人は症状が出ないで終わる。ほとんどは軽症で自然に治るが、子どもや高齢者は脳炎を起こして死亡することもある。感染した人の約1%に重症がみられ、重症患者の3〜15%が死亡するといわれる。ワクチンや特効薬などは開発されていない。

補助人工心臓はずれ患者死亡 阪大病院 indexへ

補助人工心臓を手に患者の様子を説明する阪大病院の沢芳樹・助教授。右は荻原俊男院長=3日午前11時すぎ、大阪府吹田市の同病院で
 大阪府吹田市の大阪大学医学部付属病院(荻原俊男院長)は3日、20代の男性入院患者にとりつけていた補助人工心臓のポンプの接続部からチューブがはずれ、男性が死亡したと発表した。同病院によると、1日のポンプ交換手術後、男性が意識不明になっているのを看護師が発見したという。男性は重い心臓病を患い、心臓移植を待っていた。同病院は、外部の専門家を含めた調査委員会を設置。吹田署、吹田保健所にも報告した。「接続部が外れた原因は不明だが、明らかな過失はなかった」としている。
会見した同病院心臓血管外科の沢芳樹・助教授らによると、男性は、心臓の筋肉が収縮する力が弱まり、血液が送りにくくなる拡張型心筋症。体外にとりつける国産の補助人工心臓を約1年2カ月前にとりつけ、心臓移植を待っていた。
同病院の説明では、1日午後4時ごろ、補助人工心臓ポンプ内に血のかたまりである血栓がみられたため、15分程度のポンプ交換手術をした。同6時10分に看護師が見回りをした時は異状がなかったが、同13分に再度見回ったところ、人工心臓と塩化ビニール製のチューブ(直径約1.5センチ)をつなぐ接続部からチューブが外れて出血し、意識不明となり、2日夜、死亡した。
接続部ではチューブと人工心臓の金属製の管をプラスチック製の細いバンドで締め付けてあるが、そのバンドごとチューブが外れていた。チューブが抜けると、短時間に大量の出血があり、生死にかかわるが、抜けても警報が鳴る仕組みなどはなかったという。
補助人工心臓は、心臓の代わりに血液循環のためのポンプの役割をする治療用装置。弱った心臓を休ませたり、心臓移植までのつなぎとして使ったりする。
ポンプの役割をする血液ポンプとその機能を調節する制御駆動装置からなる。ポンプはおなかの上に置き、心臓から血液を受け取り、圧力を加えて体内に送り戻す。
最近は、ポンプを体内に埋め込む新型の人工心臓も使われ始めている。 同病院ではこれまで同じ型の人工心臓を約50人の患者に使用し、ポンプの交換も約200回の実績があるが、接続部のチューブが外れたことはこれまで一度もなかったとしている。現在も十数人の入院患者が同じ型の人工心臓を使っているといい、接続部に異状がないか点検を実施したという。

乳がん読影医・撮影技師、都道府県の4割が「不足」 indexへ

乳がん早期発見のため、厚生労働省の補助金でマンモグラフィー(乳房X線撮影)の購入を検討している都道府県の4割近くが、読影医や撮影技師不足が購入の妨げになっていると考えていることが、NPO法人乳房健康研究会(理事長=霞富士雄・癌(がん)研有明病院乳腺科部長)のアンケートでわかった。厚労省は07年度までに、検診の受診率を現在の13%から50%以上に上げることを目標としているが、人材育成の必要性が改めて浮き彫りとなった。
11月に京都市で開催する日本乳癌検診学会で発表される。調査は今年7月、47都道府県を対象に郵送で実施。43都道府県が回答した。
マンモグラフィー導入の「阻害要因」を複数回答で答えてもらったところ、フィルムを診断する読影医や撮影技師の不足を挙げた自治体は16(約37%)あった。一方で、人材を養成する研修の開催予定が「ない」と回答した自治体は17(約40%)。「ある」と回答した自治体でも、開催予定は読影医で年平均1.43回、撮影技師で同1.28回にとどまった。
マンモグラフィーの国内の設置台数は約2800台。厚労省は緊急整備事業として今年度、約39億円の予算を組んで購入費用の半額を補助しており、来年度までに計500台を整備する予定だ。
40歳以上で職場検診などがなく、住民検診の対象となる女性は年間1050万人に上るが、厚労省が指針で望ましいとする技量を持った読影医は約5300人、撮影技師は約4400人しかいない。受診率が上がれば、さらに人材不足の問題が深刻となる。同研究会の福田護・聖マリアンナ医科大教授は「いまの3倍の人員は必要だろう」と話す。

軽い病気「患者負担を」 公的医療保険に免責制度を検討 indexへ

低額の医療費は公的医療保険の対象から外して患者の自己負担とする「保険免責制度」が、医療費抑制のための検討項目として、10月中旬に厚生労働省が公表する医療制度改革試案に盛り込まれることになった。1回の診療にかかる医療費のうち500円、1000円などの一定額を患者負担とし、保険の適用はそれを超える分とする方法。軽い病気から重い病気まで広くカバーする今の医療保険制度の根幹にかかわるだけに、政府・与党内でも大きな論議を呼びそうだ。
免責制度は、保険は生死にかかわるような重い病気の時にこそ必要で、風邪などの軽い病気には適用しないという考え方に基づく。自己負担を増やすことで患者にコスト意識を持ってもらい、過度な受診を防ぐ効果も狙う。
財務省が02年度の医療制度改革時に「外来1回、入院1日あたり500円」を提案。今年6月の政府の「骨太の方針」決定の際には経済財政諮問会議が検討課題として明記を求めたが、厚労省や与党側の反対で見送られていた。総選挙での圧勝を受け、小泉政権内で医療費抑制論が強まる中、厚労省も議論は避けられないと判断した。
今回の改革試案では、「免責額500円」「1000円」など複数のケースごとに患者負担や医療費抑制効果の試算を示し、導入の是非を議論する材料としたい考えだ。
ただ導入すると、高齢者ら受診回数が多い人ほど負担が重くなる。医療関係者の中には、症状が軽い間は受診を控えるため、重症になってから受診する人が増え、かえって医療費がかかるという指摘もある。
もともと医者にかかる機会が少ないサラリーマンら現役世代からは「保険に入っている意味がない」と不満が出ることも予想され、厚労省内にも慎重論が根強い。
さらに、サラリーマンの窓口負担を3割に引き上げた際の改正健康保険法の付則には、保険給付を「将来にわたり100分の70を維持する」と明記されている。免責制度を導入すれば実質的には7割給付を割り込むため、厚労省には実現性を疑問視する意見もある。
厚労省は、医療費抑制策のうち、国民に負担増を求める施策として、長期入院患者からの食住費徴収▽一定所得以上の高齢者の患者負担の3割への引き上げ▽高額療養費制度の負担上限引き上げ▽新たな高齢者医療保険制度の創設に伴う保険料徴収――などを検討しており、これで施策案はほぼ出そろった。

日本医科大、脳死判定で指針違反 断層撮影検査など省く indexへ

日本医科大付属第二病院(川崎市)で昨年5月に心臓や肺などを5人に提供した男性患者の脳死判定が、無呼吸テストなどについて厚生労働省の指針に基づかずに行われたことが30日、厚労省の検証会議で明らかになった。病院のマニュアルにも不備があった。同病院は「正式に通知を受けてから対応したい」としている。
厚労省のマニュアルでは、「無呼吸テスト」で患者の血中の二酸化炭素濃度を2、3分おきに調べることになっているが、この患者では最大9分間隔を空けていた。
また、コンピューター断層撮影(CT)による検査が脳死判定に必須とされているが、なされなかった。病院が作ったマニュアルに、CTなどの記述に不備があったという。
検証会議座長の藤原研司・横浜労災病院長は「経過から見て、脳に器質的障害があったことは間違いなく、医学的には問題がなかった。マニュアルに沿う点からは不適切だった」と話した。
脳死判定を行う病院では、独自に簡易マニュアルを作っているところも多い。厚労省の臓器移植対策室は「正式のマニュアルに沿って脳死判定していただけるよう徹底したい」としている。

心臓手術患者「医師未熟で死亡」 東京医大調査 indexへ

東京医科大学病院(東京都新宿区)で、心臓外科医(辞職)が手術を担当した患者が相次いで死亡した問題について同病院は、心臓バイパス手術を受けた男性患者(71)が死亡したケースも、医師の技術の未熟さが容体悪化を招き、死亡に至ったとする内部調査結果をまとめた。
手術は03年6月、心臓に人工心肺装置をつながずに心臓が一部動いた状態で行われたが、男性は手術中に心停止に陥り、人工心肺に切り替えたものの2日後に死亡した。調査報告書は「執刀医や手術チームの不適切な手技や判断があった」、「容体急変後の対応に手間取った」と指摘した。
この医師が02年から04年に担当した心臓弁膜症の患者4人が相次いで死亡。病院側は医師の技術不足や病院の安全管理の不十分さを認め、理事長らが辞任。特定機能病院の指定も取り消された。

「子宮腺筋症」新手術で混合診療を認める 中医協 indexへ

中央社会保険医療協議会(中医協)は28日、子宮腺筋症の手術で子宮を温存できる先進技術を、保険診療と保険外診療の併用を認める混合診療の対象として認めることを了承した。混合診療が新たに認められる「先進医療技術」分野の第1号で、10月から適用される見通し。この手術はこれまで患者の全額自己負担だったが、適用後は、例えば16日間入院の標準的なケースでは、入院費など39万5000円が医療保険でまかなわれ、先進医療分の自己負担は18万6000円となる。
子宮腺筋症は、子宮内膜の組織が子宮の筋層に発生し、強い月経痛などを引き起こす。従来の治療法では子宮を摘出するしかなかったが、今回認めた手術法は、高周波の切除器を使い、腺筋症組織だけを切り取れる。
10月以降は、この手術を3年以上経験している医師がいることや、医療安全のための態勢が整備されているなど、必要な条件を満たした医療機関が国に届け出れば実施できる。
中医協は同日、診療報酬の改定結果を検証する部会を新たに設置することも決めた。中医協改革の有識者会議が、報酬改定の透明化をねらって提言した対策の一つだ。

病院団体代表2人が参加 中医協委員 indexへ

治療や薬の公定価格である診療報酬を協議する中央社会保険医療協議会(中医協)の委員の任期満了にともない、厚生労働省は28日付で新任3人を含む8人の委員を任命する。医師の推薦枠5人のうち、従来1人だった病院団体の代表を2人に増やした。
新任・再任の委員は次の通り。(敬称略)
▽日本病院会常任理事石井暎●▽全国公私病院連盟副会長邉見公雄▽日本薬剤師会常務理事山本信夫=以上新任▽日本医師会常任理事松原謙二▽同青木重孝▽同野中博▽健康保険組合連合会専務理事対馬忠明▽全日本海員組合中央執行委員大内教正=以上再任

基準満たさぬ病院の手術料3割カット、廃止へ 厚労省 indexへ

難しい手術を施術数の少ない病院などが行うと診療報酬の点数が減点され、公的医療保険から病院に支払われる手術料が3割減る仕組みが、来年度にも撤廃される見通しになった。厚生労働省が10月にも、中央社会保険医療協議会(中医協)に諮り、06年度の診療報酬改定に反映させる。同省は、手術料カットで特定の医療機関に手術を集中させることで病院の機能分化を促そうとしたが、「術数と医療の質に相関関係は見られない」として、学会や病院団体が強く反発していた。
厚労省は02年度、心臓の大動脈バイパス手術では年間100例以上、人工関節の置換手術では同50例以上など、110種の手術について手がける手術数の基準を定めた。そのうえで、基準に満たない病院の手術料を3割カットした。
基準に満たない病院が満たす病院を紹介し、特定の医療機関に手術を集中させることで、所属する医師らの技量が磨かれ、医師の質が向上すると考えた。
しかし、地方には基準に満たない病院が多いのに加え、技量のある医師がいても病院全体で基準を満たしていないと評価されないなどの問題点が指摘された。
そこで、04年度の改正で、3割カットの対象を、基準に満たず、しかも手術経験が10年以上ある医師がいない医療機関に限定した。両方とも満たす医療機関には5%加算することにした。
ところが、中医協の下部組織がその後、「一部を除き、手術件数と医療の質に相関関係が見られなかった」との見解を示した。関係学会を通じて110種の手術件数と5年生存率や成功率などを調査し、人工関節置換手術の一部には件数の多さと術後の改善率に相関関係が見られたものの、肺がんや尿路結石除去など多くの手術で件数と成功率に相関関係があるとはいえないという結論を得ていた。
厚労省は、手術件数と医療の質に相関関係の認められた手術については、現在5%となっている「加点」を手厚くするなど、新たな評価方法を検討したいとしている。

「太り過ぎ」世界10億人 WHO推計 indexへ

世界保健機構(WHO)は22日、60億人余りの世界の人口のうち10億人以上が太りすぎで、このまま増加すれば2015年までに15億人に達する、との推計を発表した。中高年の過半数が太りすぎの国もあることから、25日の「世界ハートの日」を前に「肥満は心臓病や脳卒中などの引き金となる」と警鐘を鳴らしている。
WHOの椎計によると、30歳以上の75%以上が太りすぎと推定されるのは、女性の場合エジブト、マルタ、メキシコ、南アフリカ、トルコ、米国など。男性の場合ではアルゼンチン、ドイツ、ギリシャ、クウェート、ニュージーランド、英国などが指摘されている。肥満が社会問題化しているナウルやトンガでは成人の10人中9人が太りすぎだ。
WHOは、体重(キロ)を身長(メートル)で2度割った数値「体格指数」(BMI)が25以上を「太りすぎ」、80以上を「肥満と規定している。たとえば、175センチ、88キロはBMI28余りとなり、太りすぎだが肥満までには至らない。日本肥満学会は、日本人の体質の違いから、これよりやせた人も「肥満」と呼ぶ厳しい基準を設けている。今回発表された「肥満注意国」に日本は含まれていない。
かつて先進国に多く見られた肥満が、最近では所得の低い国々でも急増しているのが目立つ。
世界的に脂肪や糖分の多い高カロリー摂取の食生活が定着しているうえ、途上国でも車社会が広がり、運動量が減ったことなどが原因とみられる。
WHOは「今のうちに予防措置を取らないと、10〜20年後に低中所得諸国で慢性疾患が膨大に増える恐れがある」としている。心疾患の主な原因は肥満といわれるが、特に東地中海やアフリカ地域で、心疾患による死亡数が「10年間で25%増えると推計される」という。

検査ミス別人の肺切除 国立がんセンター検体取り違え indexへ

国立がんセンター中央病院(東京都中央区、野村和弘院長)は22日、肺がんかどうかを調べる事前の検査で、60代男性患者の検体を別人のものと取り違え、肺の一部を切除するミスが起きた、と発表した。実際には男性は別の肺の病気で肺がんではなかったが、肺がんの一種の「腺がん」と診断され、右肺の約3分の1が切除された。同病院は、検体の取り違えは基本的なミスだったとして本人に謝罪するとともに厚生労働省に届け出た。
同病院によると、男性患者の術後に異常はなく、今後の生活にも支障はないという。
男性は同病院で7月下旬、コンピユーター断層撮影(CT)検査で右肺がんの可能性が高いと診断された。8月6日に肺の組織の一部を小切片に切り取り、がん細胞があるかどうかを調べる「細胞診検査」が行われた。
病院側の説明によると、細胞診検査は@内視鏡医が検体を採取してガラス片の上に置いてプレパラートを作るA検査技師が検体に染色などをして標本を完成させ、患者名やカルテ番号が書かれた白い紙ラベルを張るB病理担当医師が診断する−の手順で行われる。
今回は、検査技師が標本にラベルを張る段階で、別のがん患者の標本にこの男性の名前が書かれたラベルを張るミスが起きたという。
プレパラートには内視鏡医の段階で鉛筆で患者名が書かれていた。
この部門担当の検査技師は10人いるが、ラベルを間違って張った技師は特定できていないという。
手術後、切除した部分を調べると、がん細胞はなく、肺の炎症でできたしこりが見つかった。このため、手術前の標本を調べ直し、今回のミスが発覚。検査結果は「陰性」だった。

薬「7種類以上」71歳以上で2割04年、外来処方分 indexへ

医療機関の外来で薬を処方された人のうち、老人保健制度対象のお年寄りでは7種類以上の薬を処方される「多剤投与」の例が2割にのぼることが、厚生労働省がまとめた04年の「社会医療診療行為別調査」でわかった。お年寄り以外は1割だった。
04年6月(当時の老健対象は71歳以上)審査分の政府管掌健康保険や国民健康保険、健康保険組合の診療報酬明細書(レセプト)約48万枚を抽出して分析した。
71歳以上で7種類以上を処方されている例は、医療機関内ではレセプトの20.0%、医療機関でもらった処方箋を町中の薬局に持って行って薬を受け取る院外処方では23.9%を占めた。71歳未満はそれぞれ9.5%、11.8%だった。
お年寄りは複数の病気や不調をかかえやすいことも背景にあるとみられるが、一般に「多剤投与」は診療報酬で減額措置がとられるなど、好ましくないとされている。

「痛くないよ」効果は本物?言葉の鎮痛作用 裏付け」 indexへ

注射を怖がる子供に「痛くないよ」と声をかければ、痛みは弱まる−。西宮協立脳神経外科病院(兵庫県西宮市)の小山哲男・リハビリテーション科医長と米ウェークフォレスト大の口バート・コグヒル助教授らのグループがそんな鎮痛効果を裏付け実験をし、米科学アカデミー紀要(電子版)に発表した。
小山さんらは被験者10人の太ももに46、48、50度の3段階の熱刺激を30秒間与えた。各刺激の前に2回信号音を聞かせたが、その間隔を46度では7.5秒、48度は15秒、50度は30秒とした。
この実験を繰り返すと、被験者は音間隔が長ければ、より熱い刺激が来ると「予測」すようになる。次に、15秒と30秒間隔の信号音のあと、同じ50度の刺激を与えてみたところ、15秒の方が痛みは弱かった。温度と音間隔の組み合わせを変えて実験した結果、痛みの感じ方は、熱さではなく、音間隔によって導かれた予測に左右されていた。
兵庫の医師、音で実験
さらに、被験者の脳の各部位の状態を測定すると、音の間隔が長いと、体が受けた刺激を感じる部分が活発になった。逆に、音の間隔が短いと、この部分はあまり活動しなかった。
小山さんは「医師の言葉や態度で痛みが和らぐ経験をした患者さんは多いはずだ。その理由が科学的に裏付けられた。痛みへの必要以上のおそれを取り除く心理テクニックが、臨床の場で重視されてもいい」と話す。

肥満男性、大腸がんご用心 厚労省研究班「リスク1.4倍」 indexへ

肥満の男性は大腸がんにかかるリスクが高くなるという結果が、厚生労働省研究班(主任研究者=洋金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)の大規模な疫学調査で出た。8日発表した。
岩手、秋田、新潟、茨城、長野、大阪、高知、長崎、沖縄各県の40〜60代の男女計約10万人に90〜93年、アンケート。その後、9〜12年間追跡調査した。
男性は4万9158人中626人が大腸がんにかかっていた。肥満指数「BMl」(体重÷身長÷身長、単位はキログラムとメートル)によって分類。年齢や喫煙、飲酒などの影響を除いて分析した結果、BMIが25未満の群に比ベ、27以上30未満の群は、大腸がんのリスクが1.4倍だった。30以上の群は、対象数がやや少ないものの、1.5倍になった。日本ではBMI25以上が肥満とされる。
欧米の研究では、男性の場合、高身長でもリスクが高まるとされるが、日本人の男性では、身長による統計上の明確な差は出なかった。女性は、肥満指数、身長ともに関連が見られなかった。
肥満だとインスリンが多く分泌され、がん細胞が増殖しやすい、と細胞レベルの実験で出ている。分析を担当した大谷哲也・同センター研究員は「BMIが27以上ならば、運動や食事で減量した方がいい」と話す。ただ、日本人は欧米に比べて肥満者の割合が低く、肥満だけで大腸がんが国内で大幅に増えている説明にはならず、「別の危険要因についても調べる必要がある」と言う。

ぜんそく患者カードで情報共有 アレルギー対策を強化 厚労省 indexへ

国民の3人に1人が何らかのアレルギー疾患を抱える状況を改善するため、厚生労働省はアレルギー治療の地域ネットワークづくりなど診療体制の整備に乗り出す。来年度からの5年計画で、国がアレルギーの総合対策に取り組むのは初めて。中でもぜんそく死対策に力を入れ、「患者カード」の普及を図る。
同省のアレルギー対策検討会の報告書は、気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎、花粉症、食物アレルギーなどのアレルギー疾患を持つ人は、国民の30%以上にのぼり、増加傾向にあるとしている。中でも深刻なのはぜんそくで、03年には3701人が死亡し、アレルギー関連死の99%を占めた。
しかし、アレルギー疾患については、地域のかかりつけ医が診療ガイドラインをよく理解していないケースが多いという。このため厚労省は、日常的な生活圏に設けられた「2次医療圏」(全国370カ所)ごとに専門病院を決め、地域の医師の教育を進めるとともに、都逆府県に最低1カ所は基幹病院を決めてネットワーク化する。
ぜんそく死については、「ぜんそく死ゼロ作戦」と銘打って5年間で死者をなくすことを目標に掲げる。
発作が起きた時に適切な救急医療が受けられるよう、病歴などを記入して常に身につける「患者カード」の普及や、アレルギーに対応できる救急病院の整備を都道府県に促す。

帝王切開望んだのに」8日最高裁の判決 逆子の長男失った夫婦、11年の訴え indexへ

11年前、出産直後に長男を亡くした両親が「帝王切開を強く希望したのに医師に拒まれ、自己決定権が侵害された」などとして医師らに約8千万円の損害賠償を求めた訴訟の最高裁判決が8日、言い渡される。「医療は受ける者のためにあるのか、行う者のためにあるのか」。両親は問い続けている。

医師側「合理的選択だった」
両親が結婚したのは91年。翌年から埼玉県所沢市の国立西埼玉中央病院で不妊治療を受け、93年に妊娠した。胎内で頭部が上側に位置する逆子だった。自然分娩だと、赤ちゃんの体のうちで一番大きな頭部が最後に出ることになり、難産になる可能性があるため、帝王切開を希望した。医学書を何冊も読み、親族の医師らの意見も聴いた。
両親によると、毎週の検診の度に「無事に産みたい」と医師に頭を下げた。医師は「自然分娩で問題ない」「まだ判断する時期ではない」と受け付けなかった。
94年5月12日。医師は自然分娩を選んだ。時間を短縮するため、卵膜を人工的に破る措置をとった。この影響でへその緒の一部が子宮の外に出てしまう事態が起きた。長男は呼吸が困難になり、心拍数が低下。肩や頭部がひっかかって、出産に時間もかかったという。
午後3時9分。生まれてきた長男は仮死状態だった。「黒に近い紫色をしていた」。母親は、それからの出来事をうまく言葉にできないでいる。ただぼうぜんとしてしまい、現実として受け入れられないのだ。
長男は新生児病室に運ばれ、約4時間後に亡くなった。両親に残る長男の記憶は無菌ケースに入れられ、管につながれた姿だけだ。名前の音は「ともみ」と決めていた。字は話し合って決めようと思っていた。だが火葬などの手続きをせかされ、役所などへの書類にひらがなで「ともみ」と書いた。それが、正式な名前になつてしまった。
両親は翌年、次男を授かつた。事情を知って、別の病院の医師が不妊治療に協力した。逆子ではなかったが帝王切開で産んだ。三男も生まれ、いまは4人で暮らす。
裁判で、医師側は「医学的に合理的な選択だった。転院の選択肢もあり、両親の権利は侵害していない」と主張した。一審・さいたま地裁川越支部は「両親は帝王切開を求める意思を示したのに、優越的立場にある医師に従わざるを得ない状況に至っていた」として自己決定権の侵害を認め、計約330万円の賠償を命じた。二審・東京高裁は逆に「医師は十分に説明しており、権利侵害はない」と述べて全面的に両親の主張を退け、判断が分かれている。
最高裁は高裁判決を見直す公算が大きい。患者の自己決定権と医師の裁量をどう調和させるかについてどんな規範を打ち出すかが注目される。

開胸不要 心臓治療に新手法 国内3施設まず本格化 indexへ

心臓の壁に生まれつき穴がある心房中隔欠損の新しい治療が、国立循環器病センター(大阪府吹田市)と埼玉医大、岡山大の3施設で本格的に始まる。カテーテルという細い管を血管に通して特別な円盤を心臓まで運び穴を両側から挟んでふさぐ手法だ。従来の開胸手術に比ベ、患者の心身の負担が小さい。今後技術を習得した医師が増えれば、治療の選択の幅が広がる。
穴をふさぐのは、形状記憶合金製の2枚の円盤(直径18〜54ミリ)を1本の柄でつないだ形の器具。円盤を傘のようにたたんでカテーテルの先端に収納し、位置を確認しながら静脈を通して穴のそばに運ぶ。ここで器具を外に出すと、たたまれていた円盤が開いて左右から穴をふさぐふたになる。
従来の開胸手術は人工心肺装置を使い、心臓を止めて穴を縫う。年間1800例ほどあり、多くは成人前に実施される。
成功率はかなり高いが、胸に傷が残るといった患者の心身の負担もある。
国立循環器病センター小児科の越後茂之部長は「手術が必要とされる患者のうち6、7割は、新しい治療法で治療できるだろう」と話している。
運用は慎重に
中西敏雄・東京女子医大助教授(循環器小児科)の話
日本でも米国などのように主流になるだろう。ただ、海外では操作に慣れていない医師が実施して死亡や重大な合併症に至った例もある。日本では海外の経験を参考に、安全かつ慎重に進めていく必要がある。
高度な技術が必要 医師養成普及のカギ
《解説》心房中隅欠損の穴をカテーテルで運んだ円盤でふさぐ新治療法は、患者の体をなるべく傷つけないで治療しようという流れの一つだ。器具は90年代にアメリカの医師が開発し、開胸手術と同等の治療効果と安全に、類似の器具に比ベ1、装着が比較的容易で、のちに折れたりはずれたりすることが少ない。2、装着に失敗しても回収用のカテーテルで体外に取り出せる−などの点が評価され、01年に米食品医薬品局が承認した。
日本でも今年3月、厚生労働省から認可を受けた。ただし高度な技術が必要なので、「関係学会の基準を満たす施設で、学会が定めた教育プログラムを受けた医師にのみ使用を認める」との異例の条件がついている。
普及に向けて、日本小児循環器学会などが「先天性心疾患に対するカテーテル治療を年間50回以上行っている」など、実施施設の基準を設定。基準を満たす今回の3施設でまず実績を積み、治療できる医師を慎重に養成していくことにしており、こうした取り組みが、治療法が定着するかどうかのかぎを握っている。

動脈に空気誤って注入 東海大付属東京病院 indexへ

東京都渋谷区の東海大学付属東京病院で03年、心筋梗塞の治療を受けるために入院していた杉並区の男性(冬至60)が、止血の際に誤って動脈に空気を注入され、意識不明の重体になつていたことが分かった。警視庁は業務上過失傷害の疑いで担当医らから事情を聴いている。男性は今年7月に死亡しており、同庁は遺体を司法解剖し、死亡とミスの因果関係についても調べている。
原宿署の調べでは、男性は03年5月に入院。同年10月10日、右腕の動脈にカテーテルを刺し、注射器で造影剤を流す検査を受けた。止血をする際、循環器内科の担当医(34)が、腕に巻き付けて圧迫する器具の空気注人口と間違えて、まだ動脈から外していなかったカテーテル側の注入口から空気を注入したという。

6臓器を同時移植1歳男児が帰国へ indexへ

昨年12月、小腸、大腸、肝臓、膵(すい)臓、脾(ひ)臓、胃の6臓器同時移植を受けた大橋陽佑ちゃん(1歳7カ月)が4日、滞在先の米マイアミ州を離れて日本に帰国することになった。移植を担当したマイアミ大学ジャクソン記念病院が明らかにした。一時、合併症がみられたが、臓器は順調に機能し、歩けるようにもなっているという。

39例目の脳死判定 indexへ

北海道大学病院に頭蓋(ずがい)内出血で入院中の70代の男性患者が2日、臓器移植法に基づく脳死と判定された。97年の法施行後39例目で、今回が最高齢になるという。腎臓の片方は市立札幌病院で、もう片方は北大病院でそれぞれ慢性糸球体腎炎の患者に移植される。

麻酔の直後に2歳児心停止 東京女子医大、調査へ indexへ

東京女子医科大病院(東京都新宿区)で01年6月、神奈川県の女児(当時2)が心臓手術のにめ麻酔を施された直後に心停止になり、2日後に死亡したことがわかった。病院側は外部の専門家を交えた調査委員会を近く設置し、詳しい原因などを調査する。
遺族によると、女児は生後間もなく重い心臓病と診断され、6月13日に心臓手術室に入った。入室して間もなく、担当医から「麻酔をかけたら心停止が起きた。人工心肺装置をつけて手術を続けたい」と説明を受けた。両親は承諾したが、心臓の機能は回復しないまま15日に死亡した。

幼児の食べ物アレルギー学会指針 indexへ

子どもに多くみられ、卵や乳製品などを食べるとじんましんや呼吸困難を起こす「食物アレルギー」について、日本小児アレルギー学会が初めて診療指針をまとめた。アレルギーかどうか分からないうちに、食品を控えさせる事例もあり、医療現場や家族の間で混乱が生じているためだ。また、妊娠後や授乳期の母親が除去食を勧められるケースが多いが、「子どもへの予防効果はない」とした。
症状判断、食事日誌・検査で 妊娠中の除去食、効果なし
厚生労働省研究班の調査によると、食物アレルギーは、乳児が10%、3歳児が4〜5%、学童期が2〜3%の割合でいると推定されている。また、アレルギーがアトピー性皮膚炎を誘発するといわれているため、親が勝手に判断し食品を取ることを控えるケースも多いと専門家が指摘していた。
指針によると、アレルギーと診断するには、まず親が毎日何を食べて、どのような症状が何時間後に出たかを記した食物日誌をつけたうえで、医師が問診で原因を推定。
あわせて血液などによる検査を行う。原因と推定された食品を含まない食事にして症状の改善を確認したあと、この食品を微量に含んだ食事(負荷試験)をして特定する。
食物アレルギーは、年齢を重ねるごとに体内に耐性ができて食べられるようになる子が多い。そのため、アレルギーと判断されても、12〜18カ月ごとに、チェックするよう目安を示した

細胞移植で心機能回復 心筋梗塞重症の61歳人工心臓外す 埼玉医大 indexへ

埼玉医科大学の許俊鋭教授(心臓血管外科)らのチームは27日、重い心筋梗塞で補助人工心臓を着けた61歳の男性患者に、本人の骨髄から採った細胞を心臓の血管に注入した結果、人工心臓なしの再生を目指す再生治療を心臓病治療に併用する試みは、国内で数例あるが、重い心筋梗塞からここまで劇的に回復した例は初めてという。
過去に心筋梗塞を患っていた男性は2月上旬、2度目の心筋梗塞を起こして同大学病院に運ばれた。心臓の筋肉(心筋)がほとんど死んでしまい、心停止したため、すぐに心筋に血液を送る血管(冠状動脈)のバイパス手術を受け、同時に左心室に補助人工心臓を着けた。
一時回復したが、手術から約3カ月後に再び心機能が低下。年齢や合併症などの条件から心臓移植の対象にならず、ほかに方法がなかったため、院内倫理委員会での検討を経て、5月18日、同大として初の自家細胞移植を受けた。
様々な細胞になる能力がある骨髄幹細胞が含まれた骨髄液600ミリリットルを本人の骨盤付近から採取。特定の白血球や幹細胞などを豊富に含む50ミリリットルの液に濃縮した上で、血管新生や心筋の再生を期待して、冠状動脈バイパスに使った人工血管に注入した。
約1カ月後には心機能が健康な人の3分の2程度まで回復。心筋の厚みも増し、6月30日には人工心臓を外せた。現在自力で歩け、入浴などの日常生活もできるようになり、27日、退院した。
主治医の五條理志講師は、「まだ、細胞移植だけで治せる段階ではないが、薬や補助人工心臓といった従来の治療と組み合わせれば、これまで助けられなかった患者も助けられるようになると期待される」という。
五條さんは90年代前半から京都大で幹細胞の研究を始め、米ボストンのマサチューセッツ総合病院を経て、埼玉医大に移った99年から細胞移植の研究を続けていた。
再生治療、新たな選択肢
(解説)心筋梗塞などを対象にした自家細胞移植による実験的治療は、海外が先行しており、ドイツでは今回とは違う方法ながら、約60入に実施し「安全性と相当の効果が認められた」との報告が出ている。
国内でも大阪大など複数の医療機関が試みているとみられるが、埼玉医大によると、心停止に至る深刻な状状態から人工心臓が離脱できた例は世界的に報告がないという。
移植した細胞が心臓組織に生まれ変わったのか、もともとある細胞に働きかけて機能を回復させたのかなど、詳しいメカニズムは分かっていない。だが、心臓移植以外に回復の見込みがなかった重い心筋梗塞などの人にとって、拒絶反応の心配がない自分の細胞を使う再生治療が新たな選択肢に育つ可能性が示された。
効果示す指標を
小柳仁・東京女子医大名誉教授(心臓血管外科)の話大変すばらしい。ただ、人工心臓にも治療効果があり、細胞移植による効果との判別は難しい。今回は両方とも効いたのだろう。今後、こういう治療が進んでいくだろうが、細胞移植による効果を示す指標の開発が重要だ。

肝がんマーカー検査 上限回数超でも保健併用認める indexへ

中央社会保険医療協議会は31日、医療保険が適用される上限回数が決まっている医療行為のうち、肝がんや消化器系がんの有無や進行度を調べる腫瘍マーカー検査など7項目で、上限を超えた場合にも保険給付との併用を認めることを決めた。患者の不安を和らげて治療に対する意欲を高めたり、家族の負担を軽くしたりするため。10月1日から実施される。
従来は、上限回数を超えると、すべての医療行為に保険が適用されなくなり、自由診療として扱われていた。今回の措置で、上限回数までは保険が適用され、自由診療扱いになるのは上限回数を超えた部分のみとなる。
併用が認められたのは、マーカー検査(上限は1回)のほか、1日3回までとされていたリハビリテーションのうちの理学療法、作業療法、言語聴覚療法の各個別療法など。

アステラスの免疫抑制剤の特許「発明者」確認求め提訴 千葉大教授 indexへ

国内外の臓器移植で幅広く使われている免疫抑制剤の特許で、製薬会社に協力して薬の効果を実証したのに発明者に含まれないのは不当として、千葉大医学研究院の落合武徳教授(63)が1日、東京地裁に発明者の確認を求める訴訟を起こした。特許庁た対しても、近く特許の無効審判請求をする。産学連携が活発化するなかで、知的財産をめぐる大学の研究のあり方に一石を投じそうだ。
製薬会社側「発明者でない」
この免疫抑制剤は、藤沢薬品工業(現アステラス製薬、本社・東京)の「タクロリムス」(商品名プログラフ)。臓器移植を受けた患者が拒絶反応を起こさないよう自分の免疫を抑える薬で、国内では93年に発売された。現在、世界約70カ国で販売、04年度の売り上げは1229億円に上る。
この薬は、同社の研究所が84年に発見した放線菌の分泌物をもとにつくられた。免疫機能で働く物質がつくられるのを抑制する効果があることを試験管内で確認。国内では85年に特許を出願、86年に公開された。
訴状によると、落合教授は84年、当時、同社研究所長だった青木初夫・アステラス製薬会長の話で薬を知った。従来より強力な拒絶反応の抑制効果が得られると考え、同社から薬や資金の提供を受けラットや犬の心臓や腎臓の移植で拒絶反応を抑えることを国内特許の出願前に明らかにした。
出願時には特許に関心がなかったが、今年に入って学内の知的財産の担当者に相談して調べたところ、発明者に含まれていないことを確認したという。落合教授側は「薬の効果の確認も含めて発明が完成する。発明者の一人であることを認めてほしい」と主張。同社に対して金銭の要求はしない、としている。
同社によると、落合教授には「免疫抑制剤の実験動物での臓器移植による評価」の研究を委託したが、特許は自社の実験データで出願した。
アステラス製薬広報部は「既存の薬を上回る強力な免疫抑制作用がある物質を探していた。発見した時点で、既に臓器移植用の発明は完成していたと考えている。落合先生は共同発明者ではない」としている。
知的財産へ関心 国立大で高まる
(解説)
20年前に出願された特許をめぐって争いが起きた背景には、知的財産に対する国立大学の関心が、昨年4月の法人化に伴って高まっていることがある。第三者機関からの評価に予算を左右されることになり、大学は特許件数など、具体的な評価の指標を示すのに懸命だ。
文部科省によると、国立大の特許出願件数(国内)は昨年度3756件で、前年度の4倍に急増。企業と国立大の共同研究による出願は、全体の4割に上るという。
今回のケースは共同研究ではないが、文科省の担当者は「研究成果の取り扱いや持ち分について取り決めた契約書のひな型を、ウェブサイトで公開している東京工大のような例もある。きめ細かなルールを事前に設定するのが重要だ」と話す。

手術中患者を殴る 滋賀病院30代男性医師、暴言も indexへ

国立病院機構本部近畿ブロック事務所は30日、同機構が運営する滋賀県東近江市の滋賀病院(朝山純院長)で、30代の男性医師が手術中の90代の女性患者を殴ってけがをさせたなどとしてこの医師を停職3カ月の懲戒処分にした、と発表した。
同事務所によると、医師は8月1日、女性患者に局部麻酔をして手術に取りかかったが、途中で患者が体を動かし「痛い」などと声をあげたことから、「じっとしとけ」「だまっとけ」などと暴言を浴びせ、患者の額の右側を拳でl回殴ったという。患者は5日間のけがを負った。
その日のうちに手術の介助をした看護師が看護師長に報告。医師本人と副院長が患者本人と家族に謝罪したという。内部の聞き取り調査に対し、医師は「切開に入っていたので途中でやめると危険だと思い、おとなしくさせようと思った」と話しているという。同病院によるとこの医師は以前から患者への態度が横柄で、苦情が複数寄せられていたという。
東近江署にも8月上旬、匿名の情報提供があり、捜査員が医師らから事情を聴いたが、患者の家族らが被害届を出すことをためらったため、立件は見送ったという。
同事務所は「人事院の指針」を理由に、医師の氏名や診療科などを明らかにしていない。同事務所の太田憲宏・総務経理課長は「国立病院機構の理念として患者様の目線に立った懇切丁寧な診療を掲げており、今後このようなことが起きないよう、職員に周知徹底していきたい」としている。

「骨セメント」32人副作用死 厚労省、医師に注意情報 indexへ

人工関節を骨に固定するための「骨セメント」を使った手術で、01年4月以降、32人がショック症状などを起こして死亡していることが25日、厚生労働省の調べで分かった。これまで3回注意を呼びかける情報が出されているが、副作用による死亡は減っていないという。同省は改めて、手術に麻酔医が立ち会うことや、患者の健康状態などに注意することなどを求める安全性情報を出した。
骨セメントは、太ももの付け根の骨を折り、人工の骨に置き換える必要があるときなどに使われる。ほとんどは高齢者に使われ、年間5万〜6万例の手術がある。代替品はない。
厚労省の調べでは、01年4月〜05年3月に、死亡も含めた重大な症例は37件。患者は69〜96歳で、全症例で急激な血圧低下が認められた。原因ははっきりしていないが、心肺血管の疾患や肥満などを抱える患者の場合、ショック症状を起こす恐れがあるとう。

糖尿病、心の病リスク3倍 東京医科歯科大医師らが6500人調査 indexへ

糖尿病にかかっている人は、かかっていない人に比べうつ病や神経症など心の病になっている割合が約3倍高いことが、東京医科歯科大の有馬秀晃医師(医療管理学)らの調べでわかった。糖尿病とうつ病の関連性は米国の論文などで指摘されてきたが、日本では大規模な調査が行われておらず、実態はわからなかった。神戸市で開かれている世界心身医学会で25日、発表する。
有馬さんらは、ある企業の健康保険組合員6543人(平均年齢37.4才)を対象に、00年4月〜01年3月の診療報酬明細書(レセプト)から有病率を調べた。
生活習慣病の2型糖尿病患者は195人いた。うち心の病がある人は10.3%(20人)に上り、糖尿病にかかっていない人で心の病がある割合(6348人中214人、3.4%)に比ベ、約3倍高かった。うつ病に限定しても、糖尿病患者の有病率は2.6%(5人)あり、糖尿病でない人の1.2%(78人)に比べ2倍以上高かった。
国内の糖尿病患者は約740万人と推計され、予備軍も加えると1620万人に上り、年々増える傾向にある。
うつ病を合併するのが多い理由として、食事療法やインスリン自己注射など日常生活において厳しい自己管理が求められ、ストレスがかかることや、病気の悪化による失明や腎障害への不安などが指摘されている。またうつ病によって食生活が乱れたり、治療意欲が下がったりするため、糖尿病が悪化するという報告もある。
有馬さんは「糖尿病になった場合、病気の治療だけでなく、心のケアも同時に行うことが大切だ」と話している。

新生児集中治療室 6年以上入院例も 産婦人科医会調査 支援充実など課題 indexへ

生後まもない未熟児や先天異常のある新生児を救命するNICU(新生児集中治療室)で、1年以上の長期入院をする子どもが2施設に1人の割合でいることが、日本産婦人科医会の調査でわかった。出産前後の母子をみる周産期医療が進み、重篤な子どもが救命される一方で、支援などの課題が浮かび上がった。NICUのある全国363病院に03年1年間の入院状況を尋ね、248施設が答えた(回答率68%)。1年以上入院する患者は全体で130人(1施設あたり0.52人、平均2年8カ月)で、退院のめどがたたない患者が76人(58%)。入院6年以上にわたる患者が13人いた。原因は先天異常や、早産ではないが重篤な仮死状態で生まれた新生児の占める割合も高かった。
1施設あたりの新生児入院ベッド数は18.7床。長期入院の新生児の多くは人工呼吸など高度な呼吸管理が必要だが、人工呼吸を管理できるべッドは1施設あたり6.75床だった。長期入院で人工呼吸の必要な患者は81人で、うち70人は退院のめどがたっていない。人工呼吸管理ベツド数の4%にあたる人数だが、NICU全体の3分の1は人工呼吸管理ベッドが1〜4床しかない。
また1年間の新規入院患者は全体で4万2786人で、1施設あたり173人になる。妊婦の高齢化や不妊治療による多胎児の増加などを背景に胎児・新生児のリスクは今後も高まることが予想されるが、ベッド不足が続けば、妊娠中毒症などでリスクが高い妊婦の紹介や緊急時の母体搬送が円滑に行われにくくなる。また、小児科、産科の医師不足でNICUの施設拡充も難しい情勢だ。
調査をまとめた鹿児島市立病院の茨聡科長は「NICUで重篤な赤ちゃんが救われ、多くは普通の子どもと同じように育っているが、残念なから長く退院できない赤ちゃんも出てきた。家族は添い寝もできず、つらい状況だ」と訴える。
調査結果を受け、同医会や日本医師会、日本小児科学会など7団体はNICUを支援する専門施設の充実を厚生労働省に要望した。

治験結果を公開 理解の拡大期待 新薬開発で日米欧の業界団体 indexへ

新薬開発で製薬会社が行う臨床試験(治験)のデータを一般公開する試みが7月から始まり、東京のベンチャー企業などが公開を始めている。副作用など製薬会社には不利な情報も出し、治験の信用を高めようと、日米欧の業界団体が申し合わせて実現した。治験の協力者を確保するのが難しく、新薬開発が遅れがちな日木の業界は、治験への一般の理解が広がることも期待している。
今回の開示は、日本製薬工業協会と欧米の業界団体、国際製薬団体連合会の4団体が今年1月に出した共同指針に沿って実現した。欧米の製薬大手では、昨年から自社ホームページなどを通じて前倒しで公開している企業もある。
具体的には、新たに始める治験は開始から21日以内に、7月以前に始まつていた治験は9月13日までに、自社ホームページなどで公表する。
武田薬品工業は、日米欧で近く最終段階に入る臨床試験について、早ければ8月下旬に概要などを自社のサイトに掲載する見通し。
情報を横断的に一覧できるように、財団法人「日本医薬情報センタ一」(東京)は医薬品情報データベースに治験情報システムを新設した。誰でもアクセスでき、製薬会社が治験情報を登録したり、患者が登録情報を検索したりできる。
すでに第1号で東京のベンチャー、テムリックが多発性骨髄腫の新薬で行っている治験情報を公開している。16日現在、同社と三共、日本イーライリリーの3社が公開中。利用申請も約30社にのぼる。
製薬会社はこれまで、新薬開発の手の内がばれるなどの理由で情報公開には後ろ向きだった。しかし、グラクソ・スミスクライン(英)が04年、米国で白社の抗うつ剤を未成年者に投与した際の治験情報を隠したとして訴えられ、製薬会社の閉鎖性が社会問題化した。

歯科治療費で便宜受ける 厚労省外郭団体の職員3人処分 indexへ

医療機関から請求される診療報酬明細書(レセプト)を審査する厚生労働省の外郭団体「兵庫県社会保険診療報酬支払基金」(神戸市中央区)の職員3人が、報徳学園高校(兵庫県西宮市)ラグビー部員の名義を使うなどして診療報酬を不正受給していた神戸市の歯科医院から、治療費を無料にしてもらう便宜を受け、文書注意処分になっていたことがわかった。3人は5〜6年にわたって便宜を受け続け、このうち1人は家族の医療費の一部も無料だったという。
同基金によれば、3人は女性職員で、いずれも不正受給問題が発覚した「湯川デンタルクリニック」の湯川誠院長の妻の友人。それぞれ、業務日程の決定や調整をする「企画調整課」、審査するレセプトを整理したり保険請求できる治療項目かどうか下調べしたりする「審査業務課」、医療機関に診療報酬を支払う「資金課」に所属。3人とも歯科の審査業務に直接携わった経歴はないという。
企画調整課の職員は、同歯科医院が開業した98年から04年まで年間約20回通院し、虫歯や歯石除去、歯周病などの治療を受けた。詰め物などの材料費以外、医療費のほぼ全額が無料だった。家族も歯の治療費などの医療費が一部無料だった。
審査業務課の職員は99年ごろから、歯石除去などで年間数回〜20回通院。資金課の職員は99〜今年春ごろまで年間数回通院した。2人とも医療費のほぼ全額が無料だったという。3人で計十数万円以上の支払いを免れていたとみられる。
3人は、同基金の調査に対し、医療費の大半が無料だったことを認め、「医療費を受け取ってもらえなかった。埋め合わせに院長の自宅にお菓子を持って行ったこともある。審査情報を漏らすなど便宜供与をしたことはない」と説明。今後、かかった医療費を同歯科医院に確認し、全額を返済する予定だという。
同基金は5月初旬、同歯科医院を監査していた兵庫社会保険事務局からの情報で調査し、5月25日付で同基金トップの幹事長名で3人を文書注意処分とした。同基金の職務規定によると、処分は解雇や減給などの懲戒と文書注意、口頭注意がある。山崎敏幸総務部長は「3人とも返済の意思があり、反省していることなどを総合的に判断して処分を決めた」としている。
同歯科医院は、報徳学園高校ラグビー部員の名義を使うなどして約178万円の診療報酬を不正受給していたとして、8月1日付で、同事務局から保険医療機関の指定と保険医登録をそれぞれ5年間取り消される処分を受けている。

医療領収書わかりやすく 詳細なら報酬加算 厚労省検討 indexへ

厚生労働省は、病院や開業医が患者に対して治療内容がわかるような詳細な「領収書」を発行した場合に、診療報酬を加算するなどの評価の仕組みを導入する方針を固めた。「請求される医療費の根拠がわかりにくい」との患者の声に応えるもので、患者のチェック機能やコスト意識を高めることで、むだな検査や投薬などをなくすねらいもある。
今秋にも、領収書の様式や加算の内容、方法などを中央社会保険医療協議会(中医協)に諮り、来年度の診療報酬改定での具体化をめざす。
対象となるのは、医療機関の窓口で患者が自己負担分を支払う際に発行される領収書。厚労省は00年3月の通知で「患者から要求があれば発行する。医療費の内容が分かる領収書については、各保険医療機関等の体制を整え、発行に努める」としたが、発行していない所も少なくないという。発行している場合も、様式は各医療機関ごとにばらばらで、請求金額のみを記す例や、「検査料」「投薬料」「入院料」など大まかな項目の小計しか示さない例も多いのが実情だ。
医療情報の公開・開示を求める市民グループなどには、医療費の明細書を示すよう求める声が根強いが、求めて断られるケースもあるという。患者代表として初めて中医協の委員となった勝村久司委員は会議の中で、「何の薬をどれくらい使ったか、その単価はいくらか、患者にも一目でわかるように改善すべきだ」と訴えていた。
こうした事態を受け、厚労省は、例えば検査料であれば、具体的な検査名とその料金を示すことや、画像診断も診断料と撮影料を分けて記載させることなどを検討。指導管理料も、「生活習慣病予防の指導」などと目的や根拠を明示させ、患者が自分の受けた治療内容と意味が一目でわかるようにしたいとしている。
診療報酬の加算によって、各医療機関での領収書発行を促し、医療費膨張の温床となっている不正請求や過剰請求を抑止し、全体としての医療費削減につなげたい考えだ。

医療費最多の31兆4千億円、高齢者4割超す 昨年度 indexへ

厚生労働省がまとめた04年度の概算医療費が、前年度比6200億円増(2.0%増)の31兆4000億円になり、過去最高を更新したことがわかった。そのうち、70歳以上の高齢者の医療費は同4700億円増(3.8%増)の12兆8000億円で全体の40.6%に達し、初めて4割を突破した。
医療費は、高齢化や医療技術の進展などで年3〜4%は自然増となる。04年度は2%増だったが、厚労省は「薬価引き下げ分などを勘案すれば、実質3%台の伸びで、基調は従来と変わらない」としている。
高齢者の医療費は00年度は全体の37.7%、03年度には39.9%と年々微増している。
1人あたりの医療費は同2.0%増の24万6000円。高齢者だけで見ると、同0.3%増の73万9000円となっている。 高齢者をのぞいた一般の人を医療保険別にみると、会社員らが加入する政府管掌健康保険や健康保険組合などの被用者保険は、自己負担割合の引き上げによる2年連続の減少傾向から一転し、前年度比1.6%増の12万9000円、自営業者や無職者が加入する国民健康保険は同0.7%増の21万4000円といずれも増加した。
医療機関別にかかった医療費では、大学病院などの「病院」が前年度比0.7%増の17兆1000億円、「診療所」は同2.5%増の7兆6000億円。「保険薬局」は同7.8%増の4兆2000億円。保険薬局は、ここ数年9〜16%台の大幅な伸びが続いており、厚労省は「医薬分業が進んでいる」としている。

妊婦さんマグロ控えめに 厚労省新基準 水銀、胎児に影響 indexへ

妊婦や妊娠の可能性がある人は好きなマグロも控えめに−厚生労働省は、魚介類などに含まれる水銀の安全性の基準を見直し、今秋から国民に注意を呼びかける。ただし、多量に食べない限り影響はなく、バランスのとれた摂取を勧めている。
同省の薬事・食品衛生審議会の部会が12日決めた。10月にも都道府県に新たな注意事項を通知する。新たな基準は、平均的な1回分の摂取量を80グラム(刺し身1人前程度)とした場合、クロマグロ(本マグロ)、メバチマグロは週1回まで、ミナミマグロ(インドマグロ)は週2回まで。ほかのマグロ類やツナの缶詰などは、特段の注意は必要ないという。キダイ、クロムツなども週2回までなどとした。
同省は03年、妊婦らはメカジキやキンメダイの摂取を週2回以下にするなどの注意事項を公表したが、マグロ類は一度に食べる量が少ないなどの理由で見送られていた。今回は、国際機関が基準を厳しくしたことなどから見直すことにした。
魚介類には食物連鎖を通じて微量の水銀が含まれており、胎児への影響を指摘する報告がある。
聴覚反応が微妙に遅れるなどとされるが、将来支障が出るようなものではないという。

医療関連死の検証 9月から4都府県で indexへ

厚生労働省は10日、手術や治療に伴う死亡事故で医療過誤かどうかがはっきりしない「医療関連死」について第三者機関が事実経過や死因を分析し、遺族らに報告するモデル事業を、9月から東京、愛知、大阪、兵庫の4都府県行う。

静岡県、県内97病院の手術方式や処置ごとの症例数、専門医師数を公表 indexへ

静岡県はこのほど、県内97病院における手術方式や処置ごとの症例数、専門医師数を公表した。悪性腫瘍、循環器疾患、小児医療などについて、各医療機関の2003年度の実績をまとめたもの。併せて、麻酔科専門医、内科専門医、外科専門医などの専門医師数も機関ごとに分かるようになっている。病院選びの際の目安となるものだが、手術方式や処置については、それぞれの病状により適するものが異なることから、「まず、かかりつけ医に相談してほしい」(静岡県健康福祉部企画経理室)としている。公表の対象となったのは、県内の地域医療支援病院(地域医療支援志向型病院を含む)、地域がん診療拠点病院、2次救急輪番制参加病院、救護病院、感染症指定病院、結核病床を有する病院、エイズ拠点病院、難病医療ネットワーク参加病院、地域リハビリテーション病院など。このうち、公表に同意した医療機関の情報がまとめられた。公表データは、年間症例数と専門医数。年間症例数は実患者数。なお、症例はあったがデータを公表することに同意が得られなかった病院、あるいは、今回の調査区分での件数把握が困難な病院については、「―」で表示している。専門医数は、2004年の調査時点で、厚生労働省が「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して広告することができる事項」で規定しているもの。なお、公開された情報は順次、更新していく予定だという。静岡県の発表資料はこちらまで

小児がん経験者向け医療保障スタート 全国初の共済事業 indexへ

生命保険への加入が難しい、小児がん経験者の医療保障を柱にした「ハートリンク共済」が、1日からスタートした。白血病などの小児がんを克服した子をもつ親が自ら奔走し、立ち上げた全国初の共済事業だ。
ハートリンクの医療保障は本人向けと家族向けの2種類。本人向けの掛け金は月2,500〜5,500円。入院1回につき60日間を限度に1日5,000円を給付するほか、50万円の死亡保障もある。
小児がんの最終治療日から7年以上経過した人が対象。定期検査日は数えず、対象を広げた。
立ち上げたのは、新潟市在住でハートリンク事務局長の林三枝さん(52)。娘(22)が小学1年の時、白血病になった。白血病の中でも例の少ない難病で、いったんは「余命3カ月」と宣告された。今は新潟県立病院の看護師になり、夜勤もこなす。
林さんは財団法人「がんの子供を守る会」に加わり、小児がんの経験者が生保に入る難しさを知った。林さん自身も4年前、大手生保に娘の加入手続きをしたが、小児がんの経験を知らせると、断られた。
このため林さんは2年前、別の大手生保と新商品開発を手がけたが、金融庁の許可が下りなかった。「医師が小児がんを告知していないこともあって、長期生存率のデータが足りなかった」。そこで金融庁の許可がいらないものの、自分たちで運営しなければならない共済事業に踏み切った。
問い合わせはハートリンク事務局(025・285・8534)へ。

臓器移植法改正、野党議員が要綱 脳死判定要件厳しく indexへ

法的脳死判定の要件を厳しくし、生体移植についても新たにルールを定める臓器移植法改正案の要綱を、金田誠一衆院議員(民主)らがまとめた。与党議員が提出を目指す2案への対案として議員立法を目指す方針。
要綱では、脳死判定基準に「脳血流及び脳代謝の途絶」を新たに加える。法的脳死判定できる要件も法に明記。「すべての適切な治療を行った上で回復の可能性がない」

大船中央病院の医師ら不起訴処分 横浜地検 indexへ

診療報酬と検査費などを余分に受け取っていたとして、総額約2億円の詐欺容疑で告訴・告発され、書類送検された大船中央病院(神奈川県鎌倉市)の外科部長(57)と元医事課長(50)について、横浜地検は不起訴(嫌疑不十分、一部時効完成)処分とした。処分は7月29日。

医師・歯科医師33人に業務停止 厚労省 indexへ

厚生労働省は27日、医道審議会医道分科会の答申を受け、刑事事件で有罪が確定するなどした医師27人と歯科医師6人の計33人の行政処分を発表した。免許取り消しはなく、いずれも1カ月から5年の業務停止だった。8月10日から発効する。処分のうち、事故などの医療行為に関連したケースは、抗がん剤を過剰投与して少女を死なせた埼玉医大総合医療センターの主治医の指導医で、業務上過失致死罪に問われた本間利生医師(39)=業務停止2年▽組織的な事故隠しが問題となった都立広尾病院事件で、医師法違反が確定した岡井清士元院長(69)=同1年▽君護職に助産行為を行わせ、保健師助産師看護師法違反となった三枝医院(千葉県茂原市)の三枝裕医師(55)=同3カ月ら9人。
このほかの主な処分は次の通り。
【業務停止5年】原外科医院(高松市)、原修一医師(71)=詐欺、詐欺未遂罪【同4年】豊田外科内科(徳島県松茂町)、豊田敬生医師(39)=同▽古賀第一病院(福岡県古賀市)、木村修治医師(50)=詐欺罪▽西岡消化器科(さいたま市)、西岡伸也医師(68)=同▽福岡県久留米市、橋本悟医師(30)=強制わいせつ致傷罪【同1年6カ月】松井クリニツク(富山県氷見市)、松井一成医師(50)=診療報酬不正請求

C型肝炎 40歳未満も無料検査 来年度から早期発見目指す indexへ

厚生労働省は27日、国内で100万人から200万人が感染しているとされるC型肝炎対策の見直し案をまとめた。保健所でのウイルス(HCV)検査についてこれまでの「40歳以上」の年齢制限を撤廃して来年度から対象者を拡大。早期発見、早期治療により肝がん死亡者を減らすとともに、増大する医療費抑制を目指す。
この日午後の専門家会議(座長・高久史麿自治医科大学長)が対策をまとめた報告書案を提示する。これを受け、厚労省は、健診費用などを来年度予算の概算要求に盛り込む方針だ。
C型肝炎は、感染後20〜30年で約3割の人が肝硬変になり、30〜35年で半数が肝がんになるとされる。肝がん死亡者は年間3万4千人を超え、そのうちHCV感染者は8割を占めている。長い間、自覚症状がない「沈黙の感染症」とされ、ウイルス量が少ない初期ほど治療が有効で、早期発見が求められている。
HCV検査は、国が02年度から、感染リスクが高いとされる40歳から5歳刻みの住民検診などの中で始めた。これまで約420万人が受診したが、見つかった感染者は約5万5千人と推計され、潜在感染者の5%程度しか捕捉されていない。
また、厚労省は昨年12月に、HCVが混入した血液製剤「フィブリノゲン」が納入された可能性のある全国の医療機関を公表して検査を呼びかけてきたが、40歳未満でも感染リスクはあることから、患者団体からは、対象者の拡大を求める声が出ていた。
このため厚労省は、保健所で無料で受けられる現在の検査の対象年齢を拡充、40歳未満でも受けられるようにする。さらに、エイズウイルスと同時検査が条件だったものを、HCV検査単独でも可能にし、受けやすくすることにした。
これまで、40歳未満の人の場合は、自己負担で独自に検査を受けるしかなかった。

覚醒剤反応、医師の通報「正当」 「守秘義務に反せず」最高裁が初の判断 indexへ

医師が患者の尿検査をして覚せい剤の反応が出た場合、警察に通報することは守秘義務違反にあたるかどうかについて、最高裁第一小法廷(横尾和子裁判長)は「必要な治療や検査で違法な薬物を検出した場合、捜査機関への通報は正当な行為で守秘義務に違反しない」との初判断を示した。通報をきっかけに覚せい剤取締法違反の罪に問われ、無罪を主張した女性被告(26)=一、二審で懲役2年の実刑判決=の上告を棄却する決定をした。
19日付の決定によると、被告は03年4月、知人と口論の末、腰に刺し傷を負って東京都内の病院に運ばれた。医師は治療の必要から尿を採取。被告が興奮状態にあったため薬物使用についても検査したところ、覚せい剤反応が出た。面会に来た被告の両親に告げたうえで、警察に通報した。

骨粗鬆症 予防・治療に新指針 厚労省研究班 薬の推奨にも基準 indexへ

年齢を重ねるにつれて骨量が減っていく骨粗鬆症の対策に取り組む厚生労働省研究班(主任研究者=折茂肇・健康科学大学学長)は今年度、予防と治療の本格的な指針をつくることにした。治療薬のランクづけや治療を始める目安の基準づくりなどを目指す。患者は全国で1千万人を超えると推定され、対策の充実を迫られている。
人の骨は、骨を形成する細胞と、骨を壊す細胞によって、新陳代謝を繰り返す。年齢が重なると、そのバランスが崩れて骨が減少し、骨折しやすくなっていく。
現行の治療指針は98年に同省研究班が作成し、02年に改定。薬物療法に的を絞っており、治療薬の長所や短所などの記載にとどまっている。
新しい指針は、治療薬を患者に推奨できるかどうか判断を示す方針。臨床研究の質や量、ばらつきのほか、副作用の有無などに基づき、「強く推奨する」「推奨する」「考慮してもよい」「推奨しない」の4ランクでの評価を目指す。
骨折予防のために治療を始める際は、骨量検査のほか、過去の骨折歴や家族の骨粗鬆症、体内で骨の形成や破壊の状態を調べる検査などを考慮に入れる必要がある。指針ではこれらを踏まえた基準を作って盛り込む予定。予防項目も充実させる。
研究班は日本骨粗鬆症学会、骨粗鬆症財団と合同で指針作成委員会を設置した。10月に素案をまとめる。

東京医大心臓外科長 金沢大教授が兼任 indexへ

東京医科大病院(東京都新宿区)の未熟な心臓外科医(辞職)による手術で患者が相次いで死亡した問題で、同病院は、新設される心臓外科長に国立の金沢大医学部付属病院の心肺・総合外科長の渡辺剛教授(46)を招くことを決めた。渡辺教授は同大と東京医科大の教授を兼任。20日の教授会で金沢大から医局員3人が心臓外科の助教授や講師に就任することも承認された。

報酬改訂関与残す 有識者会議 中医協改革で報告書 indexへ

日本歯科医師会をめぐる汚職事件の舞台となった中央社会保険医療協議会(中医協)の改革を議論してきた有識者会議(座長・大森政輔元内閣法制局長官)は20日、公益委員や病院代表を増やし、新たに都道府県代表も加えることなどを柱とする報告書をまとめ、尾辻厚生労働相に提出した。無点となっていた中医協の「権限」については、報酬全体の上げ下げ(改定率)に引き続き意見できる余地を残し、影響力を完全に排除することは避けた。
中医協は厚労相の諮問機関。報告書は、健康保険組合など支払い側委員と、医師ら診療側委員(各8人)が保険契約の当事者として協議し、公益委員(4人)が仲裁する今の3者構成に二「一定の合理性」があると理解を示した。その上で、委員構成については、公益委員を倍増し、「改定が期待した効果をあげたかどうか」を検証する新たな役割を担わせることを提案。また、特定の委員が強い影響力を持つことを防ぐため任期を短縮するよう求めた。
一方、開業医の影響力が強いとの批判をふまえ、5人の医師枠のうち病院団体の代表を1人から2人に増やすべきだとした。
選び方については「病院団体が直接推薦」を大勢の意見としたうえで、「(開業医主体の)日本医師会を通して推薦」との意見を併記。しかし、尾辻厚労相は直後の記者会見で「日医にとりまとめを依頼する」と明言。これまで通り、日医が推薦枠を独占し、影響力が温存されることになった。
制度改正が必要なものについては、年内に取りまとめる予定の医療制度改革関連法案に盛り込み、来年の通常国会に提出する方針だ。

病院側に賠償命令 注射液間違え女児寝たきり「注意義務怠った」 京都地裁 indexへ

京都府宇治市の宇治川病院で01年1月、当時6歳だった加藤美嘉さん(11)=同府城陽市=が過って塩化カリウムを注射されて寝たきりになった医療事故で、両親らが同病院を運営する医療法人仁心会と同病院元医師、元准看護師に約2億6千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が12日、京都地裁であつた。田中義則裁判長は「医師は注射に立ち会うこともせず、准看護師による誤注射を防ぐ注意義務を怠った」などとして、病院側に介護費用など計約2億5千万円の支払いを命じた。
判決は、病院側が事故原因の調査と報告の義務を怠ったと認定。原告の精神的苦痛に対する慰謝料として100万円を賠償金に含めた。
判決によると、01年1月15日、じんましんの治療に訪れた美嘉さんは、塩化カリウム液を原液のまま注射されて障害を負った。
判決は、医師が注射に立ち会っていなかったため、准看護師が指示のあった塩化カルシウムではなく、大量投与により呼吸まひや心停止を引き起こす塩化カリウムを過って注射するのを防ぐことができなかった、と認定した。
さらに判決は、医療事故が起きた場合、病院は原因を調査し、患者側に報告する義務があると指摘。宇治川病院は、事故後約2年10カ月後になって塩化カルシウムがじんましんに効果のない薬剤だったことを認めるなど、原因調査や報告を怠ったなどとした。
この医療事故をめぐっては、元医師の堀道輝被告(72)が業務上過失傷害罪で京都地裁に起訴され、医師としては異例の禁固1年の実刑判決を受けた。准看護師の南千代子被告(64)も同罪で禁固10カ月の実刑判決を受け、ともに大阪高裁に控訴している。
判決後、記者会見した父の会社員加藤嘉津緒さん(47)は「判決はうれしいが、いまだに正確な説明をしない病院の態度は許せない」と憤った。
同病院の朝倉巳作事務長は「判決を重く受け止めている。十分に検討した上で善処させていただきたい」としている。

80年以前の薬副作用「手当」支給へ調査 indexへ

医薬品で副作用が出た人の救済などをしている独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」(東京都)は8日、救済制度ができた80年以前に被害を受けた人を対象にしたアンケートの協力者募集を始めた。これまで救済制度の適用を受けられなかった患者に対する救済措置の一環で、対象者には来年度以降、研究協力への謝礼金の形で「手当」が支給される。
対象者は80年5月1日以前に、副作用で重い健康被害を受けた人(国民年金障害等級2級以上)。結果は来年度に実施予定の調査研究に生かされる予定。問い合わせは8月31日までに、同機構(03-3606-9460)へ。詳細はホームページ(http://www.pmda.go.jp/)で。

「処遇悪い・学べぬ」大学病院に不満 臨床研修医調査 indexへ

昨年4月から必修化された国家試験合格後の医師の臨床研修制度について研修医の満足度を調べたところ、一般病院の「満足34%、不満足23%」に対し、大学病院では「満足34%、不満足43%」と、大学病院での研修に対する不満が目立つことが分かった。
調査は厚生労働省が3月に実施。一般病院827、大学病院100の計927カ所で研修している7392人を対象にアンケートし、4378人から回答を得た。
不満の理由(複数回答)の中で最も多かったのは「処遇・待遇が悪い」の23%。大学病院での平均年収は必修化に伴って前年度の264万円から365万円に増額されたが、一般病院の437万円と比べるとなお低いことが背景にあるとみられる。「初期診療の能力がよく身につけられない」との不満をあげた人が、一般病院でば8%だったのに対し、大学病院は22%だった。

脳血管手術の女性重体 杏林大病院 過って血管損傷か indexへ

杏林大医学部付属病院(東京都三鷹市、石井良章院長)は6日、記者会見し、脳血管内手術中にくも膜下出血が起き、70代の女性が意識不明の重体になったと発表した。同病院はカテーテル操作中に血管を損傷させた医療事故の可能性が高いとして、警視庁や厚生労働省などに経緯を届け出るとともに、家族に謝罪した。
同病院によると、女性は6月24日に脳血管撮影で、脳を包む硬膜部分の血管に異常が確認され、30日に脳の血流を正常に戻すための脳血管内塞栓手術を受けた。
3人の医師が同日午前9時40分に手術を開始。途中でカテーテル操作が困難になり、患者が吐き気やめまいを訴えたことから、手術を中止。頭部、CTなどを実施したところ、くも膜下部分に出血が確認されたこのため、止血剤の投与などの治療を実施したが、同日午後4時20分に容態が急変、昏睡状態になった。
石井院長は「手術は専門医の資格をもつメンバーで実施したが、重大な結果を引き起こし、大変遺憾。早急に原因調査を行い、再発防止に向けて取り組みたい」と話した。

エイズ新薬を開発 熊本大ウイルス量、激減 indexへ

副作用がほとんどなく、従来の薬が効かなくなった人にも効果の高いエイズ新型薬を開発したと5日、熊本大の満屋裕明教授(内科学)が神戸市で開かれたアジア・太平洋地域エイズ国際会議で発表した。細胞に入り込もうとするエイズウイルス(HIV)を入り口でシャットアウトするこれまでにない働きを持つ。現行の薬は、耐性ウイルスができて、早ければ数日で効かなくなるが、新型薬は耐性ウイルスが極めてできにくいという特徴もある。製品化されれば、治療の新たな切り札として期待される。
同教授によると、コードネーム「AK602」というこの新薬は、細胞の表面にあるCCR5というたんぱく質にくっつく。このたんぱく質は、HIVが人間の細胞に入り込む入り口。ここに異物がくっつくことで、ウイルスは細胞に入れなくなる。米国のエイズ患者計40人を対象に臨床試験を実施。1日2回、1回600ミリグラムを10日間のんだ結果、ウイルス量が平均約100分の1に減り、600分の1まで減った患者もいた。副作用は、便が軟らかくなった人がいた程度だった。
AK602は、CCR5の全体ではなく、HIVの入り口部分を選んでふさぎ、人間にとって必要な働きをする部分はあまりふさがない。さらに、従来の薬がウイルスを攻撃するタイプなのに対し、新型薬は人間の細胞に反応する。このため副作用が出にくいという。また、今回対象にした40人のほぼ半数は、薬のほとんどが効かなくなった多剤耐性エイズの患者でこの人たちにも大きな効果を示したことになる。

左右の目誤り手術 名古屋医療センター切開後判明、やり直し indexへ

独立行政法人国立病院機構「名古屋医療センター」(名古屋市中区、斎藤英彦院長)で6月下旬、愛知県内の50代の男性患者に目の腫瘍の摘出手術をした際に、腫瘍のあった左目側ではなく、間違つて正常な右目側を切開していたことが4日、わかつた。同センターは患者と家族に謝罪。手術直前にも手術チームで部位を確認しあうなどの再発防止策をとった。
患者は手術のやり直しを受け、順調に回復している。
同センターによると、男性患者には左目の奥に眼球大の腫瘍があり、6月27日に手術した。40代の男性医師が執刀し、手術開始から約1時間後、切った部分から目で腫瘍を確認しようとしたところ見つからす、左右取り違えに気づいた。
執刀医は、すぐに院内で待っていた家族に説明。了承を得て、正しい左目側の手術を続行した。
手術前、執刀医が切開するまぶた付近に印を付けたが、この時点で誤って右目側に印を付けたらしい。間き取りに対し「右目だと思いこんでいた」と話したという。
手術室には助手の医師や看護師ら5人もいた。医師は5日前の会議で手術手順を確認、看護師は麻酔を受ける前の男性患者に再度、部位を尋ねるなどして左目側の手術であることを知っていたが、執刀医の間違いに気づかなかったという。同センターの森坂清事務部長は「健常な部位にメスを入れたのは大きな問題で、非常に申し訳ない。今後は再発防止に努める」と話している。執刀医らの処分は今のところ考えていない、という。
するが、一向に改羊が見られない一と抗礒した。沖縄市ぜ会は同日、脈時の本会議を町さ、在日米軍司令官らにあてた抗議を決議し、日本政府あての意見膏を可決。被十い者と家族への謝罪や几地の幣理縮小などを求めている。隣の斎手納町議会の几地対策特別貝会も抗耕決礒と一芯見書の文案をまとめた。沖純県の府本礼司・八地防災統括慌は4日、〓柑手納f地や外務省沖紺l務所などを紡ね、抗舐と再発防止を申し入れた。

「医療機関に不満」2割相談せず indexへ

ふだん利用する医療機関に不満や疑問があっても、2割近い人がだれにも相談しない−病院のサービスの質などを審査する財団法人「日本医療機能評価機構」(東京都)が実施した調査で、こんな患者の意識が浮き彫りになった。どこに相談していいか分からなかったり、相談しても解決しないとあきらめたりしているためだ。
「解決しない」とあきらめも理由 医療評価機構調査調査は今年3月、全国の15〜79歳の男女各5千人を無作為で抽出してアンケートを郵送する形で実施し、計5757人から回答を得た。
調査によると、医療費には34.6%、薬には34%、受けた医療には32%の人が「心配・苦情や悩みがある」と回答した。しかし、相談先としては「医師」が38.4%と最多だったものの、次いで18.2%の人が「相談しない」と答えた。「受付や会計窓口などの事務職員」(17.6%)、「患者相談窓口」(10.5%)、「看護師」(7.7%)が続いた。
相談しない理由としては「どこ(だれ)に相談していいのか分からない」(41.6%)、「相談しても解決しない。きちんと対応してくれないと思う」(35.7%)などがあげられた。

ネットでカルテ閲覧システム 住商など、普及に意欲 indexへ

自分のカルテが、いつでもどこでも閲覧可能に−−。住友商事と医療機関が出資する医療情報システム会社が開発した日本初のシステムを使い、こんなサービスが始まっている。医療の効率化やミスを減らす利点に加え、インフォームド・コンセント(税明と同意)を深めたり、複数の医師からのセカンドオピニオンを受けやすくしたりして、患者自身がより積極的に健康管理に取り組める効果も期待される。
医師の所見や治療の中身、検査や投薬内容などが詰まったカルテは紙での保存が義務づけられていたが、99年に厚生省(現・厚生労働省)が電子保存を認めた。
住商は、亀田総合病院(千葉県鴨川市)と共同で00年にアピウス(本社・東京)を設立、2年がかりで独自の電子カルテシステムを開発した。
同病院内に置いたサーバーに、各患者の電子カルテを蓄積。通常のシステムは医療機関内だけの利用だが、患者も自宅のパソコンや携帯電話から接続して閲覧できるのが特長だ。特別なソフトは必要なく、インターネットにつないだパソコンや携帯電話から、本人認証などで利用できる。
地域連携やチーム医療に対応し、複数の医療機関でカルテを共有することもできる。同病院を核に南房総の19の医療機関では、医療情報ネットワークを通じてシステムを使い、約2千人の患者や家族が利用。診療所の場合で導入に約550万円かかるが、すでに都内の診療所など計100カ所でも採用されたという。
カルテの共有化は、問診や検査の重複をなくし、患者の待ち時間や診療時間を短縮するなど医療の効率化にもつながる。医療ミスの防止や、帳簿類を運ぶ手間など業務の効率化にも役立つ。
アピウスの美藤斗志也副社長は「カルテが気になる患者の不安も取り除け、サービスと医療の質の向上を同時に実現する切り札になる」と強調。普及に意欲をみせる。

ネット上の医療情報、不適切表現を制限 厚労省が指針 indexへ

厚生労働省は29日、病院のホームページ(HP)上で治療方法や治療成績などがあいまいな表現で紹介されていることなどから、表現方法についてのガイドラインを作る方針を決めた。今後、病院団体や医師ら関係者の意見を聞き、自主的なルールとして運用する一方、うそや著しく不適切な表現があった場合に法律で規制することも検討していくという。
現在、不特定多数を対象とした病院の「広告」については医療法上の規制があり、診療時間や診療科などに限定されている。一方、HP上での「広報」などインターネット上の情報については規定がないのが実情だ。
病院のHPをめぐっては、東京都が今年3月に77項目の情報について注意点を列挙したガイドラインをまとめており、厚労省でもこうした例を参考に検討。具体的には、「画期的な治療方法」などといった誇大な表現をやめることや、がん治療の生存率などの治療実績を載せる際、根拠の明示を求めていくことなどが柱となる見通しだ。
また、診療実績の「広告」のあり方については、患者によってがんの進行度が違うなど公正に比較する共通の指標がないため、ガイドラインと並行して、客観性と検証可能性を確保するための研究を進める。結果がまとまり次第、広告可能な情報として医療法に盛り込んでいく考えだ。

滋賀・赤十字 B型肝炎の課長献血 感染知りつつ偽名で6回 indexへ

滋賀県赤十字血液センター(草津市笠山7丁目)の課長(51)が、自分がB型肝炎ウイルス(HBV)に感染していたことを知りながら、偽名を使って6回にわたって献血していたことがわかった。血液は血液製剤などとして県内の医療機関に提供されたが、血液中に肝炎の免疫があることが確認されており、安全性に問題はないという。日本赤十字社の基準では、肝炎ウイルス感染者の献血は禁じられており、厚生労働省は「ルール違反で、問題がある」としている。
同センターによると、この課長は以前からHBV感染を示すとされるHBc抗体と、免疫ができていることを示す別の抗体の両方を持っていたが、1997年6月に献血した際に、免疫を示す抗体がなくなっていることがわかった。その後、00年6月と7月にワクチン接種を受け、再び免疫が出来たことを示す抗体が検出されたという。日本赤十字社の内部規準では、一度でも献血に不適合と判断された場合は、安全性を確保する目的で、それ以降は献血の対象外としている。

体内のダイオキシンやPCB 高脂血症薬で削減効果 indexへ

体内のダイオキシンやポリ塩化ビフェニール(PCB)は、高脂血症を治療する医薬品の服用で濃度を下げられることが、森千里・千葉大学大学院教授(環境生命医学)らの研究で分かった。汚染度の高い人ほど効果が大きく、6カ月間で最大40%の削減効果があったという。福岡県久留米市で開かれている日本臨床環境医学会で2日、発表した。
ダイオキシンやPCBは濃度の多少はあるが、現代人の体内に蓄積され、ごく微量で中枢神経の発達やホルモン分泌にダメージを与えるとの指摘もある。体内濃度を下げる手法が示されたことで具体的な被害防止策を講じる道が開かれた。
森教授らは、ダイオキシンやPCBが油脂に極めて溶けやすいことに着目。高脂血症の治療のためコレステロール値を下げる医薬品「コレスチミド」を服用する患者9人に協力を求め、治療前と半年間の服用後で、体内のダイオキシンやPCB濃度の変化を調べた。
9人の平均で、治療前はダイオキシンが血液中の脂肪1グラムに44ピコグラム(ピコは1兆分の1)、PCBが同260ピコグラムだったのが、服用後はダイオキシンが同35ピコグラム(20%減)、PCBが同200ビコグラム(23%減)になっていた。
中でもダイオキシンが同57ピコグラム、PCBが同360ビコグラムだった患者は、服用後それぞれ同35ピコグラム(39%減)、同200ビコグラム(44%減)と、大幅に減少。9人とも、ダイオキシンとPCBの減少率はほぼ同じだった。
ダイオキシンやPCBは脂肪組織に多く蓄積される。排出速度が遅いうえ、いったん胆汁に溶けて腸内に放出されても、再び腸から体内に吸収される。コレスチミドは腸からの脂肪吸収を抑制することから、効果を示したとみられるという。

脊髄損傷 患者の骨髄移植 関西医大承認 国内初の再生医療 indexへ

事故で首を強打して半身不髄になる脊髄損傷の患者に、自身の骨髄細胞を培養して移植する日本で初めての再生治療について、関西医科大学(大阪府守口市)は1日、医学倫理委員会の審議を経て実施を承認した。損傷した脊髄に細胞が到達すれば、神経が再生してまひの程度が改善される可能性がある。今後2年間で23人を目標に治療する方針という。
責任者の中谷寿男教授(救急医学)によると、脊髄損傷を起こした直後の患者から骨髄を採取。間質細胞という細胞を分離して培養し、脇腹周辺から脳脊髄液に注射する。
脊髄損傷を起こさせたネズミの実験では、細胞を移植したネズミの方が足の動きがよく回復し、損傷部分に生じた空洞も小さくなった。ただしサルを使った実験は動物愛護の面から実施していない。サルの脳脊髄液に細胞を注入し異常が起きないことは確認している。
中谷教授は「どの程度人間で効果があるかはわからない」としている。患者の同意を取る際に過大な期待を与えないように、説明同意文書の表現を慎重にしたという。

業過致死容疑で医師を書類送検 性転換手術巡り indexへ

大阪市北区の美容・形成外科「わだ形成クリニック」で02年、女性への性別適合(性転換)手術を受けた男性(当時35)が手術後に急死した事件で、大阪府警は1日、執刀した和田耕治院長(51)=同区曽根崎新地2丁目=が麻酔で呼吸困難に陥った男性に対し、適切な措置をとらずに死亡させたとして、業務上過失致死容疑で書類送検した。和田院長は「結果として救急医療機関への転送が遅れたのは確かだが、麻酔や容体の管理に問題はなかった」と容疑を否認しているという。

血液製剤投与ミス 三井記念病院期限切れを使う indexへ

東京都千代田区の「三井記念病院」(萬年徹院長)で6月12日、手術中の80代の女性患者に有効期限が過ぎた血液製剤が過って投与されていたことが1日、わかった。患者の容体に悪影響はみられないというが、期限を半年ほど過ぎた濃厚血小板5単位も含まれていた。病院は患者や家族に謝罪するとともに、1日、都に事実経過を報告した。
日本輪血学会の専門家によると、期限切れの血液製剤が過って患者に使用されるのは、極めてまれだという。
同病院によると、過って使われたのは、止血機能をもつ照射濃厚血小板の計25単位。このうち昨年11月に期限が切れたのが5単位(約100ミリリットル)、10日前に期限が切れたのが20単位(約250ミリリットル)あった。
女性が6月12日、緊急手術を受けた際、担当医の指示を受けた研修医たちが、「実習目的」で使うために保管されていた使用済みの血小板を保冷庫から持ち出したという。
同病院は翌日に職員の指摘で事態を把握。患者に謝罪した上で細菌が入り込まなかったかどうか検査したところ、陰性で問題はなかったという。

歯周病菌、手足の血管にも悪さ?難病「バージャー病」発症や悪化に関係か indexへ

手や足の血管が詰まる難病、バージャー病が歯周病菌と関連していることを東京医科歯科大の岩井武尚教授(血管外科)や石川烈教授(歯周病学)らが突き止めた。予防や悪化防止にもつながる成果という。米国の血管外科専門誌の7月号に発表する。バージヤー病患者は国内に約1万人とみられる。手足の動脈に炎症が起きて血流が悪くなり、足の切断に至ることもある。
岩井教授らは患者の同意を得た上で、病気になった動脈で歯周病菌のDNAの有無を調べた。歯周病菌にはさまざまな種類があるが、今回は代表的な7種類で検査、患者14人中13人で見つかった。14人全員が歯周病になっていた。バージャー病でない7人の動脈からは菌は見つからなかった。ネズミでの実験で、歯周病菌が血管内に血のかたまりを作ることも分かった。
これらの結果から岩井教授らは、口の歯周病菌が血管の中に入り、バージャー病の発症や悪化に関係するとみている。バージャー病は喫煙者に多く、喫煙は歯周病を悪化させる。歯周病を抑えることや禁煙が、予防や悪化防止につながるという。

胃のピロリ菌退治 「全がん状態」も改善 元凶説を裏付け 厚労省研究班 indexへ

胃がんの「前がん状態」でも、胃の中のピロリ菌を除菌すると、進行を抑え、状態を改善する効巣がある。そんな研究結果を、厚生労働省研究班がまとめ、1日、岡山市で開催中の日本ヘリコバクター学会で発表する。主任研究者の斉藤大三・国立がんセンター中央病院内視鏡部長は「胃がん予防を考えると、慢性胃炎が進んだ人も除菌した方がいいかも知れない」という。
研究対象は96〜04年に登録された全国20〜59歳のピロリ菌感染者で4年以上経過した392人。胃がんへ進む前の状態と考えられている萎縮性胃炎や腸上皮化生(胃の粘膜の変性)など慢性胃炎になった患者について、抗生物質を飲んで除菌するグループと、除菌しないグループに無作為に分け、番5.3年にわたって症状を追跡した。
患部の細胞を採取して調べた結果、胃の下部の萎縮性胃炎で状態が改善した割合は、除菌しなかった116人で17人(15%)に対して、除菌した116人では72人(62%)だった。胃の上部や中部の萎縮性胃炎、腸上皮化生を含め、すべて除菌した人の方が∞29〜47ポイント改善率が高かった。効果は性別や年齢層に関係なく見られた。
ピロリ菌に感染すると胃の粘膜が傷つけられ、慢性胃炎になり、さらに胃の粘膜が薄くなる萎縮性胃炎、さらに腸上皮化生になる。これが続くと胃がんを発生しやすい−−。こうした筋書きが動物実験や過去の疫学調査から示唆されてきており、ピロリ菌を除菌すると胃がんの発症率が3分の1以下になるとする研究結果もあった。「ピロリ菌元凶説」はかなり広まっているが、科学的根拠は必ずしも十分ではなかった。
今回の研究は最終的な胃がんの発生頻度まで調べたものではないが、前がん状態でもピロリ菌除菌が胃がんへの進行抑制効果を持つらしいことを厳密な研究で裏付けた点で画期的だ。
除菌は、胃酸の分泌を抑える薬と2種類の抗生物質の計3種類の薬を、朝晩に1週間続けて飲むのが標準的だ。胃潰瘍や十二十二指腸潰瘍の治療などでは公的な医療保険が適用されている。ただ、逆流性食道炎などの副作用報告されている。
ピロリ菌正式名はヘリコバクターピロリ。大きさ4マイクロメートル(千分の4ミリ)ほどで、らせん形にねじれた棒状の細菌。鞭毛(ベんもう)で動き、胃粘膜を覆っている粘液に潜り込む。日本人は国民の約半数が感染しているといわれる。中高年ほど感染率が高く、抵抗力が弱かった子どものころに感染したとみられる。

医療関係の訴訟、新規件数が年間1000件時代に突入 indexへ

年々増加している医療関係の訴訟は、ついに年間1000件時代に突入してしまった。最高裁判所のデータによると、2004年の新規件数は1107件となり、前年の998件から109件の増となった。1994年の新規件数が506件だったことから、この10年間で2倍になったことになる。
 一方で、何らかの決着がついた件数(既済)も年間1000件台を保っており、また、平均審理期間も27.3月で前年に引き続き30月を切り、この10年余りでもっとも短くなった。最高裁が進めていた「医事関係訴訟委員会」の設置などの改革が成果を生み出している。
 診療科目別に新規件数を見た場合、もっとも多いのは「内科」で272件だった(以下の図。複数にまたがる事件ではそれぞれの科目に計上されている。概数であり後日変更がありうる)。次に多いのが「外科」で228件。「整形・形成外科」が148件で3位に入っている。前年3位だった「産婦人科」は、143件で4位となった。2001年から2004年の4年間で見ると、「歯科」が49件から83件に急増しているのが目に付く。