brain office pad incロゴ

TOP>医療事故PICKUP

amazon/医学関係書籍検索
新ログインシステム/特許出願済
お問合せ

群大病院、診療報酬不正請求か…腹腔鏡手術で indexへ

 群馬大学病院(前橋市)で、腹腔鏡を使う高難度の肝臓手術を受けた患者8人が死亡した問題で、保険適用外の手術に診療報酬を不正請求した疑いがあるとして、厚生労働省が今月、病院への監査に本格的に着手したことがわかった。
 不正請求を確認すれば返還を求める。組織的な不正など悪質性が高いと判断された場合、保険医療機関の指定を取り消す行政処分が行われる可能性もある。
  群馬大病院によると、問題の起きた旧第二外科では、2010年12月~14年6月に保険適用外とみられる腹腔鏡手術が計58例行われ、うち35例で診療報 酬が請求されていた。本来は保険適用外とみられる腹腔鏡手術を、保険適用された腹腔鏡手術や開腹手術として請求していた。
 監査では、カルテやレセプト(診療報酬明細書)を調べるなどし、こうした請求が不正に当たるかどうか確認。不正請求額を確定したうえ、返還請求することになる。
 保険医療機関の指定が取り消されると、患者の全額自己負担になり、診療に大きな支障が出る。腹腔鏡手術を巡り、同様の不正請求が発覚した千葉県がんセンターは先月、不正請求があったとして厚労省から戒告を受けた。

手術死亡率の把握、検証を…国立大病院長会議が提言 indexへ

 群馬大学病院(前橋市)で腹腔鏡を使う高難度の肝臓手術を受けた8人が死亡した問題などを受け、国立大学付属病院長会議は22日、東京都内で記者会見を開き、高度な医療を行う際の倫理手続きや医療安全体制について緊急提言を公表した。
 群馬大病院では、臨床研究として行われるべき保険適用外の高度な手術が倫理審査を通さず一般診療で行われ、患者が死亡しても医療安全部門へ報告されていないなどの問題があった。
 緊急提言は、職業倫理を担保する体制として、高度な手術を行う際、倫理手続きが必要な臨床研究とするか、一般診療でよいか判断する委員会を院内に設置するよう提案。一般診療として行う場合、委員会が、倫理的に問題ないか事後も含めて評価することを求めた。
  診療体制については、診療科長が手術に関連した死亡率を把握、検証することの必要性を強調。今春までの群馬大病院のように、外科が第一、第二に分かれ同じ 診療を行うといった一部の大学病院に残る閉鎖的な体制を「(医療事故などの)隠ぺいや人材の分散など、不利益が多い」と批判し、解消に努めるよう提言し た。
 同会議常置委員長の山本修一・千葉大病院長は「大学病院の信頼を揺るがす事態。医の倫理という根本的な問題の見直しが必要だ」と語った。

腹腔鏡死亡…群大執刀医「十分に説明」調査への反論文、遺族に indexへ

 群馬大学病院(前橋市)で腹腔鏡 を使う高難度の肝臓手術を受け患者8人が死亡した問題で、執刀医(3月末で退職)と元上司の教授が病院を通じて遺族に謝罪文などを郵送していたことがわ かった。問題発覚から7か月たつが、執刀医らが遺族に謝罪したのは初めて。同時に、病院の調査報告書に対する反論文も郵送され、病院に提出されていた執刀 医らの反論内容が明らかになった。
「救命できず」謝罪文も
 複数の遺族によると、謝罪文 は今月17日付。執刀医と教授の連名で、A4用紙1枚に数行の内容。「患者の救命ができず大変申し訳なく思う」などと謝罪し、一部の遺族が求めていた面会 による説明は「差し控える」と応じない意向を示した。代わりとして、退職前に病院側に提出した「事故調査報告書への反論」という13ページにわたる文書 と、患者別の診療内容に関する報告書への反論を送付した。
 反論文では、患者や家族に「大変申し訳ない」としたうえで、調査報告書に盛り込 まれた項目ごとに詳細な見解を提示。記述が少ないという診療記録の不備は認めたものの、患者へのインフォームド・コンセント(説明と同意)、症例の検討な どが不十分とされたことなどには不服を述べた。
 個々の患者の手術についても、「(報告書で指摘された)問題があったとは断定できない」などと反論している。
 腹腔鏡手術の実施数は、手術を停止した2014年9月までの「103例」が正しいと指摘。同年6月までの「93例」と少なくされたことで「実際より高い死亡率が公表された」と主張した。
 執刀医らは、病院側に反論文の公表を求めていた。

執刀医・教授の反論文、遺族「言い訳」「とにかく事実を」 indexへ

 執刀医と教授による謝罪文や反論文に対し、遺族は怒りをあらわにするとともに、真相解明を訴えた。
 60歳代の母親を亡くした女性は「ほとんど言い訳で、ひどい。患者の気持ちを考えているのか」と憤った。
  特に違和感を覚えたのが、インフォームド・コンセント。反論では「1時間以上の時間をかけて、十分に説明するように心がけていた」とされていた。女性は 「患者や家族にとっては、手術のデメリットや他の治療法も示されて初めて十分な説明だが、それが一切なかった」と訴えた。
 この点には、母親を亡くした別の女性も「1時間以上は説明したなんて私の記憶にはない。もっときちんと反省してほしい」と話した。
 「見たくない」と受け取らなかった遺族もいる。送付の申し出を断った女性遺族は「なぜ亡くなったのか、病院の調査報告でもよくわからなかった。反論文を読んだところで真実はわからないだろうと思う」と心境を語った。
  病院が3月初旬に公表した調査報告書を巡っては、外部委員に無断で内容の一部が修正されたほか、執刀医の聴取内容が外部委員に知らされないなど、調査の問 題点が次々に発覚。病院側は、新たに委員会を設置し、再調査する方針を示している。再調査について、父親を亡くした男性は「とにかく事実が知りたい。反論 文を読み、病院が執刀医に責任を転嫁したのかという疑問も生まれた。病院は、執刀医の話も調べたうえで新しい報告書を作ってほしい」と希望した。

流産繰り返す夫婦、着床前診断でも出産率改善されず indexへ

 流産を繰り返す夫婦が、受精卵を調べる「着床前診断」を受けた場合、流産は減らせるものの、出産率は改善されないとの研究結果を、名古屋市立大学やセントマザー産婦人科医院(北九州市)などのチームがまとめ、米電子版科学誌プロスワンに掲載された。
  国内では、重い遺伝病予防の場合のほか、親の特定のタイプの染色体異常による「習慣流産」に限り、受精卵を調べて正常なものを子宮に戻す着床前診断が認め られている。しかし、自然妊娠を選んだ場合よりも子どもが得られる割合が高くなるのか、はっきりしていなかった。時期や患者の年齢などの条件をそろえて比 較した研究は初めて。
 2003年から13年までに受診した、35歳未満で着床前診断の対象になる習慣流産の患者のうち、着床前診断を受けた37人と自然妊娠を選んだ52人を比べた。
 平均流産回数は、着床前診断のグループは0・24回で自然妊娠グループの0・58回より少なかったが、最終的に子どもが得られた割合は67・6%と65・4%で差がなく、妊娠に至るまでの期間もほぼ同じだった。
 同大産科婦人科の杉浦真弓教授は「着床前診断に過大な期待は持つべきではない。このような研究結果があることを、着床前診断を受けようとする夫婦に事前に説明する必要がある」と話している。

病床1割削減に日本医師会反発「越権行為」 indexへ

 10年後に全国の医療機関の入院ベッド(病床)を今より1割以上削減できるとした政府推計に対し、日本医師会は17日の記者会見で、「医療・介護体制の改革にまで踏み込んでおり、行き過ぎだ」などと反発するコメントを発表した。
 中川俊男副会長は「推計には医療関係者がほとんど参画していないのに、具体的な改革に踏み込んでいる。越権行為と感じる」などと不快感を示した。

処方薬を転売、利益1千万円か…国保で164病院受診 indexへ

 ぜんそく用の処方薬を無許可で販売したとして、大阪府警は16日、堺市堺区、無職赤松健二容疑者(44)を医薬品医療機器法違反容疑で逮捕した。
 府警によると、赤松容疑者は国民健康保険(国保)を使って近畿の164病院で受診。薬局で購入した約5700個の処方薬を転売し、約1000万円の利益を得ていたという。
 発表では、赤松容疑者は医薬品販売の許可がないのに、今年4月下旬、金沢市内の医薬品販売会社に処方薬24個を約10万円で販売した疑い。「自分で使い、余った分を引き取ってもらっていた。販売はしていない」と容疑を否認しているという。
  府警によると、赤松容疑者はぜんそくの持病があった。2013年7月~今年5月、大阪や京都などの病院で診察を受け、薬局で薬を購入。同じ販売会社に転売 を繰り返していたとされる。処方された薬の合計は、通常の用法なら130年分に相当するという。赤松容疑者は、診察費と薬代のうち3割を自己負担分として 支払っていたが、7割は国保から支出されていた。
 国保は加入者の保険料や国の負担金などで運営されており、主に市町村が不正の有無などを 審査している。赤松容疑者が保険料を納める大阪府松原市の担当者は読売新聞の取材に対し、「府警から連絡が入るまで多額の請求を把握できていなかった。医 療機関からの請求には注意しているが、個人の不正は想定外で、チェック体制が不十分だった。再発防止策を検討する」と話した。

小児用補助心臓を承認へ、厚労省部会が了承 indexへ

 医療機器を審査する厚生労働省の専門部会は12日、国内初の子ども用補助人工心臓の製造販売を了承した。同省は月内にも正式承認する。
 人工心臓は独ベルリンハート社製で、重い心臓病の子どもの心臓と外部のポンプをチューブでつないで血液を循環させる。乳児から装着でき、長期間の使用も可能で、海外では約20年前から使われている。

高血圧薬で不適切広告、武田薬品に業務改善命令 indexへ

 武田薬品工業(大阪市)が高血圧治療薬「ブロプレス」を巡り不適切な広告を行った問題で、厚生労働省は12日、医薬品医療機器法(旧薬事法)に基づき、同社に業務改善命令を出した。
 問題の広告が、同法が禁じる誇大広告にあたると、厚労省は判断した。製薬会社が誇大広告で業務改善命令を受けるのは初めて。
  京都大などによるブロプレスと他の薬を比べる臨床研究で、効果に明確な差がなかったにもかかわらず、同社は広告で、グラフに矢印を付けるなどして差を強調 しようとした。このグラフは、ブロプレスが有効に見えるよう線がずらされていた。厚労省の聞き取りに同社側は、グラフの強調を認めたが、線の書き換えは否 定したという。
 厚労省は同社に対し、外部有識者を交えた広告審査実施や、法令に関する社員教育の徹底を求めた。同社は「心配をかけおわびする。必要な改善策を実施する」とのコメントを出した。

生体肝移植死亡で専門家「移植中断を」 indexへ

 生体肝移植を受けた患者9人中5人が死亡した神戸国際フロンティアメディカルセンター。神戸市は12日、安全管理体制が不十分などとして改善を指導した。
 専門家からは「移植を中断し、第三者による検証をすべきだ」との声が上がった。
 「アクシデント報告は改善のため必要。それが院内の報告ルートにのっていなかった」。この日、記者会見した伊地智昭浩・神戸市保健所長は報告した。
 立ち入り検査結果について、肝胆膵分 野の移植外科医は「死亡率の高さを考えると、客観的な検証が必要だと思う。少なくとも改善されるまで移植は中止すべきだ」と話した。日本移植学会理事長の 高原史郎・阪大教授は「これまでの学会の要望と神戸市の指導を重く受け止め、指摘された内容を全て達成されることを強く望む」と述べた。

安全に疑問、まずは検証を…生体肝移植死亡 indexへ

 神戸国際フロンティアメディカルセンターに対し、神戸市が医療安全上の問題を指摘し改善を求めた。
 市の指導は、今後の診療に踏み込むものではないが、安全管理に疑義が生じた以上は、移植を続ける前に、第三者による詳細な検証が必要ではないか。
 同センターでは、中断していた移植を再開して間もなく、新たに患者が死亡する事態となった。現状では、安全性が十分担保できているのか疑念を抱かせる。
 市の指摘によると、病院の適応評価委員会も記録が不十分だったといい、患者が移植に適していたのかという疑いも生じかねない。移植がかえって命を縮めるようでは本末転倒になる。
 国や自治体の後押しを受け、神戸医療産業都市の一翼を担う同センターは、社会的な注目度も高い。いったん立ち止まって現状を見直し、信頼回復に努めるべきだ。

「術後管理が不十分」生体肝移植死亡、神戸市が病院に改善指導 indexへ

 神戸国際フロンティアメディカルセンター(神戸市)で生体肝移植を受けた患者9人中5人が死亡した問題で、神戸市は12日、記者会見し、医療安全管理体制に不備があるとして、同センターに対し、報告体制の充実や研修の早期実施を求める改善指導を行ったと発表した。
 そのうえで、生体肝移植について、術後の管理体制が不十分で、患者・家族への説明と同意の手続きにも不備があると指摘した。
  同市は8日、医療法に基づく立ち入り検査を実施。同法の施行規則で設置が義務づけられている、院内の医療安全委員会について調査した。その結果、臓器提供 者(ドナー)が肝臓の血管が詰まる門脈血栓を起こして再手術した事例について、医療事故などの情報を収集する医療安全委員会にアクシデントとして報告され ていなかったことが判明した。
 同市はセンターに対し、医療安全委員会への報告体制を充実させ、職員の研修を早急に実施するよう指導。6月末までに改善計画書を提出するよう求めた。
  また、同市は、これまでに生体肝移植を受けた患者やドナーのカルテなども調べ、▽移植実施の可否を決める院内の適応評価委員会の記録が不十分▽手術に関す る患者や家族へのインフォームド・コンセント(説明と同意)の手順が統一されておらず、主治医のサインがない承諾書があるなど定型化されていない▽術後管 理の体制が一部不十分――との指摘を、同センター側に口頭で伝えたことを明らかにした。
 センターでは昨年12月~今年4月、生体肝移植を 受けた8人のうち4人が死亡。これを受けて、専門医団体の日本肝移植研究会が「医療体制が不十分」などと指摘したことを受け、移植を一時中断していたが、 「体制が整った」として今月3日に再開した。この時に手術を受けた患者は5日に死亡した。
 センターの広報担当は「指摘事項は真摯に受け止め、しっかり改善に向けて対応したい」と話した。

5人死亡・神戸の病院に移植自粛要望…移植学会など indexへ

 生体肝移植を受けた患者9人中5人が死亡した神戸国際フロンティアメディカルセンター(田中紘一理事長)に対し、日本移植学会と日本肝移植研究会は、十分な体制が整うまで移植を自粛するよう求める要望書を出した。
  要望書では、〈1〉全9症例について、手術に適していたかの判断や、手術、術前術後の管理、患者や臓器提供者へのインフォームド・コンセント(説明と同 意)などが適切だったかどうか第三者による検証を行う〈2〉十分な体制整備ができるまで生体肝移植を自粛する〈3〉体制が整備された際には第三者により確 認を行う――の3項目を求めている。
 同センターは「要望書が届いておらず、コメントできない」としている。

抗不安薬や睡眠薬で急性薬物中毒、4割が過剰処方 indexへ

 抗不安薬や睡眠薬を過剰服用して意識障害などが表れる急性薬物中毒を起こした患者の約4割が、添付文書で定められた規定量を超える処方をされていたとする調査結果を、医療経済研究機構(東京)がまとめた。
 同機構の研究グループは「処方のあり方を見直す必要がある」としている。
  研究グループは、健康保険組合の加入者172万人分の診療報酬明細書のデータを分析。2012年10月~13年11月の間に、自殺などを目的に多量の抗不 安薬や睡眠薬を服用し、急性薬物中毒を起こした210人について、その3か月前までさかのぼって薬の処方状況を調べた。対象者は、うつ病や統合失調症な ど、精神疾患の患者が多数を占めた。
 添付文書で定められた規定量を超えて処方されていたのは82人で、39%に上った。処方した医師は、精神科医が89%を占めた。
  研究グループのメンバーで国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部の松本俊彦部長は「患者の求めに応じて医師が安易に処方してしまう傾向がみられ る。治療薬が多く患者の手元にあると、乱用につながる恐れがあり命にかかわる。こうしたリスクを考慮し、処方日数や量、種類は慎重に決めるべきだ」と指摘 している。

生体肝移植死亡、神戸の病院立ち入り終了 indexへ

 神戸国際フロンティアメディカルセンター(田中紘一理事長)で生体肝移植を受けた患者9人中5人が死亡した問題で、神戸市は8日夕、医療法に基づく同センターへの立ち入り検査を終えた。
  市によると、市保健所の担当者と外部の専門家計7人がこの日、午前10時から午後5時まで検査を実施。患者のカルテや医師らの出勤簿などを確認しながら、 田中理事長らから事情を聞いたという。市は今後、検査内容を検討し、安全管理体制に問題が見つかれば改善を指導。検査内容についても近く公表するという。

生体肝移植患者死亡、神戸の病院に立ち入り検査 indexへ

 神戸国際フロンティアメディカルセンター(田中紘一理事長)で生体肝移植を受けた患者が死亡する例が相次いでいる問題で、神戸市は8日、医療法に基づき、同センターの立ち入り検査を始めた。
 午前9時50分頃、神戸市保健所の担当者と、外部の生体肝移植や医療安全の専門家計7人がセンターに入った。検査では、手術を受けた患者のカルテや医師らの出勤簿を調べるなどして、同センターの安全管理体制が適切だったかを検証する。
 同センターでは昨年12月~今年4月に生体肝移植手術を受けた患者8人のうち、4人が術後1か月以内に死亡。専門医団体の日本肝移植研究会が移植の停止と体制の見直しを求める調査報告書をまとめた。
 同研究会の指摘を受け、センターは手術を延期していたが、今月3日、体制が整ったとして再開。この時に手術を受けた男性も5日に亡くなった。

移植医療の信頼性「危機感」…生体肝手術死で学会、改善策勧告へ indexへ

 生体肝移植を受けた患者の死亡が相次いだ神戸国際フロンティアメディカルセンター(神戸市)で、新たに患者が死亡したことを受け、日本移植学会は6日、記者会見を開き、「移植医療の信用を失いかねない」と強い危機感を表明した。
 そのうえで同センターに対し、安全性確保に向け、日本肝移植研究会と共同で近く勧告を行う考えを示した。
  同センターでは、生体肝移植を受けた患者8人中4人が死亡。症例を調査した同研究会が診療内容や体制の不備を指摘し、体制が整うまで移植は中断すべきだと する報告書をまとめた。神戸市も今月8日に立ち入り検査を予定している。しかし、それに先んじて同センターは移植を再開し、その患者が5日、死亡した。

神戸の病院、生体肝移植再開で手術の男性死亡 indexへ

 生体肝移植を受けた患者8人のうち4人が死亡した神戸国際フロンティアメディカルセンター(神戸市、田中紘一理事長)は5日、問題を受けて延期し ていた移植再開後初の手術を受けた男性患者(63)(兵庫県西宮市)が同日午前に亡くなったと発表した。 同センターでは生体肝移植を行った9例中5例で 死亡したことになる。男性の死因や死亡時刻などを明らかにしていないが、午後に記者会見し、詳しい状況を説明する。
 男性は肝臓がんなどを 患い、妻の肝臓の一部を移植する手術を3日午前10時50分~4日午前5時20分に18時間半かけて受けたが、翌5日亡くなった。神戸市は同センターの安 全管理体制を調べるため、8日にも医療法に基づく立ち入り検査を予定していたが、検査前に移植に踏み切っていた。
 同センターでは昨年12 月~今年4月に生体肝移植手術を受けた患者8人のうち、4人が術後1か月以内に死亡。この問題を受けて調査した専門医団体の日本肝移植研究会が4月、「手 術や術前術後の管理に問題があった」とし、移植の停止と体制の見直しを求める報告書をまとめた。
 この報告書を受け、同センターは4月22日に予定していた男性の移植手術を延期したが、今月1日に田中紘一・京都大名誉教授が院長職から退き、外部の移植専門医を手術に参加させるなどの新体制を発表、体制が整ったとして、再開した。
 男性の家族は代理人の弁護士を通じ、「結果は残念だが、移植手術を受けられたことで生きる希望を持てた。センターの医師とスタッフに感謝している」などとするコメントを出した。
 同市の立ち入り検査前の手術再開を控えるよう同センターに求めていた同市医師会の置塩隆会長は、男性が亡くなったことに「患者だけでなく健康な臓器提供者の体も傷付ける手術なので慎重な対応が必要だったはず」と話した。

「先進医療から逸脱」カフェイン併用化学療法で少女死亡…4人処分 indexへ

 金沢大学付属病院(金沢市)の教員らが、がん患者に対して実施した治療法が、厚生労働省の定める「倫理指針」に違反していた問題で、同大が治療グループの責任者ら計4人に対し、文書訓告などの処分を行ったことが、3日わかった。
 同大総務部職員課によると、処分は今年3月23日付。「先進医療制度から逸脱した治療だった」などとして、治療グループ責任者の教員が文書訓告を受けたほか、幹部職員2人と別の教員1人が、山崎光悦学長から口頭注意を受けた。
  治療法は、骨や筋肉にできたがんに働きかける「カフェイン併用化学療法」。昨年12月26日に外部有識者らを含む調査委員会がまとめた最終報告書などによ ると、同療法は臨床試験としてのみ実施が認められるが、2010年3月、臨床試験の条件を満たさずに同病院で同療法を受けていた当時16歳の少女が死亡。 同病院は、現在、同療法を中止している。
 報告書は、「(同療法は)抗がん剤の作用を増強する可能性があるが、有効性と安全性に関する評価はまだ確立されていない。治療グループは、治療として実施できると誤解していた」とした。
 同大は処分について公表しておらず、同課の山下雅彦課長(54)は、読売新聞の取材に対し、「学内で検討した結果、懲戒処分にはあたらないと判断し、公表しなかった。院内の体制整備を進め、再発防止に努める」と話した。
 同病院はこの問題を受け、先端医療開発センターにデータセンター部門を設置し、臨床試験のデータ管理を行う専門スタッフを配置した。

再開の生体肝移植、1例目の手術終了…神戸の病院 indexへ

 生体肝移植を受けた患者8人のうち4人が死亡した神戸国際フロンティアメディカルセンター(神戸市)は4日、問題発覚後の1例目となる生体肝移植の手術が同日午前5時20分に終了したと発表した。
 発表によると、肝臓がんを患う男性患者(63)に妻の肝臓の一部を移植した。手術は3日午前10時50分に始まり、終了までに18時間半かかった。
 同センターは患者4人の死亡を受け、4月22日に予定していた男性の手術を延期していたが、安全に手術ができる体制が整ったとして再開に踏み切った。
 神戸市は8日にも同センターの安全管理体制を調べるため、立ち入り検査を行う予定だ。

生体肝移植を再開…4人死亡した神戸の病院 indexへ

 生体肝移植を受けた患者4人が死亡した神戸国際フロンティアメディカルセンター(神戸市)は3日、問題の発覚後、延期していた生体肝移植の手術を同日午前10時50分に開始したと発表した。
 手術では、肝臓がんを患う男性患者(63)に妻の肝臓の一部を移植する。手術時間は、10~20時間以上かかるという。
 この問題では、同センターの安全管理体制を調べるため、神戸市が来週にも立ち入り検査を行う予定。

生体肝移植死の病院、手術再開に疑問の声「十分な体制か」 indexへ

 生体肝移植を受けた患者4人が死亡した神戸国際フロンティアメディカルセンター(神戸市)は2日、延期していた兵庫県在住の男性(63)に対する生体肝移植を3日に行うと発表した。
 同センターの安全管理体制を調べるため、神戸市が来週にも立ち入り検査する予定だが、検査を経ず手術に踏み切る。専門家からは「移植や術後管理に十分な体制が本当に整ったのか」と疑問の声が上がっている。
  同センターには、「病院の総合力がかなり不足している」として、専門医団体の日本肝移植研究会が移植の中断を提言する調査報告書を4月に提出。また日本移 植学会なども、生体肝移植の実施施設に対し、脳死肝移植と同程度の充実した医師や設備の基準を示した文書を5月下旬に出し、同センターに十分な体制整備を 求めていた。
 こうした指摘に対し、同センターは1日、京大名誉教授の田中紘一理事長が兼務する院長を退き、新しく非常勤医を採用するなどの新体制を発表したが、同学会が示した基準は満たしていないとみられる。

「理解に苦しむ」と医師会…生体肝移植死の病院、手術再開へ indexへ

 生体肝移植を受けた患者4人が死亡した神戸国際フロンティアメディカルセンター(神戸市)は2日、問題の発覚後、延期していた生体肝移植の手術を3日に行うと発表した。
 同センターは「手術には万全の体制で臨む」としているが、スタッフの数など詳細は明らかにしていない。
 手術を受けるのは、肝臓がんを患う兵庫県在住の男性(63)。妻が臓器提供者となる予定で、4月に同センターへ入院。同22日に手術を受ける予定だったが、問題の発覚で延期されていた。
  この問題を巡っては、専門医らでつくる日本肝移植研究会が「手術や術前術後の管理に問題があった」とし、体制の見直しを求める調査報告書を4月にまとめ た。同センターは報告書の指摘に基づき、手術の際には経験豊富な外部の医者を招くなどの改善措置を取ったとした。同センターの広報担当者は「神戸市の(医 療法に基づく)立ち入り検査を待っていたがなかなか行われず、患者の状態や希望などを総合的に判断し、実施を決めた」としている。
 神戸市医師会の置塩隆会長は「十分な体制ができているのか疑問だ。少なくとも立ち入り検査が行われるのを待つべきで、その前に再開するのは理解に苦しむ」と批判した。

生体肝移植4人死亡、神戸の病院が新体制を発表 indexへ

 生体肝移植を受けた患者4人が相次いで死亡した神戸国際フロンティアメディカルセンター(神戸市)は1日、田中紘一院長の後任に、木内哲也副院長が同日付で就任する新体制を発表した。
 田中氏は兼務していた理事長職にはとどまった。

群馬大病院と東京女子医大病院、がん拠点病院更新せず indexへ

 厚生労働省は1日、患者の死亡事故が起きた群馬大病院(前橋市)と東京女子医大病院(東京都新宿区)について、がん診療連携拠点病院の指定を更新しないと発表した。
 両病院が、特定機能病院を同日付で取り消されたのに伴う措置。

妊婦の静脈ワイヤ抜き忘れ、肺付近に達し摘出 indexへ

 熊本大医学部付属病院(熊本市中央区)は、切迫早産で入院中の女性患者(20歳代)に点滴をするため、静脈内に細い管(カテーテル)を挿入した際、管内の金属製ワイヤ(長さ約40センチ)を抜き忘れたと発表した。
 ワイヤは静脈を破って左肺付近に達し、2日後に摘出された。患者はその後、出産し、退院したという。
 病院の発表によると、昨年4月、産科の男性医師がカテーテルを患者の右肘の静脈から挿入した際、管内のワイヤを抜かず、そのまま留置した。患者が翌日、肩や左上半身の痛みを訴えたためエコー検査などを行い、抜き忘れが発覚。上半身を3か所切開してワイヤを摘出した。
 ワイヤはカテーテルをスムーズに挿入するために管内にあり、挿入後は抜き取る必要があるが、医師は知らなかったという。病院が設置した医療安全調査専門委員会は、医師に十分な知識がなかったと結論づけた。

群大病院、執刀医全死亡例「調査を」…遺族側要望 indexへ

 群馬大学病院(前橋市)で肝臓手術を受けた患者の死亡が相次いだ問題で、遺族側の弁護団(団長・安東宏三弁護士)は、同じ医師による全手術の死亡例を調査するよう病院に要望書を提出した。
 また、弁護団は膵臓の手術後に死亡した患者についても新たに1遺族から依頼を受け、診療内容の独自調査を始めた。この遺族は「病院は公平に調査すべきだ」と訴えている。
 群馬大病院では、同じ男性医師による肝臓の腹腔鏡手術を受けた患者8人が術後約3か月以内に死亡。開腹手術の患者も09年4月以降で10人死亡した。病院は調査対象を広げるというが、範囲は明示していない。
 弁護団は今月27日付で提出した要望書で、この医師による手術の死亡例は臓器や手術時期、手術から死亡までの期間を問わず全て調査対象とし、結果を公表するよう求めた。
 弁護団は現在、8人の患者の遺族から依頼され、独自調査している。うち3人は手術が09年4月以前など、病院の調査対象外だ。
 膵臓手術で調査を依頼したのは、前橋市の30代男性。08年2月に開腹手術を受けた妹(当時20代)を亡くした。
  男性によると、検査でがんかどうか確定しないまま、医師は手術を行った。開腹すると腫瘍は大きく広がっており、手術は約13時間、出血は術中に輸血した分 も合わせると9リットル近くに及んだ。2週間後、病理診断の結果、手術すべきでない進行がんだったとわかった。妹は死亡までの1か月余、生死の境をさまよ い、ほとんど口もきけなかった。
 「残された時間、もっと家族で話し、したいことをさせてあげたかった」と、男性は悔やむ。
 病院側は先月、医師の説明不足は認めたものの、診療には「問題ない」と男性に説明した。男性は「疑問点が多く納得できない。客観的な調査をしてほしい」と話している。

群大と東京女子医大、特定機能病院の承認取り消し indexへ

 厚生労働省は27日、患者の死亡事故が起きた群馬大病院(前橋市)と東京女子医大病院(東京都新宿区)について、高度な医療を担う「特定機能病院」の承認取り消しを決めた。
 同省の社会保障審議会医療分科会が同日、取り消しが妥当とする結論をまとめ、塩崎厚労相に答申した。同省は6月1日に両病院の承認を取り消す。
 群馬大病院では2011~14年、肝臓の腹腔鏡手術を受けた患者8人が術後約3か月以内に死亡。東京女子医大病院では14年、人工呼吸中の小児患者への投与が禁止されている鎮静剤「プロポフォール」を大量投与された2歳男児の死亡事故が起きた。
 分科会は群馬大病院について、死亡症例の原因分析や病院幹部への報告が行われず、改善策が講じられなかった点を問題視。東京女子医大では、医師や薬剤師らが薬のリスクを十分に理解しておらず安全管理体制に不備があると指摘した。

後発薬利用「単純に勧められない」との声も indexへ

 茨城県内の自治体や健康保険組合が、安価な後発医薬品(ジェネリック医薬品)の利用を呼びかけている。
 厚生労働省によると、2014年4~11月、県内で処方された医薬品に占める後発薬の割合は53・4%で、全国平均(55・5%)を下回って35位。自治体などは、後発薬の利用率を上げて医療費の抑制につなげたい考えだ。
 後発薬は既存の薬と同じ有効成分を使って作られ、効果は同等とされる。開発費がかからないため、価格が5割以上安くなる場合もある。国は17年度末までに、後発薬の割合を6割に高める目標を打ち出している。
 利用率を上げるため、後発薬に切り替えた場合の負担軽減額を記した「差額通知」を送付する健康保険組合も多い。
  中小企業の社員や家族が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)茨城支部では13年度、35歳以上で自己負担が250~400円以上軽減できる加入者3万 6635人に通知を送った。月に2万3000円以上軽減できる人もいた。うち8396人が後発薬に切り替え、年間1億5000万円程度の軽減が見込まれる という。
 加入者からは、「後発薬を使いたいが、自分からは言い出しにくい」という問い合わせもあった。協会けんぽでは、後発薬を希望することを示すシールを作り、加入者に保険証やお薬手帳に貼ってもらっている。
 県内の自治体も差額通知に取り組んでいる。県によると、10年度は4市町のみだったが、14年度は34市町村にまで拡大した。
 一方、利用率には自治体間で差が出ている。
 13年度の月別平均で県内の市を比較すると、利用率が6割を超えているのは行方市のみ。筑西市、小美玉市、結城市は3割台と低迷している。各市の取り組みに大きな差は見られない。行方市の担当者は「なぜうちで利用率が高いのかはわからない」と首をかしげる。
  ある医療関係者は、「その地域の医師が積極的に後発薬を勧めるかどうかで利用率に影響する可能性がある」と指摘する。薬局は後発薬を販売すると報酬に上乗 せがあるため積極的に促す場合が多いが、医師には長年の新薬メーカーとの信頼関係やこだわりもあるという。ある医師は、「薬の形状が変わるだけで、『効か ないかも』と不安になる高齢者もいる。安いからといって単純には勧められない」と打ち明ける。
■国内首位の沢井製薬、来年4月頃から神栖で製造
 後発薬で国内首位の沢井製薬(本社・大阪市)は4月1日、神栖市内にあった田辺三菱製薬の工場を譲り受けた。現在は田辺三菱の先発薬を製造しているが、今後、設備投資を進め、2016年4月頃から後発薬の製造を始める。
 従業員は243人で、ほとんどが田辺三菱から転籍した。後発薬の普及速度に間に合うよう生産量を確保するのがメーカー側の課題で、沢井は神栖市の工場だけで年間30億錠の生産を目指す。
 和田晃工場長は、「品質、製造管理の実績があるので、後発薬の生産量確保に寄与できれば」と話している。

厚労省、看護師17人を行政処分 免許取り消しは3人 indexへ

 厚生労働省は、刑事事件で有罪が確定した看護師について、男女3人の免許取り消しを含む17人の行政処分を決めた。ほかは11人が業務停止3年~1カ月、3人が戒告。
 免許取り消しは、兵庫県西宮市で女児を連れ去った未成年者誘拐などの罪で懲役7年が確定した看護師(31)=保健師、助産師の免許取り 消しも含む=のほか、北海道旭川市などで女性2人に性的暴行をした強姦(ごうかん)致傷罪などで懲役10年の判決を受けた看護師(25)、岐阜市内の同僚 が住むアパートへの現住建造物等放火未遂などの罪で懲役3年、執行猶予5年となった看護師(36)。
 静岡県内では、院内で現金などの盗みを繰り返し懲役2年、執行猶予3年となった看護師(34)を業務停止3年、島田市で女性の下着を狙った窃盗と同未遂で罰金刑を受けた看護師(27)を戒告とした。

群大調査、外部委員が主導…報告書見直しへ indexへ

 群馬大学病院(前橋市)で肝臓手術後に患者の死亡が相次いだ問題で、病院は25日、腹腔鏡手術や開腹手術の死亡例に対する調査委員会を院外の専門家が主導する形に刷新する方針を明らかにした。
 新たな外部委員を加え、これまでの調査結果も見直す。同日記者会見した田村遵一病院長は「公表した報告書の追記や改編もありうる」と話した。
 3月に公表した腹腔鏡手術の報告書では、病院側が外部委員に無断で修正する問題が発覚。開腹手術でも判明している10人以外に、手術後死亡した患者がいることがわかり、病院が調査を進めている。
 また群馬大は同日、病院の管理体制を検証する改革委員会(委員長=木村孟・大学評価・学位授与機構顧問)の初会合を東京都内で開いた。同大によると、出席した委員からは、医学部や病院の体制、各診療科のリスク管理のあり方などが課題として挙がったという。
 改革委員会は、病院の調査委員会とは別に、再発防止策などを検討する。今夏をめどに学長への提言をまとめる。

生体肝移植死、神戸の病院長退任へ…手術は再開可能性 indexへ

 生体肝移植を受けた患者4人が相次いで死亡した、神戸国際フロンティアメディカルセンター(神戸市)は22日、京都大名誉教授の田中紘一院長の退任を月内に開く理事会にはかることを明らかにした。
 別の医師を院長とするが、田中院長が手術に関わる医師団の体制は現状のままで、待機中の患者の手術についても、病状を踏まえて再開する可能性があるという。
 この問題を巡っては、専門医団体の日本肝移植研究会が調査し、「移植にかかわる医師が不足している。移植手術を行う(医療)体制が不十分」と指摘。手術実施の可否を決める院内の適応評価委員会が「十分機能していない」とし、メンバーの入れ替えなどを提言した。
 センターの広報担当者は読売新聞の取材に、評価委のメンバーについては刷新するものの、当面は新たに移植医を招くなどの措置はとらないと説明した。
 同センターでは現在、肝臓がん患者の男性(63)が9例目の移植手術を受ける予定で待機している。

血液病2人分の精子保存、了解得ず中止…大阪の病院 indexへ

 大阪市立総合医療センター(大阪市都島区)が、血液の病気を患った男性2人に対し、治療後も子供ができるよう行った精子の凍結保存を、本人への十分な説明をしないまま中止していたことが20日、同センターへの取材でわかった。
  同センターによると、精子の凍結保存は2003年4月から無償で開始。12年4月に責任者の婦人科副部長が異動。凍結保存の専門家がいなくなるため、当時 保存していた13人分の精子の凍結の打ち切りを決め、別の病院に精子を移すよう患者に求めてきた。凍結保存は昨年9月ごろ終了した。
 ところが、今年に入って同センターが調べた結果、13人のうち、04年11月に凍結保存を始めた奈良県内の30歳代男性について、保存中止の了解を得た記録がなかったことが判明した。
 また、03年12月に凍結保存を始めた大阪府内の30歳代男性は、12年12月に精子の移管を求めた記録があったが、保存中止を明確に説明した記載はなかった。残る11人中8人は了承、3人は亡くなっていたという。
 同センターの二神久士総務課長は「大阪の男性について、精子の移管を依頼した点は問題なかったが、説明が不十分で、文書で同意を得るべきだった。奈良の男性には謝罪した」と説明している。

「再生医療」で賠償命令…「合併症の説明不十分」 indexへ

 幹細胞を使った「再生医療」を十分な説明がないまま受け精神的な苦痛を受けたとして、兵庫県の女性(70)が東京都内のクリニックの主治医(当 時)と院長に約634万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁(森冨義明裁判長)は15日、約184万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
 効果や安全性が不明の再生医療が民間クリニックなどで行われているが、再生医療のトラブルで慰謝料などの支払いを認めたのは国内初とみられる。
 判決では、女性は全身にしびれがあり、クリニックを受診。幹細胞治療でしびれが改善する可能性があるなどと説明された。2012年7月、他人の脂肪幹細胞の点滴投与を自宅で受けたが、しびれは悪化した。
 判決は「今回の治療は医療として未確立。主治医が、呼吸困難やショック状態などの合併症が出る可能性があることなどを口頭で説明しておらず、説明義務を尽くしたとは言えない」と指摘。説明を尽くしていれば女性は治療を受けなかった可能性が高いとした。
 クリニック側は取材に「判決を真摯に受け止め、対応したい」と語った。
 再生医療を巡っては14年11月、民間クリニックについても、厚生労働省への届け出が義務づけられた。ただ、届け出は1年間の猶予があり、実態は不明だ。
 京都府立医大の一家綱邦助教(医事法)は「患者は医師とよく話し合い、リスクを理解し、判断してほしい」と話している。

「リスクは承知」患者が肝移植の再開訴え…4人死亡の病院 indexへ

 生体肝移植を受けた患者4人が死亡した問題で、移植を停止している神戸国際フロンティアメディカルセンターで移植予定だった兵庫県西宮市の男性患者(63)が15日記者会見し、「早く再開してほしい」と訴えた。
 男性は肝臓がんで生体肝移植が必要だが、肝臓の血管が詰まる門脈血栓を理由に手術以外の治療を勧められ同センターを受診。「リスクを承知で手術を望んでいる」と話した。

群大病院、先進医療の新規患者受け入れを停止 indexへ

 肝臓手術で患者の死亡が相次いだ群馬大病院は、厚生労働省の要請を受け、先進医療の新規患者の受け入れを停止した。
 同病院の広報担当者によると、がんの「重粒子線治療」や「神経変性疾患の遺伝子診断」など11種類の先進医療について、13日から新規患者の受け入れを停止している。すでにこれらの先進医療を受けている患者の治療は継続する。
 同病院の先進医療の患者数は2013年度、「重粒子線治療」496人、「マントル細胞リンパ腫の遺伝子検査」3人、「神経変性疾患の遺伝子診断」2人など計617人だった。
 患者の死亡が相次いだことを受け、厚労省は今月、高度な技術を必要とする先進医療を担えるかどうか確認が必要と判断。同病院に対し新規患者の受け入れ停止と、先進医療の実施状況の点検を求めていた。
 「重粒子線治療」の施設は、13年9月に国から指定を受けた「群馬がん治療技術地域活性化総合特区」の中心的施設の一つで、医療機器製造の分野で、県内経済にとっても重要な役割を担うことが期待されている。
 群馬大病院は先月30日、高度な治療を行う特定機能病院の承認についても「取り消し相当」とされた。

ダニのエキスを口に含む新治療薬、保険適用に indexへ

 厚生労働相の諮問機関・中央社会保険医療協議会(中医協)は13日、ダニによるアレルギー性鼻炎に対し、ダニエキスを口に含んで体に慣れさせ根治 を目指す新治療薬を、今月中に保険適用することを承認した。 昨年秋には、同じタイプのスギ花粉症治療薬が保険適用されているが、ダニのアレルギー性鼻炎 は初めて。
 アレルギー性鼻炎は、スギやブタクサなどの花粉やハウスダストなどが原因で起こる。季節を問わずに発症する通年性アレルギー性鼻炎の多くは、ダニが原因とされる。
 保険適用されるのは、塩野義製薬が申請していた「アシテアダニ舌下錠」。今年3月下旬に厚生労働省が製造を承認していた。
 治療薬の対象は、12歳以上の患者。ダニエキス入りの錠剤を舌の下で溶かし、その後のみ込む。治療薬を2年以上、毎日服用することで、症状の改善や根治が期待できるという。
 ただ、薬の投与で激しいアレルギー反応が起き呼吸困難などのショック症状につながる恐れがあるため、厚労省は、事前に講習を受けて十分な知識や経験を持つ医師が適切に使用するよう求めている。

糖尿病患者24%、眼科を受診せず…網膜症への備えなし indexへ

 糖尿病と診断されたにもかかわらず、併発しやすい網膜の症状に備えて眼科を受診していない人が4分の1近くいることが、バイエル薬品などのインターネット調査で分かった。
  糖尿病患者の約2割には、視界がゆがんだり欠けたりする網膜症が出るとされる。網膜症は自覚症状がないまま進む特徴があり、重症化すると失明の恐れもあ る。早期の治療で進行を止められ、日本糖尿病学会の診療指針では、糖尿病の診断時やその後年1回の眼科の受診をすすめている。
 同社と参天 製薬は、糖尿病と診断され治療を受けている1000人に眼科受診の状況を聞いた。すると、24%が「受診していない」、37%が「診断の1年以上後に受診 した」と回答。受診していない人に理由を質問したところ、「医師に眼科受診をすすめられなかったため」が半数近くいた。

治癒率96%のC型肝炎新薬、保険適用へ indexへ

 C型慢性肝炎治療の新薬「ソバルディ」(一般名・ソホスブビル)について、厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)は13日、保険適用を承認した。
 薬価は1錠(1日分)で6万1799円。治療に必要な12週間分の薬剤費だけで約550万円かかるが、国の医療費助成の対象となれば、患者の自己負担は月額で最大2万円で済む。
  ソバルディは、C型肝炎感染者の約3割を占める遺伝子型2型を対象とした初の飲み薬。中外製薬の抗ウイルス薬「コペガス」(同リバビリン)と併せて服用す る治療法として、米ギリアド・サイエンシズ社の日本法人が3月に製造販売の承認を得ていた。今月20日から保険が使える。
 中医協は、臨床試験(治験)の治癒率が96%と高く、インターフェロンを使った従来の治療法より有効で安全性も高いことなどを評価した。
 国はB型、C型肝炎患者に医療費を助成している。今回の併用療法も、18日の厚生労働省の会議で助成が認められる見込み。
 ギリアド社の推計では、治療対象となる患者は約11万人。東京肝臓友の会の米沢敦子事務局長は「度重なるインターフェロン治療でもウイルスを消せず、肝がんや肝硬変におびえてきた人たちにとって朗報になる」と話した。
 ギリアド社は、C型肝炎感染者の約7割を占める遺伝子型1型の治療薬についても製造販売申請を昨年9月に行っている。早ければ今夏にも保険適用される見通し。

群大病院など、先進医療の新規患者受け入れ停止…厚労省通知 indexへ

 厚生労働省は、患者の死亡事故が起きた群馬大病院(前橋市)と東京女子医大病院(東京都新宿区)、千葉県がんセンター(千葉市)に対し、先進医療での新規患者の受け入れを停止するよう通知した。
 先進医療が適切に行われていたかどうかを自主点検し、報告することも求めており、同省の先進医療会議が再開時期を判断する。
  高度な医療を行う大学病院などで、医療事故が相次いだことを受けた措置。未承認の医薬品や医療機器などによる先端技術を使う先進医療は、申請に基づいて同 会議が実施の可否を判断している。医療安全面の問題などが指摘された3病院は、実施している計18の先進医療について、副作用報告などが適切に行われてい たかを調査する。千葉県がんセンターは4月14日、がん診療連携拠点病院の指定を外され、群馬大病院、東京女子医大病院は、6月にも特定機能病院の承認が 取り消される見通し。

神戸の病院「最善の努力尽くした」…生体肝移植死 indexへ

 神戸国際フロンティアメディカルセンター(院長=田中紘一・京大名誉教授)で生体肝移植を受けた患者7人中4人が死亡した問題で、同センターは 12日、診療上の問題を指摘した専門医団体の日本肝移植研究会の調査報告書に対し、「最善の努力を尽くして診療を行ってきた」とする見解文を発表した。
 4月26日の記者会見の一部をまとめた内容で同センターのホームページに掲載している。同センターは12日、山田貴子副院長が退職し、名古屋大元教授の木内哲也医師が副院長となったことも発表した。

生体肝移植、インドネシア人5人死亡…神戸の病院関与 indexへ

 経済産業省の事業で神戸国際フロンティアメディカルセンター(院長=田中紘一・京大名誉教授)がインドネシアの病院で行った生体肝移植の患者3人が死亡した問題で、同センターでの移植後に死亡したインドネシア人2人も、同じ事業の一環で来日していたことがわかった。
 この事業に参加して移植を受けたインドネシア人患者は計5人で、全員が手術後、約1か月以内に死亡したことになる。
  この事業は、ウイルス性肝炎患者が多いインドネシアの病院に日本の生体肝移植の技術を伝えようと行われた。昨年度、委託を受けた同センターの田中院長らが 現地の医師、看護師に移植に関する診療を指導した。手術も現地医師への教育として行われたが、10歳以下の子ども1人を含む患者3人が死亡した。同セン ターは「死因は術後の感染症などで、手術に問題はなかった」としている。
 経産省によると、この事業には術前診断の指導も含まれており、同 センターは、生体肝移植を希望するインドネシア人を対象に、38件の術前診断を現地で行った。その中から成人と子どもの計2人が設備の整った日本での移植 を希望して来日。それぞれ昨年12月と今年1月に同センターで手術を受けたが、敗血症などで死亡した。
 同センターの生体肝移植を巡っては、今年3月までに手術を受けた患者7人中、このインドネシア人2人を含む4人が死亡。専門医団体の日本肝移植研究会が調査したところ、この2人については、適切な処置により死亡を回避できた可能性があるとされている。

青い瞳が緑に…回復後の目にエボラウイルス生存 indexへ

 【ワシントン】米疾病対策センター(CDC)の医師らは7日、エボラ出血熱からほぼ回復し、血液からウイルスが検出されなくなって数か 月たった男性の目の中で、エボラウイルスが生き残っているのを発見したと、米医学誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」(電子版)に 発表した。
 医師らは「体内に粘り強く生き残るウイルスについて、さらなる調査が必要だ」と警戒を呼び掛けた。
 男性は米国 の医師(43)で、昨年9月、西アフリカのシエラレオネで医療活動中に感染。米アトランタの病院で未承認薬などによる治療を受け、1か月半後に血液からウ イルスが検出されなくなって退院した。しかし、その約2か月後、左目が痛くなり、青い瞳が緑に変色した。検査の結果、目の内部を循環する水「房水」からエ ボラウイルスが見つかった。現在は目の症状も回復しつつあるという。

海外に半年以上滞在した人、半数が多剤耐性菌に感染 indexへ

 海外に半年以上滞在した日本人の約半数が、複数の抗生物質が効かない多剤耐性菌の「ESBL産生大腸菌」に感染していたことが、東京医大などの研究チームの調査で分かった。
  研究チームは、海外赴任がある企業の協力を得て、2012年9月から15年3月までの間、20~50歳代の男女45人について渡航前と帰国後のふん便を調 査。その結果、22人からESBL産生大腸菌を検出。渡航先別では、サハラ以南のアフリカが最多の7人、東南アジア6人、南アジア5人、中東・北アフリカ 4人。欧米の赴任者7人からは検出されなかった。
 多剤耐性菌は、過剰や過少な抗生物質の使用などにより変異した細菌。複数の抗生物質を分 解する能力がある。健康な人が感染してもすぐに発病するわけではなく、今回感染が確認された22人も無症状だった。ただ、抵抗力が弱い入院患者らの場合 は、重症化につながる恐れがある。研究チームの水野泰孝・東京医大感染症科准教授は「ESBL産生大腸菌に感染する可能性が高い地域からの帰国者が入院し た場合、医療機関は感染の確認が済むまで、他の患者と部屋を分けるなどの対応が必要」と警戒を呼びかけている。

CT検査時の過剰被曝防げ…放医研が線量自動収集システム indexへ

 放射線医学総合研究所(千葉市)は、コンピューター断層撮影法(CT)検査で患者が被曝エックス線の量を、医療施設から自動的に集める新たなシステムを構築し、運用を始めた。
 今年度末までに20万件の検査データを集め、望ましい線量を高い精度で割り出し、患者に過剰な被曝をさせないようにするのが狙いという。
  CT検査で患者が受ける線量は、医療施設ごとに大きくばらついていることが、日本診療放射線技師会などの調査で明らかになっている。これを踏まえ、放医研 が事務局を務める関係学会などの専門組織は4月、望ましい線量の参考値案を初めてまとめた。だが、基にした検査データは主に医療施設へのアンケートで集め たもので、検査データの数などに限りがあることが課題になっている。
 新たなシステムは、医療施設のCT装置や検査データを蓄積しているコンピューターから、全ての検査データを自動的に収集し、DVDや通信回線を使って放医研へ集める。個人を特定できない形で患者の年齢や性別、CT装置のタイプなどを、線量とあわせて把握できる。
  放医研は、東北大病院や大阪警察病院など7施設で順次システムの運用を始めた。年度内に17施設まで拡大し、計20万件の検査データを収集。その後もさら に運用を広げていく。高い精度で適切な線量を割り出し、その結果は公表する。各地の医療施設に参照してもらって過剰な被曝の削減につなげてもらうという。

千葉県がんセンター、不正請求手術の時期訂正 indexへ

 千葉県がんセンターは7日、不正に診療報酬を請求した腹腔(ふくくう)鏡手術9件の実施時期について、「2009年11月から14年2月」とした1日の発表を、「09年10月から14年2月」に訂正した。
 発表時に09年10月の手術を見落としたという。

医療機関のカルテ開示義務、患者の4割知らず indexへ

 カルテ開示が医療機関の義務であることを知らない患者が4割を超えていることが、厚生労働省のハンセン病問題再発防止検討会による大規模意識調査でわかった。カルテ開示を求めたことがあるのは1割にも満たず、患者の権利が十分に認識されていない実態が浮き彫りになった。
 調査は、患者への深刻な差別があったハンセン病問題を教訓に、患者の権利を守る方策を研究する同検討会が実施。昨年12月~今年1月、何らかの病気を持つ患者5000人からインターネットで回答を得た。
  患者へのカルテ開示は、個人情報保護法で、5000件以上の個人情報を保有する医療機関に義務づけられている。調査結果によると、医療機関のカルテ開示義 務を「知らない」とした患者は42・2%に上った。実際に開示を求めた経験が「ある」としたのはわずか6・2%だった。
 また、主治医の診断や治療について他の医師の意見を聞く「セカンドオピニオン」を利用したことが「ある」とした患者は22・4%にとどまっていた。
 同検討会座長の多田羅浩三・阪大名誉教授は「患者の権利を守るためには、カルテ開示を求めることやセカンドオピニオンを得ることが国民にとって常識にならなければならない。いかに普及させていくかが今後の課題だ」と話している。

ワクチン副作用、重症報告を自動選別…厚労省 indexへ

 厚生労働省は、ワクチンによる副作用報告を分析して、重大なものを自動的に検出するシステムの開発を始めた。
 子宮頸がんワクチンの接種後に全身の痛みなどを訴える問題が起きているが、同じように重い副作用の報告が多い場合に早期に警報を出し、適切な対応につなげるのが目的だ。今年度中の運用開始を目指している。
 ワクチン接種を巡っては、2年前に医療機関やメーカーから厚労省への副作用の報告が制度化され、数か月おきに安全性を検証するようになった。しかし、すべての副作用を検証するため、迅速な対応をとるには非効率だった。
  新システムは、国立感染症研究所が運用。報告の中のキーワードなどから重い副作用を自動的に選び出し、毎月の発生件数などをグラフ化。副作用の発生割合が 高いワクチンや報告数が急に増えたワクチンが見つかれば、警報を発する。グラフや警報の内容は、専門家会合が検証し、結果に基づいて厚労省は接種方法変更 などを検討する。

群大と東京女子医大、特定機能病院の承認取消へ indexへ

 患者の死亡事故が起きた群馬大病院(前橋市)と東京女子医大病院(東京都新宿区)について、厚生労働省の社会保障審議会医療分科会は30日、高度な医療を担う「特定機能病院」の承認取り消しが相当とする意見書をまとめ、塩崎厚労相に提出した。
 同省は6月にも承認を取り消す。同省は医療事故が相次いだ事態を重く見て、近く全国の特定機能病院に緊急の一斉立ち入り検査を行うほか、承認の要件を厳格化する。
  群馬大病院では2011~14年、第二外科の40歳代の男性助教(3月末で退職)が行った肝臓の腹腔(ふくくう)鏡手術を受けた患者8人が術後約3か月以 内に死亡。東京女子医大病院では、人工呼吸中の小児患者への投与が禁止されている鎮静剤「プロポフォール」を08~13年に投与された小児11人が死亡し ていたのに、院内で検証されず、14年に同じ薬を大量投与された2歳男児の死亡事故が起きた。
 分科会は群馬大病院について、患者の死亡が 続いたのに、病院長ら幹部に報告が上がらず、改善策が講じられなかった点を問題視。東京女子医大病院では多くの医師や薬剤師が薬のリスクを十分認識してい なかったと指摘し、いずれの病院も高度医療で患者の安全を確保できないと結論づけた。

遺族「当然」…群大と女子医大、特定病院取り消し indexへ

 高度な医療を担う特定機能病院の承認取り消しが30日、確実となった群馬大病院(前橋市)と東京女子医大病院(東京都新宿区)。いずれも医療安全管理の問題が、患者の死亡につながったとみられている。遺族は怒りと悲しみを新たにし、再発防止への願いを語った。
 「高い技術を持つ医師がいると信じて預けたのに」
 群馬県内の女性は憤った。腹腔鏡を使う高難度の肝臓手術を受け、70歳代の母親は死亡した。地域トップの大学病院として信頼していただけに、「裏切られた」との思いがある。
  「取り消しは当然という気持ちと、残念な気持ちが半々」と複雑な胸中を語るのは、60歳代の母親を失った女性だ。母親が別の難病の治療で長年、世話になっ たという思いもある。女性は「他の病院に治療を断られた母親を、受け入れてくれたことには感謝している」と振り返った。
 群馬大病院の再生を願う遺族もいる。80歳代の父親を亡くした男性は「地域医療の中核を担う病院として、再び承認を受けられるよう立て直してほしい」と期待。別の遺族女性も「これを機に、本当の意味で良い病院に生まれ変わってほしい」と願った。
 東京女子医大病院で鎮静剤プロポフォールを過剰に投与され死亡した男児(当時2歳)の両親は同日、東京都内で記者会見した。
 父親は「このような危険な病院に大切なわが子を預けてしまったことを、悔やんでも悔やみきれない」と無念さを口にした。「本当に立ち直りたいなら、患者のことを一番に考えてほしい」と強調した。

群大術後死亡、公表の18人以外も調査対象に indexへ

 群馬大病院(前橋市)で同じ医師による肝臓手術後に患者の死亡が相次いだ問題で、病院側は30日、前橋市内で記者会見し、すでに公表した18人以外にも死亡例があり、調査対象を拡大すると発表した。
 診療内容の調査とは別に、病院の体制を総合的に検証するため、外部の有識者からなる改革委員会を新たに設置し、今夏をめどに提言をまとめることも明らかにした。
 同病院は腹腔鏡手術の患者8人と、2009年4月以降に開腹手術を受けた患者10人の死亡を公表している。腹腔鏡は今年3月に調査結果を発表したが、調査の問題点が指摘され追加調査中。開腹は今月、調査結果を公表する予定だった。
 しかし、他にも開腹手術後に死亡した患者の遺族から問い合わせが相次いだため、臓器や手術時期の対象を広げて調べることにした。調査結果の公表は予定より大幅に遅れる見通しだ。

手術データ、承認得ず研究に使用…福島県立医大教授 indexへ

 福島県立医大は30日、産科婦人科学講座の男性教授と男性助手が、国の指針で定められた大学の倫理委員会での承認を得ずに、子宮筋腫の手術での手術時間や出血量などのデータを臨床研究に使っていたと発表した。同大は2人の処分を検討している。
 同大によると、男性教授らは子宮筋腫の手術に使う新型の内視鏡を2012年度に導入したため、12~14年度の患者46人分の手術データを、旧型による手術との比較に使った。患者への説明はしておらず、研究結果はすでに学会で発表したという。同大の内部調査で発覚した。
 診療記録を研究に利用する場合は倫理委員会の承認を得なければならないが、男性教授は「知らなかった」と説明したという。
 同大は4月中旬までに、患者全員に事情を説明して謝罪した。今後、教職員を対象にした倫理講習会の回数を増やしたり、講習の対象を事務職員にも広げたりして再発防止に努めるという。

群馬大術後死、発表の18人以外にも…同じ執刀医 indexへ

 群馬大学病院(前橋市)で肝臓手術を受けた患者が相次ぎ死亡した問題で、発表されている18人の死亡者以外にも、同じ執刀医による手術後間もなく 死亡した患者がいたことが、読売新聞の遺族などへの取材でわかった。調査対象期間より前の2007年に死亡した患者で、病院側は診療上の問題の有無を調べ ていない。遺族は「時期を限らず、真相解明を」と話している。
 群馬大病院第二外科(当時)の肝臓手術では、10年12月~14年6月に腹腔鏡手術を受けた患者8人と、09年4月以降に開腹手術を受けた10人の計18人が死亡したことがわかっている。
 取材で新たに判明した死亡患者は群馬県在住の70歳代の女性。遺族によると、女性は肝門部胆管がんで、07年に群馬大病院で執刀医から肝臓などを切除する開腹手術を受け、約1週間後に突然死亡した。死因について執刀医は「原因不明だ」と説明したという。
 肝臓手術の診療内容を独自調査している遺族側の弁護団は「病院側の発表以外で、執刀医の手術を受けて家族が亡くなったという相談が複数寄せられている。群馬大病院は幅広く調べて全容を解明すべきだ」と話している。
 発表以外の患者死亡への対応について、群馬大病院は「今はお答えできない」としている。

群馬大病院、膵臓手術でも死亡例…同じ執刀医 indexへ

 群馬大学病院の患者死亡問題で、開腹による膵臓の切除手術を同じ執刀医から受け、手術後まもなく死亡した患者がいたことが関係者への取材でわかった。
 病院は膵臓手術の死亡例についても調べるとみられる。
  関係者によると、膵臓手術の死亡例は、病院側が肝臓手術の死亡状況を調査している過程で判明した。今後、病院側から依頼された外部の専門医が、カルテなど の記録をもとに、診療上の問題がなかったかどうか調査するという。病院は調査結果を5月にも公表するとしてきたが、ずれ込む見通し。病院は30日、調査の進捗状況について発表する。

肝移植ドナーに重篤な合併症…神戸の病院、調査時伝えず indexへ

 神戸国際フロンティアメディカルセンター(院長=田中紘一・京大名誉教授)で生体肝移植を受けた患者7人中4人が死亡した問題で、3月に行われた 7例目の移植の臓器提供者(ドナー)が、重篤な合併症で2回再手術を受けていたことがわかった。田中院長が26日、記者会見で明らかにした。日本肝移植研 究会の調査時には説明がなく、関係者は「調査に対しては正確な事実を伝えるべきだ」と疑問視している。
 同センターでは昨年12月~今年3月、生体肝移植を受けた4人が術後1か月以内に死亡。同研究会が調査報告書をまとめたのを受け、田中院長らが神戸市内で記者会見した。
 合併症を起こしたのは50代の男性患者に肝臓の一部を提供した50代の姉で、手術後肝臓の血管が詰まる門脈血栓を起こした。専門家によると、門脈血栓は命にかかわる合併症で、ドナーに起こるのはまれ。ドナーは元々健康な人だけに「極めて深刻な事態」という。
 しかし、報告書では、7例目は「問題なし」とされた。関係者によると、調査時、この合併症に関する説明はなく、同研究会は、この事実を把握していなかった。田中院長によると、ドナーは2度の再手術で門脈の血流を取り戻したが、現在も入院中という。
 このほか、記者会見では、調査報告書で指摘された問題に田中院長が反論した。
  医師の不足など「体制が不十分」とされた点には、全120床のうち現状では約40床の稼働で、入院患者は10人程度と少ないことや、近隣の病院と連携して いることを挙げ、「対応は十分」と話した。死亡4人中3人について「救命できた可能性がある」とされた点には、「それぞれの症例に全力を尽くした」などと 述べた。
 同センターは今後、生体肝移植を再開するかどうかなど対応を検討する。

医療倫理が欠如…国立大病院長会議が提言公表へ indexへ

 群馬大学病院で肝臓手術を受けた患者が相次いで死亡した問題などを受け、国立大学付属病院長会議は24日、6月をめどに医療倫理に関する提言を公表することを明らかにした。
  山本修一・同会議常置委員長(千葉大病院長)は同日の記者会見で、「根底には医の倫理の欠如がある。全国の大学病院の問題と捉え、責任を持って対応しなけ ればならない」と説明。会議内でプロジェクトチームを作り、高い倫理観に基づく病院・診療科の運営のあり方、保険適用外の先進的な治療をする際のルールづ くりなどを議論し、提言をまとめる。

生体肝移植4人死亡、院長「早めに説明」 indexへ

 神戸国際フロンティアメディカルセンター(院長=田中紘一・京都大名誉教授)で生体肝移植を受けた患者4人が死亡した問題で、日本肝移植研究会が4人の移植すべてに診療上の問題があると調査報告書で指摘していることについて、田中院長は24日、読売新聞の取材に応じた。
 田中院長は「調査報告書を見てから、早めに記者会見を開いて(自身の考えを)説明する」とした上で、「病院がいい方向に進む指摘であれば尊重したい」と述べた。
 また、塩崎厚生労働相は24日の閣議後の記者会見で、「(調査報告書を)よく読み、何が問題なのかを徹底検証しないといけない、と思っている」と述べた。

「死亡4人、全例に問題」…神戸・生体肝移植 indexへ

 神戸国際フロンティアメディカルセンター(院長=田中紘一・京大名誉教授)で生体肝移植を受けた患者7人中4人が死亡した問題で、調査にあたっている日本肝移植研究会が、死亡した4人の移植すべてに診療上の問題があると調査報告書で指摘していることがわかった。
 手術自体に不備があったケースのほか、手術前の検査や術後管理などに問題があったといい、同研究会は院内の体制が改善されるまで移植を中断するよう提言する。
 同センターでは昨年11月の開院後、同12月~今年3月に生体肝移植を受けた患者4人が術後1か月以内に死亡。専門家の間で問題視する声が上がり、専門医団体の同研究会
が調査に乗り出していた。

  調査の結果、〈1〉移植に適していたか〈2〉手術自体に問題がなかったか〈3〉術前・術後の検査や治療が適切か〈4〉臓器提供者(ドナー)が適していたか ――などについて評価。死亡した4人の移植いずれにも問題があり、うち3人は、問題がなければ死亡を回避できた可能性があるという。生存している患者1人 の移植でもドナーの評価に問題があった。
 手術に問題があったのは、死亡したインドネシア人の生後10か月の男児。生体肝移植は、患者の肝臓を取り出して健康なドナーの肝臓の一部を移植するが、男児の手術では、移植する肝臓の血管と男児の血管をうまくつなげなかったという。
  子どもの細い血管をつなぐ際に必要な手術用顕微鏡が同センターにはなく、しかも、血管の口径にドナーと大きく差があり、うまくつなげなかった。その結果、 血流が滞って肝不全となり、移植から約2週間後に死亡した。同研究会は、顕微鏡を使った適切な手術であれば「生存できた可能性が高い」とみている。
 このほか、死亡した患者2人には、脂肪肝のドナーから移植するなど、手術前後の対応に問題があり、診療が適切なら「救命できた可能性がある」とされた。残る1人は進行した悪性腫瘍で膵
すい
臓や肝臓の一部を切除する大手術を受けて数日後に移植を受けた患者で、病状などから移植に適さず、ドナーからの臓器提供は「必要がなかった」という。
  こうしたことから、同研究会は同センターの問題点について、「手術に適しているかどうかの評価や手術中、手術後の管理能力が標準を大きく下回っている」と 判断。必要な医師の確保など「組織の抜本的な改変が必要」と報告書で提言する。報告書は同センターと厚生労働省に提出される。

女性体内に24年間チューブ置き忘れ…病院謝罪 indexへ

 長崎大学病院(長崎市)は23日、24年前に泌尿器科で長崎県内の女性(当時30歳代)を手術した際、体内にシリコン製のチューブ1本(長さ約10センチ、直径1センチ)を置き忘れていたと発表した。
 女性の体調にチューブが原因とみられる異常は確認されていないという。病院側は女性に謝罪した。
  発表によると、女性が昨年12月、同病院でコンピューター断層撮影法(CT)検査を受けた際、膀胱(ぼうこう)近くにチューブのような陰影が確認された。 同病院で調べたところ、1991年に泌尿器科の手術を受けていたことが判明。手術の際に体液などを排出するためのチューブを2本使っていたが、1本につい て取り出した記録が残っていなかった。
 女性は2010年10月にも、同病院のCT検査でチューブのような陰影が確認され、放射線科の医師が電子カルテに所見を記入していたが、泌尿器科の医師がカルテの記載を見落とした。
 病院側は今年1月、女性に経緯を説明して謝罪。チューブの除去については、全身麻酔が必要で危険を伴うため、様子をみて対応を考えるという。
 宮崎泰司副病院長は記者会見で「患者の方、ご家族にご迷惑をかけ、深くおわびする。今後は医療安全態勢の強化を一層図っていく」と陳謝した。

肝移植研「3人の死亡、回避できた可能性」…神戸の病院 indexへ

 神戸国際フロンティアメディカルセンター(院長=田中紘一・京大名誉教授)で生体肝移植を受けた8人中4人が死亡した問題で、この4人のうち3人 は手術前後の対応が十分なら死亡は回避できた可能性があることを、日本肝移植研究会が近くまとめる調査報告書に盛り込む方針であることがわかった。残る1 人は、治療法として生体肝移植は適しておらず、臓器提供が不必要なケースだったという。
 生体肝移植は、患者の肝臓を取り出して健康な臓器 提供者(ドナー)の肝臓の一部を移植するもの。昨年11月に開院した同センターは翌12月~今年4月、胆道閉鎖症などの患者8人に生体肝移植を行った。こ のうち日本人2人、インドネシア人2人の計4人が術後1か月以内に死亡した。
 関係者によると、死亡した4人のうち3人は、〈1〉手術のやり方に不備がある〈2〉不十分な検査で重い脂肪肝のドナーから移植をしている〈3〉感染対策が不十分――など手術やその前後の対応に問題があり、それぞれ適切に行えば患者は死なずに済んだ可能性がある。
 残る1人の死亡者は、進行した悪性腫瘍を切除する難手術の後に肝不全となり、手術から数日後、生体肝移植を受けた。患者の病状や大手術の数日後という体力の落ちた状況から移植は適さないケースで、健康なドナーから肝臓を切り取る必要性はなかったという。
 同研究会は今週中に報告書をまとめ、同センターと厚生労働省に提出する予定だ。田中院長は「報告書が2、3日中に来ると聞いている。届き次第、記者会見して説明する」としている。

生体肝移植4人死亡の病院、9人目の手術延期 indexへ

 神戸国際フロンティアメディカルセンター(院長=田中紘一・京大名誉教授)で生体肝移植を受けた患者4人が死亡した問題で、田中院長は18日、近く予定されていた9人目の移植手術を延期したことを明らかにした。
 一方で「病院の体制には自信を持っている」との考えも示した。この問題を調査している専門医団体の日本肝移植研究会が「移植を行うには体制が不十分」などとして手術停止を提言する方針を固めており、改めて反論した形だ。
 同研究会は今週にも、調査報告書を同センターや厚生労働省に提出する見通し。このため、同センターは今週に予定していた新たな生体肝移植を延期した。
 田中院長は「報告書が出ることがわかったので、それを踏まえて対応したい」とし、体制について「近くの病院と連携しているので、大学病院と比べても劣っていないと思う」と話した。

期限切れワクチン、1歳男児に接種 indexへ

 滋賀県甲賀市立信楽中央病院は15日、市内の男児(1)に3か月以上前に有効期限が切れた麻疹・風疹のワクチンを接種するミスがあったと発表した。現時点で男児に健康被害はないという。
  同院によると、男児は3月20日に保護者と来院して、麻疹・風疹の予防接種を受けた。通常、接種の予約が入ってからワクチンを発注して使い切るが、使用さ れたものは、昨年8月に購入後、予約がキャンセルされ、院内に在庫として残っていた。使用期限は昨年末だったが、接種前には薬剤師が、接種時には医師と看 護師が、それぞれ有効期限の確認を怠っていたという。
 委託元の市に費用請求した際、ミスが発覚した。中島恭二院長は「不安を与えてしまったことに非常に責任を感じる。信頼回復に職員一同で努めていきたい」と陳謝した。

群馬大と東京女子医大、特定機能病院「取り消し相当」 indexへ

 厚生労働省の社会保障審議会医療分科会(厚労相の諮問機関)が14日開かれ、肝臓手術を受けた患者が相次いで死亡した群馬大病院(前橋市)と、鎮静剤の投与後に男児が死亡した東京女子医大病院(東京都新宿区)について、特定機能病院の承認を取り消すかどうかを協議した。
 委員からは「取り消すべきだ」との厳しい意見が相次ぎ、同分科会は、両病院とも「承認取り消し相当」とする意見書をまとめる見通し。
 分科会は非公開で行われた。厚労省は意見書の提出を受けた後、病院への聴聞を行った上で改めて同審議会からの答申を得て、正式な処分を決める。
 群馬大病院では2009~14年に第二外科の男性医師が行った手術で、約3か月以内に患者が死亡したケースが、腹腔鏡手術で8人、開腹手術で10人相次いでいたことが判明。
 東京女子医大病院では昨年、首の腫瘍を取る手術を受けた2歳男児が、人工呼吸中の小児患者への投与が禁じられている鎮静剤「プロポフォール」を大量投与された直後に死亡する事故が起きたが、事故前にも同様に鎮静剤を投与された小児患者11人が死亡していた。

千葉県がんセンター、拠点指定を更新せず…厚労省 indexへ

 腹腔鏡手術後に患者11人が死亡した千葉県がんセンター(千葉市中央区)について、厚生労働省は14日、がん診療連携拠点病院の指定を更新しないと発表した。
 厚労省は、死亡例を調査した県の第三者委員会が3月末にまとめた報告書で、「リスクを病院内で共有するシステムが欠如していた」と指摘されたことなどを踏まえ、「ガバナンス(組織統治)が十分に確立されておらず、質の高いがん医療の提供ができていない」と判断した。

生体肝移植4人死亡の病院、8人目を実施「今後も続ける」 indexへ

 神戸市の神戸国際フロンティアメディカルセンター(院長=田中紘一・京大名誉教授)で3月末までに生体肝移植を受けた患者7人中4人が死亡した問題で、同センターの菊地耕三副院長は14日、報道陣に対し、今月すでに8人目の患者に生体肝移植を行ったことを明らかにした。
 現在、入院中だという。
  この問題を巡っては、肝臓移植医らでつくる日本肝移植研究会が診療に問題がなかったか調査しており、結果がまとまり次第、必要に応じて記者会見し、説明す る意向も示した。菊地副院長は「医療事故とは思っていない。倫理委員会を通すなどの手続きもきちんとやっている。必要とする患者がいれば今後も生体肝移植 を続ける」と話した。
 一方、厚生労働省は、同センターの診療について情報収集を始めた。日本肝移植研究会や神戸市から、調査の見通しなど の聞き取りを進める。塩崎厚労相は同日、閣議後の記者会見で、今後の対応について「研究会が検証を行うと思う。(内容が)分かったところで考えたい」と述 べた。

生体肝移植で7人中4人死亡…神戸の新病院、4か月で indexへ

 神戸市が進める「医療産業都市構想」の一環として昨年11月に設立され、生体肝移植を行っている「神戸国際フロンティアメディカルセンター」で、 3月末までに移植手術を受けた国内外の患者7人のうち4人が手術後1か月以内に死亡していたことがわかった。肝臓移植医らでつくる日本肝移植研究会(会 長=上本伸二・京大教授)が診療に問題がないか調査を始めた。移植医療の専門家から「非常に高い死亡率。手術を止めて検証すべきだ」との声が上がってい る。
 同センターは、生体肝移植を2000例以上手がける田中紘一・京大名誉教授(73)を院長に開院。来日した外国人患者への生体肝移植 を目的の一つにしている。同センターによると、昨年12月~今年3月の4か月で国内外の計7人に親族からの生体肝移植を行った。このうち胆道閉鎖症の患者 ら4人(日本人2人、インドネシア人2人)が手術後、腎臓や肝臓の状態が悪くなるなどして死亡した。複数の関係者の話では、死亡者の2人は15歳未満だっ た。
 生体肝移植は、患者の肝臓を取り出し、臓器提供者(ドナー)の肝臓の一部を移植する。同研究会によると、生体肝移植の患者約7000 人の1年後の生存率は85%。健康なドナーにメスを入れるため、病状が極めて悪く救命の可能性が低い患者への移植は慎重になるのが一般的だ。高い死亡率 は、移植に適さない患者にも手術を行っていたために生じている可能性がある。
 同センターで生体肝移植を主に行う常勤医は3人。生体肝移植は通常6~10人の医師が必要だが、同センターは支援の医師を招くなどして対応しており、「生体肝移植には体制が不十分」と指摘する声もある。
  調査は同研究会に所属する数人の専門家からなる調査検討委員会が行っている。術前の患者などの評価や手術の内容について検証結果をまとめるとみられる。同 センターによると、今月5日に患者の診療内容を説明し、質疑に応じたという。田中院長は今年3月、読売新聞の取材に「死亡率が高いのは残念。余命の限られ た厳しい状態の患者や他の病院で断られた難しい患者を手術しており、リスクを話し納得して受けてもらっている」と話していた。

妊婦の2.4%、クラミジア感染…早産・流産の原因に indexへ

 早産や流産の原因ともなる性感染症クラミジアに感染している妊婦は全体の2・4%で、少なくとも年間推計2万4000人に上ることが、熊本悦明・性の健康医学財団名誉会頭などの全国調査でわかった。
 こうした妊婦のほとんどは症状がなく、無自覚な感染が一般市民の間で広がっている可能性がある。
 調査は、日本産婦人科医会所属の2544施設を対象に、2013年10月~14年3月に初めて診察を受けた妊婦の感染状況を聞いた。32万6000人分の回答を分析した。
  その結果、2・4%にあたる7690人が感染者だった。年代別に見ると、19歳以下は15・3%で6・5人に1人、20~24歳は7・3%で14人に1人 と、若い世代での感染率が高かった。米国の妊婦調査では、19歳以下の感染率が9・6%、20~24歳が5・2%で、日本の高さが際立つ。地域別では、九 州が3・1%、北海道が3・0%、東北が2・9%と多かった。
 クラミジアは国内で最も多い性感染症で、妊婦が感染すると早産や流産、低体重児の原因となるほか、産道で新生児に感染して肺炎や結膜炎を発症させる恐れがある。若い女性では、両側の卵管が詰まることにより不妊の原因ともなる。男性の症状は尿道炎が多い。
 熊本名誉会頭は、「妊婦の感染例は氷山の一角で、一般市民の間に自覚のないまま感染が広がっている可能性が高い。性の自由化が進む現代、コンドームの使用などの性教育を、若いうちからしっかりと進めるべきだ」と訴えている。
◇  
クラミジア クラミジア・トラコマチスという菌が原因の性感染症。近年は口腔(こうくう)性交による口の中の感染も増えている。感染者の8割は無症状で、感染の自覚がないままうつすことが多い。抗生物質で治療が可能で、再感染を防ぐためパートナーと同時の治療が必要。

「治る認知症」年1万3000人…適切治療で改善 indexへ

 認知症のような症状が出る脳の病気「特発性正常圧水頭症」と診断された患者は、全国で年間約1万3000人と推計されることが、厚生労働省研究班(研究代表者=新井一・順天堂大脳神経外科教授)による初の実態調査で分かった。
 この病気は、適切な治療をすれば症状が改善する人が多く、研究班は「認知症との違いについて啓発を進める必要がある」としている。
  特発性正常圧水頭症は、脳内の「脳室」と呼ばれる場所に原因不明で髄液が過剰にたまる病気。周辺の脳組織を圧迫し、歩行障害、尿失禁、物忘れなどを引き起 こす。アルツハイマー型などの認知症と間違われやすいが、髄液の量を常時監視し、過剰になれば排出させる器具を体内に埋め込むことで症状が改善する。
 研究班は、無作為に選んだ全国の4220病院に、2012年の患者数を尋ねた。1805施設から回答があり、患者は計3225人で、全国では1万2900人と推計した。
 3225人のうち、こうした処置を受けた1006人(平均年齢76歳)について調べたところ、「(治療の)効果が明らかにあった」とされたのは887人と、9割近くに上った。

歯石、精密検査対象外に…歯周病検診見直し indexへ

 歯周病検診のマニュアル見直しを検討する厚生労働省の専門家検討会は、歯石が付着しているだけの場合は原則として精密検査の対象としないことを決めた。
 現在は同検診を受診した人の約8割が要精検となっており、うち4割程度は歯石が理由とみられる。新マニュアルに基づく検診は、2016年度から本格的に実施される見通しだ。
  現行の歯周病検診は、原則として40、50、60、70歳が対象で、歯石の有無、歯と歯茎の間の溝(歯周ポケット)の深さなどを調べている。その結果、歯 石があるか、歯周ポケットの深さが一定以上あれば要精検、出血が確認されると指導となり、いずれも歯科医受診が勧められる。
 歯石があるだけでは歯周病とはいえず、歯石を理由に要精検の割合が高くなることには、歯科医師からも疑問が出ていた。ただし、放置しておくと歯周病のリスクを高めるため、歯石除去を促す指導はこれまで通り行う。
 歯周病は、歯肉の腫れや出血などが起こり、進行すると歯が抜ける病気。糖尿病や動脈硬化など全身にも影響を与えているとの報告もある。
 ただ、検診を実施している市町村は全体の6割弱で、受診者は約28万人にとどまっている。

未承認抗がん剤42種類、リストを公表 indexへ

 国立がん研究センターは3日、欧米で承認されているものの、国内で未承認の抗がん剤42種類のリストを公表した。
 政府は来年4月、患者が希望すれば、保険診療と併用して、国内未承認の薬を全額自己負担で使える「患者申出療養制度」の導入を目指している。公表された薬は、この対象になる可能性がある。
 リストは同センターのホームページ(http://www.ncc.go.jp/jp/about/senshiniryo/senshiniryo_01.html)で見ることができる。

群大病院の執刀医退職…「納得いかない」と反論 indexへ

 病院側は記者会見で、執刀医が3月31日付で退職したことを発表した。退職金は支払われていないという。
 また、病院側が3月に公表した調査報告書に対し、執刀医から反論の上申書が寄せられたことも明らかにした。患者への説明が不十分とされた点について、「時間をかけて説明した」と反論。「全例で過失があった」とされたことには「納得いかない」などとしている。
 反論に対し、病院側は「診療記録がないため判断できない」と認めなかった。

遺族がわかりやすいと…群馬大学病院、「過失」加筆を釈明 indexへ

 肝臓手術後に患者の死亡が相次いだ群馬大学病院(前橋市)。先月、ようやく腹腔鏡手術の死亡例に対する調査報告書を公表したばかりだが、調査の不備が次々に発覚し、ついに再調査に追い込まれた。執刀医からは、この報告書への反論も寄せられ、事態は混迷を深めている。
 「ご遺族にわかりやすいと、『過失があった』と後から入れてしまった」
 2日、記者会見した群馬大学病院の永井弥生・医療の質・安全管理部長は、そう釈明した。
 この日の会見では、報告書で明記されていた「過失」の文言を削除することが発表された。病院として、「過失があった」との判断には変わりないが、調査委員会としての結論ではないと訂正した形だ。
 病院側は2月、報告書の最終案を外部委員が承認した後、無断で内容を修正。死亡した8人の検証結果の概要の末尾にそれぞれ「過失があったと判断される」と書き足した。外部委員の一部からは、「過失」の文言削除を求める抗議文も提出されていた。
 このほか、外部委員が初回しか出席を求められていないことや、執刀医らの聴取内容が十分に外部委員に知らされていないなど、調査を巡る不備が次々に発覚。追加の調査をせざるをえない状況となった。
  一方、執刀医は、3月30日付で調査委員会あてに反論の上申書を提出していた。報告書で、技術などの問題が指摘された後に、「以上のことから、過失があっ たと判断される」とされたことに対し、「妥当ではないのではないか」と反論した。ただ、技術的な問題の指摘自体には、「申し訳ない」としているという。
 これに対し、父親を亡くした遺族の男性は「専門家が調査した上で、病院側が過失があったと判断しているのに、こういう反論は疑問に思う。まだ執刀医から直接は何も聞いていない。まず説明してほしいという気持ちだ」と話している。

腹腔鏡死亡、群大病院が再調査…調査委提案受け indexへ

 群馬大学病院(前橋市)で腹腔鏡を使う高難度の肝臓手術を受け、患者8人が死亡した問題で、病院側は2日夜、前橋市内で記者会見を開き、開腹手術の死亡問題を含め総合的に検証する委員会を新たに設置することを発表した。
 患者が死亡しているのに高難度手術が続いた理由などについて再調査し、真相究明を目指す。
 この日、東京都内で開かれた調査委員会で外部委員から調査の見直しを提案されたのを受け、決定した。今回の調査委は、病院側が先月公表した最終報告書を巡り、調査手続きや内容を巡る不備が指摘されていたため開かれた。
 調査委では問題点として〈1〉外部委員が報告書の内容を承認した後に「過失があった」などと無断で加筆していた〈2〉執刀医ら当事者の聴取内容の詳細を外部委員に知らせなかった〈3〉検証もなく高難度手術が続けられた背景が解明しきれていない――などが挙げられた。
 これを受け、過失の判断は調査委ではなく病院独自の判断だったため、報告書に記述した「過失」の文言を削除することを決めた。その上で、執刀医らの聴取内容の外部委員による評価、問題の背景や理由を掘り下げる検証を改めて行う。

群馬大病院、腹腔鏡報告書を無断修正 indexへ

 群馬大学病院(前橋市)で肝臓の腹腔鏡手術を受け8人が死亡した問題で、病院側が設けた調査委員会の報告書が、外部委員が内容を承認した後に無断で修正されていたことが関係者への取材でわかった。
 各症例を検証した結論の中に「過失があった」と加筆するなどしていた。「過失を強調し、遺族の納得を得ることで幕引きを急いだのでは」との指摘もあり、再調査を求める声が改めて上がっている。
 病院側が昨年8月から外部委員を交えた調査委員会で調査した。関係者によると、今年2月半ばには、調査報告書の最終案が外部委員に送付され、各委員の意見により修正された後、全委員が承認して最終的に完成したはずだった。
 ところが、3月3日に病院側が記者会見で公表した報告書は内容が変わっており、患者8人の診療を個々に検証した結論の末尾に、「過失があったと判断される」との一文が書き加えられていた。
 一方、複数の遺族によると、調査報告書をまとめた後の2月半ば以降に行われた各遺族への説明の際、手渡された個別報告書には、それぞれ「過失があった」との記載があった。
 調査手法を巡っては、外部委員の医師には初回に出席を求めただけだったことが厚生労働省の審議会で問題視されている。
 遺族側弁護団は「手続きにも問題があるなら、やはり再調査が必要だ」としている。群馬大病院は今週、改めて調査委員会を招集し、今後の方針を検討する。
 医療事故調査に詳しい九州大病院医療安全管理部の後信教授は「外部委員の承認後に修正するなら了承を得る必要がある。外部委員に再確認し、改めて議論する必要があるのではないか」と指摘している。

全国の電子カルテ集約、ビッグデータ化し活用へ indexへ

 政府は31日、2020年までに全国の医療機関から電子カルテなどの医療情報を集めて、「ビッグデータ」として活用する新制度を創設する方針を固めた。
 電子カルテの活用は各地で進んでいるが、全国規模で利用する試みは初めて。治療方法の効率化に役立てるだけでなく、研究機関や民間企業による難病治療や新薬開発などにつなげたい考え。夏にまとめる政府の成長戦略にも盛り込む方向だ。
 新制度は、国が新設する機関が、各地の医療機関から集めた電子カルテなどの情報を、個人が特定できないよう削除・加工した上で、医療機関のほか、大学など研究機関や製薬会社など民間企業に提供する仕組みだ。
  電子カルテには、投薬の記録や病理検査の結果、患者の回復経過などの情報が記録されている。ビッグデータとして活用すれば、高額な医薬品が統計的に治療に 結びついているかといった費用対効果の分析や、最も効果的な治療法を導くことが期待される。医療機関がこうした情報を基に効率的な医療を行うことで、医療 費の抑制にもつながるとみられる。

群大病院問題、再調査に指導を…遺族側が厚労相に要望 indexへ

 群馬大学病院(前橋市)で肝臓手術を受けた患者が相次ぎ死亡した問題で、遺族側の弁護団(団長・安東宏三弁護士)は31日午前、厚生労働省を訪れ、外部委員が参加する形の再調査を同病院に指導することなどを求める塩崎厚労相宛ての要望書を提出した。
 要望書は、腹腔鏡手 術を受けた8人死亡に関する院内調査報告書が、医学的観点からの検討に加え、調査手続きでも執刀医や診療科長からの聴取などが不十分だと指摘。さらに、学 外から起用した委員が会議にほとんど出席していなかったとされることに、「『身内』のみで作成されたと言うほかない」と調査の客観性に疑問を示した。
 また、開腹手術でも10人の死亡例が出ていることから、病院側が現在進めている開腹手術の調査に対して、厚労省に病院側への指導を求めた。
 弁護団によると、腹腔鏡手術後に死亡した患者2人、開腹手術後に死亡した患者3人の遺族から依頼を受けているという。
 同省で要望書を手渡した後、弁護団事務局長の梶浦明裕弁護士は「外部委員が調査に関与していなかったことに遺族も疑問を感じている。もう一度しっかり調査してほしい」と話した。

腹腔鏡死亡「検証行われず」11件中10件問題…千葉県がんセンター indexへ

 千葉県がんセンター(千葉市中央区)で腹腔鏡手術後に患者11人が死亡した問題で、県の第三者検証委員会(会長=多田羅浩三・日本公衆衛生協会長)は30日、「リスクを病院で共有するシステムが欠如していた」とする報告書を県に提出した。
 手術は、倫理審査委員会を経ずに行われ、11人のうち最後に手術が行われたケースでは、内部の事故調査委員会が倫理委への申請を提言したものの、申請されなかった。
 報告書によると、2008年6月~14年2月に手術を受けた57~86歳の男女計11人が、手術当日から約9か月後までに死亡。このうち10人について問題があるとされた。
 死亡例が相次いだことを受け、同センターでは13年5月、病院長の判断で、外部の委員を招いて院内の事故調査委員会が設置された。同年8月には、保険適用外の手術を行う際には、安全性を確認するため倫理委を通さなければならないとの提言がなされた。
 しかし、これは公表されず半年後の14年2月、胆管がんだった80歳の男性に対し、倫理委を経ずに保険適用外の腹腔鏡手術が行われ、男性は2週間後に死亡した。
 報告書では「病院は担当の医師の見解を尊重し、多くの事例でそれ以上の検証を行わなかった。多数の死亡事例の重要な背景」と指摘した。
 患者11人のうち8人について、200件を超える腹腔鏡手術を執刀したベテラン医師が担当。8人のうち7人が問題ありとされた。
  報告書では、13年1月に行われた74歳男性の手術で、「必要のない静脈の切除や術後の対応の遅れも死亡につながった。腹腔鏡手術を行うという判断に問題 があった」と指摘。12年9月に行われた76歳女性の手術では「出血した際に腹腔鏡を使った止血にこだわり、対応が遅れた」とした。

倫理審査あっても使われない風土…腹腔鏡死亡 indexへ

 千葉県がんセンターで腹腔鏡手術後に患者11人が相次いで死亡した問題で、第三者検証委員会の多田羅浩三会長は30日、組織的な問題を指摘し、「倫理審査委員会があっても使われない風土が課題」と語った。
 群馬大に続き、高難度手術の問題が指摘された医療界。患者からは「市民目線の医療をしてほしい」との声が聞かれた。
 「技術がありながら死亡している。(倫理審査委員会などの)制度がありながら諮られていない。独断的で英雄視された医者が手術をする上での課題で、情報を共有するという努力を求めたい」
 同日午後、千葉県庁で2時間半近くに及んだ記者会見で、多田羅会長はこう述べた。先進的な腹腔鏡手術に取り組む中で、倫理審査委などの手続きを経ず、多くの死亡例を出した同センターの体制を批判した。
  日本外科学会による聞き取り調査で、消化器外科の医師が「センターは、大学病院に比べると倫理審査にはルーズだったと感じていた」と指摘していたことなど を受け、多田羅会長は「倫理審査にかけられなかったことは、今回の事例の基本的な背景として最も重要視した」と述べ、手続きの不備を強調した。報告書で は、個人の責任追及を目的としたものではないとし、会見でも執刀医の責任には言及しなかった。
 同センターの永田松夫病院長は同日夜に会見し、「(報告書を)重く受け止めている。倫理審査に関することなどの問題点を改善するため、責任をもって改革に取り組む」と語った。
 同センターでは、以前から内部でも問題が指摘されていた。
  2010年まで約3年間麻酔科で勤務し、別の病院に移った志村福子医師は取材に、「縫合不全や術後の出血などで、当日や翌日に再手術が必要になるケースが 多かった」と証言した。当時何度も立ち会った腹腔鏡手術については、問題視する声も上がったという。「上層部は耳を傾けず、指摘の声はかき消された。医師 たちも腹腔鏡で手術を完遂させることにこだわったり、いかに短時間に手術を終えるかを競ったりしていた。私と根本的に倫理観が異なっていた」と語る。
 そのうえで「周囲からより厳しい目が向けられ、本当に変われるのか、今後の姿勢が問われる」と話した。
  兄が同センターに入院している東京都文京区の女性(51)は30日夜、「本当に腹腔鏡手術が適しているかということは、説明を受けただけでは分からない。 別の医師の意見を受けやすくしてほしい」と話した。報告書が出たことで、「改善には良い機会。医師はもっと市民目線で患者を診てほしい」と訴えた。

腹腔鏡死亡、リスク共有が欠如…検証委 indexへ


 千葉県がんセンター(千葉市中央区)で腹腔鏡手術後に相次いで患者11人が死亡した問題は30日、県が設置した第三者検証委員会が報告書を提出し、大きな節目を迎えた。
 同センターの体質的な問題が浮き彫りになった一方、病院関係者は信頼回復に向けた決意を口にした。
  がんセンターはこれまで、難度の高い手術にも取り組んでおり、日本外科学会も「先駆的な取り組みを行っていた」とした。ただ、こうした「挑戦的」とも評さ れる手術に取り組む病院の体制について、「リスクを病院として共有するシステムが欠如し、腹腔鏡手術推進の雰囲気と専門分野への介入の困難さが、対応が遅 れた原因」と厳しく指摘した。
 報告書は提言で、「新しい高難度の手術については、適応の確認、保険適用の有無、さらには腹腔鏡で行わない との決断も含め、部内で合議し、厳正に可否を決定する体制を早急に構築してほしい」と求めた。一方で、過去の死亡例での事故報告書を公表せず、家族にも説 明していなかったことを「組織的に隠蔽が意識されているとも受け止められかねない」とした。
 検証委の遺族への聞き取りでは、「リスクにつ いて説明されていない」「手術が腹腔鏡だとは知らなかった」「開腹と腹腔鏡のどちらかを選ぶ雰囲気ではなかった」との不満もあった一方、「よい病院になっ てほしい」と改革を期待する声もあったという。検証委の多田羅浩三会長は30日の記者会見で「職員や医者同士、医者と患者との協力で、一緒に病気と闘って いくということを改めて認識してもらいたい。具体的な一歩を踏み出してほしい」と話した。
 県庁で30日夜、記者会見した同センターの永田 松夫病院長は「がん専門病院なので、新しいことに取り組んでいくことはもちろん考えなければならない」として、腹腔鏡手術の推進姿勢は維持することを示 唆。現在、保険適用外の腹腔鏡手術は休止中で、永田氏は「倫理審査委や安全管理など手続きをとった上でやらなければならないというのが反省。再開するにし ても、厳格な手続きでやらなければならない」との方針を示した。
 同日午後は臨時の県議会健康福祉常任委員会が開かれ、矢島鉄也県病院局長は「真摯に受け止め、深く反省している。県民に安全で安心できる医療を提供できるよう取り組んでいく」と述べた。

腹腔鏡手術後死亡、10人の診療で問題…千葉県がんセンター indexへ

 千葉県がんセンター(千葉市中央区)で、腹腔鏡(ふくくうきょう)手術後に患者の死亡が相次いだ問題で、日本外科学会が死亡者の診療を評価した報告書の内容が判明した。死亡者11人のうち10人の診療行為で問題を指摘した。
 対象は2008年6月~14年2月に、腹腔鏡を使う膵臓(すいぞう)や肝臓、胃などの切除手術を受けた57~86歳の男女計11人。うち8人は同じ医師が執刀した。事態を調査している第三者検証委員会の依頼で同学会が医学的に分析した。
 10人への診療行為の問題は、不適切な手術操作や検査の不十分さなど。「診療は適切」とした胆管がんの1人も倫理審査がないなど不適切な点があり、11人全員で何らかの問題があった。

腹腔鏡の波紋(中)…診療報酬「適用外」も請求 indexへ

高難度手術倫理、審査受けず
 関東地方の病院で2013年に、肝臓の右半分に当たる「右葉」を切除する手術が行われた。患者は女性で、手術には腹腔鏡が使われた。
 大きな出血を起こす心配があった腫瘍は切除され、患者は無事退院。しかしこの手術には問題があった。保険が利かない「適用外」であるにもかかわらず、保険請求されていたのだ。不正請求に当たる疑いがある。
 腹腔鏡を使った肝臓手術では現在、二つの方法しか認められていない。肝臓の左3分の1に当たる外側区域の切除と、腫瘍をくりぬくように切り取る「部分切除」だ。
 これら以外は全て適用外で、100万円以上かかる治療費は患者が全額支払う自由診療か、病院が研究費などから賄うのが本来の姿だ。しかし、適用外の手術でも多くが保険請求されているとみられる。
 冒頭の関東地方の病院幹部は「右葉切除だが『部分切除』で請求した。適用外の腹腔鏡について他の病院に尋ねたが、どこも国から不正請求と指摘された所はなく、請求しても問題ないと判断した」と話す。
 読売新聞が、適用外の腹腔鏡手術について学会発表している28病院に質問したところ、関東地方の同病院を含む4病院が「保険請求した」と答えた(1病院は自由診療、23病院は無回答)。
 適用外の腹腔鏡手術は保険適用に比べ死亡率が高く、安全性や有効性が確認されていない。公の議論がないまま、病院側の判断で保険請求され、支払いが認められれば、なし崩し的に適用外の手術が広がることになる。
 患者が相次いで死亡した群馬大病院では、10年12月~14年6月の間に、58人に適用外の腹腔鏡手術が行われ、そのうち35人の手術が保険請求された。
 ある大学病院の病院長は「適用外でも保険適用の手術として会計上処理されていれば、難易度が高くない手術として倫理審査も受けずに済む。どうしても院内のチェックは甘くなる」と指摘する。
 同じ構図は、膵臓の 腹腔鏡手術を受けた患者が相次いで死亡していることが昨年4月に発覚した千葉県がんセンター(千葉市中央区)でもみられた。同センターは、13年に行った 適用外で高難度の腹腔鏡手術を通常の開腹手術として請求していた。同センターは健康保険法に基づく国の調査を受けている。
 群馬大病院に対しても厚生労働省は調査を行う方針だ。他の病院の適用外手術の保険請求に対しては「病院側から出ている保険請求内容と、院内の手術記録を突き合わせてみないと不正かどうかわからない。群馬大病院の調査結果を見て判断したい」と対応を検討している。
 日本肝胆膵外科学会などの調査によると、この分野の適用外の腹腔鏡手術は年間約400件。保険の「不正請求」についても実態解明が急務だ。

腹腔鏡の波紋(上)…実験的手術「他病院でも」 indexへ

日本肝胆膵外科学会の記者会見で、宮崎理事長(右)は「病院が倫理審査を怠っていたといわざるをえない」と話した(23日、千葉市の千葉大医学部で)
 群馬大学病院(前橋市)で腹腔鏡を 使う肝臓手術を受けた8人が死亡した問題で、保険適用外の高難度手術が倫理審査もなしに行われていた事実が明るみに出た。それをきっかけに、学会の調査な どから全国の病院で同様の問題があることが判明。安全性が確認されていない新しい手術が、なし崩し的に広がる現状と背景を追った。

「患者に説明」徹底されず

 「先生、そんなことやっていいんですか」
 国内で開かれた外科系学会で、腹腔鏡手術に積極的に取り組む男性医師が発表している途中、進行役の別の医師が、そう尋ねた。非常に難易度が高い手術だったため、思わず出た質問のように聞こえた。居合わせたある外科医は、2、3年前のその情景が今も印象に残っている。
 男性医師が発表したのは、進行がんに対し、膵頭十二指腸切除という手術方法で治療を試みたケース。開腹でも難しく、腹腔鏡手術としては保険適用外だ。
 この外科医は「学会では多くの適用外手術が発表されているが、中には難しすぎる手術をやろうとする医師も目につく」と話す。

 日本肝胆膵外 科学会が23日に発表した腹腔鏡手術の実態調査によると、保険適用外手術の実施件数は、過去4年間で、肝臓が1587人、膵臓が651人に上っていた。し かし、この調査では、回答した病院診療科の55%が、群馬大と同様、病院の倫理委員会から承認を受けないまま、本来は臨床研究として行うべき試験段階の手 術をしていたこともわかった。
 同学会理事長の宮崎勝・千葉大教授は「保険適用外の腹腔鏡手術は慎重にすべきだ。まして半分が倫理審査も通していないとなると、手術前の検証が十分だったのか疑問だ」と懸念を示した。
  保険適用されるということは、一定の安全性や有効性が確認され、全国の病院で幅広く行われても問題ない標準診療として「お墨付き」を得たことを意味する。 肝臓や膵臓の腹腔鏡手術は、比較的難易度が低い切除方法に限り保険診療となっているが、それ以外は標準とするには時期尚早とみなされ適用外のままだ。
  「保険適用外の腹腔鏡手術は多くの病院で前から行われていたが、普通は倫理審査まで受けないし、患者にも説明しない。ほかの病院でもやっているので問題な いという感覚だ」と、東京都内の病院で腹腔鏡手術を行う消化器外科医は話す。群馬大の問題が注目され、現場も慎重な空気に変わったという。しかし、それま では、「多くの外科医が、同様の感覚だったのではないか」と明かす。

 同学会の調査では、適用外手術はリスクが高いこともわかった。保険適用の手術に比べ適用外の手術は、死亡率が肝臓手術で5・4倍、膵臓手術で10・8倍の高リスク。患者にこうした危険性も含め十分な説明がされたのか不透明な面もある。
 群馬大の死亡者の遺族も多くが「リスクが高い保険適用外の手術とは聞いていない」と口をそろえる。
 2011年、肝臓がん治療のため手術を受けた男性の遺族は「高齢なので体に負担が少ないほうがいい」と腹腔鏡手術を提案された。行われた手術は、肝臓のほか、胆管も切除し、腸とつなぐ難しい方法。保険適用外の手術だと知ったのは最近になってのことだ。
 遺族は「最終的には思ったより多く切ったと言われたが、通常の保険診療だとばかり思っていた」と語る。
 人より早く新しい技術に挑戦し、実績を上げたいという外科医は多い。倫理審査は法的義務でもないだけに、無理な試みを抑止しきれない側面もある。
 医療倫理に詳しい東京財団の●島(ぬでしま、●は「木」へんに「勝」の旧字)次郎研究員は「実験的な医療だと患者に告げず行うのは現代の医療では許されない。その点が現場で徹底されていないなら問題だ」と指摘する。

開腹手術も遺族側が独自調査へ…群馬大病院問題 indexへ

 群馬大学病院(前橋市)で肝臓手術を受けた患者が相次ぎ死亡していた問題で、遺族側の弁護団(団長・安東宏三弁護士)が、開腹手術後に死亡した患者2人の遺族から新たに依頼を受け、診療内容の独自調査に乗り出すことがわかった。
 弁護団はすでに腹腔鏡手術の死亡者について調査しているが、今後、開腹手術も含めた全容解明を目指す。
 群馬大病院第二外科では、同じ医師による肝臓の腹腔鏡手術を受けた患者8人、開腹手術の患者10人が手術後に死亡。病院側は今月、腹腔鏡手術の8人について調査報告書を公表した。
 弁護団も、腹腔鏡手術の2遺族から依頼を受け、カルテや手術映像を分析した結果を公表。執刀医らの聴取不足などを理由に「病院の調査は不十分」と指摘し、再調査を求めていた。
  開腹手術では、これまで弁護団に相談していた遺族のうち2遺族が正式に依頼。専門家の協力も得て、病院から開示された記録を基に診療内容の問題点を調べ る。病院側の調査では、腹腔鏡同様、患者への説明やカルテ記載などの問題が指摘されている。病院は5月頃に開腹手術の調査結果をまとめるとしている。
  弁護団は「開腹手術も含め患者が18人も死亡するまで執刀医が手術を続けた理由やそれを許した病院内の体制の問題を明らかにし、全容を解明したい」として いる。弁護団は新たな相談も受け付けている。問い合わせは、事務局・梶浦明裕弁護士((電)03・5501・3641)へ。

指定難病306疾患に…医療費を助成 indexへ

 医療費助成の対象となる指定難病の検討を行う厚生労働省の専門家委員会は19日、新たに196疾患を了承した。正式決定を経て、7月から助成を開始する。今年1月の難病医療法施行に伴い、先行実施している110疾患と合わせ、306疾患が出そろった。
 新制度では、助成対象が従来の約78万人から約150万人に拡大する。ただし、世帯収入などに応じて原則、月2500円~3万円を限度とする自己負担がある。軽症患者は対象外となる。
 今回、新たに対象に選ばれた「軟骨無形成症」の川島啓子さん(53)と前田良恵さん(42)は「今は働いているが、いつ重い症状が出るか分からない。経済的な不安が尽きなかったが、安心できた」と話す。
 国内の患者数は推計6000人。軟骨細胞の異常で骨が伸びず、身長は1メートル20~1メートル30程度にとどまる。歩行が困難になる脊柱管狭窄症や睡 眠時無呼吸症など、様々な症状が表れる。川島さんも昨年、脊髄を圧迫する首の骨の一部を取り除く手術を受けたばかりだ。「自分たちの病気のことを多くの人 に知ってほしい。今回の指定がそのきっかけになれば」と話す。
 厚労省は、今回選ばれなかった疾患について今秋以降、情報収集を再開し、来年度中に同委員会で指定難病への追加を検討する。

群馬大病院など3病院、がん診療連携拠点の更新保留 indexへ

 がん診療連携拠点病院の指定の可否を審議する厚生労働省の有識者検討会は13日、患者死亡問題で調査中の群馬大病院(前橋市)、千葉県がんセン ター(千葉市)、東京女子医大病院(東京都新宿区)の3病院について、新年度から4年間の指定更新の判断を保留し、「最終的な判断は厚労相にゆだねる」と する結論をまとめた。
 がん診療連携拠点病院は、質の高いがん医療を提供し、地域連携の中核の役割を果たす病院として国が指定。診療報酬が優遇されるほか、補助金が交付される。4年ごとに更新する。

群大病院の補助金見送り…厚労省、今年度分4億円 indexへ

 群馬大学病院(前橋市)で肝臓手術を受け、患者が相次ぎ死亡した問題を受けて、同病院への交付が凍結されている「臨床研究中核病院」に関する2014年 度分の補助金4億円について、塩崎厚生労働相は10日午前の衆院予算委員会分科会で、交付を見送る考えを明らかにした。
 この中で塩崎厚労相は「(交付には)病院の調査、再発防止策の状況を踏まえる必要があるが、年度末が迫っており、今年度の補助金の交付は現実的には難しい」と述べた。
  臨床研究中核病院は、国際水準に達する質の高い臨床研究を進めることなどが目的で、厚労省が全国の10病院を選び、補助金を交付している。群馬大病院の場 合、13年度から5年間で計約15億円が予定され、13年度は関連研究費を含めて約5億6000万円の交付を受けた。14年度は昨年12月までに交付予定 だったが、問題発覚で凍結されていた。
 また、群馬大病院は高度な医療を行う「特定機能病院」の承認も受けており、厚労省が年1回の立ち入 り検査を実施しているが、同病院の問題に気付かなかった。対策として同省は、検査時に指摘した問題の改善状況を速やかに確認するなど、特定機能病院に対す る検査内容を強化する方針も示した。

群馬大病院、「開腹手術」でも死亡リスク説明せず indexへ

 群馬大学病院(前橋市)で肝臓手術を受けた患者が相次いで死亡した問題で、開腹手術の患者でも、腹腔鏡手術と同様、同意書に手術による死亡率が書かれていないなど記載が著しく不十分であることが、遺族への取材でわかった。
 遺族は「すぐに退院できると聞いていた」などと話しており、インフォームド・コンセント(説明と同意)に問題があったとみられる。
 病院側が今月3日に発表した腹腔鏡手術の調査報告書では、開腹手術の同意書やカルテの記載について「腹腔鏡と共通の問題があった」と指摘している。
  開腹手術を受け、死亡した男性患者の同意書を見ると、「肝左葉切除+胆管切除・リンパ節郭清」という手術名の下に「出血」「感染」「縫合不全」など、合併 症が列挙されているだけ。問題が指摘された腹腔鏡手術と同じ形で、一般的に同意書で必要とされている合併症の発生率や死亡率の全国的なデータ、群馬大病院 での手術成績などは記されていなかった。
 この患者の遺族は「2、3週間で退院できると聞いた。死亡のリスクに関する説明もなく、亡くなる ことは想像もしていなかった。手術以外の治療の選択肢も聞いていない」と振り返る。別の遺族も「死亡する恐れがあることは説明がなく、急に状態が悪くなっ た時は驚いた。亡くなる可能性もあると聞いていれば、他の治療も含めて考え直したと思う」と話した。

診療科長「死亡例続いていると認識してなかった」…群馬大病院 indexへ

 同じ執刀医による肝臓手術で18人が相次いで死亡した群馬大学病院第二外科では、死亡症例検討会がほとんど開かれておらず、診療科長の教授は病院 側の調査に「死亡例が続いているという認識はなかった」と答えたという。他のチームから問題を指摘されることもなく、閉鎖的な体制が深刻な事態を招いた。
 同病院では、医療過誤と疑われる症例があった場合、安全管理部門に報告する制度を設けていたが、報告基準が明確でなく、判断は現場の医師任せだった。執 刀医や教授は1例も報告しておらず、野島美久病院長は「医師の申告がないと把握できない」と説明。集中治療部の医師が「腹腔鏡手術で死亡例が複数ある」と 情報提供し、昨年6月頃に調査が始まるまで問題は見過ごされていた。
  同病院によると、執刀医は、2010年12月に腹腔鏡を使った肝臓手術を始めたが、初めの2例は、経験豊富な腹腔鏡技術認定医に立ち会ってもらい実施。う ち1例で死亡していたが、原因の検証は不十分だった。3例目以降は技術認定医の支援がないまま行い、結果として死亡例が重なったとみられる。

馬大学病院長から初の聞き取り…厚労省分科 indexへ

 群馬大学病院(前橋市)で肝臓手術を受けた患者が相次ぎ死亡した問題で、厚生労働省の社会保障審議会医療分科会(厚労相の諮問機関)は9日、野島美久病院長ら同病院幹部から初の聞き取り調査を行った。
 委員からは、原因分析や再発防止策に関する厳しい意見が相次いだ。分科会は今後も調査を続け、診療報酬上の優遇措置がある特定機能病院の承認取り消しの是非を判断する。
 分科会には、野島病院長や副病院長、医療の質・安全管理部長ら病院幹部6人が出席。一連の問題について謝罪し、患者8人が死亡した腹腔鏡手術の過失を認めた調査結果や、開腹手術後に死亡した患者の診断書に虚偽の記載があった経緯などを説明した。
 これに対し、委員からは「なぜ病院全体として問題を把握できなかったのか」「職員の安全意識がなければ再発防止策は機能しない」などの意見が出たとい う。野島病院長は分科会後、「厳しい意見を数々いただき、真摯に対応したい」と語った。遺族側がさらなる調査を求めていることについては、「今後検討した い」と述べるにとどまった。
 次回の分科会は27日に開かれる予定で、今後の調査方針などを検討する。

群大病院「厳正に対処する」…菅官房長官 indexへ

 菅官房長官は4日午前の記者会見で、群馬大学病院(前橋市)が腹腔(ふくくう)鏡手術問題の最終報告で死亡した患者8人全例で過失を認めたことに ついて、「病院として問題の把握が遅れるなど大きな問題があった。極めて遺憾なことだ」と語り、病院側のこれまでの対応を批判した。
 同病院は、高度医療を担う特定機能病院に承認されているが、菅氏は会見で、承認の取り消しを含めて「厳正に対処していきたい」と強調した。
 菅氏は、厚生労働省が病院の立ち入り検査を行うなど実態把握を進めていると言及したうえで、「特定機能病院の取り消しを含めて現在検討を行っている。きちんとした体制の見直しが必要だ」と述べた。
 同病院が3日に公表した最終報告では、腹腔鏡手術で死亡した8人について手術前の検査が不十分だったことなどを認めた。

厚労省「開腹」も調査へ…群馬大病院聞き取り indexへ

 群馬大学病院(前橋市)で肝臓手術を受けた患者が相次いで死亡した問題で、厚生労働省は3日、腹腔鏡と開腹手術の両方で本格的な調査を行う方針を固めた。
 同省の社会保障審議会医療分科会(厚労相の諮問機関)が9日に開く会合で、野島美久病院長から初めて聞き取り調査を行い、18人の患者が死亡した原因などについて詳しい説明を求める。
  聞き取り調査は、同病院が3日に、腹腔鏡手術で死亡した8人についての調査の最終報告書を公表したことと、開腹手術後に死亡した患者1人について執刀医が 虚偽の診断書を作成していたとの発表を受けたもの。同病院第二外科では、腹腔鏡を使う高難度の肝臓手術で8人が死亡したほか、開腹手術でも2009年度以 降10人の死亡が明らかになっている。死亡した患者は、いずれも同じ40歳代の男性医師が執刀した。
 同病院は、高度医療を担う特定機能病 院に承認されており、診療報酬上の優遇措置を受けている。腹腔鏡と開腹両方の手術で患者死亡が続いたことに対し、組織的な問題がなかったか、病院長に聞き 取り調査を行い、承認を取り消すべきかどうか議論する。処分決定には数か月かかる見通し。
 同病院によると、執刀医が虚偽の診断書を書いた患者は、10年9月に胆管細胞がんと診断された。手術後、容体が急変して3日目に死亡。その10日後、切除した肝臓の一部を病院で検査したところ、良性のできものだったことが確認された。
 しかし執刀医はこの検査結果を遺族に報告しなかった。そのうえ、同年11月に自ら作成した死亡診断書に「胆管細胞がん」と当初の診断名を記入したという。
 これを受け、病院は3月2日から同科教授の診療科長としての業務を停止、執刀医については「医師の適格性に疑問がある」として一切の診療行為を停止した。虚偽の診断書作成について執刀医は「記憶がはっきりしない」と話しているという。
最終報告書公表「全事例で過失」 腹腔鏡手術に関する最終報告書では、死亡した患者8人が受けた診療の医学的検証結果が初めて明らかになった。
 8人に共通する問題として、〈1〉新しい手術導入の際に必要な倫理審査を怠った〈2〉手術前の検査が不十分〈3〉患者への説明が不十分――など7項目が挙げられた。
 具体的には、肝臓を切り過ぎて肝不全を招いた例や、胆管と腸をうまくつなげなかった例、出血が多く開腹による止血を検討すべきだった例などがあった。こうした問題を考慮し、報告書は「全ての事例で過失があった」と結論づけた。

「何を信じたら」遺族、偽診断書に絶句…群馬大病院 indexへ

 肝臓手術を受けた患者が相次いで亡くなった群馬大学病院(前橋市)で、新たに深刻な問題が浮上した。
 3日開かれた記者会見で、執刀医による診断書の虚偽記載が明らかにされた。「何を信じたらいいのか」。遺族らは病院に不信感を募らせた。
 群馬大病院は、開腹手術を受けて死亡した患者10人のうち、手術から3日目に亡くなった1人について、死後、がんではなかったと判明しながら執刀医が遺族に伝えず、診断書にウソの病名を書いていたことを公表した。
 「命を預けた患者や家族のことを病院はどう思っていたのでしょうか。安全管理体制に問題があったことを重く受け止めてほしい」
 開腹手術で父を亡くした女性は、この事実を知り、声を震わせた。
 女性の父親の死亡は、腹腔鏡手 術で患者の死亡が相次いでいた時期と重なる。「診療科で死亡症例の検討が徹底されていれば、父の死は防げたのでは」との思いが消えない。腹部の張りや痛 み、縫合部からの体液の漏れが止まらないなどの手術後の症状は、腹腔鏡手術で死亡した患者の経過と似通っている。「真実を知りたい。調査を徹底してほし い」。女性はそう訴える。
 腹腔鏡手術で亡くなった患者の遺族も、診断書の虚偽記載には衝撃を隠せない。母親を亡くした女性は、「信じられない。人の命は重いものなのに……」と絶句した。
 調査結果について病院から報告は受けたが、説明に十分に納得できたわけではない。問題のある手術を、なぜ執刀医は繰り返したのか。診療科としてなぜ止め られなかったのか――。疑問に答えるものではなかったためだ。「執刀医が私の立場なら、家族として納得するのだろうか」
 病院は現在、開腹手術の患者についても調査を進めているが、すでに腹腔鏡手術の患者と共通する問題が確認されていることも公表した。治療に関するインフォームド・コンセント(説明と同意)の不十分さや重い合併症が出た際の対応の問題などだ。
  開腹手術で夫を亡くした別の女性は、執刀医から「がんを切除すればあと10年生きられる」と言われ、手術に踏み切った。「リスクの説明はほとんどなかっ た」というが、術後、夫は回復しないまま亡くなった。生前、夫が苦しみのあまり「手術しなければよかった」と漏らしたと聞き、胸が詰まった。
 女性は「執刀医から手術のリスクの説明があれば、思いとどまったかもしれない。なぜこうなったのか、説明を聞きたい」と話した。

開腹3日目死亡、がん誤診判明…診断書に虚偽病名 indexへ

  肝臓手術で患者の死亡が相次いだ群馬大学病院(前橋市)は3日、記者会見を開き、開腹手術後3日目に死亡した患者1人について、死亡後にがんではないと判 明したのに、執刀医はその事実を遺族に告げず、虚偽の診断書を作成していたと発表した。同病院は「極めて重大な問題」とし詳細を調査している。
 同病院第二外科では、腹腔鏡を使う高難度の肝臓手術で8人が死亡したほか、開腹手術でも2009年度以降10人の死亡が明らかになっている。死亡した患者は、いずれも同じ40歳代の男性医師が執刀した。
  発表によると、問題となっているのは、10年9月に胆管細胞がんと診断され胆管や肝臓を切除する手術を受けた後、容体が急変して3日目に死亡した患者。患 者の死亡から10日後、切除した肝臓の一部を病院で検査したところ、がんではなく良性のできものだったことが確認された。
 しかし、執刀医は、この検査結果を遺族に報告しなかった。そのうえ、同年11月に自ら作成した診断書には「胆管細胞がん」と当初の診断名を記入。すでにがんではないと判明していたため、虚偽の病名を記載したことになる。
 これを受け、病院は昨日から同科教授の診療科長としての業務を停止、執刀医については「医師の適格性に疑問がある」として一切の診療行為を停止した。
 群馬大学病院は「遺族にはすでに説明して謝罪した。手術の妥当性や死亡との因果関係について現在、調査しているが、このような事態を病院として重く受け 止めている」としている。その他の開腹手術による死亡例についても、調査を進め、5月頃に結果を公表するという。

腹腔鏡死亡8人の全例過失認め謝罪…群馬大病院 indexへ

 群馬大学病院は、腹腔鏡手術に関する調査の最終報告書についても公表し、死亡した患者8人が受けた診療の医学的検証結果を初めて明らかにした。
 8人に共通する問題として、〈1〉新しい手術導入の際に必要な倫理審査を怠った〈2〉手術前の検査が不十分〈3〉患者への説明が不十分――など7項目が挙げられた。
 具体的には、肝臓を切り過ぎて肝不全を招いた例や、手術操作に問題があるとみられ胆管と腸をうまくつなげなかった例、出血が多く開腹による止血を検討す べきだった例などがあった。術後の対応が適切であれば「異なる経過をとった可能性がある」とされた患者もいた。
 こうした問題を考慮し、報告書は「全ての事例で過失があった」と結論づけた。
 手術を手がけた第二外科では安全への配慮が足りず、教授と執刀医の「責任は重大」としたが、不十分な状態で高難度手術を続けた理由に明確な言及はなかった。
 野島美久病院長は「患者様のご冥福を祈り、ご遺族におわび申し上げます。補償の問題については、真摯に対応していきたい」と謝罪した。
 腹腔鏡手術では、2011年1月~14年5月に手術後に相次いで患者が死亡していることが判明。病院は昨年8月から、外部専門家5人を含めた調査委員会(委員長・峯岸敬副病院長)で調査していた。

腹腔鏡手術最終報告書のポイント
 ▽手術前検査が不十分で肝臓を切り過ぎて重い負担がかかった可能性も
 ▽手術の説明同意文書、カルテ記載が不十分
 ▽症例検討会などで診療を振り返ることが不十分
 ▽病院として問題把握の遅れ
 ▽不適切な保険請求
 ▽8人全てで過失があったと判断された
 ▽執刀医、診療科長を務める教授の責任は重大

遺族「まだ疑問消えない」…群馬大病院調査報告書 indexへ

 肝臓手術で患者が相次ぎ死亡した群馬大学病院第二外科(前橋市)。病院側は3日、腹腔鏡手術で死亡した8人について最終の調査報告書を公表し、全例で過 失を認め謝罪した。開腹手術の患者では、調査の過程で死亡した患者の診断書虚偽記載が判明。一連の問題の深刻さを浮き彫りにした。遺族は、切実な思いで事 態の行方を見守っている。
 「亡くなった人はもう帰ってこない。でも、とにかく真実が知りたい」
 腹腔鏡手術を受け死亡した患者の遺族の女性は、心境をそう語った。
  病院による調査報告の説明は受けたが、今も「どうしてこんなことに?」という疑問が消えない。大切な家族はもう帰って来ないが、過ぎたことと割り切れない 思いが残る。女性は「本当は何が起こっていたのか知りたい。病院の一方的な話だけでは納得できない」と漏らし、悲しみの深さをうかがわせた。
 記者会見では、野島美久病院長が沈痛な面持ちで、「なぜもっと早く問題を把握して、対応できなかったのか。それが最大の問題だった」と振り返った。
 閉鎖的な診療体制で、死亡例が相次いだことについて、「統括すべき診療科長の管理責任は重大だ」と言及。「他の診療科からの意見や批判にさらされること なく、チーム内でも症例の吟味や振り返りがなかった」とした。病院の管理体制についても「不備があった」と述べた。
 会見には、野島病院長や永井弥生・医療の質・安全管理部長に加え、調査委員会委員長の峯岸敬副院長も出席。野島病院長が、最終報告書に基づいて個別の症例の問題点を説明した。
 「手術以外の治療の選択肢を示さなかった」「術中の操作に問題があった」「再手術を検討すべきだった」――。8例の検証結果では、複数の患者で似通った 問題点が繰り返し指摘され、主治医や診療科長が重大性に全く気づかずに手術が重ねられたことが明らかになった。
  現在、並行して、開腹手術で亡くなった10人についても調査委員会で検討しており、「腹腔鏡手術と共通の問題点が指摘されている」という。このうち1人 は、死亡後にがんではなかったことが判明。執刀医が事実を遺族に告げず、事実が判明した後に、診断書に虚偽の病名を記載していたという重大な問題も明らか にされた。
 肝臓の腹腔鏡手術を受けた患者数はこれまで、2010年12月~14年6月で計92人とされてきたが、93人に修正された。

腹腔鏡死亡「全例で過失」…群馬大病院 indexへ

 群馬大学病院(前橋市)の腹腔鏡手術問題で、病院による最終的な調査報告の概要が判明し、手術後に死亡した患者8人全員の診療に「過失があった」と認めていることがわかった。
 最終報告はきょう3日公表される。病院側は遺族への補償の意向を示しているという。ただ、患者の死亡例が相次いだ後も執刀医や教授が高難度の手術を続けた理由や背景はなお不透明で、「納得できない」という遺族もいる。
 群馬大病院では、肝臓の腹腔鏡手術を受けた患者8人が2011年1月~14年5月に死亡。外部委員5人を含む調査委員会で調査し、昨年12月に中間報告 を公表。今年2月には調査を終え、同月中旬から3月1日まで遺族やその代理人を務める弁護士に個別に説明してきた。
 最終報告では、手術前に行うべき肝機能検査が行われず、患者への説明やカルテ記載に不備があったことなど、中間報告で公表されている問題のほか、患者個々の診療の医学的評価が新たに加えられている。
 調査の結果、臓器の縫い合わせがうまくいかず容体が悪化している例が複数あり、手術中の操作に問題があったとみられる。
 手術後の再手術が必要だったり、大量の出血が体の負担になったりしたとみられる患者もいた。また、複数の患者で、病状や体調に照らし、手術すること自体が不適当だった可能性が指摘されている。
 こうしたことから、病院側は「8人すべてで過失があったと判断した」と結論づけている。
 ただ、相次ぐ患者の死亡後、十分に検証せず、医師が少ない中で高難度の腹腔鏡手術をなぜ3年半も続けたのか、真相は不透明なままだ。
 このほか、診療と死亡の因果関係の評価が不明確で、遺族への補償に関して具体的な金額が明かされていない。手術を手がけた第二外科の責任者である教授と執刀医による直接の説明や謝罪も行われていない。
 このため、病院の説明に納得していない遺族もいる。遺族側の弁護団は「現在、2人の患者について独自に調査しているが、病院の調査内容や説明は不十分だと考えている。近く問題点を公表する」とする。
 群馬大病院総務課は「調査結果の詳細は現時点では答えられない」と話している。
 群馬大学病院の腹腔鏡手術問題 第二外科による肝臓の腹腔鏡手術を受けた患者8人が手術後に相次いで死亡したことが昨年11月に発覚した。その後に患者 死亡後の症例検討会を診療科で行っていなかったり、カルテ記載が不十分だったりする問題が明らかになり、厚生労働省などが1月に立ち入り検査を行った。

長崎大病院で乳児ら院内感染…2人発症も快方へ indexへ

 長崎大病院(長崎市)は25日、昨年11月から今年2月までに新生児集中治療室(NICU、6床)や新生児回復治療室(GCU、9床)に入院した 新生児や乳児15人から、抗菌薬の切り札とされる「カルバペネム」が効かない耐性菌「カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)」が検出されたと発表し た。
 集団院内感染とみられ、同病院はNICUやGCUでの新生児の受け入れを中止している。
 同病院によると、15人のうち、感染による発熱などの症状が出たのは2人。1人は別の抗菌薬で治り、もう1人も快方に向かっているという。他の13人は発症していないという。
  昨年11月1日、NICUの患者1人の気管チューブからCREが検出された。このため、他の患者を調べたところ別の6人からも検出された。うち1人が12 月下旬、CREによるとみられる発熱の症状を出し、感染症法に基づき市保健所に届け出たが、その後も感染者が確認された。
 長崎大病院の宮崎泰司副病院長は「多大なご迷惑をおかけしおわび申し上げる。感染対策が不十分だった」と陳謝した。

アビガン臨床試験、一部でエボラ死亡率半減も indexへ

 フランス国立保健医学研究所は24日、富士フイルムホールディングスの経口薬「アビガン」(一般名ファビピラビル)を、エボラ出血熱の患者に投与した臨床試験で、「血中のウイルス量の少ない患者で死亡率を半減させた」との中間結果を発表した。
 フランス大統領府が今月4日、「期待の持てる効果があった」と発表したが、詳しいデータが明らかになったのは初めて。
 臨床試験は昨年12月から西アフリカ・ギニアで行われ、アビガンを患者80人に投与。血中ウイルス量が比較的少ない患者では死亡率が30%から15%に 半減した。しかしウイルス量が多い患者は、薬を投与しても死亡率が93%に上り、効果が見られなかったという。

男性不妊治療へ助成、1回につき上限10万円…山口 indexへ

 山口県は不妊に悩む夫婦の経済的な負担を軽減するため、新たに男性の不妊治療への助成も行うことにし、事業費1000万円を新年度の当初予算案に盛り込んだ。従来の助成制度と合わせると全国トップ水準の支援体制になるという。
 不妊治療には〈1〉排卵日を厳密に予測するタイミング法や薬物療法などによる一般不妊治療〈2〉人工授精〈3〉体外受精、顕微授精による特定不妊治療――と大きく分けて3段階あり、県にはそれぞれ助成制度がある。
 今回加えるのは〈3〉の一環で行われる、男性の採精手術。無精子症などの場合に精巣から精子を取り出す手術で、保険適用外のため、1回に20万~30万 円かかるという。新制度では1回につき10万円を上限に助成し(所得条件あり)、年間100件ほどの申請を見込む。
 県健康増進課は「今回の事業により、悩んでいる夫婦の治療を後押しし、男性の不妊治療への関心、理解が深まる機会にもつなげたい」としている。
      
  県は不妊への理解を深める講演会や、不妊・不育に関する専門相談も行っている。3月8日午後1時からは「もっと知りたい!不妊のこと」をテーマに、医師や NPO法人理事長らによる講演会、医師やカウンセラーによる相談会(先着20人程度の予約制、今月27日締め切り)を周南市の県周南総合庁舎で開く。参加 は無料。問い合わせは県健康増進課(083・933・2947)へ。

大動脈解離、震災後2倍に…岩手の病院調査 indexへ

 東日本大震災の被災地で、血管の病気「急性大動脈解離」の患者が、震災前に比べて2・2倍に増えたことが岩手県立中央病院(盛岡市)の医師らの調査でわかった。
 ストレスによる血圧上昇が原因とみられ、患者数のピークは震災後3年目だった。京都市で開催中の日本心臓血管外科学会で18日に発表する。
  同病院で緊急手術を受けた患者数を震災前後で比較した。震災前の3年間は23人だったのに対し、震災後3年間は50人に増えた。震災後1年目は7人だった が、2年目は20人、3年目は23人と急増した。患者はほぼ全員が県内在住で、40歳代と若い人もいた。調査した小田克彦医師(心臓血管外科)は「生活不 安などストレスを受け続けた結果、血圧が徐々に上昇し、発症したのでは」と分析する。
 1995年の阪神大震災や2004年の新潟県中越地 震では被災直後に、避難生活でのストレスなどが原因で心筋梗塞などの心臓病が急増したことが知られている。小田医師は「被災直後に目立つ心臓病だけでな く、長期のストレスで起きるような大動脈解離にも備え、被災者の血圧検査など予防や治療の体制を整備する必要がある」としている。
 急性大動脈解離 心臓につながる大動脈の壁の内側に裂け目ができ、血液が流れ込み、血管の壁の一部が膨らむ状態になる。高血圧による動脈壁の劣化が要因の一つとされ、手術では膨らんだ部分を切除して人工血管に置き換える。

薬の副作用報告遅れ、米社に業務改善指示…厚労省 indexへ

 厚生労働省は13日、薬の副作用報告が最大で約1年遅れたとして、米ギリアド・サイエンシズ社に対し、医薬品医療機器法に基づき業務改善を指示した。
  対象となったのは、米国などで販売されているC型肝炎治療薬「ソバルディ」「ハーボニ」と、血液がん治療薬「ザイデリッグ」の副作用計735例。いずれも 日本では臨床試験中などで未承認だが、海外で先に発売されている場合も、同法は副作用を把握してから7日または15日以内の報告を求めている。

抗がん剤「ジェブタナ」使用に注意喚起 indexへ

 前立腺がんの抗がん剤「ジェブタナ」を使用した患者5人が肺炎などで死亡したことを受け、厚生労働省は製薬会社「サノフィ」に対し、発熱後速やかに検査や治療を行うことなどを医療機関に伝えるよう通知した。
  同省によると、ジェブタナは昨年9月から約3か月半で208人に投与され、28人に体内に入った異物を攻撃する白血球の一つ、好中球が減少し、感染症など の重い症状が出た。このうち60~70歳代の男性5人が死亡している。ジェブタナには血液を作る骨髄の働きを抑える副作用がある。通知では好中球が減少す る心配がある患者を具体的に明記し、予防のために好中球を増やす薬剤を使うことを薬の添付文書に記載することも同社に求めた。

手術後に病状悪化、再入院させず死亡…群大病院 indexへ

 群馬大学病院第二外科(前橋市)で肝臓の腹腔鏡手術を受けた患者8人が死亡した問題で、うち1人の70代の患者が退院約1週間後に病状を悪化させて死亡していたことがわかった。
 退院時、肝臓の働きが悪い肝不全状態だったとみられる。その後、患者は体の異常を訴え、救急外来を受診しているが、病院側は緊急入院させず、翌日、死亡が確認された。手術後に続いた不適切な対応が患者の死亡につながった可能性がある。
 同科は2010年12月、肝臓の腹腔鏡手術を導入したが、関係者によると、最初の手術を受けたのがこの患者だった。手術から約3週間後、腹水がたまるなど肝不全とみられる症状があったが、正月を控えた年末でもあり、病院側は患者を退院させた。
  ところが、まもなく容体がさらに悪化し、翌11年の正月休み中に同病院の救急外来を受診。その際、手術を執刀した男性医師はおらず、当直医が対応。腹水が たまり、血液検査の数値もよくなかったが緊急入院させることはなく簡単な処置をして帰宅させた。翌朝、患者は自宅で重体に陥り、群馬大病院に救急搬送され たが、死亡が確認された。
 病院内部では、手術の問題だけでなく、こうした経過についても問題視しているという。別の病院で肝臓手術を手が ける外科医も「肝不全が疑われる状態だったとすれば、退院させず経過を見たほうがよかったのではないか。少なくとも数日後に受診した時には入院させるべき だった」と話す。
 1例目の患者が死亡したにもかかわらず、その事実は周知されず、同科は死亡原因などを検証する死亡症例検討会を開かないまま腹腔鏡手術を続け、11年だけで4人が死亡。病院が調査を始めた14年6月までに、死亡者は計8人となった。
 群馬大病院は「腹腔鏡手術を受けて亡くなった患者8人の診療内容については現在、調査の最終報告書をまとめており、今年度中に公表する」としている。
 腹腔鏡手術  腹部に開けた数か所の穴からカメラと操作器具をさし入れ、内部の映像をモニター画面で見ながら、臓器の切除や縫合をする。開腹手術より傷が小さくて済み、 体への負担が少なく回復が早いとされる。胃や大腸では普及しているが、肝臓は難易度が高いため一部の導入にとどまっている。

群大病院、眼科で虚偽診療記録…手術せず「実施」と報告 indexへ

 腹腔鏡を使う高難度の肝臓手術を受けた患者8人が死亡した群馬大学病院(前橋市)で、眼科の女性患者の診療記録に、実際は行っていない手術を実施したとする虚偽の記載があり、病院側が昨年11月、患者側に謝罪していたことがわかった。
 腹腔鏡手術を巡っては、診療記録の不十分さが問題視されているが、病院の記録管理の不備が改めて明らかになった。
 関係者によると、女性は視力が低下する角膜の病気で、2013年6月、胎児を包む羊膜を傷ついた角膜上に移植する手術を受けるため同病院眼科を受診。しかし、手術の際、担当医が急きょ方針を変更し、羊膜移植は行われなかった。
  ところが、手術後、女性を同病院に紹介した別の病院の問い合わせに対しては、担当医が文書で「羊膜移植術を施行しました」と事実と異なる治療内容を報告。 このことを知った関係者が群馬大病院に指摘したところ、昨年11月上旬、羊膜移植を行ったとする記載は事実でないと認め、謝罪した。
 誤った情報伝達により、後の治療で不適切な処置が行われる恐れがあった。同病院は「単純な誤りだった。訂正文書を出して患者に謝罪し、了解いただいた」としている。

鎮静剤事故、東京女子医大の過失認定…第三者委 indexへ

 東京女子医大病院(東京都新宿区)で昨年2月、人工呼吸中の小児患者への投与が禁止されている鎮静剤の大量投与後に男児(当時2歳)が死亡した医 療事故で、同病院の第三者事故調査委員会は6日、この鎮静剤特有の副作用症状「プロポフォール症候群」が直接の死因とする報告書を同病院に提出した。
 副作用を誘引した要因については、「鎮静剤の長時間・大量投与」と指摘している。
  関係者によると、報告書は、麻酔科医らが投与量や投与時間を十分検討しないまま鎮静剤「プロポフォール」の使用を決めたと批判。2日間を超える投与の危険 性を示す研究文献があったにもかかわらず、医師らはそれを十分認識しないまま、4日間にわたって大量投与を続けたと指摘した。
 同病院では、男児の事故前にも同様の投与が繰り返され、15歳未満の小児患者11人が死亡。病院の外部評価委員会は、うち5人について「投与が死亡に影響を与えた可能性を否定できない」と結論付けている。
 男児は昨年2月18日、首の腫瘍の手術を受けた後、集中治療室でプロポフォールを投与されたが、21日夜に死亡。警視庁が業務上過失致死容疑で捜査している。

てんかん治療薬服用し4人死亡 indexへ

 厚生労働省は4日、てんかんと双極性障害の治療薬「ラミクタール錠」(一般名・ラモトリギン)を服用した患者4人が、昨年9~12月に重い皮膚障害を発症して死亡したと発表した。
 製造販売元のグラクソ・スミスクライン社には、用法・用量の順守と、発疹などが現れた場合は投与を中止することを添付文書の警告欄に追記し、注意喚起す るよう指示した。同省によると、死亡した4人は、いずれも定められた用法・用量を超えて投与されていた。

群馬大など「特定機能病院」取り消しを議論 indexへ

 群馬大病院(前橋市)と東京女子医大病院(東京都新宿区)の患者死亡問題で、厚生労働省の社会保障審議会医療分科会(厚労相の諮問機関)は3日、特定機能病院の承認取り消しについて議論を始めた。
 今後、病院長らのヒアリングなどを行い、処分を決める。
 群馬大病院では肝臓の開腹手術と腹腔鏡手術で術後約3か月以内に計18人が死亡。東京女子医大病院では鎮静剤の投与後に男児が死亡する事故があり、その後、同様に投与を受けた小児患者11人も死亡していたことが明らかになった。
 この日の分科会では、両病院から提出された事故報告や改善報告が示され、厚労省が行った立ち入り検査の結果が報告された。その上で、病院側から直接ヒアリングする必要があるとの意見で一致した。

前立腺がん新薬「ザイティガ錠」服用の1人死亡 indexへ

 厚生労働省は2日、前立腺がんの新薬「ザイティガ錠」を服用した患者4人が重い低カリウム血症を発症し、うち1人が死亡したとして、販売元の製薬会社に対し、こうした症状を起こす恐れのある患者には慎重に投与することなどを注意喚起するよう通知した。
 ザイティガ錠は、ヤンセンファーマ社が昨年9月に発売開始。がん細胞の増殖を促す男性ホルモンの生成に関わる酵素の働きを抑える。低カリウム血症は、血液中のカリウム濃度が低い状態で、筋力低下や不整脈などを引き起こすことがある。

山梨・身延の病院でインフル集団感染 indexへ

 山梨県身延町飯富の飯富病院は26日、今月15日以降、病院内で入院患者ら計23人がインフルエンザに集団感染したと発表した。
  このうち、重い肝不全だった男性患者(76)が16日に死亡し、22日に退院した女性患者(80)は23日に発症して再入院したが、意識不明となったた め、市立甲府病院に転院して治療を受けている。飯富病院では男性患者の死亡について、「インフルエンザが直接の死亡原因ではない」としている。
 発表によると、今月15日、入院中の男性患者2人がインフルエンザの陽性反応が出た。その後も症状の訴えが続き、24日までに入院患者18人、看護師など職員5人がインフルエンザと診断された。
 集団感染を受け、同病院では16日から面会を全て禁止としたほか、全ての職員と入院患者に抗インフルエンザ薬を投与するなどの対応を取った。芦沢敏副院長は「予防を呼びかける病院で集団感染を起こして申し訳ない。再発防止を徹底したい」と話した。

インフル感染2人死亡…広島の病院と滋賀の特養 indexへ

 広島、滋賀両県は24日、病院などでインフルエンザの集団感染が発生し、高齢女性計2人が死亡したと発表した。全国的に流行しており、厚生労働省は手洗いなど予防の徹底を呼びかけている。
  広島県安芸高田市の八千代病院(511床)では、20日以降、入院患者16人と職員9人計25人が発症し、このうち80歳代の女性患者が23日、インフル エンザ脳症で亡くなった。女性患者は予防接種は受けていたという。他の患者らは快方に向かっている。同病院では、見舞いの制限などをしている。
  一方、滋賀県草津市の特別養護老人ホーム「ぽぷら」でも11~18日に女性入所者8人と職員5人の計13人が発熱などの症状を訴え、このうち90歳代の女 性入所者1人が23日、インフルエンザと風邪による心不全で死亡した。他の入所者らは命に別条はないという。同ホームでは昨年秋、入所者らを対象にインフ ルエンザの予防接種を行い、90歳代の女性も受けていた。

動脈傷つけ患者死亡 北里大学病院 血液採取で事故 indexへ

 神奈川県の北里大学病院で、患者から血液を採る際、研修医らが動脈を傷付ける事故を起こし、患者が死亡していたことが分かりました。
 北里大学病院によりますと、おととし、血液内科の20代の研修医と30代の医師は、入院していた60代の患者の治療の一環で、首から血液を採取した際、 誤って針で動脈を傷付けてしまったということです。さらに、血液が固まらないようにする薬剤が誤って体内に投与されていました。患者が呼吸困難を訴えたこ とで発覚し、医師らが処置にあたりましたが、患者は11日後に死亡しました。

インフルエンザ 患者と看護師死亡 25人が院内感染 まつもと医療センター indexへ

 国立病院機構まつもと医療センターは(松本市)は19日、同センター松本病院の患者21人と看護師4人の計25人が院内でインフルエンザA型に集団感染し、うち入院患者1人と看護師1人の計2人が死亡したと発表した。
 2人は白血病で入院していた70代男性と、40代女性看護師。それぞれインフルエンザ肺炎とインフルエンザ脳症で17日に死亡した。19日、記者会見した北野喜良院長は「多くの人が感染し、2人が亡くなった。深くおわびしたい」と述べた。
 同センターによると、10日に3人がインフルエンザで入院。14日に院内感染が確認された。男性は15日に、女性看護師は16日に感染が判明。女性看護師は3人の看護を担当していた。
 同センターは14日以降、面会制限やマスク着用の徹底、全患者と職員に対する予防内服を実施。今後、新規入院患者の感染の有無を確認する。大半の罹患(りかん)者が快方に向かっているが、元の病気の症状が重いため危険な状態の患者もいるという。

両親の実名会見、阪大が自粛要請…女児臓器提供 indexへ

 心臓移植の待機中に脳死となった6歳未満女児の臓器提供で、女児が入院していた大阪大病院は19日に記者会見し、女児の両親らが実名を明かして記 者会見を開こうとしたため、自粛するよう要請したことを明らかにした。「実名公表で不測の事態が起こる可能性があった。両親の心労が増す懸念もあった」と 説明した。

静脈に入れるべき針を誤って動脈に…患者死亡 indexへ

 北里大学病院(相模原市南区)は19日、造血幹細胞の採取時のミスが原因で患者が死亡する事故が2013年8月にあったと発表した。
  死亡したのは血液疾患で血液内科に入院していた当時60歳代の患者。女性医師(30)と男性研修医(28)が中心となって、幹細胞を採取するための処置を 実施。処置中に、右頸部(けいぶ)の静脈に入れるべき針を誤って動脈に刺し、さらに血液が固まることを防ぐ抗凝固薬を通常より多く投与するミスがあった。 その後、患者の右頸部で大量に出血し、気道を圧迫。患者は低酸素脳症となり、11日後に多臓器不全で死亡したという。
 病院側は、相模原南署に届け出るとともに原因を調査していた。遺族とは最近になって示談が成立し、事故の公表にも同意を得たという。

群大病院、死亡率6倍…13・79% 平均は2%台 indexへ

 群馬大学病院(前橋市)で、腹腔鏡を使う保険適用外の肝臓手術を受けた患者8人が死亡した問題を受け、日本外科学会などは15日、記者会見を開き、初の全例調査の結果を公表した。
 腹腔鏡を使う保険適用外で高難度の肝臓手術は、死亡率(手術後90日以内)が全国平均で2・27%だった。群馬大病院で問題となっている第二外科の死亡率は保険適用外に絞ると13・79%で、全国平均の6倍になることがわかった。
 全例調査は、日本外科学会と日本消化器外科学会が合同で実施。全国で行われたすべての外科手術を登録するNCD(ナショナル・クリニカル・データベー ス)の2011~13年のデータを使い、全国2336医療機関で行われた肝臓、膵臓など消化器の手術137万7118件を対象に分析した。肝臓手術は、問 題となった保険適用外の腹腔鏡手術を調査の対象とした。
 それによると、高難度の開腹手術と腹腔鏡手術を合わせた2万3489件の肝臓の手術全体について計算した死亡率は3・69%。保険適用外の腹腔鏡に限り算出した死亡率は2・27%で、肝臓全体の平均値を下回った。
 肝臓手術に占める腹腔鏡手術の割合は増加傾向にあり、肝臓手術全体の5・1%が腹腔鏡。群馬大は腹腔鏡が約7割と極めて高く、高難度の手術の多くを腹腔鏡で行っていた。
  日本外科学会理事長の國土典宏・東大肝胆膵外科教授は「腹腔鏡手術のリスクは開腹手術に比べ高いということはなく、腹腔鏡手術が広く行われると手術のリス クが高まるとは言えない」と話している。群馬大病院の問題に対しては、病院側の最終的な調査結果を待って学会としての見解をまとめる考えだ。
 群馬大病院では、第二外科が10年12月~14年6月に行った肝臓の腹腔鏡手術を受けた92人のうち8人が約3か月以内に死亡した。全体の死亡率は8・7%だが、保険適用外に絞ると手術を受けた患者は58人で、死亡率は13・79%になる。
 日本大学医学部消化器外科の高山忠利教授の話「こ れまで一部の専門学会からは0・1%未満とあまりにも低い死亡率の報告もあったが、今回の2・27%という死亡率は実態を反映した数字といえる。群馬大の 死亡率が高すぎるのは言うまでもないが、体に優しいとされる腹腔鏡手術についても、通常の開腹手術とほぼ同程度のリスクがあることを患者に正しく説明する 必要がある」

高い死亡率、遺族衝撃「群大病院は調査を」 indexへ

 患者の死亡が相次いだ群馬大学病院(前橋市)の問題を受け、日本外科学会などが初めて行った腹腔鏡手術の全例調査。
 その結果によると、保険適用外の肝臓手術の死亡率は2%台と、群馬大病院の死亡率の高さが際立つ形となった。
 「今回の調査結果を見て群馬大病院が高い低いというのは控えたい。ただ、一般の方が高いと思うならば、そういう感じ方もあると思う」。同学会理事長の國土典宏・東大肝胆膵外科教授は、慎重に言葉を選びながらそう述べた。
 群馬大病院の第二外科による肝臓の腹腔鏡手術を受けた患者は2010~14年、保険適用外に絞ると58人で、うち8人が死亡した。保険適用外手術の死亡率は13・79%に上る。
  今回、発表された2・27%という死亡率は全国平均で、個別に見れば群馬大病院のように死亡率の高い病院がある可能性もある。対策として学会側は収集した データを基に、病院が各自の手術成績と全国平均を比較できるシステムを拡充するという。ただ、患者にどう情報提供するかは病院側の判断次第だ。
 群馬大病院で死亡した患者の遺族は、今回の調査結果に衝撃を受けた。
 「平均がその数字だということは、群馬大病院は、すごく高いんですね」
  群馬県内の女性は、そう言って絶句した。女性の母親は肝臓の腹腔鏡手術を受け、死亡した。母は「手術は受けたくない」と訴えていた。女性は「亡くなってし まった人の命は返ってこないけれど、今後、悲しむ人が一人でも少なくなるように、群馬大学病院はしっかり調査をしてほしい」と語った。

無許可で診療所開設疑い、エステ社長ら逮捕 indexへ

 福岡市のエステ店経営会社「ロンエロース・バイフー」による特定商取引法違反事件で、福岡県警は14日、医師と共謀して診療所を無許可で開設したとして、社長の西出茂被告(65)(特商法違反で起訴)と元幹部社員ら3人を医療法違反容疑で逮捕した。
 エステ店で「毛穴が変形している」などと不安をあおって診療を促し高額契約を結ばせ、5300人以上から9億6300万円以上を得たとみている。
 発表によると、西出被告らは男性医師2人と共謀し、2012年8月と13年2月から昨年3月まで、同市博多区中洲と中央区天神に診療所2か所を無許可で 開設した疑い。医師はそれぞれ院長だったが、常勤していなかった。県警は近く、医師2人を同法違反容疑で書類送検する。
 県警は14日、虚偽の説明で勧誘したなどとして、西出被告を特商法違反容疑で追送検し、元従業員ら8人を書類送検したと発表した。

群大病院の補助金凍結…厚労省、14年度分 indexへ

 肝臓の腹腔鏡手術を受けた患者8人が死亡した群馬大学病院(前橋市)について、厚生労働省が「臨床研究中核病院」に対する2014年度分の補助金約4億円の交付を凍結していることがわかった。
 3月末までに発表される病院による調査の最終報告や関係者の処分状況により、交付するかどうか判断する。
  厚労省は、質の高い臨床研究を行う「臨床研究中核病院」を整備しようと、審査で選ばれた病院に補助金を交付。12、13年度に5病院ずつ計10病院を選定 した。群馬大病院は13年度、放射線治療の研究が評価され、応募45病院から選ばれた。5年間の補助金は約20億円を予定。13年度分は約5億8000万 円を受け取った。
 14年度分は12月までに交付予定だったが、11月に問題が発覚。厚労省は「院内の管理体制に問題があり、臨床研究を安全に行えるか懸念がある」として、整備費と研究費から成る補助金のうち整備費分の約4億円の交付を凍結した。
 ただ、補助金の研究費分7000万円は交付した。研究費に問題の腹腔鏡手術に関する内容は含まれていない。補助金は年度内の3月末までに使い切らなければならないため、今年度分は受け取れず、整備計画に遅れが出る可能性がある。

病院側110万円支払い命令 手術後しびれ 「リスク説明怠る」 奈良地裁判決 indexへ

 股関節の手術後に下半身にしびれなどが残ったとして患者の女性(77)が医療法人康仁会(奈良市)に約 4770万の損害賠償を求めた訴訟で、奈良地裁(牧賢二裁判長)は13日、医師が手術前にリスクについて説明を怠った過失を認め、同会に慰謝料など110 万円を支払うよう命じた。
 判決によると、女性は2008年、同会が運営する「西の京病院」(奈良市)で右股関節を人工関節に置き換える手術を受けたが、直後から右下半身に痛みやしびれが残った。
  牧裁判長は、症状は座骨神経のまひで手術による合併症と認めたが、「医師の手技ミスは認められない」とした。一方で手術時の説明について「合併症として神 経まひが起きた場合の予測に関する説明はしなかった」と過失を認定。女性は「神経まひの可能性も踏まえ、手術を受けるか決定する機会を失った」とした。
 康仁会は「判決文を見ていないのでコメントできない」とした。

群大病院に立ち入り検査…安全管理態勢など確認 indexへ

 群馬大学病院(前橋市)で肝臓手術を受けた患者の死亡が相次いだ問題で、厚生労働省と前橋市は13日午前、医療法に基づき、同病院への立ち入り検査を始めた。
 病院関係者から事情を聞き、それぞれの手術の詳細や院内の安全管理態勢、再発防止策の実施状況などについて確認する。
  同病院では、第二外科の40歳代の男性執刀医による腹腔鏡(ふくくうきょう)手術を受けた8人が、2011~14年に死亡。同じ医師が執刀した開腹手術の 患者も、09~13年に10人が死亡していた。腹腔鏡手術では術前の検査や患者側への説明、死亡事例の検証が不十分だったなどの問題点が発覚。保険適用外 の手術では、必要な院内手続きも踏んでいなかった。
 医療法では、国や保健所設置者の自治体は、必要に応じて病院に立ち入り検査ができるとされている。

腹腔鏡8人死亡、群馬大病院を立ち入り検査 厚労省など indexへ

 群馬大医学部付属病院(前橋市)の40代の男性医師が、院内の審査を経ずに腹腔(ふくくう)鏡を使った高難度の肝臓切除手術を重ね、術後100日以内に 患者8人が死亡した問題で、厚生労働省と前橋市は13日午前、医療法に基づき同病院に立ち入り検査に入った。
 厚労省と市は、病院が昨年12月に公表した中間報告書と改善報告書を踏まえ、手術の状況や安全管理体制などを調べる。その後、厚労省は、検査結果を社会 保障審議会医療分科会に報告し、同病院について、高度医療を提供して診療報酬が優遇される「特定機能病院」の承認取り消しも含めて検討する。
 同病院の調査によると、2010~14年に同医師が担当した腹腔鏡を使った肝臓切除手術を受けた肝臓がんなどの患者8人が、術後100日以内に敗血症な どで死亡。高難度の手術に必要な院内の事前審査を受けておらず、保険適用外なのに一部は診療報酬を請求していた。同病院は、手術前後の検討が不十分なまま 手術が繰り返された点など、組織的な問題があったことを記者会見で認めた。
 また、この医師が執刀した肝臓の開腹手術でも過去5年間で84人中10人が死亡していた。

子供に向精神薬 処方増…全国初調査 indexへ

 子どもへの向精神薬の処方件数が増加し、13歳~18歳では、2002年~04年 と08年~10年との比較で、注意欠如・多動症に使うADHD治療薬が2・49倍、統合失調症などに使う抗精神病薬が1・43倍になったことが、医療経済 研究機構(東京)と国立精神・神経医療研究センター(同)などによる初の全国調査で分かった。
 調査は、02年から10年の間に、外来診療を受けた18歳以下の患者の診療報酬と調剤報酬の明細書約23万件を分析した。1000人あたりの向精神薬の処方件数などを算出し、統計解析で年齢層ごとの処方件数の年次推移などを比較した。
 02年~04年と08年~10年の処方件数を比べると、13歳~18歳ではADHD治療薬と抗精神病薬の増加に加え、抗うつ薬の処方も1・31倍となっていた。6歳~12歳でも、ADHD治療薬が1・84倍、抗精神病薬が1・58倍と増えていた。
 一人の子どもに異なる向精神薬を複数処方する例が多いことも判明した。抗うつ薬を処方された13歳~18歳の子どもの58%に抗不安薬・睡眠薬が、36%に抗精神病薬が併用されていた。
  処方増の背景に、精神疾患症状が表れる子どもが増えていることなどがある。同センター薬物依存研究部の松本俊彦室長は「向精神薬の多くは、子どもを対象と した大規模な臨床試験が国内では行われておらず、長期的な効果や安全性が十分確認されているとは言えない。早急に臨床試験や詳しい実態調査を行うべきだ」 と話している。

糖尿病新薬で副作用?重い脱水症状…厚労省が注意喚起 indexへ

 糖尿病の新薬「SGLT2阻害薬」を服用した患者18人が重い脱水症状を起こしたことを受け、厚生労働省は9日、高齢者らへの慎重な投与の必要性や、副作用で脱水症状が起きる恐れを薬の添付文書に明記するよう製薬会社に通知した。
 同省によると、昨年4月以降に発売されたこの新薬のうち、アステラス製薬の「スーグラ」、アストラゼネカなどの「フォシーガ」、興和の「デベルザ」、サ ノフィの「アプルウェイ」の四つで重い脱水症状の報告があり、「脱水症状との因果関係が否定できない」と判断した。

神戸市立の中央市民病院>手術で脳内に3週間ガーゼ放置 indexへ

 神戸市立医療センター中央市民病院(同市中央区)は6日、脳腫瘍で開頭手術を受けた40代女性患者の脳内に約3週間、ガーゼを置き忘れる事故があったと 発表した。これが原因とみられる感染による脳膿瘍(のうよう)が発症し、再手術で取り除いた。後遺症はないといい、損害賠償交渉を進める。
 同病院によると、昨年8月7日、脳室にあった腫瘍の部分摘出手術で、止血などを目的にガーゼ(縦2センチ、横1センチ)を150枚使い、うち1枚を取り 忘れた。ガーゼには置き忘れ防止の糸(長さ30センチ)が付いているが、この1枚は脳内深部に置くため糸を切っていた。手術中、見えない部位に移動してい たという。
 同29日の磁気共鳴画像化装置(MRI)検査で感染が分かり、その日に実施した手術で発覚した。主治医らが「療養に専念することが大切」と判断し、退院前日の昨年9月26日まで女性に置き忘れを伝えなかった。

副作用救済、不認定が増加…医師の薬処方・説明に問題 indexへ

薬の副作用の被害者に給付金が支払われる国の「医薬品副作用被害救済制度」の請求件数が年々増えるなか、支給が認められない事例も目立っている。 不適切な薬の処方や患者への説明不足などがあり、厚生労働省は「医師は添付文書を熟読して薬を適切に処方し、患者にも服用法をしっかり指導してほしい」と呼びかけている。

 この制度は、医薬品を適正に使ったのに、入院を必要とする副作用や障害などの健康被害があった人を対象に、医療費や障害年金などを製薬会社の拠出金などから支払う。
  給付金の請求は増加傾向で、2009年度に1000件を超え、13年度は1371件に達した。制度が始まった1980年度から2013年度末までの支給件 数は、約1万2000件に上る。その一方で、支給が認められない事例も増えており、不支給事例は12年度は215件、13年度は232件。過去5年では全 体の1~2割を占める。
 この中には、薬を飲む間隔や、飲む量が不適切で重い皮膚障害を起こしたり、薬の添付文書で使用を禁じている人に投与して肺炎を発症したりしたケースがあった。家人に処方された薬を家族の別の人が飲んで副作用が表れた事例もあった。

ガーゼ、体内に27年…新潟・新発田病院 indexへ

 新潟県立新発田病院は25日、27年前に右大腿骨の手術を受けた60歳代女性の膝の骨付近から今月になって医療用ガーゼが見つかったと発表した。病院側は既に女性に謝罪し、補償などを協議する予定だ。
 発表によると、女性が同病院で手術を受けたのは1987年。しかし、女性は今夏、右膝の裏側にしこりが見つかり、今月17日に別の病院で除去手術を受けたところ、しこりがガーゼの繊維であることが判明した。
 新発田病院には87年当時の手術記録は残っていなかったが、女性のカルテの入院記録を基にガーゼが混入した経緯を把握。ガーゼは大腿骨を固定する際に誤って骨の内部に押し込まれたとみられ、年月がたって骨の外に出てきたと考えられるという。
  堂前洋一郎院長は25日の記者会見で「患者に苦痛を与え、大変申し訳ない。信頼を回復すべく努力したい」と謝罪した。同病院では94年と2002年に患者 の体内にガーゼを置き忘れる事案があり、再発防止策として手術の前後にガーゼの枚数を確認する作業を徹底するとしている。

難病医療法来月施行 自己負担増患者、思い複雑…秋田 indexへ

 難病医療法が来月施行され、医療費を助成する対象が現行の56疾患から110疾患に倍増する。
 助成の有無による患者の不公平感を なくすのが目的で、国は来夏には約300疾患へと増やす方針だ。秋田県内の受給者は昨年度末の時点で7939人だが、来月の対象拡大で約2000人増える 見込み。一方で、既に助成を受けている患者の多くは医療費の自己負担が増える見通しで、思いは複雑だ。
 秋田市の女性(72)は5年ほど前、目や喉の乾きで受診し、膠原(こうげん)病の一種「シェーグレン症候群」と診断された。3か月に1回通院し、毎日、服薬している。
  医療費の自己負担は1割で、月平均約3000円。この病気は法施行で助成対象になるため、自己負担の上限は大幅に下がるとみられるが、女性の場合、そもそ も負担額が少ないため、変わらない見込みだ。ただ、長期化すると内臓などにも影響が出るとされる病気で、女性は「今後を考えると助成拡大は助かる」と話 す。
 大潟村で妻の類(るい)さん(84)と暮らす松本茂さん(82)は30年前、全身の筋肉が徐々に動かなくなる「筋萎縮性側索硬化症 (ALS)」と診断され、今は寝たきりだ。人工呼吸器が欠かせず、昨秋には、まぶたが閉じなくなったことで目が乾き、見えなくなった。わずかに動く顎の筋 肉の動きを機械でコール音に変え、類さんらと意思疎通している。
 現在、重症の松本さんの医療費は全額助成だが、1月からは月1000円の 自己負担となる見込み。医療費以外にも、在宅ケア用の精製水などで月8万円程度かかるという。類さんは「つきっきりの介護も必要。重症者の負担を増やさな いでほしい。ただ、それよりも、国には早く治療法を確立してほしい」と訴える。
 県によると、助成を受ける県内の患者は毎年300人前後増加。特に、大腸の粘膜の表面がただれるなどして、激しい下痢や腹痛を起こす「潰瘍性大腸炎」の患者は、03年度末の665人から13年度末には1266人へと、ほぼ倍増した。
 県内の難病患者への助成額は、13年度で約11億2000万円。国と県が折半する決まりだが、国は例年、予算を確保できず、支払うべき額の半分程度の助成にとどまっており、県が不足分を補填している。

群馬大病院、立ち入りへ…厚労相が方針 indexへ

 群馬大学病院(前橋市)で肝臓手術を受けた多くの患者が死亡した問題について、塩崎厚生労働相は26日の閣議後の記者会見で、医療法に基づく立ち入り検査を行う方針を明らかにした。
 詳細な事実関係や安全管理体制について調べる。塩崎厚労相は「尋常な事態でないことは間違いない。立ち入り検査で実態を掌握し、なぜこのようなことが起きたのか、重大な問題としてしっかり見ていかなければならない」と述べた。
 群馬大病院第二外科(消化器外科)の肝臓手術では、腹腔鏡を使った手術で8人の患者が2011~14年に術後4か月以内に死亡していたことが11月14日の読売新聞の報道で明らかになり、院内の調査委員会で医学的な問題の有無について調べている。
 またその後、同じ執刀医による通常の開腹手術でも10人の患者が死亡していたことがわかり、今月22日に病院側がこちらの調査も始める考えを明らかにした。
  腹腔鏡手術で死亡した8人については、手術前に肝臓の働きを調べる検査を行っておらず、患者に対する説明にも問題があったことが判明している。多くの病院 で行われている、患者死亡に関する症例検討会も診療科内で開いていなかったなど、再発防止の対策も取られていなかった。厚労省は、立ち入り検査により、開 腹手術も含め、患者死亡にいたる経緯や院内の安全管理体制などについて調べる必要があると判断した。

群大病院、執刀医「保険適用外と説明」…遺族証言とズレ indexへ

 腹腔鏡を使う高難度の肝臓手術を受け患者8人が相次ぎ死亡した群馬大学病院(前橋市)は24日、院内に設置した事故調査委員会の中間報告書を病院のウェブサイトに公表した。
 報告書では、手術が保険適用外であることを執刀医が「患者に口頭で説明した」と遺族の証言と食い違う主張をしていることなどがわかったが、手術ミスの有無といった医学的評価など核心的な問題は年度内にまとめられる最終報告に持ち越された。
  中間報告書によると、インフォームド・コンセント(説明と同意)が不十分だったという問題について、執刀医は、病院側の聞き取りに対し、「口頭では、他の 治療法を提示し、保険診療では認められていない術式であることや高難度手術であることを説明していた」と話しているという。
 複数の遺族は読売新聞の取材に、「手術方法が保険診療として認められていない高難度のものだったとは聞いていない」と話しており、執刀医の主張は遺族の証言と食い違っていた。
 しかし、調査委がカルテなどを調べた結果、この主張を裏付ける記録はなかった。報告書では「すべての症例で日々のカルテ記載が乏しく、手術適応や治療方針を判断する過程が不明だった」とされた。
  執刀医が「保険適用外と説明した」と主張している8人のうち7人の手術は、保険診療として診療報酬が請求されていた。保険適用外の手術は本来、臨床試験と して病院の倫理審査委員会に申請の必要があったが、執刀医が所属する第二外科は申請しておらず、「保険適用外の新規手術は臨床試験として実施するという意 識が欠けていた」と報告書は指摘した。
 8人の死亡後、経過の問題点を検証する死亡症例検討会が一度も開かれていなかったことについては、 「行われたという記録を確認できなかった」と認めた。そのうえで「他からの意見や批判を受けることなく閉鎖的診療体制が続いていたことが事故の背景因子」 と報告書は結論づけた。
 ただし、不明な点も多い。病院によると、調査委には肝臓手術を専門とする外部の医師も加わっている。しかし中間報 告書には、手術の医学的な評価に関する項目はなく、手術にミスがあったかどうかや、手術に適しているかどうかの判断に問題はなかったかなどには触れられて いない。執刀医が不適切な腹腔鏡手術を繰り返した理由も不明だ。
 この執刀医による開腹手術では過去5年で10人が死亡し、うち5人が腹腔鏡手術を導入する前年度の2009年度に亡くなっている。厚生労働省にも報告されているが、中間報告書にはこのことについて一切言及がなかった。

産婦人科死亡例 腹腔鏡原因なし…学会全国調査 indexへ

 群馬大学病院で腹腔鏡を使う高難度の肝臓手術を受けた8人が死亡した問題を受け、日本産科婦人科内視鏡学会(吉村泰典理事長)は、全国311の医療機関を対象に産婦人科分野での腹腔鏡手術の死亡事例を調査した。
  2010年1月~14年11月21日の死亡例について報告を求め、225医療機関が回答。それによると、死亡患者は5人いたが、同学会は、いずれも腹腔鏡 手術が原因ではないと結論づけた。5人のうち4人はがんの進行による病死。残る1人は、感染症による敗血症で手術2日後に死亡していたが、手術開始直後に 開腹に切り替えていた。
 産婦人科分野の腹腔鏡手術は、子宮や卵巣の腫瘍切除などで行われる。同学会によると、13年の腹腔鏡手術件数は3万7782件という。

医療事故で一時心肺停止 山梨大付属病院患者 indexへ

 山梨大医学部付属病院(中央市)で今月13日、看護師が入院中の県内の女性に対し、誤って鎮痛剤を多量に投与し、女性が一時心肺停止状態になっていたことが22日、わかった。
 女性の心拍と呼吸は戻ったが、現在も意識不明のまま。病院側は医療事故と断定し、22日に記者会見を行い、謝罪した。
 発表によると、13日午前5時40分頃、担当の看護師が女性から鎮痛剤の投与を止めてほしいと言われたため、鎮痛剤の点滴を外す操作を行った。その際、機械のポンプを取り外しただけで、点滴の回路を遮断しなかったため、鎮痛剤が多量に静脈に入ったという。
  この看護師が約10分後に女性の異変に気づいたが、その間約400マイクロ・グラムの鎮痛剤が女性に投与。女性の場合、点滴を外すまでは1時間あたり2マ イクロ・グラム投与される設定になっており、短時間で多量に投与してしまう結果となった。この鎮痛剤は多量に人体に入ると呼吸が抑制され、死に至る危険が あるという。
 病院の調査に対し、看護師は「薬剤が流れない状態にしたと思っていた」と話している。島田真路・病院長は「今回のような事態を招いて深くおわび申し上げます」と謝罪した。

東大などの認知症データ、調査委「改ざんなし」 indexへ

 東大病院など全国38医療機関が参加するアルツハイマー型認知症の国の大規模研究について、不適切なデータ処理があったと指摘されていた問題で、 外部の弁護士らによる東大の第三者調査委員会は22日、「改ざんや不適切な修正はなかった」と結論付け、研究データの有効性を認める報告書を公表した。
  一方、研究開始前に被験者の同意を取らなかったケースが1医療機関で14件あり、倫理指針違反にあたると指摘。データのチェックなど研究体制に不備があっ たとし、研究代表者の岩坪威・東大教授のほか、心理検査に関する責任者の杉下守弘・元東大教授ら中心メンバーにも責任があるとした。これを受け、東大は同 日、岩坪教授に対し、口頭で厳重注意をした。
 記者会見した第三者委の伊東卓委員長(弁護士)は「大規模な研究なのに、準備不足で混乱を招いた」と批判。同席した東大の松本洋一郎副学長は「真摯に反省する」と謝罪した。
 同研究は、国や製薬会社などが約30億円出し、認知症の早期診断の基準作成などを目指す国家プロジェクト。2007年度に始まり、高齢者545人に心理検査や脳画像撮影を行った。
  第三者委の調査では、データを全て復元するなどして修正の経緯などを分析。その結果、実際に検査した医療機関からのデータを点検するデータセンターが誤っ た指示を出し、それに基づき事実と異なる修正が3件行われたが、後に正しいデータに再修正されていた。第三者委は「ミスであり、改ざんや恣意的な修正はな かった」と判断した。問題の背景に、データセンターに責任者がおらず、修正に関するマニュアルなどが研究開始時に整備されていないなど、研究体制に不備が あったと指摘した。

開腹手術で死亡 遺族に説明…群大病院、新調査で方針 indexへ

 群馬大学病院(前橋市)の第二外科(消化器外科)で腹腔鏡を使う肝臓手術を受けた患者8人が死亡した問題で、開腹手術でも過去5年間で10人の死亡が発 覚したことを受け、病院側は22日、開腹手術についても新たに調査し、遺族に説明する方針であることを明らかにした。
 読売新聞の取材では、2009年4月以降、同科が行った肝臓の開腹手術を受けた患者84人のうち10人が術後3か月以内に死亡していることが分かっている。執刀は、腹腔鏡手術を行った同じ男性助教が行った。
  病院側は、読売新聞の取材に対し、「(開腹手術の死亡例について)概数としては把握しているが、きちんとした調査はこれから行う。ご遺族にも説明はする」 と話した。手術前後の管理や処置に問題があったかどうかや、手術と死亡との因果関係については「現時点では不明」とした。

開腹10人死亡「調査必要」…群大病院 indexへ

 群馬大学病院(前橋市)の第二外科で腹腔鏡手術による肝臓手術を受けた患者8人が死亡した問題で、開腹手術でも過去5年間で10人が死亡していたことが22日、発覚したことを受け、病院側は、開腹手術についても新たに調査を始めることを明らかにした。
 読売新聞の取材では2009年4月以降、同科が行った肝臓の開腹手術を受けた患者84人のうち、60~80歳代の男女10人が術後3か月以内に敗血症や肝不全などで死亡していることが分かっている。執刀は、腹腔鏡手術を行った同科助教によるものだった。
 病院側はすでに、開腹手術を受けた患者が10人死亡した事実を厚生労働省に報告している。しかし、22日の読売新聞の取材に対し、「手術データを精査しておらず、死亡した人数も把握できていない」と、事実関係を認めなかった。
 その上で「調査の必要があると判断している」とコメントした。手術前後の管理や処置に問題があったかどうかや、手術と死亡との因果関係については「現時点では不明」とした。

群馬大、開腹手術でも10人死亡…腹腔鏡と同じ医師 死亡率11.9%全国の3倍 indexへ

群馬大学病院(前橋市)で腹腔鏡を使う高難度の肝臓手術を受けた患者8人が死亡した問題で、腹腔鏡手術を手がけた第二外科(消化器外科)による肝臓の開腹手術でも、過去5年間で、84人中10人が術後3か月以内に死亡していたことが関係者への取材でわかった。
 開腹手術の死亡率は11・9%に上り、全国的な肝臓の開腹手術の死亡率に比べ3倍という高率だった。
 開腹手術は、腹部を大きく切り開く手術。肝臓手術では、小さな傷口からカメラ(腹腔鏡)や操作器具を差し入れて行う腹腔鏡手術に比べ、一般に幅広く行われている手術方法だ。
 同科が行った肝臓の開腹手術は、2009年4月から、同科の肝臓手術がすべて停止される今年夏頃までに、肝臓がんなどの患者84人が受け、60代~80代の男女10人が敗血症や肝不全などで死亡していた。
  病院関係者によると、10人の手術を執刀したのは、腹腔鏡手術を受けて死亡した患者の執刀医と同じ40歳代の男性助教だった。この助教が執刀した腹腔鏡手 術では、10年12月~14年6月に8人が亡くなっている。開腹手術で死亡した10人のうち5人までが09年度中に集中していたが、同科は、その翌年度に は新たに腹腔鏡手術を導入し、同じ医師に執刀させていた形だ。
 腹腔鏡を使う肝臓手術を同科で受けたのは92人で、死亡率は8・7%に上り、その高い割合が問題になっている。開腹手術の死亡率11・9%は、腹腔鏡手 術の死亡率より3・2ポイント高いことになる。
  全国で行われた外科手術を登録するNCD(ナショナル・クリニカル・データベース)から肝切除の手術成績を分析した研究によると、肝臓の開腹手術の術後3 か月以内の患者死亡率は、比較的リスクの高い切除方法に絞ったデータで4・0%。群馬大病院の開腹手術の件数にはリスクの比較的低い切除方法も含まれてい るとみられるが、死亡率はこの全国データの3倍に上っている。
 今のところ、手術と患者の死亡との因果関係はわかっていない。ただ、余命が数か月と想定される患者は一般的に、そもそも手術の対象にならない。
 腹腔鏡手術の死亡事例について調査している群馬大病院は「今回の調査は腹腔鏡手術について調べたものであり、開腹手術については調べていないのでコメン トできない」としている。
「明らかに高い」

  肝臓の開腹手術を多数行っている日本大学医学部消化器外科の高山忠利教授の話「数多くの手術を行う病院では死亡率が0・5%程度の施設もあり、12%近い 死亡率は明らかに高い。肝臓の状態から本来行うべきではない手術も多かったのではないか。手術による死亡について院内外でチェックでき、問題の連鎖を止め るシステム作りが必要だ」

容体悪化後も「順調」執刀医説明…群馬大病院 遺族「納得できぬ」 indexへ

 腹腔鏡を使った肝臓手術で患者8人が死亡した群馬大学病院(前橋市)で、肝臓の開腹手術を受けた患者にも死亡が相次いでいた。
 開腹手術の死亡率は10%を超える高い割合。患者側にはその事実が知らされることはなかったが、納得いかない思いを抱えてきた遺族もおり、「病院側の説明を聞きたい」と望んでいる。
 「治すために受けた手術で亡くなるなんて、父も家族も考えていませんでした」
 群馬県内の60歳代の女性は、そう言って言葉を詰まらせた。女性の父は群馬大病院第二外科(消化器外科)で肝臓を切除する開腹手術を受け、約50日後に亡くなった。
  父は2010年秋、胆管がんと診断された。もともと肺や腎臓に持病があったが、担当医から「手術できる」と言われ、11月末、開腹手術で肝臓の半分ほどと 胆管を切除。執刀医だった男性助教からは「手術は成功した。3週間で退院できる」と説明され、「正月は家で過ごせるね」と家族で喜んだ。
  しかし、術後はほとんど食べ物を口にできず、腹水がたまり始めて腹痛を訴えるようになった。執刀医は「徐々に良くなっている」「順調です」と繰り返してお り、家族もそう信じていた。ところが、12月末から一気に容体が悪化。体はひどくむくみ、会話もほとんどできないまま、翌11年1月、息を引き取った。
  開腹手術を受けた後に亡くなった患者は、女性の父を含め10人。手術や、その前後の処置、管理に問題があったかどうかは不明で、なぜこのような高い割合で 患者が死亡しているのかはっきりしていない。大学病院が、腹腔鏡手術の死亡例と同様に詳細な調査を行うのかどうかも不透明だ。
 女性は父の死後、「手術しなければ、もっと生きられたのでは」と苦悩してきた。それだけに、腹腔鏡手術で死亡例が相次いでいたことを報道で知った時は「同じ先生ではないのか」と思ったという。
 女性は「家族としては腑に落ちない部分がある。父の手術はどうだったのか」と疑問を投げかけている。

「手術負担で容体悪化」患者8人死亡…群馬大病院が中間報告 indexへ

 群馬大学病院(前橋市)で腹腔鏡を使う高難度の肝臓手術を受けた8人が死亡した問題で、病院は19日、前橋市内で記者会見し、患者は8人とも術前検査が 不十分で、「手術が過大な負担になり容体を悪化させた可能性がある」などとする調査の中間報告を発表した。野島美久病院長は「ご遺族に多大な心痛をかけ、 申し訳ない」と改めて謝罪した。
 病院側は、調査で浮かび上がった問題点として、新たな医療技術の導入が一部の医師のみで行われ、診療科として組織的な取り組みになっていなかったことや、患者に対し適正なインフォームド・コンセント(説明と同意)ができていなかったことを挙げた。
 また、手術後に死亡した患者について問題点を検証する死亡症例検討会を開いていなかったことも認めた。その上で「診療科長(第二外科教授)の責任は重いと考えている」と述べた。
  このほか、問題の手術を手がけた第二外科の消化器外科が2010年12月~14年6月に行った腹腔鏡を使う肝臓手術を受けた患者92人のうち、保険適用外 とみられる手術を受けたのは58人と説明。先月の記者会見で「56人」とした発表内容を修正。保険適用外の手術のうち35人分は、保険診療として診療報酬 を請求していたが、「保険診療制度に対する理解が浅く、不適切な保険請求がなされた」とした。
 今後取り組む改善策については、保険適用外の新しい手術など倫理審査委員会の審査を受けるべき対象を明文化するとした。また、診療分野が複数科で重複している非効率を解消するため、内科も含めて臓器別の診療科に再編成することも発表した。
 死亡患者8人が受けた個々の診療内容に対する検証は継続中で、まとまり次第、遺族に説明し、同意が得られれば公表するという。

群馬大病院、組織的問題 認める…中間報告 indexへ

 腹腔鏡を使う高難度の肝臓手術を受け、8人が死亡した群馬大学病院(前橋市)が19日に開いた記者会見。
 調査の中間報告を発表した野島美久病院長は「新規技術の導入を1人の医師に委ね、死亡症例の検討も行われなかった。病院に報告があれば何らかの対応を取れた可能性があった」と述べ、組織的な問題が背景にあったことを認めた。
 執刀医の第二外科助教は、腹腔鏡手術の導入から2例目までは同手術の経験豊富な医師の支援を受けて実施。うち1人は死亡していたが、3例目以降は支援なしに行った。野島病院長は「診療科の会議で手術や死亡症例を検証した形跡は見られない」と説明した。
 手術に耐えられるかを調べる肝機能検査などが行われなかったことについては「検査が不十分で過剰な手術となり、死亡に結びついた可能性はある」とした。
 一連の問題について助教は、「認識が不十分だった。申し訳ない」と謝罪の言葉を口にしているという。
 8人の死亡は病院の安全管理部門に知らされず、定められた問題事例の届け出が機能していなかった。報告基準が明確でなく、届け出につながらなかったとの見解を示した。
 保険適用外の事例を、開腹手術をしたことにするなどして保険請求していたことについて、野島病院長は「診療明細などをすべて厚生労働省に提出しており、その判断を真摯
しんし
に受け止めたい」と述べた。
 同大学病院は今年度内をめどに関係者の処分を決め、同じ時期に、8人の死亡と手術の因果関係についての検証結果を報告する予定。

鎮静剤投与、5人は「死亡に影響した可能性」 indexへ

 東京女子医大病院(東京都新宿区)で人工呼吸中の小児患者への投与が禁じられている鎮静剤「プロポフォール」の投与後に12人が死亡した問題で、 同病院は18日、このうち5人について「投与が死亡に影響した可能性を否定できない」とする外部評価委員会の調査結果を発表した。
 ただ、全員が重い心臓病で、仮に投与をしていなくても、「最終的に患者が死亡していた可能性が決して低くはない」と結論付けた。
  患者が死亡した集中治療室では2年前に小児患者へのプロポフォールの使用をやめたが、院内で情報が共有されず、別の集中治療室で今年2月に投与された男児 (当時2歳)が死亡した。18日に記者会見した同病院は、「情報が周知されていれば、今回の事態は起こらなかった」と謝罪した。

腹腔鏡 死亡検証せず継続…群馬大病院 indexへ

 群馬大学病院(前橋市)で腹腔鏡を使う高難度の肝臓手術を受けた患者8人が死亡した問題で、死亡患者の手術を手がけた第二外科(消化器外科)が、患者の死後、死亡症例検討会を一度も開いていないことが関係者への取材でわかった。
 病院の調査では、同科の責任者である教授には患者死亡の詳細な実態の認識がなかった。問題点のチェックをしないまま手術を続けた診療科全体の態勢が、死亡の連鎖につながった可能性がある。
 死亡症例検討会は、手術や治療を受けた後に患者が死亡した場合、経過に問題がなかったか検討するもの。問題があれば改善して次の治療に生かすのが目的で、大学病院などの基幹病院では行うのが基本だ。
  病院の調査や関係者の話によると、群馬大病院第二外科は、2010年12月に肝臓がんの患者に腹腔鏡手術を行い、患者は約1か月後に亡くなった。その後、 死亡について検証しないまま1週間後に別の患者に腹腔鏡手術を行い、この患者も約1か月後に死亡。死亡症例検討会を開くこともなく腹腔鏡手術を続けた結 果、今年5月までに計8人が死亡した。
 同科の肝胆膵(肝 臓、胆道、膵臓)担当の医師は、死亡患者8人の執刀医だった40歳代の男性助教と後輩医師の2人だけ。手術の方針は基本的に執刀医1人で決めており、同科 では死亡症例検討会も開いていないため、他の医師によるチェックはほぼなかった。ただ、他の医師は、死亡例が度重なっていることや、一般的には手術前に必 ず行う肝臓の働きを測る検査を執刀医がしていないことを知っていたとみられる。
 先月14日に開かれた病院の記者会見などによると、同科教授は、手術に助手として加わることもありながら、術後の死亡患者が8人も出ていることを明確に把握していなかった。病院の聞き取りに対し、教授は「認識が甘かった」と話しているという。
 群馬大病院は「この件については調査中のためコメントできない」としている。
 消化器外科の臨床経験が豊富な小西敏郎・東京医療保健大副学長(前NTT東日本関東病院副院長)の話「手術後、退院することなく亡くなった方の症例につ いては、なぜそうなったか厳しい議論を重ねるのが臨床外科医の基本だ。特に新しくて難しい手術の場合はしっかり検証する義務がある」

手術への緊張感 欠如…群大病院、死亡症例検証せず indexへ

 腹腔鏡を使う高難度の肝臓手術を受けた患者8人が死亡した群馬大学病院。問題の手術を手がけた第二外科(消化器外科)では、死亡症例検討会さえ開かれず、8人が死亡するまで3年半にわたり、リスクの高い手術が繰り返されていた。
 手術や治療にかかわる死亡事例があった場合、死亡症例検討会を開いて問題点を検証することは、医療の質や安全性を高めるために欠かせない。「デスカン ファレンス」とも呼ばれ、大病院では、病気の進行で亡くなったケースなど、やむを得ない場合を除き、通常は行われている。
  特に大学病院では、「学生や経験の浅い医師を育てる教育機関として、問題症例に学ぶことは、本来、一般の医療機関以上に重要」と、ある大学医学部教授は指 摘する。別の大学病院の外科医は「手術に関連した死亡があれば、何か見逃している問題点はないか診療科で徹底的に議論すべきで、何もしないというのは普通 ありえない」と話す。
 同科の姿勢は、人の体を傷つける「手術」という医療行為を手がけるにしては緊張感を欠いていたと言わざるを得ない。 執刀医だけでなく診療科全体として、手術への取り組み方に問題があったのは事実だろう。他の医師も死亡が相次いでいたことなどを知っていたとみられ、もっ と早い時期に止める手だてはあったのではないか。とりわけ、第二外科のトップである教授の責任は重い。
 ただ、このような事態が発覚したと しても、群馬大病院には、地域の重要な医療拠点という役割が今後も求められる。遺族の一人は「こんなに人が亡くなっているんだから手術はやめたほうがい い、と言ってくれる人がいれば」と嘆いた。この思いを繰り返さないために、死亡例の徹底した調査はもちろん、高度な医療を担う大学病院として、診療体制の 立て直しに真剣に取り組む必要がある。

「レーシック手術で後遺症」、患者12人が提訴 indexへ

 レーザーで角膜を削り視力を矯正するレーシック手術を受けた患者12人が17日、「十分なリスクの説明がないまま手術が行われ、後遺症が生じた」などと して、2クリニックを運営する医療法人社団に計約8000万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。
 訴えたのは、首都圏や九州に住む30~60歳代の男女で、2006~13年、品川近視クリニック(東京都千代田区)で手術を受けた10人と、錦糸眼科(港区)で手術を受けた2人。
 訴状などによると、原告側は品川近視クリニックについて、過剰な矯正によって目の疲労や痛みなどが生じる可能性があることを十分説明しないまま、手術を行ったと主張。錦糸眼科については、日本眼科学会の指針が示す角膜切除の限度基準を逸脱したとしている。
 レーシック被害対策弁護団には、他の医療機関の患者も含め、計174件の相談が寄せられており、今後、追加提訴する方針。
 クリニック側は「訴状が届いていないのでお答えできない」としている。

脳死移植 希望者選定ミス…臓器ネットワーク、優先順序を誤解 indexへ

 日本臓器移植ネットワークは15日、今年11月中旬に行われた脳死判定後の臓器提供の際に、待機患者の選定作業にミスがあったと発表した。
 ミスがあったのは、11月14日、東京都内の病院で脳死判定された30歳代男性のケース。男性は心臓、肺、肝臓、腎臓などを提供したが、膵臓は医学的理由で提供できなかった。
  発表によると、同ネットワークの担当者が待機者リストに基づき腎臓移植の希望者の意思確認をする際、膵臓と腎臓の同時移植の希望者にも腎臓のみの移植を受 けるかどうか意思を確認すべきところを、同時移植の希望者は対象外と誤解し、リスト上では下位にある腎臓のみの移植希望者を優先させた。手術が始まった後 に、別の担当者が手順のミスに気づいたという。
 同ネットワークは、主治医を通じて意思確認の対象から外された患者に直ちに連絡し、今月上旬には、この患者に経緯を説明して謝罪したという。
 脳死判定後の臓器提供事例を検証する厚生労働省の専門家会議は、既に手術が始まっている段階で、患者側に連絡したことが問題だと指摘。同省は年内にも、同ネットワークに対し再発防止策を徹底するよう文書で指導する方針だ。

4論文に捏造と改ざん 山梨大、教授を処分 indexへ

 山梨大は12日、大学院医学工学総合研究部、北村正敬(きたむら・まさのり)元教授の四つの論文に画像操作などの捏造(ねつぞう)や改ざんがあったと発 表した。北村元教授は昨年12月27日に大学を辞職した。大学はことし11月4日、諭旨解雇相当の処分を決定した。
 山梨大によると、学内の医学部の別の教授から、研究に不正があると申し出があり、昨年11月に調査専門委員会を設置。元教授が2004年~13年に発表した全ての論文90本を調査した。
 その結果、2論文に捏造、別の2論文に改ざんが見つかった。画像操作などがされていた。それぞれの論文の結果には影響しないという。
 山梨大は、実験結果の画像を操作することで、論理を明快に展開し、論文として採用され研究業績を高めるのが動機だったとみている。
 山梨大の新藤久和(しんどう・ひさかず)副学長は記者会見で「誠に申し訳ございません。学内規定を改正し、再発防止に取り組みたい」と陳謝した。

ディオバン「不適切データ、誤った結論」…慈恵医大 indexへ

 高血圧治療薬「ディオバン」の臨床研究データ改ざん問題で、慈恵医大は12日、「不適切なデータから誤った結論が導かれた」とする調査委員会の最 終報告書を発表、研究責任者だった望月正武元教授の客員教授の肩書を取り消した。栗原敏理事長、松藤千弥学長はそれぞれ給与の20%、10%を3か月間自 主返上する。
 最終報告書は、高血圧治療薬の効果の比較で、望月元教授がディオバンに結果的に有利になるような偏った患者のデータを提出したと指摘。「意図的操作がなされた可能性も存在し、不適切なデータから誤った結論が導かれた」と結論づけた。
 データの統計解析すべてに、販売元のノバルティスファーマ社の元社員が関与し、「望月元教授は元社員へ依存し、統括的な責任を果たせていなかった」と批判した。

抗がん剤「ジェブタナ」使用の5人死亡 indexへ

 製薬会社「サノフィ」(東京都新宿区)は10日、今年9月に販売を始めた前立腺がんの抗がん剤「ジェブタナ」を使用した患者5人が死亡したと発表した。同社は、投薬との因果関係が否定できないとし、慎重に投与するよう呼びかけている。
 同社によると、発売を開始した9月4日から今月3日までに約200人の患者が使用した。うち40人に白血球の一種の「好中球」が減り、発熱などの症状がみられ、60歳代3人、70歳代2人が肺炎や敗血症などで死亡した。
  好中球が著しく減ると感染症にかかりやすくなる。同社は、「治療中はこまめに血液検査を行い、白血球が減っていないかチェックし、発熱した場合は、適切な 抗菌薬を速やかに投与してほしい」と注意喚起している。薬の添付文書には、発熱があり、感染症の疑いがある患者には投与しないよう記載されている。

「カルテ改ざん」賠償命令、高松赤十字病院の妊婦死亡 indexへ

 主治医らが帝王切開の時期を誤ったため、出産した高松市の女性(当時30歳)が死亡し、生まれた長女も重度の障害が残ったとして、遺族が高松赤十字病院 を運営する日本赤十字社(東京都)と主治医を相手取り、約2億7900万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が10日、高松地裁(福田修久裁判長)であった。 福田裁判長は診療上の注意義務違反は認めなかったが、病院側が「改ざんした後のカルテを当初の診断であるかのように遺族に説明した」として、日本赤十字社 側に495万円の支払いを命じた。
 判決によると、2004年11月、女性は同病院で「全前置胎盤」の疑いがあると診断された。05年1月に出産のため入院した日の夜、容体が急変し、翌日 死亡した。長女は帝王切開で仮死状態で産まれ、低酸素脳症と診断。現在も24時間体制で介護が必要な状態だという。病院は女性の死後、診断名を書き換えて 遺族に説明するなどしていた。
 判決で、福田裁判長は「改ざんしたカルテを示して説明し、(女性が)死亡した経緯や原因を知りたいと願っていた遺族の期待や信頼を裏切った」と指摘した。
 高松赤十字病院の高徳敏弘・事務部長は「判決内容を精査して、今後の対応について考えたい」と話した。

注射位置誤り賠償命令 関節炎に、北九州の病院 indexへ

 北九州市立八幡病院(同市八幡東区)で子宮頸(けい)がんワクチンを接種した際、誤った位置に注射されたため関節炎になったとして、市内の50代の女性 が約1560万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福岡地裁小倉支部は9日、市に約760万円の支払いを命じた。
 判決で足立正佳(あだち・まさよし)裁判長は、注射を左肩の適正な位置よりおよそ3センチ高い場所にされ、ワクチンに含まれる成分が左肩の関節炎を誘発したと認定。「注意義務違反があった」と判断した。
 判決によると、女性は2010年、医師から子宮頸(けい)がんワクチンを注射された。左肩に違和感を抱き、6日後に別の病院で診察を受けたところ、炎症が認められた。症状は現在も残っている。
 女性は判決後、北九州市で記者会見し、病院に対して「判決内容を誠実に受け止め、改善を図ってほしい」と述べた。
 北九州市の北橋健治(きたはし・けんじ)市長は「内容を精査して対応を検討する」とのコメントを出した。

東大教授の論文取り消し…ディオバン改ざんで英誌 indexへ

 高血圧治療薬「ディオバン」の臨床研究データ改ざん問題で9日、東京大の小室一成教授が英医学誌「ジャーナル・オブ・ヒューマン・ハイパーテンション」に発表した論文が10月9日付で取り消されていたことが分かった。
 同誌は「利益相反やデータの信頼性に懸念が生じた」と理由を説明している。
 小室教授は千葉大教授だった2002年からディオバンを使った臨床研究を行い、主論文を日本高血圧学会誌に10年に発表、関連解析の論文を12年に英医学誌に掲載していた。

病院の説明不足、賠償命令 富山・黒部市が敗訴 indexへ

 富山県黒部市の黒部市民病院で動脈瘤(りゅう)の手術を受けた女性(68)と家族が「医療ミスで認知症になった」として市に8千万円余りの損害賠償を求 めた訴訟の判決で、東京地裁は5日、医師の説明義務違反を認めて220万円の支払いを命じた。手術ミスはないと判断した。
 判決によると、女性は2009年3月、市民病院での検査で脳動脈瘤と診断され、同年11月に動脈瘤の破裂を防ぐ手術を受けた。術後に意識障害が残り、10年に認知症と診断された。
 森冨義明(もりとみ・よしあき)裁判長は「担当医師が手術の内容や危険性を分かりやすく正確に説明したとはいえない。手術を受けず経過観察を選んでいれ ば障害が残らなかった可能性もあった」と指摘した。黒部市民病院は「判決が届いておらずコメントできない」としている。


RSウイルス患者最多…乳幼児に肺炎、感染研が注意喚起 indexへ

 乳幼児に肺炎や気管支炎などを起こす「RSウイルス」の感染が広がり、11月中旬から下旬にかけての1週間あたりの患者数が、調査を開始した2003年以降で最多となった。国立感染症研究所は来年1月頃まで流行が続くとみて、注意を呼びかけている。
 同研究所によると、全国約3000か所の小児科が報告した患者数は今年8月下旬から急増、11月17~23日で5151人に達し、12年10月初めの週の5007人を超えて過去最多となった。
 RSウイルスは、感染者のせきやくしゃみなどの飛まつや鼻汁などに含まれ、吸い込んだり、付着した手で口や喉、鼻などに触れたりして感染。6か月未満の乳児が感染すると肺炎や気管支炎の原因となる。ぜんそくの持病がある高齢者も重症化の恐れがある。
 同研究所感染症疫学センターの木村博一室長は「この時期に風邪の症状があればRSウイルスを疑い、周りの乳児や高齢者にうつさないよう、マスクの着用と手洗いを心がけてほしい」と話している。

トリアージ料誤徴…山口・下関市民病院で386人分 indexへ

 山口県下関市の市立市民病院は4日、患者の症状に応じて診療の優先度を判断する「院内トリアージ」の実施料について、386人分、計38万6000円を誤って徴収していたと発表した。
 同病院は「制度に対する職員の認識不足が原因」としており、近く患者らに返還する方針。
 同病院によると、院内トリアージは、初診の患者が夜間や休日などに救急外来を受診した際、医師や看護師が診療の緊急度を評価するもので、2012年の診療報酬改定で1人1000円を請求できるようになった。
 診察時に患者が1人しかいなかったり、救急搬送で来院したりした場合は請求対象とならないが、同病院では看護師や事務職員が除外する手続きを怠るなどしていたという。

腹腔鏡手術、患者死亡後に「安全」認定 indexへ

 群馬大病院(前橋市)で、腹腔鏡を使う高難度の肝臓手術を受けた患者8人が死亡した問題で、同病院が、日本医療機能評価機構から安全・安心な医療サービスを行う病院として認定証を交付されていることがわかった。
 審査では、新しい手術を導入する際の倫理・安全面の配慮について、上から2番目のA評価を受けていた。
 同機構は、第三者機関として1997年から病院の機能評価を行っている公益財団法人。医師や弁護士ら有識者が評価委員になっており、全国2279病院が認定されている。大学病院など500床以上の病院では7割以上が認定病院だ。
 評価は、書面審査と2日間の訪問審査で「患者中心の医療の推進」「良質な医療の実践」などの観点から約90項目を審査する。S、A、B、Cの4段階評価で、原則すべての項目B評価以上が認定の条件になる。認定の更新は5年ごと。
 群馬大病院では2010年12月~14年5月、保険適用外の腹腔鏡を使う肝臓手術を受け、患者8人が死亡した。手術は倫理審査を通さず行われ、患者へのインフォームド・コンセント(説明と同意)も不十分だったことがわかった。
  ところが、同病院は昨年12月の訪問審査で、「倫理・安全面に配慮しながら新たな診療・治療方法や技術を導入している」でA、「患者が理解できるような説 明を行い、同意を得ている」Bと、いずれも“合格点"を得た。今年4月に認定証の交付を受け、問題が発覚した後の現在も病院のウェブサイトに掲示してい る。
 同機構は「このような事例を審査で見つけるのは難しい。ただ、認定病院には重大な医療事故の報告義務があり、報告があった場合は内容を分析し、問題があれば認定証の返還を求めることもある」としている。

2027年、献血85万人不足…日赤試算 indexへ

 少子高齢化が進んだ2027年に輸血用血液製剤の必要量を満たすには、約85万人分の献血が足りないとする試算を日本赤十字社がまとめ、2日の厚生労働省の専門家会議で公表した。
 10年に初めて行った試算を最新のデータに基づき見直した。
 日赤によると、07年時点の献血者は、ピーク時の1985年に比べ376万人減の494万人にまで落ち込んだが、啓発活動などで、13年に521万人と持ち直した。
 10年の試算では、27年に約101万人分の献血が不足するとしていたが、直近の年代別の献血率や人口推計などを基に改めて計算したところ、85万人分と不足の幅は縮小した。
 若年層の献血率は減少が続いており、13年で20歳代が7・4%、30歳代が6・9%となっている。
 厚労省は、20年度までの中期目標として、献血率向上や企業・団体の集団献血を増やす働きかけなどを強化する方針だ。

がん診断報告を見落とす…福岡大病院で4年前 indexへ

 福岡大病院(福岡市)で4年前、男性患者(70歳代)に食道がんが見つかっていたにもかかわらず、主治医が診断結果を見落としていたことがわかった。
 病院が28日、発表した。病院側は男性に謝罪し、厚生労働省九州厚生局に報告した。男性は病院で治療を続けているという。
 発表によると、男性は2010年2月、喉頭がん治療のために入院。他にがんがないかを調べるために内視鏡検査と病理検査を行い、食道がんが見つかった。 病理医は報告書に診断結果を記載していたが、耳鼻咽喉科の男性主治医が見落とし、喉頭がんの治療だけを行った。
 今年6月、再検査で来院した男性が「ものがのみ込みにくい」と訴えたため、再び内視鏡検査を行った。病院は食道がんの進行の程度について明らかにしていない。

研究不正 法案策定へ…厚労省、有識者検討会報告受け indexへ

 高血圧治療薬「ディオバン」の研究データ改ざん事件などを受け、厚生労働省の有識者検討会は26日、「一定の範囲の臨床研究に法規制が必要」との報告をまとめた。
 これを受け、厚労省は、不正に対する行政当局の調査権や罰則規定などを盛り込んだ法案作りに着手し、早ければ来年の通常国会にも提出する。
 まとめによると、法規制の対象は、未承認薬などを用いた研究や、製薬企業などの広告に用いられることが想定される研究。
 研究不正が疑われた場合、行政当局が関係者に対して必要な調査を行う権限を確保すべきだとした。罰則は原則として、行政指導などで違反行為が改善されない場合に適用される。
 また、研究機関には、不正に関する情報収集のための窓口を設置するよう求める。研究が適正かどうかをチェックする倫理審査委員会には、研究の開始時点だけでなく、途中でも必要な関与を行うことを求める。
 薬の製造・販売承認を得るために行う治験は医薬品医療機器法で規制されているが、一般的な臨床研究には国の倫理指針があるだけで、法規制がなかった。

手術ロボット「執刀」急増、ダビンチ実績2万件 indexへ

 手術支援ロボットの「ダビンチ」が急速に普及している。2009年11月に厚生労働省が医療機器として「薬事承認」し、販売が開始されて5年。製造販売会社によると、国内では170病院に計183台が導入され、手術実績は今年中に計2万件に達する見通しだ。
 精密な動きが可能で患者の体への負担も少ないといい、保険が適用される手術が増えれば、さらに普及は進むとみられる。
 09年からダビンチ手術を積極的に行っている藤田保健衛生大病院(愛知県豊明市)では19日、実績が1000件に達した。国内ではトップ10に入るという。
  今月には腎がんの70歳代の男性患者から4センチの腫瘍を摘出。腹腔鏡(ふくくうきょう)手術で腫瘍のある腎臓を全摘出することも検討されたが、高齢で両 方の腎臓の機能が低下していたため、ダビンチ手術で二つとも残す方法を選んだ。手術は輸血の必要もなく無事に成功。執刀した泌尿器科の白木良一教授 (55)は「がんの根治はもちろん、腎機能を温存でき、合併症のリスクも抑えられた」と話した。
 ダビンチは、消化器外科、呼吸器外科、泌尿器科、婦人科などで使われている。国内の手術件数は、10年の約500件から昨年は約6600件に増加。今年は9000件を超えるペースで推移している。
画像の拡大
  藤田保健衛生大病院は2台を臨床活用し、国内で2か所しかない製造販売会社認定のダビンチ手術のトレーニング施設を設け、別の2台で医師の教育も実施。東 海地方では名古屋市立大病院や岐阜市の岐阜県総合医療センター、愛知県長久手市の愛知医科大病院、同県豊橋市の豊橋市民病院なども導入している。
  課題は高額な治療費だ。12年4月に保険適用された前立腺がん手術以外は、200万~300万円が患者の自己負担となる。ただ、今秋、保険診療が併用され る「先進医療」に胃がんや腎がんのダビンチ手術が認められた。実績を積めば保険適用の対象になる可能性がある。藤田保健衛生大病院の宇山一朗・上部消化管 外科教授(54)は「普及拡大を見据え、より安全性を高めるため、医師の技量を上げる講習会などを実施していきたい」と話している。

  ダビンチ  1990年代に米国で開発。患者の体に1~2センチほどの穴を開けて内視鏡や電気メスなどの医療器具がついた4本のロボットアームを入れ、医師が離れた場 所から立体画像を見て操作する。傷口が小さく、出血が少ないのが特長。手ぶれ防止機能や複数の関節機能などが備わり、高精度な動きができる。1セット購入 に2億~3億円かかるとされる。

腹腔鏡、消化器対象の全手術調査へ…外科学会 indexへ

 群馬大学病院(前橋市)で腹腔鏡を使う高難度の肝臓手術を受けた患者8人が死亡した問題で、外科系最大の学会「日本外科学会」(会員数約4万人)は、全国の医療機関で2年間に行われた200万件以上の手術データから、肝臓や膵臓
すいぞう
など消化器の腹腔鏡手術の成績を調べる初の全例調査に乗り出す。
 大学病院だけでなく一般病院にも幅を広げた大規模調査で、死亡例も含めた全症例を分析し、安全対策に生かす。
 群馬大病院で発覚した死亡問題のほかに、今年4月、千葉県がんセンターでも膵臓などの高難度の腹腔鏡手術で患者が相次ぎ死亡していたことがわかっている。今回の全例調査は、同学会がこれらの事態を重くみて実施することにした。
  方法は、国内の医療機関で行われた手術情報を集積したNCD(ナショナル・クリニカル・データベース)の2012、13年合わせて200万件以上のデータ から、肝胆膵(肝臓、胆道、膵臓)など消化器の腹腔鏡手術について分析する。手術中や手術後の死亡数と死亡率、合併症などの手術成績をまとめ、腹腔鏡手術 の全国的な状況を調べ、安全性を評価する。

精神神経科医不足で入院中止…市立函館病院 indexへ

 北海道函館市の市立函館病院は20日、精神神経科の常勤医師が来年4月から1減の1人になり、入院病棟を閉鎖し、新規の入院患者受け入れも停止すると発表した。
  病院事務局によると、弘前大から精神神経科医師の派遣を受けているが、同大から「青森県内の医師派遣で手いっぱい」と話があり、北海道大医学部や札幌医 大、旭川医大にも派遣を要請したが断られたという。同科の病床は50床あり、10人が入院しているが、いずれも函館市内の別の病院に転院させるか外来治療 に切り替える。

看護師、薬剤薄めず患者死亡…市立病院が謝罪 indexへ

 静岡県の沼津市立病院は20日、男性看護師(28)が誤って高濃度の薬剤を女性患者(当時88歳)に投与し、直後に女性が死亡する事故が起きていたことを市議会に報告した。
 病院によると、男性看護師は10月3日、腸炎で入院中の女性患者に体内のカリウム不足を補う「カリウム製剤」を投与する際、誤って濃度を薄めないまま注射した。カリウム製剤はそのまま注射すると心停止などを引き起こす恐れがあるという。
 病院側が設置した事故調査委員会は、医療事故の可能性が高いと判断し、病院は遺族に謝罪した。看護師は調査委に対し「次の用事が気になり早く処理しようと思った」と説明しているという。

腹腔鏡 死亡数調査へ…肝胆膵外科学会 indexへ

 群馬大病院(前橋市)で保険適用外で腹腔鏡を使う高難度の肝臓手術を受けた8人が死亡した問題を受け、肝臓手術の専門家でつくる日本肝胆膵外科学会は 20日、手術実績の多い全国の医療機関を対象に、腹腔鏡手術の死亡数について実態調査することを決めた。全国的な実態を把握し、安全性を検証する。
 調査対象は、同学会が一定の手術実績があると認めた大学病院やがんセンターなど214施設で、対象期間は2011~14年。肝臓、胆道、膵臓の腹腔鏡手術で保険適用、適用外いずれも実施件数と手術後90日以内の死亡数を調査する。
 保険適用外の手術は、病院の倫理審査で承認を受けたかどうかも調べる。来年1月末までに回答を求め、年度内に結果をまとめる。
 同学会理事長の宮崎勝・千葉大教授は「群馬大病院の問題はまだ詳細がわかっていないが、通常より死亡数が多いと思う。一般の方々にも安全性への懸念が出ており、無理のない範囲で腹腔鏡が活用されるよう対策をとりたい」としている。
不 正請求疑い監査へ 厚生労働省は、群馬大病院が保険適用外の手術で診療報酬を不正請求していた疑いがあるとして、健康保険法に基づく指導・監査を行う方針 を固めた。同病院は10年から14年の間に保険適用外の腹腔鏡手術を受けた約30人で診療報酬の請求をしたとしている。調査で悪質性が高いと判断されれ ば、保険医療機関の指定が取り消され、患者の受け入れが困難になる。

ベンゾ系睡眠薬 長期服用で…アルツハイマー発症、リスク1・5倍 indexへ

 睡眠薬や抗不安薬の多くを占めるベンゾジアゼピン系薬剤を長く服用した人は、アルツハイ マー病の発症リスクが1・5倍高まったという調査を、フランスのボルドー大やカナダのモントリオール大などがまとめ、英医学誌に発表した。日本でも同薬剤 を長期服用する高齢者は多く、身体への影響が懸念される。
 同薬剤は依存性があり、長く服用すると定められた量でも薬物依存に陥る例がある。減薬すると体調が悪化し、やめられなくなる。
 調査は、カナダ・ケベック州の健康保険のデータベースを基に、2000年から09年に初めてアルツハイマー病と診断された67歳以上の患者1796人 と、同年代で未発症の7184人の情報を6年以上遡って追跡。最長10年前までの服用の有無や量などを調べた。
  その結果、同薬剤の服用者は、服用しない人よりもアルツハイマー病の発症リスクが1・51倍高かった。標準的な1日の服用量から累積の服用期間を割り出し て比べると、90日分以下の人はリスクが高まらなかったが、91日~180日分を飲んだ人は1・32倍、180日分を超えて飲んだ人は1・84倍となっ た。
 また、効果が長いタイプの同薬剤はリスクが1・7倍で、効果が短いタイプよりもアルツハイマー病を発症しやすかった。不安や不眠はア ルツハイマー病に先行する症状でもあるため、患者ゆえに服薬が始まったケースを考慮したデータ調整も行われたが、結果に大きな違いはなかった。
 杏林大保健学部の田島治教授(精神科医)は「この研究は、ベンゾジアゼピンがアルツハイマー病の直接的な原因であると示したものではない。だが依存性なども考慮すると、漫然と使い続けてよい薬ではなく、医師は処方期間に留意する必要がある」と話す。

群大病院、事故報告怠る…厚労省が立ち入り検討 indexへ

 群馬大病院(前橋市)の第二外科で腹腔鏡を使う肝臓手術を受けた患者8人が死亡した問題で、同病院が、医療法で義務づけられた事故報告を怠っていたことがわかった。
 同病院が18日、厚生労働省の聞き取り調査で明らかにした。厚労省は、病院の安全管理体制が不十分だった疑いがあるとして、同法に基づく立ち入り検査を検討している。
 同法の施行規則は、医療事故の疑いがある場合、事故発生から原則2週間以内に、公益財団法人「日本医療機能評価機構」(東京)に報告することを義務づけている。
 同省によると、聞き取りに応じた同病院の野島美久院長は、事故報告をしなかったことについて、「病院内の対応で手いっぱいだった」と釈明。「少なくとも調査委員会から問題だと指摘された8月には、報告すべきだった」と謝罪したという。

群大病院、十二指腸手術後に患者死亡…第一外科 indexへ

 群馬大病院の第一外科で、群馬県内の50歳代男性が受けた十二指腸の手術で医療過誤があり、手術の約11か月後に男性が死亡していたことがわかった。
 18日夜に記者会見した野島美久院長らによると、男性は昨年4月、膵臓に接する部分にできた十二指腸腫瘍を取り除く手術を受けた。腹腔鏡で観察しながら 器具で十二指腸を持ち上げ、その後、開腹手術に切り替えて腫瘍を摘出したが、男性は手術後に肝障害を起こし、今年2月に肝不全で亡くなった。
  同病院が昨年10月に設置した調査委員会では、開腹手術に切り替えた際、誤って胆管を傷付けたため、肝障害が起きた可能性があると判断。保険適用外で難易 度の高い手術方法についても事前のインフォームド・コンセント(説明と同意)が不十分だったと認め、同病院は今年3月に遺族に謝罪した。

モルヒネ2倍量投与…広島市立病院、男性死亡 indexへ

 広島市立安佐市民病院(広島市安佐北区)は18日、末期がんの男性患者(75)に、処方の2倍量のモルヒネを約6時間にわたり投与するミスがあっ た、と発表した。男性は翌日に死亡。病院側は遺族に謝罪したが、「致死量ではなく、ミスと死亡との因果関係はない」としている。
 病院によ ると、男性にはモルヒネ1日80ミリ・グラムと鎮静剤が処方され、今月5日から点滴で投与されていた。9日に鎮静剤の点滴が終わった際、看護師がモルヒネ が切れたと勘違いし、鎮静剤ではなくモルヒネを投与。このため、約6時間後に別の看護師が気付くまで、投与量は2倍になっていた、という。
 男性は10日午前に死亡。多幾山渉院長は「あってはならないことで、問題を検証して再発防止に努めたい」とのコメントを出した。

群馬大病院、手術成績「おおむね良好」…7人死亡後に学会発表 indexへ

 群馬大病院(前橋市)で腹腔鏡を使う高難度の肝臓手術を受けた患者8人が死亡した問題で、8人の手術の執刀医ら第二外科のグループが今年4月の学会で、手術成績について「おおむね良好な結果」などと発表していたことがわかった。
 この時点ですでに8人中7人が死亡、1人は容体が悪く入院中で1か月後に亡くなった。
 この問題では、2010~14年に同科で肝臓の腹腔鏡手術を受けた92人のうち、8人が100日以内に死亡した。死亡率は8・7%で、専門家は「非常に高い」と指摘している。
 今年4月に京都市で開かれた日本外科学会の学術集会では、執刀医が第二外科の責任者である同科教授らと連名で、手術実績を分析した内容を発表した。
 発表では、腹腔鏡手術は開腹手術に比べ手術時間は長いものの、合併症の頻度はあまり変わらず、在院日数は短い傾向にある、という趣旨の症例分析を報告。 まとめとして「腹腔鏡下肝切除は手技(手術の技術)の工夫によりおおむね良好な結果と期待される」と結論づけていた。
 執刀医らのグループは、10月に盛岡市で開かれた日本内視鏡外科学会でも発表を予定していた。様々な工夫により、難しい肝切除や胆管と腸をつなぐ手術が腹腔鏡でできるようになったと報告する内容だった。
 ところが、こうした手術を受けた8人がすでに死亡し、事態を重くみた大学病院による調査が6月から始まったなかで、この発表は事前に取り下げられた。

群馬大病院死亡…腹腔鏡 保険手術と偽る、診療報酬不正請求か indexへ

 群馬大学病院(前橋市)で腹腔鏡を使う高難度の肝臓手術を受けた患者8人が死亡した問題で、病院側が保険適用外の手術を保険がきく手術として診療報酬を不正請求していた疑いのあることが、遺族らの証言などでわかった。
 病院では、8人を含む保険適用外の56人の事例について調査を進めており、不正に受け取っていたと判明すれば健康保険組合などの保険者に返還するとみられる。
 腹腔鏡を使う肝臓の切除手術は、比較的実施しやすい「部分切除」などについては2010年4月から保険適用されている。しかし、難易度の高い「区域切除」などの手術の場合は保険適用が認められていない。
 14日開かれた記者会見で群馬大病院は、死亡した患者に行った手術がすべて保険適用外の難しい手術であることを認めた。保険適用外の手術は通常、費用は研究として病院持ちで行うか、自費診療として患者側が全額支払う形になる。
 しかし、亡くなった8人のうち6人は、病院側がいずれも開腹手術や腹腔鏡による部分切除など、保険がきく手術を行ったことにして請求し、患者側も「保険の自己負担分だけを支払った」と証言している。
 たとえば、保険診療で定められた腹腔鏡による部分切除の費用は約60万円で、患者が支払う自己負担は通常の3割なら約18万円になる。
 遺族の多くは、保険診療なのかどうかの説明を事前に執刀医から受けていなかった。ある遺族は気になって尋ねたが、「保険で大丈夫ですよ」と言われたという。
 今回のケースで不正請求があったかどうかについて、群馬大病院は読売新聞の取材に対し、「そういうケースもありうる」としている。
  肝臓手術に詳しい外科医は「保険適用外の腹腔鏡手術を行う場合、病院側が臨床研究として医療費を負担できるほど研究費はなく、自費診療として患者に全額負 担をお願いすると手術を受けてもらえない。こうしたことを背景に、群馬大も、実施件数を増やすために不正に保険請求したのではないか」と指摘している。

群馬大病院 手術後急速に容体悪化 indexへ

 群馬大学病院(前橋市)で、高難度の腹腔鏡を 使う肝臓手術を受けた患者8人が死亡した問題で、亡くなった患者のうち6人について、手術から死亡までの全体的な状況が遺族らの証言で明らかになった。2 週間程度で歩いて退院できる通常の腹腔鏡手術とは異なり、いずれも集中治療室(ICU)に移って治療を受けた末に亡くなっていた。
 遺族らによると、6人は60歳代が3人、70歳代が2人、80歳代が1人。病院関係者によると、残りの2人は60歳代と70歳代とみられる。
 患者6人はいずれも手術後、急速に容体が悪化、重症患者が入るICUに移され、人工呼吸器の装着など24時間看護が必要な危険な状態になっていた。
 執刀医による術前の説明では、腹腔鏡手術以外の説明を受けなかったり、初めから腹腔鏡で手術を行うと告げられたりした患者もいた。
  同大病院の記者会見によると、患者8人の死因は感染症や敗血症、肝不全、多臓器不全など。術前に必要な肝機能検査や、術後に十分な肝機能を残すために安全 に肝臓を切除する量を割り出す計算が行われていなかったケースもあったとしている。こうした場合、「肝臓の状態が悪いのに手術で負担がかかり過ぎたり、肝 臓の切除量が多過ぎたりし、急速に容体が悪くなる可能性がある」と専門家は指摘している。

腹腔鏡手術後死亡 厚労省、群大病院調査へ indexへ

 群馬大学病院(前橋市)で腹腔鏡を使う高難度の肝臓手術を受けた患者のうち8人が死亡した問題で、厚生労働省は14日、事実関係などについて調査を行う 方針を決めた。患者が死亡に至った経緯などを大学側から聞き取り、安全管理体制などに問題がなかったかどうかを検証する。
 一方、同病院は同日午前、群馬県庁で記者会見し、野島美久病院長が「患者や遺族に多大な心痛と心配をおかけし、おわび申し上げる。事態を重く受け止めている」と謝罪、遺族への説明を始めたことも明らかにした。
 塩崎厚生労働相は同日の閣議後記者会見で、「死亡との因果関係など事実関係を正確に把握し、病院からの聞き取りなど適切に対応する」と語った。
 同省によると、群馬大病院は13日、8人の死亡について関東信越厚生局に報告。同厚生局は14日にも大学側に事情を聞く予定だった。
 群馬大病院は、高度な医療を行う医療機関を承認する「特定機能病院」の一つ。同省は今後、8人が死亡した手術や治療経緯について、医療法に基づき聞き取りを行い、内部の安全管理体制に問題があれば、病院に改善を求めることなども検討する。
 下村文部科学相は14日の閣議後記者会見で、「(大学病院に対して)速やかに詳細な調査、検証を開始し、その結果や必要な改善策をまとめ、報告するよう求めている」と述べた。
 大学付属病院の運営などを担当する文部科学省大学病院支援室の担当者は「患者が死亡しており、詳細な事実関係を把握し、組織や運営面で問題があれば改善を求める」と話している。
  一方、群馬大病院は県庁で記者会見を開いた。2010年12月から今年6月にかけて行われた腹腔鏡を使った肝臓手術92件のうち、40歳代の助教の男性医 師が執刀して死亡したのは、60代~80代の男性5人と女性3人。手術後約2週間で亡くなった人もいたという。安全性や有効性が十分確認されていない保険 適用外の手術が、死亡した8件を含めて56件あることを明らかにした。
 保険適用外の治療が多数行われている実態を病院側は把握しておらず、「本来ならば病院に申請し、倫理審査委員会などで審査、検証すべき事例。実施体制に 問題があった」とした。手術と死亡の因果関係については「調査中で、この場では申し上げられない」と述べるにとどめた。
  同大は8月末に調査委員会を設置し、執刀医の40歳代助教を含む関係者の聞き取りを実施。執刀医は高難度手術を届け出なかったことについて「認識が浅かっ た」と話しているという。カルテを精査する中では、患者に対する手術の説明が不十分で、術前の肝機能の検査を一部行っていない実態も判明しているという。
 腹腔鏡 腹部の内側を観察するカメラ。体に数か所穴を開け、このカメラと手術器具をさし入れて、内部の映像を見ながら切除や縫合をする手術は、開腹手術より体への負担が少なく、回復が早いとされる。

群大病院死亡、執刀医「認識浅かった」…術前評価 不十分 indexへ

 群馬大病院・野島病院長の記者会見は以下の通り。
 ――これまでの経緯は。
 腹腔鏡の手術で死亡者がいるとわかり、永井弥生・医療安全管理部長が調査をしていた。私が認識したのは6月末。調査を進める中で、9月に入ってから肝胆膵グループの手術を中止した。13日から遺族への説明を始めている。
 ――執刀医は聞き取りに対しどのように説明しているか。
 倫理審査委員会を通す必要があったことは知っていたが「認識が浅かった」と話している。委員会に申請する必要があるという意識が乏しかったのだろう。
 ――患者への説明はどの程度行われていたか。
 同意書など決まった形はカルテに記録されているが、診療録を見た限り記載は不十分だった。(患者に)手術の内容を十分に説明できていたかは、こちらで確認できていない。執刀医本人は説明していると言っている。
 ――肝臓の術前評価状態はどうか。
 手術前の評価、検査が不十分であったと認識している。肝臓の機能が手術に耐えられるかの検査、(安全に切除できる量はどのくらいかの検査)がカルテでは確認できず、執刀医も「容量検査は行っていない。通常の検査で十分だと思った」と話している。

群大病院死亡「簡単な手術と言われ」 indexへ

 高難度の腹腔鏡を使う肝臓切除手術の後、患者8人が死亡していた前橋市の群馬大病院。県内外から患者が集まる北関東の医療拠点で、手術の不適切な実施態勢が明らかになった。
 病院は院長らが記者会見して謝罪した。病院は遺族への説明を始めたが、遺族の中には、手術後から病院側への不信感と疑問を抱き続けた人もいる。
 「大変申し訳ありません」。群馬県庁で行われた記者会見の冒頭、野島美久病院長らは深々と頭を下げた。
 今回の問題では、安全性や有効性が確認されていない手術が病院の管理部門に申請されないまま多数行われた結果、8件もの死亡例が積み重なった。
 報道陣から「ここまで増える前に、病院として食い止められなかったのか」と問われると、「しかるべき手続きが取られておらず、把握が遅れてしまった。(申請など)執刀医らの認識も曖昧だった」と唇をかんだ。
  8月末から調査委員会が調べを進める中で、問題点が次々と明らかになっている。カルテや患者に渡した同意書などからは、手術のリスクや、抗がん剤治療など 他の選択肢について説明した形跡がみられないという。永井弥生・医療安全管理部長は「もっと丁寧に説明すべきだが、残された文書を見る限り、それがなされ ていない」と話した。

 「簡単な手術と言われ、夫は望みをかけた。それなのに」。群馬大病院第二外科(消化器外科)で、肝臓がんの夫が腹腔鏡手術を受けて死亡した60歳代の女性は、そう打ち明けた。
 女性によると、手術前、担当医から「腹腔鏡手術なら2週間で退院できる」と言われ、「早く退院できるなら」と応じた。
 しかし、手術の説明は専門用語が多くて理解しづらく、リスクについて説明を受けた記憶はない。「あの時は、わからなくても、夫の病気を治すことで頭の中がいっぱいで、先生を信じて任せるしかなかった」と振り返る。
 術後、容体はどんどん悪化。担当医は多忙で、夫の経過について説明を求めても対応してもらえないことが多く、女性は不信感を募らせていった。
  亡くなってからも、「簡単な手術でなぜ?」という疑問を抱いていたが、手術と夫の死の因果関係もわからないまま、心のわだかまりだけが残った。夫が受けた のは保険適用されていない難しい手術だったと知り、ほかの医師の意見を聞く「セカンドオピニオン」を取らなかったことを悔やんでいる。

腹腔鏡手術後8人死亡…高難度の肝切除、同一医師が執刀 indexへ

 群馬大学病院(前橋市)で2011~14年、腹腔鏡を使う高難度の肝臓手術を受けた患者約100人のうち、少なくとも8人が死亡し、病院が院内調査委員会を設置して調べていることがわかった。
 8人を執刀したのはいずれも同じ医師。同病院ではこれらの手術は事前に院内の倫理審査を受ける必要があるとしているが、担当の外科は申請していなかった。
  病院関係者によると、手術が行われたのは第二外科(消化器外科)。死亡した8人は60代~80代の男女で、肝臓がんなどの治療として腹腔鏡を使う肝臓切除 手術を受けた。手術と死亡の因果関係は現時点では不明だが、8人は術後に容体が悪化し、約3か月以内に肝不全などで亡くなった。
 事態を重く見た病院側は現在、同科肝胆膵(肝臓、胆道、膵臓)グループの全手術を停止している。
 腹腔鏡を使う肝臓切除手術は、比較的実施しやすい「部分切除」などに限り、10年4月に保険適用された。しかし、高度な技術が必要な「区域切除」などは有効性や安全性が十分に確認されていないとみなされ保険適用外だ。
 同外科ではこうした保険適用外の手術を多く手がけており、8人が受けたのも同様の手術だったとみられている。これらの手術は、病院の倫理審査委員会に臨床研究として申請しなければならなかったが、第二外科は行っていなかった。
 今年4月には千葉県がんセンターで、膵臓などの腹腔鏡手術を受けた患者が相次ぎ死亡していたことが明らかになり、10月時点で計11人の死亡患者について調べている。
  群馬大病院の小出利一・総務課長は「倫理審査を受けずに治療したことは問題で、あってはならないことと重く受け止めている。院内で様々な側面から調べてお り、まとまり次第、ご遺族や社会にきちんと説明し、さらに本格的な調査をしたい」とし、執刀医については「医師個人への取材には応じられない」としてい る。
 群馬大病院は、725の病床を持つ北関東の医療拠点。重粒子線治療など最先端の医療も導入している。
 消化器がんに詳しいがん研有明病院の山口俊晴・消化器センター長の話「一般的には腹腔鏡による肝切除を受けた患者が短期間で死亡することは非常にまれだ。8人が亡くなるのはきわめて多いといえる。調査委員会は原因を究明し、再発防止に努めるべきだ」

 腹腔鏡  腹部の内側を観察するためのカメラ。これを使った手術は、体に開けた数か所の穴からカメラと手術器具をさし入れ、内部の映像を見ながら切除や縫合をする。 開腹手術より体への負担が少なく、患者の回復が早いとされる。大腸や胃の手術では普及してきているが、リスクの高い肝臓や膵臓の手術では限定的な活用にとどまっている。


乳がん検診 視触診、自治体3割行わず indexへ

 全国の市区町村が行う乳がんの集団検診で、全体の3割にあたる543市区町村が、国が推奨する視触診を行っていないことが厚生労働省の調べで分かった。
 13日午後の有識者検討会で報告され、今後も視触診の推奨を続けるべきかどうかを議論する。
 同省の指針によると、乳がん検診は40歳以上の女性に2年に1度行う。検査項目として問診、乳房の形の異常などを目で観察する視診、しこりがないかを手で触れて調べる触診、乳房エックス線撮影(マンモグラフィー)を推奨している。
 しかし、視触診をしてもしなくても死亡率に明確な差がないとの研究報告が複数出されており、必要性が検討されるようになった。
 同省が2013年に行った調査では、回答のあった1735市区町村のうち、543市区町村(31%)が前年度の集団検診で視触診を行っていなかった。
 高知や新潟など県として視触診を推奨しない方針を示しているケースもある。推奨しない県は、理由として「医師確保が難しい」「視触診でがんが見つかることが少ない」などを挙げる。
 一方で、指針で推奨項目に挙げられていない超音波検査を独自に行う自治体が472(27%)に上った。超音波検査の有効性を調べる国の大規模研究が行われており、結果次第で、推奨項目に追加するなど指針が変わる可能性もある。

肺高血圧症の患者、専門医受診まで3年半 indexへ

 国の指定難病の肺高血圧症の患者が、発症後、専門医に行き着くまでに平均3年半かかっていることが、患者会による調査で分かった。
 適切な治療が早期に行われず手遅れになる例もあり、患者らは診療体制の充実を訴えている。
 肺高血圧症は心臓から肺に血液を送る血管が狭くなり、肺動脈の血圧が高くなる病気。呼吸困難などの症状が出る。発症後は短期間で進行、突然死のリスクもある。
 調査は、患者らで作るNPO法人「PAHの会」(神奈川県)が7~8月、肺高血圧症のうち、国の難病に指定されている「慢性血栓塞栓性」と「肺動脈性」の患者を対象に実施、93人が答えた。
 それによると、発症後、専門医を受診するまでにかかった期間は平均3年半。患者の23%(21人)は専門医に行き着くまでに3~5か所の病院に行ったと 回答した。13%(12人)は専門医の診察を受けておらず、主な理由は「通える距離に専門医がいない」だった。
 札幌医大准教授で専門医の橋本暁佳さんは「専門治療が可能なのは全国でも20病院ほどで、診断されずに亡くなる患者もいる。専門医とかかりつけ病院が連携して診る体制づくりが急務だ」と語る。

がん患者と間違え肺一部切除 熊大病院を提訴 indexへ

 熊本大病院(熊本市)が昨年8月、本来手術の必要がない健康な女性(50歳代)の肺の一部を切除した医療事故を巡り、女性が、同大を相手取り、慰謝料など約2600万円の損害賠償を求める訴訟を熊本地裁に起こした。
 訴状などによると、同病院は同年6月、女性の肺から検体を採取した際、同じ日に採取した肺がんの男性(当時80歳代)の検体と取り違え、女性を肺がんと誤診。同年8月、女性の右肺の約3分の1を切除した。同病院は同年9月、医療事故を公表、女性に謝罪した。
  訴状では「高度な注意義務を負う検査技師による医療過誤。あってはならない注意義務違反で、精神的苦痛は甚大だ」と主張。現在も呼吸がしづらく、右脇の下 に痛みを生じるといった症状があるという。同病院側からは350万円の賠償金を提示されたが、「日常生活上の支障の実態とかけ離れている」としている。
 同病院は「コメントは控えたい」としている。

「移植と手続き別問題」病気腎訴訟控訴…愛媛 indexへ

 病気腎移植を否定する日本移植学会幹部の発言などで、移植を受ける権利が奪われたとして、損害賠償を求めた移植患者らの訴えを退けた松山地裁判決を不服として、控訴に踏み切った原告団。
 10日、原告団長の野村正良さん(65)らが県庁で記者会見を開き、「学会や裁判官には患者と修復腎(病気腎)にしっかりと向き合ってほしい」と訴えた。
 野村さんらは10月28日の判決後、原告らを支援するNPO団体と協議を進めて控訴を決意した。2007年に厚生労働省が改正した臓器移植に関する運用 指針について、野村さんは「学会の意向が影響しているのは明らか」と強調。2審でも争点にする意向を示した。
 また宇和島徳洲会病院(宇和島市)などで行われた病気腎移植で、臓器提供者と移植患者に対する説明が不十分だったことに触れ、「修復腎の悪いイメージにつながったが、移植の手続きの問題と移植自体の問題は別の話。裁判官も混同していた」と話した。

早産児治療 痛み少なく…学会で指針案 indexへ

 予定より早く生まれた早産児らが採血や注射などを受ける際の痛みを和らげるケアの方法を示した指針案がまとまった。
 新生児集中治療室(NICU)に関係する複数の学会メンバーらで作る委員会が作成、日本未熟児新生児学会で発表された。年内には、簡易版も含め、完成する予定。
 早産児などが入るNICUでは、採血や注射、鼻や口などへのカテーテル(管)の出し入れなど、痛みが伴う様々な処置や検査が行われる。
 近年、新生児期に何度も痛みを味わうと、知覚や情緒の発達に悪影響が出る可能性があることが分かってきたが、現場での対応は遅れている。
 指針案では、痛みを和らげる方法として、毛布や両手で優しく体を包み込むことを始め、親の同意を得て、おしゃぶりや肌と肌との触れあい、針を刺して足底からの血を採る前に甘みがあるショ糖を口に含ませること――などを挙げた。
 委員長の横尾京子・広島大名誉教授は「指針を活用することでスタッフの意識も変わるし、父母の不安を和らげることにもつながるはず」と話している。

アルツハイマー、血液で判別…長寿医療センターなど indexへ

 国立長寿医療研究センターなどの研究チームは、アルツハイマー病の発症前に、原因たんぱく質の状態が分かる血液中の目印を見つけたと発表した。
 発症の兆候を少量の血液で見つける可能性につながる成果で、11日付の日本学士院の学術誌に掲載される。
 アルツハイマー病は、原因たんぱく質「アミロイドβベータ」が脳内にたまり、脳が萎縮して起こるとされる。アミロイドβが蓄積し始めてから発症までに15~20年要すると考えられている。
 脳内のアミロイドβの蓄積を調べるには従来、脊髄に針を刺して脳脊髄液を採取するなど患者の負担が大きかったり、大がかりな画像診断機器が必要だったりするのが課題だった。
 今回の研究では血液中の微量のアミロイドβ関連物質の増減を調べることで、脳内のアミロイドβの蓄積を確認できることが判明。アルツハイマー病やそうで ない人を含む65~85歳の62人を対象に解析した結果、脳内の画像診断の結果と92%以上の精度で一致した。
 同センターの柳沢勝彦・認知症先進医療開発センター長は「0・5ccの血液があれば、発症前のアルツハイマー病の兆候を見つけられる可能性がある。発症予防や治療薬の開発につなげたい」と話している。

医師・薬剤師・ケアマネが在宅療養シートで連携…滋賀 indexへ

 国が在宅での医療や介護を推進する中、滋賀県大津市でケアに関わる医師やケアマネジャーらが、情報を共有するオリジナルのシートを活用している。
 在宅診療支援診療所の制度創設から8年余、シートを通じて職種間の交流も広がっており、緊密な態勢づくりが進みつつある。
  「体質的に別の薬の方が合うのでは」「栄養士に日々の食事について助言してもらえないか」。先月に大津市内で開かれた在宅ケアに関する勉強会。医師や薬剤 師ら様々な職種の約20人が、病気で下半身が不自由になった要介護者の事例を取り上げ、精力的に意見を交わしていた。参加したのは中地区で発足した「チー ム大津京」のメンバー。2か月に1度集まり、熱心に事例検討を重ねる。

医療、福祉関係者の連携に使われている「おうみ在宅療養連携シート」
  異なる職種間での協力を後押ししているのは、情報を共有する「おうみ在宅療養連携シート」の誕生だ。約1年半前、医師と看護師、ケアマネジャーの会合で連 携の必要性を指摘する意見が出たことをきっかけに、市医師会の在宅療養推進委員会が開発した。委員の1人で、西山医院(大津市皇子が丘)の医師、西山順博 さん(45)は「医師は病気のことはわかっていても、患者の暮らし向きまで知らないし、聞けなかった」。シートには家庭の事情を含め、生活に必要な情報を 盛り込むことを重視して作業を進めた。
 A4判で、要介護3以上が主な対象。基本情報となる既往歴や服薬、認知症の症状、処置内容を始め、 終末期に対する本人の思い、経済状況、家族による介護への関わりなど、自宅でより良く過ごすために必要な情報を集約する。裏側には掛かり付け医や訪問看護 師、ヘルパーらが気付いたことや引き継ぎを記し、家族や他職種の人への依頼なども共有できる。
 先行例を参考に、要介護者の思いを重視して連携を深める心得を説いた理念をまとめ、「こころの平安」として定めた。
 シートが広まると、個々の事案に限らず職種間での連携をもっと図ろうと、市の担当者を含む集まりもできた。これまで市内を7地区に分け、全市域をカバーする準備が整いつつある。
 昨年は1年間で100件ほどの活用があり、西山さんは「顔の見える関係を多くの職種間で築き、医療にも福祉にもプラスの効果を狙いたい」と期待している。
東近江、彦根でも取り組み

 在宅ケアで多職種の連携を図る取り組みは、県内の各地でも進んでいる。
 東近江市など2市2町では、7年前から「三方よし研究会」をたちあげ、「患者よし、機関よし、地域よし」を目指して月1回、関係者が集まっている。
 彦根市など1市4町でも各職種の代表による会合や勉強会が定着。今年1月には彦根市立病院内に市保健・医療複合施設「くすのきセンター」が完成し、多職種を結びつける場となっている。

認知症サポーター増やそう…徳島  indexへ

 徳島県は認知症高齢者の増加に対応するため、知識と適切な対処法を身に着けた「認知症サポーター」の養成強化に取り組んでいる。
  高齢者の4人に1人が「認知症か、その予備軍」とされ、県内では約6万人が該当。しかし、支える側のサポーターの人数は全国最少にとどまっている。そこ で、10月下旬から一定数以上のサポーターらが所属する会社を顕彰する制度を創設し、養成の成果を発信できる取り組みを開始。地域の「見守り力」を向上さ せ、認知症の人にも優しい街づくりを目指す。
 県などが実施する養成講座を受け、症状についての知識や「驚かせない」「プライドを傷つけな い」などの対処法を身につけた人が認知症サポーターになれる。県内には、2万2610人(9月末現在)いるものの都道府県別では最少で、「認知症を理解 し、手助けできるサポーターを増やすことで、認知症の人やその家族の困り事を減らし、症状の悪化を食い止めたい」と、養成強化を考えた。
 顕彰制度では、10人以上のサポーターがいる企業や事業所を「ブロンズ」、30人以上を「シルバー」に認定。さらに、サポーターを養成する立場の「キャ ラバンメイト」がいれば「ゴールド」とし、店頭などに掲出できる登録証を配布し、イメージアップにつなげてもらう。
  希望する企業や事業所は、県長寿保険課のホームページにある所定の様式に必要事項を記入し、申請する。審査後、14日までに登録されれば、22日午前10 時から徳島市の徳島グランヴィリオホテルで登録証を交付。また、同10時半からは、同所でサポーター養成講座も開く。問い合わせは同課(088・621・ 2213)。

認知症患者21%に抗精神病薬を処方…医療経済研究機構調査 indexへ

 認知症患者の5人に1人が、主に統合失調症に用いられる抗精神病薬を処方されているとする調査結果を医療経済研究機構がまとめた。
 抗精神病薬は認知症患者の死亡リスクを高めるとされ、欧米では処方が大幅に減っているが、国内では逆に微増していた。
  同機構は、2002~10年に認知症治療薬を処方された65歳以上の患者のべ1万5600人分の診療報酬明細書を分析。08~10年に、合わせて抗精神病 薬も処方されていた患者の割合は21%で、02~04年の1・1倍だった。抗精神病薬は認知症患者への投与は本来認められていないが、症状を抑えるために 医師の判断で処方されている。

「もらい乳」32施設で実施、無殺菌で感染例も…厚労省研究班調査 indexへ

 母親の母乳の出の悪さや病気などで母乳をもらえない早産児らに、病気の予防のため、別の女性の母乳を与えるもらい乳を、全国の新生児集中治療室(NICU)の25%が実施していることが、厚生労働省研究班による初の実態調査で分かった。
 殺菌していないもらい乳を通じ、早産児が感染症にかかったとみられる例もあり、研究班は今年度中に殺菌の手順などをまとめた運用基準を策定する。
 松山市で10日から始まる日本未熟児新生児学会で発表される。
 小さく生まれた早産児の場合、母乳は人工乳と比べて、命にも関わる腸炎の発症を減らしたり、消化吸収機能の発達を促したりする効果が高いため、なるべく 早くから母乳を与えるのが望ましい。

 調査は今年7月、NICUがある全国179施設に実施した。回答した126施設中、32施設(25%)がもらい乳を使っていた。
  もらい乳は、冷凍保存したものが早産児に提供されるが、低温殺菌していないため、早産児にウイルスや細菌が感染する危険性がある。今回の調査では、もらい 乳が原因と考えられる感染症の有無を尋ねたところ、早産児が感染すると重症化するサイトメガロウイルスと、薬が効きにくいタイプの大腸菌の2件が報告され た。
 米国や英国など多くの国では、専用装置で低温殺菌し、感染の危険がない母乳を提供する母乳バンクが専門組織や病院単位で整備されている。しかし、国内の 取り組みは遅れており、専用装置を備えた施設は昭和大江東豊洲病院(東京都江東区)のみだという。
 調査をまとめた同病院の水野克己小児内科教授は、「早産児は年々増えており、母乳バンクの需要は高まっている。安全な母乳を提供できるシステムを広めた い」と話している。

司法解剖、22大学が遺族に無断で臓器処分 indexへ

 警察の依頼で行う司法解剖について、読売新聞の取材に応じた全国46大学の少なくとも6割にあたる29大学が、臓器などを摘出・保存する際、その事実や目的を遺族に伝えていないことがわかった。
 うち22大学では、解剖時に摘出した多数の臓器などを一定期間保存した後、遺族に知らせないまま処分していた。
 こうした現状について、警察庁は遺族に説明責任を果たすルールが必要と判断、日本法医学会や法務省と協議するなど是正措置の検討を進めている。
 司法解剖を行う全国75大学にアンケート形式で行ったところ、46大学が文書や電話で答え、残りは「守秘義務にあたる」などの理由で回答しなかった。
  各大学によると、司法解剖では、警察や検察からの再鑑定依頼に備え、血液のほか、脳や心臓、肺や肝臓などの一部や全部を摘出。腐敗を防ぐ薬品に漬け、容器 に入れるなどして保存しているが、29大学は、こうしたことを遺族に直接でも、警察経由でも「伝えていない」と回答した。
 このうち22大学は、遺族や警察、検察に連絡しないまま、古いものから業者に処分を依頼して引き渡すなどしていた。理由は「置く場所がない」などで、解剖から処分までの期間は1~20年だった。

国連職員がエボラ感染、仏の軍病院に隔離入院 indexへ

 【パリ】フランス保健省は2日、西アフリカのシエラレオネでエボラ出血熱に感染した国連職員が、パリ郊外の軍病院に隔離入院したと発表した。
 発表によると、治療は国連からの要請によるもの。職員はエボラ出血熱対策で現地入りしており、仏への搬送には感染防止のため特別機が使われた。患者の国籍は明らかにされていない。
 仏では、リベリアから9月に搬送された仏人看護師の患者が回復、退院している。看護師の治療には、富士フイルムのグループ会社が開発した薬「アビガン」が使われた。

心不全治療に細胞シート…テルモが承認申請 indexへ

 培養した細胞を膜状に加工した細胞シートについて、医療機器メーカーのテルモ(東京都渋谷区)は31日、重症の心臓病患者の治療に使う医薬品として製造販売を行うための承認申請を行ったと発表した。11月施行の改正薬事法に基づいた早期の承認を目指す。
  保険適用される場合の価格は厚生労働相の諮問機関で決まる。治療対象は、心筋梗塞などで心臓の機能が低下し、将来的に補助人工心臓が必要となりそうな患 者。病院で採取した脚の筋肉細胞をテルモの施設で培養し、直径5センチ、厚さ数十マイクロ・メートルのシートに加工。病院で心臓の弱った部分に手術で貼り 付ける。
 新たな血管の生成が促され、機能が回復することがシートによる治療法を開発した大阪大病院(大阪府吹田市)の臨床研究で確認されている。同社は2012年から、同大など3大学病院で承認申請のための臨床試験を進めてきた。
 心不全患者は軽症者も含めると国内に約25万人。最終的な治療として心臓移植や人工心臓の植え込みがあるが、早期の細胞シートの治療で自宅で過ごせる期間を延ばせる可能性がある。同社は「心不全治療の新たな選択肢として期待できる」としている。

目のiPS細胞移植、順調に経過…手術担当医 indexへ

 目の難病患者に世界初のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いた移植手術を行った、先端医療センター病院(神戸市)の栗本康夫・眼科統括部長(53)が29日、読売新聞などの取材に応じた。
 栗本部長は、患者の経過について「順調でほっとしている」と述べたうえで、すでに2人目の患者を選び、手術に向けて細胞の培養を進めていることも明らかにした。
  手術は、理化学研究所の高橋政代・プロジェクトリーダーらが進める臨床研究として行われた。1例目の患者は、網膜細胞が傷つく「加齢黄斑(おうはん)変 性」を長年患う兵庫県在住の70歳代女性で、9月12日、女性のiPS細胞から作った「網膜色素上皮」の細胞シートを右目に移植した。女性は「手術直後か ら明るく見える。思い切って手術を受けて良かった」と話しているという。

エボラ感染者が1万人突破、死者は4922人に indexへ

 【ジュネーブ】世界保健機関(WHO)は25日、西アフリカを中心に広がるエボラ出血熱の感染者が世界全体で1万141人、このうち死者が4922人に達したと発表した。
 感染拡大の勢いは依然衰えていない。
 最も深刻なギニア、リベリア、シエラレオネの3か国で感染者は1万114人、死者は4912人に上った。
マリは、ギニアから来た女児の感染が23日に見つかり、ウイルスの侵入を受けた新たな国となった。女児は24日に死亡した。マリでは、女児と接触のあった43人に対して、二次感染がないか監視を行っている。
 感染者が出た国は、米国(感染者4人、死者1人)、スペイン(感染者1人)を含め8か国に広がった。ただし、このうちナイジェリア、セネガルでは42日以上新たな感染が見つかっておらず流行が終息している。

薬科大医学部新設 医師の採用巡り懸念の声…仙台 indexへ

 東北薬科大(仙台市青葉区)への医学部新設を巡り、同大は22日、東北6県の医療関係者らでつくる「教育運営協議会」の初会合を仙台市内で開いた。
 医師の採用に関する同大の指針に対し、「地域医療に支障が出る」などと懸念する声が続出。同大は来週にも医師の公募に入る予定だったが、持ち越されることになった。
  協議会は、各県の医療担当部局や大学医学部、医師会などのほか、オブザーバーの文部科学省の担当者らを含む計36人で構成。文科省の審査会は医学部の設置 先に同大を選んだ際、教員となる医師の確保や地域の実情に沿った医師の育成について話し合うため、協議会を設置するよう求めていた。
 初会合で同大は、医師の公募を巡り、「引き抜きは行わない」「所属長の意見に配慮する」と言及。採用した医師が勤務していた地域の医療に影響を及ぼさないようにすると強調した。
 これに対し委員からは、「所属長だけの判断でいいのか。第三者の意見も必要か議論するべきだ」「後任者の補充までフォローしてほしい」などと懸念する声が相次いだ。
 委員長に就いた東北大の里見進学長は「組織のトップから了解が得られれば、危惧は防げるのでは」と同大の方針に理解を示したが、意見がまとまらず、11月上旬に再度協議することになった。

高齢救急「元の場へ」半数…退院後の受け皿不足 indexへ

 自宅や介護施設から救急病院に運ばれた高齢者のうち、1か月後に元の生活の場に戻れた人は約半数 に過ぎず、ある程度回復しても約2割が救急病院にそのまま入院し続けていた、との調査結果を、東京都医師会救急委員会がまとめた。29日、福岡市で開かれ る日本救急医学会で発表する。
 調査は、東京都指定2次救急医療機関254病院が対象。2012年10月の1週間に入院した救急患者の1か月後の状態をアンケートし、191病院から回答を得た。この間の救急患者6083人のうち6割(3575人)が65歳以上。
 搬送前の生活場所別に分析すると、介護施設から搬送された高齢者354人のうち、介護施設に戻れたのは50%。23%が1か月後も救急病院で入院を続けていた。慢性期患者に対応する別の医療機関に転院した人は4%。死亡は11%だった。
 自宅から搬送された高齢者2400人のうち、自宅に戻れたのは57%。約17%が、そのまま入院を継続していた。別の医療機関に移ったのは7%だった。
 他の医療機関から搬送された高齢者490人では、22%が入院を継続しており、退院し他の医療機関に移れたのは12%にとどまった。
 調査をまとめた石川秀樹・帝京大講師(救急医学)は「在宅医療や慢性期対応の医療機関など、高齢患者の救急病院退院後の受け皿が不足している」と話す。

臨床研究、法規制へ…厚労省検討会 ディオバン問題受け indexへ

 高血圧治療薬ディオバンの研究データ改ざん事件など相次ぐ臨床研究不正を受け、厚生労働省の有識者検討会は22日、「臨床研究に対し、法規制が必要」との見解で合意した。
 法規制の対象は、未承認薬や、医薬品・医療機器の広告に用いられる臨床研究などに限る方向で、検討会は年内に報告書をまとめる。
 薬の製造・販売承認を得るために行う臨床試験(治験)が薬事法で規制されるのに対し、大学などが行う臨床研究には、国の倫理指針があるだけで法規制はなく、違反しても罰則がない。欧米では法規制がある。
 検討会では「厳しすぎて研究を妨げてもいけないが、一部法制化が必要ではないか」などの意見が相次ぎ、「研究開発が推進できる適度な法規制が必要」との意見で一致した。
 法規制の対象や運用方法については、今後も議論を続ける。

関節リウマチに関わるたんぱく質特定…京大助教 indexへ

 関節に強い痛みや腫れが生じる関節リウマチの発症に深くかかわるたんぱく質を特定したと、京都大再生医科学研究所の伊藤能永助教の研究チームが発表した。
 関節リウマチの患者は全国に70万~80万人いるとされ、新たな治療法や予防法につながる可能性があるという。17日の米科学誌サイエンスに論文が掲載された。
 我々の体は、体内に侵入してきた病原体を“外敵"と見なし、排除する免疫細胞によって守られている。
 関節リウマチは、免疫細胞が、正常な関節組織を病原体と見誤って攻撃することで起きる。免疫細胞は、病原体ごとに異なるたんぱく質を攻撃の標的にするが、関節リウマチでは、標的となるたんぱく質がわかっていなかった。
  研究チームは、関節リウマチを発症させたマウスを用いた実験で、関節の細胞にある小器官に含まれるたんぱく質が、標的となっていることを発見。京大病院の リウマチ患者374人の血液を調べると、64人(約17%)で、免疫細胞がこのたんぱく質に反応していることがわかった。
 伊藤助教は「免疫細胞がこのたんぱく質を標的とするのを遮断できる薬が開発できれば、有効な治療法になるかもしれない」と話す。

エボラ国内確認なら…患者に国産薬投与 indexへ

 西アフリカを中心にしたエボラ出血熱の感染拡大を受けて、厚生労働省は、国内で感染者が確認された際に、新型インフルエンザ治療薬「アビガン錠」の投与を認める方針を固めた。
 アビガン錠はエボラ出血熱の治療薬としては未承認のため、患者を受け入れる指定医療機関での臨床研究として治療を行い、薬剤効果などを検証する。
  アビガン錠は富士フイルムグループが開発し、今年3月に新型インフルエンザ治療薬として厚労省の承認を受けた。独のチームが今春、エボラウイルスに感染さ せたマウスにアビガン錠を投与し、致死率が減少したとする動物実験の結果を報告。エボラ出血熱の治療法は現時点で確立されておらず、死者が4000人を超 えるなか、効果が注目されていた。仏、独、スペイン、ノルウェーではアビガン錠の提供を受け、未承認のまま緊急措置として患者に投与している。

デング熱感染、新たに1人 indexへ

 厚生労働省は15日、デング熱の感染者が新たに1人確認されたと発表した。
 8月26日以降、国内感染者は19都道府県で計159人となった。同省などによると、新たに感染が分かったのは東京の10歳代男性。

エボラ、米で2人目感染か…医療従事者が陽性 indexへ

 【ロサンゼルス】米南部テキサス州の保健当局は15日、同州ダラスの病院でエボラ出血熱患者の治療に関わった医療従事者の女性から、新たに陽性反応が出たと発表した。
 この病院では、12日に女性看護師の感染が確認されている。2人とも、エボラ出血熱により8日に同病院で死亡したリベリアの男性の治療に携わっており、院内で二次感染した可能性がある。
 陽性反応が出た医療従事者は14日に発熱症状を訴え、同病院内で隔離された。同州の公衆衛生研究所で14日夜に暫定検査が行われ、陽性反応が確認された。米疾病対策センター(CDC)が確定検査を行う。感染が確認されれば、米国内での感染は2人目となる。
 保健当局は、この医療従事者の聴取をすでに実施しており、発症までに接触した人物を特定し、経過観察を行う。
 CDCは14日、女性看護師以外にも、男性患者の治療に76人が関わっていたとして、定期的な体温検査などの経過観察を開始したと明らかにしていた。

エボラ出血熱、米国内での感染を初確認 indexへ

 【ワシントン】米疾病対策センター(CDC)は12日、米南部テキサス州ダラスの病院の女性看護師がエボラ出血熱に感染し、発症したことを正式に確認したと発表した。
 同州の暫定調査で11日に陽性反応が出たため、CDCが確認を急いでいた。
 米国内でのエボラ出血熱の感染は初めて。発症は2人目。女性は8日に同病院でエボラ出血熱で死亡したリベリアの男性患者の手当てを担当。病院内で男性から感染したとみられ、10日に微熱が出たため検査を受けた。
 同病院ではCDCが定めたガイドラインに従って、万全の感染防止対策を講じていたはずだったが、何らかの手違いがあり、患者から看護師に感染してしまったとみられる。
 同州とCDCは、死亡したリベリアの男性が発症後、隔離されるまでの間に接触した48人の経過観察をしているが、今回感染が確認された看護師は、この48人には含まれていなかった。今後、病院内で感染が起きた原因を調べる。

糖尿病新薬、使用の患者2人死亡…利尿薬を併用 indexへ

 今春から相次ぎ発売されている糖尿病の新薬「SGLT2阻害薬」を使用した患者2人が死亡していたことが、各社の市販直後調査でわかった。
 2人は利尿薬を併用していたとの報告があり、専門医は慎重な服用を呼びかけている。
 SGLT2阻害薬は、腎臓で糖の再吸収を抑え、糖分を尿中に排出させる。体重の減少効果も期待でき注目されているが、尿が増え、脱水を起こす場合がある。
 死亡したのは60歳代と50歳代の男性。サノフィと興和が製造販売を手がける「アプルウェイ/デベルザ」と、アストラゼネカなどが販売する「フォシーガ」をそれぞれ服用していた。2人は体外に水分を排出する利尿薬を併用するなどし、脱水を起こしたとされる。
 SGLT2阻害薬は国内で販売開始後、様々な副作用が報告されている。日本糖尿病学会の専門医で作る委員会は8月末までに、重い脱水15例、脳梗塞12例、低血糖114例などが報告されているとし、利尿薬との服用は推奨しないことなどを求めている。
 国立国際医療研究センター糖尿病研究部の野田光彦部長は「高齢者は脱水を起こしやすく特に要注意。副作用が出たらすぐに主治医に相談してほしい」と話している。厚生労働省は「薬との因果関係は調査中。報告が増えるようなら対応を検討したい」としている。

スペイン看護師、エボラ防護用手袋で顔こする? indexへ

 【パリ】ロイター通信によると、スペイン・マドリードの病院でエボラ出血熱に感染した看護師の治療にあたっている担当医は8日、記者団に対し、看護師が病室で使用した防護用手袋で顔をこすった際に感染した可能性があるとの見方を示した。
 この病院には9月22日、シエラレオネでエボラ出血熱に感染した神父(25日に死亡)が入院し、看護師はシーツ替えなどで2度、接近したとみられている。担当医は「看護師が手袋で顔をこすったと話した。3度確認した」と述べた。
 看護師は現在、この病院で隔離治療を受けており、エル・パイス紙の電話インタビューで「防護服を脱ぐときに、間違いがあった」と認めた。
 この病院では8月にも、リベリアでエボラ出血熱に感染した別の神父が入院、死亡している。スペイン政府は治療関係者や看護師の夫など、約50人の経過観察を続けている。看護師はアフリカ大陸以外でエボラ出血熱の感染が確認された初のケースとなった。

乳がんの発症リスク、肥満が高める要因に indexへ

 肥満は日本人女性が乳がんになる危険性を高めるとの調査結果を、国立がん研究センターが7日、発表した。
 欧米では、閉経前は肥満が乳がんの発症リスクを下げるとされてきたが、日本人女性では閉経前でも後でもリスクが高いことが初めて明らかになった。
 調査は国内の八つの大規模研究に参加した35歳以上の女性18万人以上が対象で、うち1783人が平均12年間の追跡期間中に乳がんを発症。体格指数(BMI)と閉経前後別に乳がん発症の危険性を分析した。
 その結果、閉経前でも後でもBMIが大きいほど危険性は高まり、閉経前にBMI30以上の肥満では、基準値内(23以上25未満)の人の2・25倍。閉経後ではBMIが1上がるごとに危険性が5%上昇した。
 肥満だと、乳がんの増殖に影響を与える女性ホルモンが閉経前では低く、閉経後では高い傾向にある。欧米では、閉経前は肥満が発症リスクを下げる調査結果が報告されている。

カルテ開示料、重点検査…厚労省 indexへ

 患者のカルテ開示請求に、高額な手数料を求める医療機関があるため、厚生労働省は、立ち入り検査の重点項目に開示手数料を新たに盛り込み、指導強化に乗り出した。
 個人情報保護法は医療機関にカルテ開示を義務づけているが、一部で高額な手数料が開示請求を阻害していると患者団体から指摘があり、改善を図る。
 個人情報保護法は合理的な範囲で開示にかかる費用の請求も認めている。コピー代の請求という形が一般的だが、中には別に、1回5000円、1万円などと高額な手数料を求める医療機関もある。
 厚労省は毎年度、医療法に基づく検査で重点的にチェックする項目をまとめ、検査を実施する都道府県などに通知している。先月、発出した通知では、開示手数料は「実費として合理的な額としなければならない」との内容を初めて留意点として加えた。
 文部科学省が行った8月の調査によると、大学病院だけで16病院が5000円の手数料を徴収。3000円も6病院あった。コピーが1枚40~50円などと一般より高い病院もあった。

26人に副作用症状 子宮頸がんワクチン…千葉 indexへ

 子宮頸(けい)がんワクチンの副作用問題で、千葉県が厚生労働省や県内市町村からの報告などをまとめたところ、2013年度以降、県民26人が副作用とみられる症状を訴えていることが3日、わかった。
 患者の家族や支援者らは同日、「被害者連絡会県支部」を設立し、支援拡大を訴え始めた。
  子宮頸がんワクチンは13年4月、予防接種法に基づく定期接種となったが、副作用の訴えが相次ぎ、厚労省は同6月、接種を積極的に勧めることを一時的に中 止した。県疾病対策課によると、13年度中、県内で延べ1万1296人が接種を受けた。同課の8月末現在のまとめでは、副作用とみられる症状を抱える県内 の26人は、発熱や頭痛、けいれん、体のしびれ、知覚障害などを訴えているという。市町村別では船橋市が最多の6人で、佐倉、市原両市が4人と続く。
  全国の被害者連絡会には県内の14人が登録。全国で7番目の設立となった県支部では、患者や家族らが勉強会などを開き、治療法などの情報交換を進める一 方、国や県などに実態調査や被害拡大防止を求める。県支部代表に就いた市川市の吉田浩美さん(51)は、長女(19)が12年に3回接種を受け、昨年末か ら高熱を訴えている。現在も、記憶や視覚の障害や体の痛み、不眠などが続き、車いす生活を強いられている。
 県庁で記者会見した吉田さんは「娘は就職や進学という夢も奪われた。治療法の早期確立と費用援助を充実してほしい」と語った。

子宮移植手術受けた女性が出産、母子共に健康 indexへ

 【ロンドン】AP通信によると、スウェーデン・イエーテボリ大学医学部の教授は3日、子宮移植手術を受けた同国の女性(36)が9月、出産したことを明らかにした。
 女性は昨年、子宮移植手術を受けた。早産だったが、誕生した男児と共に健康だという。
 出産を目的とした子宮移植は極めて異例で、倫理上の議論にもなっているが、この教授は「(子供を授かった)両親の喜びにかなうものはない」と語った。

赤ちゃん保湿剤「毎日・全身」…アトピー発症3割減 indexへ

 国立成育医療研究センターのグループは1日、保湿剤を毎日全身に塗った乳児は、アトピー性皮膚炎を発症するリスクが3割減るとの研究結果を発表した。
 アトピー性皮膚炎は、慢性的なかゆみや湿疹を繰り返す病気。様々な刺激から皮膚を守るバリア機能の低下やストレスなどが原因とされる。遺伝的な要因も指摘されており、家族に患者がいる子供の3~5割が発症するとの報告もある。
 研究は、家族にアトピー性皮膚炎の患者などがいる生後1週間以内の新生児118人を対象に、保湿剤で皮膚のバリア機能を補強し、発症を抑制できるか調べた。
 乳液タイプの保湿剤を1日1回以上全身に塗った59人と、皮膚が乾燥した部分だけにワセリンを塗った59人で32週間の経過を比較。
 保湿剤を塗らないグループでは28人が発症したが、保湿剤を毎日使っていたグループの発症者は3割以上少ない19人だった。
 大矢幸弘・生体防御系内科部アレルギー科医長は「乳児期に保湿剤を使うことでアトピー性皮膚炎の発症を減らせることが確認できた。今後、保湿剤の効果的な使用期間などを解明したい」と話す。

副作用報告漏れ、計3878件に indexへ

 製薬大手「ノバルティスファーマ」は1日、同社が販売する28種類の薬で、国への報告を怠っていた重い副作用症例が合計で3878件に上った、との社内調査結果を発表した。
 国への報告は9月30日に済ませている。同社は、8月末時点で、薬事法で義務づけられた重い副作用報告漏れが少なくとも2579件あったと発表していた が、今回、さらに1299件を追加報告した。同社によると、未報告だった重い副作用症例は、がん治療薬が9割を占める。

米国初のエボラ出血熱患者を確認…テキサス州 indexへ

 【ワシントン】米疾病対策センター(CDC)は30日、米国で初めてエボラ出血熱を発症した患者を、テキサス州の病院で確認したと発表した。
 CDCによると、アフリカ以外で発症したのが確認されたのは初めて。
  CDCはプライバシー保護を理由に、患者の国籍、年齢、職業などを明らかにしていないが、9月20日に西アフリカ・リベリアから米国在住の家族に会うため に入国後、24日頃から発熱などの症状が出たという。30日に遺伝子検査で感染が確認された。エボラ出血熱は感染から発症までに2~21日間の潜伏期間が あり、リベリアで感染した可能性が高い。患者は入国後、家族らと接触したため、CDCは経過観察を続ける。
 CDCのトム・フリーデン所長は記者会見で「エボラ出血熱は発症後に血液などの体液で感染する。潜伏期間中に感染したり発症後に空気感染したりしない。患者の家族や知人が発症する恐れはあるが、米国内で感染が拡大する恐れはない」と強調した。
 米国ではこれまで、西アフリカで支援活動をしていた医師ら5人が発症後に帰国し、隔離病棟に入院。うち3人は退院した。
 世界保健機関(WHO)の26日の統計によると、西アフリカでの感染者は6500人を超え、うち死者は約3000人。

デング熱感染者、18都道府県で151人に indexへ

 厚生労働省は30日、デング熱の感染者が新たに1人確認されたと発表した。
 約70年ぶりに国内感染が判明した8月26日以降、感染者は18都道府県で計151人となった。
 同省などによると、新たな感染者は東京の20歳代男性で、9月22日に発症した。入院はしていない。感染場所の一つとみられている外濠(そとぼり)公園(千代田区)に9月中旬、立ち寄ったという。

新潟市民病院で医療ミス 胃ろう患者死亡 indexへ

 新潟市民病院(新潟市中央区)は9月29日、同院で胃ろう手術を受けた新潟市内の70歳代の男性が、胃ろうチューブが抜けたことなどから死亡したと発表 した。同院は「医師の勘違いでチューブの取り扱いを誤った」と説明しており、男性の遺族と補償を協議する方針。
 同院によると、男性は8月22日に胃ろう手術を受けた。同31日午前6時頃、転院先の病院スタッフが胃ろうチューブが抜けていることに気づき、新潟市民病院に救急搬送されたが、腹膜炎などを発症し、同日午後0時半頃に死亡した。
  胃ろうチューブの先端は、蒸留水を注入してバルーン状に膨らませることで抜けない仕組みになっていたが、手術を担当した外科医は、誤って空気を注入。この ため、短期間でバルーンがしぼんでチューブが外れてしまい、チューブから供給していた栄養剤が腹膜内に漏れ出して炎症が起こったとみられる。
  同院は9月5日、医療ミスと確認し、9日に遺族に謝罪。11日に県警に届け出た。外科医は医師歴が10年未満で、今回の方法による胃ろう手術は初めてだっ た。手術に立ち会った看護師が「蒸留水でなくていいのか」と問いかけたが、「エア(空気)で構わない」と空気を注入したという。
 これにつ いて、大谷哲也副院長は「他の手術器具には空気を入れるものもあり、混同してしまった」と説明。片柳憲雄院長も、胃ろうチューブに関するマニュアルがな かったことを踏まえ、「医療材料にはマニュアルを作成して、常に最新のものに更新して再発防止に努める」と話した。同院は「死因の一つとしてチューブが抜 けたことが考えられる」としており、第三者らによる医療事故調査特別委員会を設置し、年内にも検証結果をまとめる予定だ。

エボラ死者、3091人に…加速度的に拡大 indexへ

【ジュネーブ】世界保健機関(WHO)は26日、西アフリカで猛威を振るうエボラ出血熱の感染による死者数が23日時点で3091人に達したと発表した。
 死者数は9月初めに2000人を超えて以降、約20日間で1000人増となり、加速度的に拡大が続いている。
  感染状況が深刻なギニア、リベリア、シエラレオネの3か国の感染者は6553人に上り、3083人が死亡した。このうち、リベリアの死者は1830人を数 え、全体の6割近くを占めた。ただ、9月初めまでに8人が死亡したナイジェリアや、感染者が確認されていたセネガルでは、この3週間、感染者が出ておら ず、封じ込め策が一定の効果を上げているとみられる。
 WHOなどの研究チームは、感染者が11月初めまでに2万人に上り、死者は1万人を超えると推計。感染が広がっている3か国では、感染者の隔離などが追いつかず、死者数の増加に歯止めがかからない状況だ。
 一方、WHOは26日、試験中のワクチンについて、来年1月から投与できるとの見通しを示した。回復患者の血清を投与し、免疫力を高める治療法も推進するという。

東京・隅田公園でデング熱感染…20代女性 indexへ

 厚生労働省などは25日、神奈川県の20歳代女性が東京都墨田区の隅田公園でデング熱に感染したとみられると発表した。
 女性は入院しているが、容体は安定しているという。
  神奈川県によると、女性は今月19日、発熱や全身の筋肉痛などを発症し、24日に入院。県衛生研究所が行った遺伝子検査で、デング熱の感染が判明した。女 性は最近、多数の感染者が確認されている代々木公園(渋谷区)周辺を訪れておらず、14日に立ち寄った隅田公園で蚊に数か所刺されたと話しているという。
 同省によると、25日は東京でも新たに40歳代女性のデング熱感染を確認。先月26日以降、国内感染者は18都道府県で計144人となった。

胃がん8割、ピロリ菌が原因…除菌で30~40%発生減 indexへ

 胃がんの発症につながるとされるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)について、世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機関の作業部会は、全世界の胃がんの約8割はピロリ菌の慢性的な感染が原因とする報告書をまとめた。
 ピロリ菌の除菌で胃がん発生の危険性が30~40%減る可能性があることから、各国がピロリ菌を考慮した胃がん対策をとるよう勧めている。
 報告書では、ピロリ菌は全胃がんの78%、特に日本人に多い、噴門部(胃と食道のつなぎ目の部分)以外の胃がんでは89%がピロリ菌が原因と推定される とした。除菌の効果は、まだ十分なデータがないものの、これまでの研究結果の解析では胃がんの発生を30~40%減少させ、1人が1年にかかる医療費も削 減する効果が出ているとした。
  ピロリ菌対策として、日本では昨年から内視鏡で慢性胃炎と診断された人に除菌治療を保険適用で行うなど、各国の取り組みを紹介。一方で、除菌によって抗生 物質の耐性菌が増える可能性なども示し、「各国が患者数や医療優先度、経済効果の分析をした上で、ピロリ菌の検査と治療戦略を地域ごとに模索することを勧 める」と結論づけた。
 胃がんは日本人が最も多くかかるがんで、死亡者数も肺がんに次ぎ2位。世界では年間約100万人が発症する。

急患“たらい回し"防げ…山口 indexへ

 山口県の宇部・山陽小野田消防局管内で4月、64歳の男性が四つの病院に受け入れを拒否された後、亡くなった。
 救急患者の“たらい回し"をなくす対策が進む一方、こうした悲劇が起きた背景を探った。
 男性の関係者や小野田消防署によると、4月15日午前6時頃、山陽小野田市で、通勤中に具合が悪くなった男性がコンビニ店の駐車場に車を止めて119番。救急車が約15分後に到着し、現場で約20分間の応急処置を受けた。
 救急隊員らは車内から電話で病院に受け入れを求めたが、宇部市と山陽小野田市の計4病院に拒否された。同7時頃、宇部市の病院に運ばれたが、間もなく急性心不全で亡くなった。
 4病院の受け入れ拒否の理由は「(他の)患者処置中」だった。男性の遺族は「早く搬送されていたら……。患者を受け入れられないのなら救急病院の看板を掲げないで」と憤る。
  県などによると、手術や入院が必要な重症患者を受け入れる「二次救急病院」は、県内12の消防局・消防本部管内で宇部・山陽小野田消防局管内が最多の8。 この8病院を含む計9病院には、宇部、美祢、山陽小野田の3市が行う広域救急医療事業運営費の負担金として年計約2900万円が助成されている。
 しかし、2012年に重症患者を搬送した県内4783件のうち、医療機関に4回以上の受け入れ照会を行ったのは、同消防局管内が県全体(62件)の3分の1の20件を占めた。
 山陽小野田市の二次救急病院関係者は「当直医は入院患者の診療に支障のない範囲で、善意で救急患者の対応をしている。24時間、365日の救急患者受け入れは困難」と語る。
 宇部市で5月に開かれた二次救急病院と市との会議では、市内6病院の院長らが救急医療体制の現状と課題について説明。▽非常勤医師が増え、専門外の診療を断るケースが増えた▽医師らが疲弊して辞める「病院崩壊」が怖い――などの現状が報告された。
 日本救急医学会が認定した救急部門で臨床経験豊富な専従医「救急科専門医」は県内に39人(1月現在)しかおらず、救急現場では内科医や外科医が担当し ている。こうした状況を受け、山口大医学部付属病院は、専門以外の急患にも対応できる「総合内科専門医」養成を始めた。
 呼吸困難などの急患を想定した5月の講習には、内科医6人が受講。先進救急医療センター長の鶴田良介教授は「重症事例にはチーム医療が大事。彼らが救急現場に出た時の役に立てば」と語った。
 全国ではこの他、〈1〉重症患者の救急搬送に支障を来している軽症患者搬送を減らす「大人の救急電話相談」(埼玉県)、〈2〉県や大学病院が救急病院や消防機関と連携し、搬送先を調整(岐阜県)――などの取り組みが進められているという。
 宇部・山陽小野田消防局管内では、年間の軽症患者の搬送数は全体の約4割を占める。重症患者の“たらい回し"を防ぐため、市民への啓発や、国、自治体、消防、医療機関との連携強化が求められている。

石巻市立病院職員 62人不足…16年開業予定 indexへ

 2016年7月開院予定の宮城県石巻市立病院の医療職員について、市は18日の市議会定例会一般質問で、確保目標の159人に対し、現状で62人が不足していると明らかにした。
  市病院局によると、確保目標は医師20人、看護師108人、薬剤師や臨床検査技師などの専門職31人。現在は医師8人、看護師75人、薬剤師ら14人の確 保にとどまっており、市は16年4月までに採用するとしている。看護師や薬剤師の人件費は県の地域医療再生基金から支払われるが、医師分は市が負担する。
 同病院には、東北薬科大が新設する医学部の地域医療教育拠点が置かれる予定。市病院局は「備品などの整備は必要だが、病院建設への影響はない」と答弁した。

iPS手術女性が退院 indexへ

 理化学研究所は18日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った世界初の移植手術を受けた70歳代の女性が先端医療センター病院を退院したと発表した。
 女性は大量出血などの合併症もなく、経過は良好という。定期的に通院して検査を受け、移植した細胞のがん化の有無、視力回復の効果などを1年かけて調べる。
 女性は兵庫県在住で、12日に手術を受けた。目の難病「加齢黄斑変性」で傷ついた網膜の細胞や異常な血管を除去した上で、患者のiPS細胞から作った「網膜色素上皮」の細胞シートを右目の奥に移植した。
 女性は「経過を静かに見守ってほしい」とのコメントを出した。

子宮筋腫手術で内視鏡学会、「がんの疑いがないか事前確認を」 indexへ

 子宮筋腫の腹腔鏡手術でがんを広げてしまう恐れがある治療器具について、日本産科婦人科内視鏡学会は、手術前に十分な検査を行い、がんの疑いがないことを確認するよう勧める見解をまとめた。
  この器具は、先端の刃で筋腫を細かく切り、大きな筋腫でも、おなかに開けた小さな穴から短時間で摘出できる。しかし、良性腫瘍である筋腫と判断した腫瘍が がんだった場合、がんを腹の中にまき散らす恐れがあるとして、米食品医薬品局(FDA)が使用を勧めないとする通知を4月に出していた。
  これを受けた同学会の調査では、過去3年間に国内で行われた子宮筋腫手術(約4万6000件)で、想定しなかったがんが術後に見つかったのは33件(0・ 07%)で、FDAの推計値(0・28%)より少なかった。器具を使った後に腹部内にがんが広がったケースは1件だった。
 手術を実施している医療機関の3割が、器具の使用前に、がんが悪化する恐れがあることを患者に説明していなかった。見解では、リスクを含めた情報提供を患者に行って同意を得ることも医療機関に求めた。

「リリカ」重い副作用確認 indexへ

 厚生労働省は、神経障害性の痛みの治療薬「リリカ」(一般名・プレガバリン)を服用した後、劇症肝炎や肝機能障害の重い副作用を発症する症例が確認され たとして、製造販売元のファイザーに対し、二つの副作用への注意を促す記述を薬の添付文書に加えるよう指示した。
 同省などによると、過去3年間に劇症肝炎や肝機能障害の副作用が確認された患者は計11人。このうち、劇症肝炎で死亡した1人と、肝機能障害の7人については、因果関係が否定できないという。
 リリカは、帯状疱疹(ほうしん)後の神経痛や線維筋痛症などの治療に用いられる。

乳幼児施術に安全指針…首ひねり後の死亡問題で indexへ

 子育て支援のNPO法人代表の女性(57)(新潟県)から、首をひねるなどの施術を大阪市淀川区で6月に受けた男児(生後4か月)ら乳幼児2人が 死亡した問題を巡り、大阪府鍼灸(しんきゅう)マッサージ師会(大阪市)は、乳幼児への施術についての指針を作ることを決めた。
 同会会長で、全日本鍼灸マッサージ師会(会員約1万人、東京都新宿区)の副会長も務める伊藤久夫氏によると、乳幼児向けの指針は初めて。年内にもまとめ、全国での活用を図るという。
  医師以外でマッサージなどができるのは、法律で「あん摩マッサージ指圧師」など国家資格保有者と規定。しかし、マッサージの定義は曖昧なため、無資格者に よる乳幼児向けのマッサージ教室は多いとされ、伊藤氏は「国に対し、実態調査やルール作りも働きかけていきたい」と話している。
 指針では、乳幼児に行っても安全な方法を示すほか、施術者が有資格者であることの明示を求め、体のなで方やもみ方も写真を添えて解説。首を強く曲げるなど危険な行為についても注意を呼びかけ、事故の再発防止を図るという。
 問題のNPOの代表は、「乳幼児の免疫力を高める」などとし、自ら考案した施術を行っていたが、国家資格は持っていなかった。
  大阪府鍼灸マッサージ師会は、専門知識を持っていないとみられる代表が、自己流で施術していることを問題視。施術については、事故例などを集めた大人対象 の指針はあるが、乳幼児対象のものはなく、また、「アトピーの症状を改善する」など景品表示法で禁止された効果・効能を宣伝する教室も多いという。
NPO代表「手添えただけ」…ブログに

 代表はNPOのホームページ内のブログ(14日付)で、今回の問題発覚を受け、施術の活動停止と、6月に死亡した男児が施術を受けた淀川区の事務所の閉鎖方針を明らかにした。NPOは東京都内にも事務所を持つが、「閉鎖するかどうするか検討中」としている。
  6月の施術については、男児に対し、体を揺らす運動をすると急に呼吸が止まったと説明。男児の首を90度以上ひねったなどとされる点については、「施術 中、赤ちゃんは90度以上、首を回すことがあり、私は手を添えて支えるだけ。力は加えていない」と施術と事故との因果関係を否定した。
 しかし、「これ以上、関係者に迷惑をかけることはできない」と、活動停止などの理由を記している。

助産師書類送検、緊急時の備えずさん…神奈川 indexへ

 神奈川県相模原市南区の「のぞみ助産院」で、出産後に大量出血した女性を救急搬送の遅れから死亡させたなどとして、女性助産師(69)が16日、業務上過失致死と医療法違反の疑いで書類送検された。
 助産師は医療法に反し、緊急時の嘱託医療機関を決めていなかった疑いもあるが、こうした助産所を行政が把握しきれていない実態も明らかになった。
 県警捜査1課などによると、相模原市中央区の女性(当時33歳)は昨年4月27日午後11時25分頃、同院で次男を出産、直後から腹痛を訴えた。
  出産時の出血は通常、0・5リットルを超えると危険とされるが、女性は1~1・5リットル出血。しかし助産師は、通常のお産でも出る血液交じりの分泌液と 思っていたといい、嘱託医師に相談しなかった。翌28日午前2時半頃、女性の血圧や脈拍を測定して初めて深刻さに気づき、119番したという。
 相模原市保健所などによると、同院は2007年3月、医療法の改正に伴い、届け出内容を変更。助言をもらう嘱託医に東京都内の医師、緊急搬送先となる嘱託医療機関に同市南区の北里大学病院を記載した。
 しかし、読売新聞の取材に対し、この医師は「月に1度往診に行く程度で、緊急の連絡は一度ももらったことがない」と話し、同大病院も「嘱託された覚えはない」と回答。県警は、緊急時の備えがずさんだったことを重くみて、医療法違反容疑でも書類送検した。
 同保健所も今年7月、初めて同院への立ち入り検査を行ったが、それまでは、届け出の記載内容と実態の食い違いを把握できておらず、担当者は「もっと早くに気づき、指導しておくべきだった」と語った。
「もっと早く病院に…」
 女性の夫(37)は取材に対し、「もっと早く病院に運んでくれていれば……。やりきれない思いでいっぱいです」と胸中を明かした。
 「そろそろお産だと思うから、午後2時頃に来て」。助産師に呼び出されたのは本来の予定日の数日前。長男(7)と長女(5)が通う幼稚園の参観日だった。
 女性は助産師の資格を持っていた。「せっかくだから助産所で産んでみたい」。いくつかの候補の中から「のぞみ助産院」を選んだ。夫妻にとって3人目の子供だった。
 夜8時頃、陣痛が始まった。ぬるま湯をはった組み立て式プールの中での水中出産。約3時間半後、元気な産声が響いた。にっこり笑ってみせた女性はしかし、翌朝、不帰の人となった。
 近所のスーパー、水族館、遊園地。「あいつがいてくれたら、もっと楽しかったろうな」。夫は今も、家族で出かける度に面影を探してしまう。
 9月13日は女性の誕生日だった。長男は今春から小学生、長女は新体操を始めた。忘れ形見の次男も、ちょこちょこと走り回っている。夫は、子供たちとケーキを食べながら、「しっかり育てるから。見ていてくれよ」と誓ったという。
 「助産所の存在が悪いわけではない。でも、安心してお産ができる体制を整え、二度とこんな思いをする人が出ないようにしてほしい」と語った。

産後大量出血の女性が死亡、助産師を書類送検 indexへ

 出産後に大量出血した女性に適切な救命措置をせず、死亡させたなどとして、神奈川県警は16日、相模原市南区の「のぞみ助産院」を経営する女性助産師(69)を業務上過失致死と医療法違反の両容疑で横浜地検に書類送検した。
  発表によると、助産師は2013年4月27日夜、同院で同市中央区の女性(当時33歳)が出産する際、多量の出血を知りながら医療機関で治療を受けさせる などの迅速な対応を怠り、翌28日朝、搬送先の病院で出血性ショックで死亡させた疑い。また、医療法で定められた市長の許可を受けず、緊急時の嘱託医療機 関も確保しないで助産院を経営した疑い。調べに対し「母体の重症例を経験したことがなく、認識の甘さが出た」と話しているという。
 捜査関 係者や遺族によると、女性は27日午後11時25分頃、第3子となる次男を出産。次男は無事だったが、女性は直後から腹痛を訴え、助産師は28日午前1時 頃に出血を把握した。子宮収縮剤を投与するなどしたが医師には相談せず、同2時半頃に血圧低下に気づいて119番したという。

妊婦に高血圧薬副作用疑い63件、胎児死亡も indexへ

 独立行政法人・医薬品医療機器総合機構は、高血圧治療薬のアンジオテンシン2受容体拮抗薬(ARB)とアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬を妊娠 後に服用した副作用が疑われる症例が2011~13年度に、妊婦12人と胎児16人に63件あったと発表した。
 薬の添付文書ではいずれも妊婦への投与が禁じられており、同機構は改めて適正使用を求めている。
 副作用の内訳をみると、胎児の死亡例が2件あり、妊婦の羊水過少、早産や胎児の骨形成不全症、腎機能障害なども確認されている。

子宮頸がんワクチン重い副作用1112件報告…研究チーム indexへ

 子宮頸がんワクチンの副作用問題で、難病治療研究振興財団の調査研究チームは13日、約2500件の副作用報告のうち、1112件は、全身の痛みや意識障害など重い副作用だったとする調査結果を公表した。
 研究チームは、ワクチンが発売された2009年12月から今年3月末までに、厚生労働省に副作用として報告があった約2500件のデータを分析した。また、副作用を訴える患者44人を診察した結果、接種後、発症までの期間は平均8.5か月だったとした。
 厚労省の有識者検討会は今年1月、「接種後1か月以上たって発症した場合、ワクチン接種との因果関係を疑う根拠がない」とする見解をまとめている。同省の集計では、重い副作用は617件とされている。

ぜんそく治療、患者負担に…東京 indexへ

 「東京大気汚染訴訟」の和解条項に基づくぜんそく患者への医療費助成について、東京都は全額助成している現行制度を見直し、2018年度以降は上 限を定めて、18歳以上の患者に自己負担を求めることを決めた。上限額は6000円とする方向で検討している。関連の条例改正案を17日開会の都議会に提 出する。
 医療費助成制度は08年に始まり、5年後から見直すことになっていた。原資の大半は国と都、自動車メーカーなどからの和解金で、都によると、今年度中に原資が底をつくという。
 改正案では、17年度までは都予算で全額助成を継続し、18年度以降は自己負担を求める。和解前から実施している18歳未満の患者への全額助成は続けるが、来年度以降、18歳以上の患者について新規の認定を行わない。
 患者らでつくる「東京公害患者と家族の会」は12日、都庁で記者会見し、「助成がなくなれば、現在受けている治療を続けられなくなる。18歳になった後も助成は必要だ」などと訴え、現行制度の継続を求めた。

済生会福島病院、出産取り扱い休止へ…福島 indexへ

 福島市の済生会福島総合病院(病床数216床、井上仁院長)が、2015年4月から産婦人科の出産の取り扱いを休止することが12日、わかった。常勤医を確保できる見通しがつかないためで、4月以降は婦人科での診療のみを行う。
 同病院の産婦人科の常勤医は1人で、15年3月末で定年退職となる。5年ほど前から後任の常勤医を探していたが、見つからなかったため、今年8月に休止を決定していた。出産予定日が15年4月以降の来院者は、他の病院を紹介する。
 同病院の出産取り扱い件数は年間100~120件。東京電力福島第一原発事故後に一時減ったが、現在は事故前の水準に戻っているという。

「周囲明るく見える」iPS網膜移植の患者 indexへ

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いた世界初の手術から一夜明けた13日、先端医療センター病院の栗本康夫・眼科統括部長ら執刀医3人が記者会見した。
 患者は、網膜細胞が傷つく目の難病「加齢黄斑変性」を患う兵庫県在住の70歳代女性。午前8時頃の回診時に声をかけると、「おはようございます」と、元気な声が返ってきた。手術後しばらくは網膜剥離な どを起こさないよう、うつぶせで眠らなければならないため、「あまり眠れず、しんどかった」というが、表情は明るく、「手術前より周りが明るく見えるよう になった。白衣の白さの見え方もきれい」と話したという。ただ、医師団は「異常な血管を取り除いたことで、光を感じやすくなった可能性がある」と話し、移 植の効果かどうかを判断するのは時期尚早とした。
 順調なら1週間前後で退院できる見込み。

カテーテルを動脈に誤挿入、患者死亡…名大病院 indexへ

 名古屋大医学部付属病院(名古屋市昭和区)は12日、2012年8月に静脈に挿入すべきカテーテルを誤って動脈に挿入し、患者が死亡したと発表した。
 医師が静脈と動脈の確認を怠ったとして医療ミスを認め、記者会見で謝罪した。病院側は遺族への賠償を検討している。
  発表によると、患者は愛知県内の60歳代の男性で、脳や脊髄などの神経が炎症を起こす急性散在性脳脊髄炎のため入院。大量の嘔吐(おうと)をきっかけに重 篤な状態に陥り、集中治療室で医師4人が栄養剤を送るためのカテーテルを首にある静脈に挿入しようとしたが、誤って鎖骨下の動脈に入った。誤挿入に気づい た医師が静脈に挿入し直したが、その後、動脈から胸腔(きょうこう)内に大量出血し、出血性ショックで死亡した。

iPS臨床研究へ…理研など 加齢黄斑変性を治療 indexへ

 厚生労働省の「ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会」は8日夜、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って目の難病を治療する臨床研究について、患者へ細胞を移植することを了承した。
 研究は、理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーらが、網膜に異常が起き視界が欠けるなどの症状が出る「加齢黄斑変性」の患者を対象に計画。患者の皮膚の細胞からiPS細胞を作り、網膜の細胞シートに変化させて目に移植する内容だ。
 同日の審査委員会では、高橋リーダーや細胞を分析した京都大の山中伸弥教授から、iPS細胞や移植に使う細胞シートの遺伝子分析の結果が報告された。安全性などを議論した結果、問題ないと判断した。

森・京大教授にラスカー基礎医学賞 indexへ

 米ラスカー財団は8日、京都大学の森和俊教授(56)と、米カリフォルニア大サンフランシスコ校のピーター・ウォルター博士に今年のラスカー基礎医学賞を贈ると発表した。
 森教授は、細胞が機能の損なわれたたんぱく質を蓄積させずに「品質」を保つ仕組みを発見した功績が評価された。
 1945年創設のラスカー賞は米国で最も権威ある医学賞。多くがノーベル賞を受賞することから、ノーベル賞に最も近い賞とも言われる。日本人のラスカー 賞受賞は、2009年の京大の山中伸弥教授に続き、7人目。森教授は同年に、権威あるカナダの医学賞「ガードナー国際賞」も受賞している。
 森教授は酵母を使い、細胞内でできの悪いたんぱく質を検知する分子「Ire1」などを特定。細胞内に不良たんぱく質を蓄積させない仕組み(小胞体ストレス応答)を解明した。

山梨県「百日ぜき」警報取り消し indexへ

 山梨県は5日、中北保健所峡北支所管内が感染症「百日ぜき」の警報レベルに入ったとした前日の発表を取り消すと発表した。
 同支所管内の医療機関が別の感染症と間違った報告をそのまま公表した。実際は同支所管内で百日ぜきの患者はいなかった。県は「誤った情報を流してしまい、おわび申し上げる」としている。
 県健康増進課によると、百日ぜきは、せきが長く続き、生後6か月未満の乳児が重症化しやすい感染症。口の中に発疹ができるなど、4歳以下の乳幼児がかかることが多い、別の感染症の「ヘルパンギーナ」と間違えたという。
 同支所管内の医療機関で8月25~31日にかけ、7人が「ヘルパンギーナ」と診断された。事務員が今月2日、県への報告書で隣合わせにある百日ぜきとヘ ルパンギーナの欄を間違ってデータを記載し、同支所にファクスで報告。この医療機関の医師が5日、報道を知り、事務員に確認してミスが発覚した。
 実際には百日ぜきの患者は今年、県内では4人の報告があるだけ。7人も同時期に1医療機関で確認されることは少ないが、同課では医療機関などに確認しなかった。一方、ヘルパンギーナは、同支所管内では警戒が必要な状況ではないという。
 感染症に詳しい県内の男性医師(44)は「感染症は通常、徐々に患者が増える傾向があり、発表はおかしいと思っていた。間違いと聞いてほっとしたが、県はきちんと検証するなど、データの取り扱いには細心の注意を払うべきだ」と話した。

がん拠点病院4割適さず…来春、指定取り消しも indexへ

 国が指定するがん診療連携拠点病院(全国407病院)の4割が、治療件数などの点で厳格化された新要件を満たしていないことが、国立がん研究センターが今月公開した拠点病院の最新情報を読売新聞が分析し、判明した。
 「拠点」に求められる医療の質を確保できず、来春の指定更新時に看板を返上する病院が多く出る可能性がある。
  拠点病院は、2001年から指定が始まったが、治療実績が少なく、十分機能していない病院があると指摘されていた。このため、厚生労働省の有識者検討会で 昨年議論し、〈1〉がん手術年間400件以上〈2〉化学療法のべ患者年間1000人以上〈3〉放射線治療のべ患者年間200人以上〈4〉常勤病理医の必須 化――など、要件の厳格化が決まった。
 一方、各拠点病院の治療実績(手術、化学療法は4か月分)などは国立がん研究センターのホームページで公表されている。
  その最新情報を分析すると、放射線治療の昨年実績では、109病院(27%)が要件に満たなかった。化学療法(4か月のべ333人以下)では108病院 (27%)。手術(4か月133件以下)では60病院(14%)。常勤病理医不在は38病院(9%)。この4要件のいずれかに達しない項目があるのは 155病院(38%)に上った。
 新要件は、既存拠点には来年度の指定更新時から適用される。10月に今年度実績を提出し、更新の審査を受ける。過疎など地域事情も考慮されるが、著しくかけ離れた病院は指定されない。
  このため、一時的には、がん患者の不安を招く可能性もある。厚労省は、拠点病院の要件に満たなくても基本的ながん診療を行う病院を新たに「地域がん診療病 院」に指定し、近隣の拠点病院と連携させる方針。個々の病院単位ではなく、ネットワークで地域のがん医療の質確保を図る。
 がん診療連携拠点病院  肺、胃、大腸、乳房など主ながんに対し、手術、放射線治療、化学療法などを総合的に提供できる病院。どこでも質の高いがん医療を受けられることを目標に、 交通事情や人口などを目安に設定される「2次医療圏」(現在344)に原則1か所整備することを目指していたが、今も105の医療圏で指定されていない。
【解説】拠点新要件 がん治療地域で連携重要

 がん診療連携拠点病院の4割が厳格化された新要件を満たしていなかった。
 今回の新要件適用で、多くの病院が拠点から外れる可能性があり、既に治療を受けている患者や住民は不安になるかもしれない。
 ただし、実の伴わない病院に、名ばかりの看板を与えても、地域のがん医療の底上げにはならないし、住民に誤解を与えるだけだ。
 国立がん研究センターの若尾文彦・がん対策情報センター長は「難しい手術などに取り組む『拠点』は集約化し、地域の病院は一般的な手術や化学療法などを 担うといった役割分担を明確化し、連携することが重要になる」と話す。地域のがん医療体制は、再構築の時期だ。
 各病院には、患者に対し、自院でできる治療内容、連携する病院の情報など、新たながん医療体制について丁寧な説明が求められる。

体外受精児 27人に1人 indexへ

 日本産科婦人科学会(日産婦)は4日、2012年に国内で行われた体外受精の治療件数と出生児数を公表した。約33万件の治療が行われ、3万7953人が生まれた。
 いずれも過去最高で、年間の全出生数に対する体外受精児の割合は約27人に1人で、約74人に1人だった10年前と比べて大幅に高まっている。
 国内の体外受精児数の累計は、1983年に東北大で初めて生まれて以来、34万1750人となった。
 体外受精は、妻の卵子と夫の精子を体外で受精させ、妻の子宮に戻す不妊治療。晩婚化などで出生数が減る一方で、加齢による不妊に悩む女性が増加している。04年度から治療費の公費助成も始まり、治療を受ける夫婦も増えている。
 調査をまとめた日産婦小委員会委員長の斉藤英和国立成育医療研究センター不妊診療科医長は「体外受精は高額で、女性の心身への負担も大きい。自然に妊娠しやすい年齢で、子どもを産み育てられる環境作りを進める必要がある」と話している。

C型肝炎新薬の服用 他の薬効かない恐れ indexへ

 C型肝炎の新薬を服用した患者の約2割に、複数の薬への耐性ができ、開発の進む同種の薬が効かなくなるリスクがあるとして、日本肝臓学会は、近く改定する治療指針で注意を喚起することを決めた。
  新薬はこのほど発売された飲み薬の「ダクラタスビル」「アスナプレビル」で、2剤を併用する。インターフェロンを使えない患者(約10~20万人)にも有 効なのが特徴だ。ただ、ウイルスに特定の遺伝子変異のある患者が飲むと、他の様々な薬が効かなくなり、今後使える薬が制限される可能性が指摘されている。
 このため学会では、近く改定する治療指針で、肝がんになるリスクが低い患者には、遺伝子検査の結果次第では、現在承認申請中の別の新薬が承認されるまで使用を待つよう勧める。
 今月1日開かれた厚生労働省の肝炎治療戦略会議でも、新薬を専門医の指示の下で適切に使う必要性を確認。委員で武蔵野赤十字病院副院長の泉並木さんは「服用を決める前に、ウイルスの遺伝子変異の有無を調べることが望ましい」としている。

救急車到着遅れ4回目 下関市消防局 場所の照合怠る indexへ

 山口県下関市消防局は2日、119番を受けて8月31日に出動した救急車が現場を間違え、到着が5分遅れたと発表した。
 指令センターの指令員2人が場所の確認を怠ったのが原因という。市消防局の到着遅れのミスは昨年11月以降、4回目。義満猛文局長は記者会見で、「患者や市民に大変申し訳ない」と陳謝した。
  市消防局によると、同日午後6時55分、市内の女性(61)の娘から携帯電話で「母が腹痛と吐き気を訴えている」と救急車の要請があった。指令センターの 男性消防士長(55)が住所を聞き取り、メモしたが、男性主任(48)が位置情報通知システムへの入力を誤り、現場から約270メートル離れた別の住所を 画面に表示。間違いに気づかないまま、救急隊員を出動させた。
 女性宅にいた親族が、救急車が別の場所に向かっているのに気付き、指令センターに連絡したため、間違いが判明した。女性は現在も入院しているが、状態は安定しているという。
 市消防局では昨年11、12月にも計3回、救急出動の現場を間違い、2月に義満局長ら6人を訓告や厳重注意とした。同月にマニュアルを作成し、メモと画面表示を照合するように定めたが、今回は怠っていた。
 中尾友昭市長は「再度、職員に対する教育指導に努めるよう徹底した」との談話を発表した。

産婦人科 23年連続減…昨年、小児科も過去最少 indexへ

 厚生労働省は2日、2013年の「医療施設調査・病院報告」の概況をまとめた。産婦人科・産科を設置している病院数は同年10月1日現在で前年より12少ない1375施設で、23年連続の減少となった。
 小児科がある病院も22少ない2680施設と20年連続で減っており、いずれも過去最少だった。同省は「少子化による患者の減少や、夜間・休日の対応が多い勤務環境、医療訴訟のリスクの高さなどが影響しているのではないか」とみている。
 また、全国の病院数は8540施設で、前年よりも25減少した。一方で、人口10万人あたりの病院の勤務医数は増え続けており、全国平均では前年より 3・2人多い162・3人。都道府県別では、高知県が最多の230・5人、最少は埼玉県の111・7人だった。

重い副作用2579件報告せず…ノバ社 indexへ

 製薬大手「ノバルティスファーマ」は29日、同社が販売する複数の薬で国に報告していない重い副作用症例が少なくとも2579件あったと発表した。
 厚生労働省は薬事法違反の疑いがあるとみて、「精査した上で行政処分を検討したい」としている。
  今回発表された未報告の重症例は、がん治療薬などによるもの。これとは別に6118件の副作用について重症度を調べ終えておらず、件数はさらに増える見通 し。同社は「9月末までに評価を終えたい」としている。同社は29日、副作用情報に関する研修の充実や、社員が把握した情報を上司がチェックする体制の整 備などを盛り込んだ改善計画書を厚労省に提出した。

脳梗塞は12例…糖尿病新薬で副作用 indexへ

 今年4月以降に相次いで発売された糖尿病治療薬「SGLT2阻害薬」で様々な副作用が報告されている問題で、日本糖尿病学会は29日、報告された副作用件数は、今月17日までに脳梗塞12例、低血糖114例、皮膚症状が500例以上に達したと発表した。
 新薬は、腎臓で尿に出た糖を再び取り込むのを妨げる働きがあり、体重を減らす効果がある。一方、服用後は尿の量が増え、体内の水分が減るため、脱水への注意が必要とされている。

心臓病の新生児、本人の血管移植…京都府立医大 indexへ

 京都府立医大は27日、九つの重い心臓病を抱える新生児の手術に成功したと発表した。血管の一部を切り取り、別の血管とつなぎ合わせる「自己血管移植」で、新生児での成功例は世界初という。自分の血管を使っているため拒絶反応のリスクもないという。
 同大学病院の山岸正明教授(小児心臓血管外科)によると、6月18日に帝王切開で生まれた女児。胎児エコー検査で心臓の形がおかしいことがわかり、誕生 後、心臓から出た大動脈が下半身に行く前に途切れる「大動脈離断症」など複数の難病を抱えることが判明した。
 女児は通常と異なる位置に大動脈があり、途切れた大動脈同士を直結すると、気管を圧迫して呼吸できなくなる恐れがあった。このため、新たな血管をつなぐことにした。
  手術は生後23日の7月11日に約6時間かけて実施した。別の心臓病に伴う症状で肥大化していた肺動脈の一部を切除し、長さ10ミリ、直径8ミリの筒状に 縫合。途切れた大動脈の間につないで橋渡しした。29日に退院する見通し。記者会見した女児の母親(37)は「娘はすっかり元気になった。感謝していま す」と話した。

シエラレオネで治療の邦人医師「日本も支援を」 indexへ

 世界保健機関(WHO)の要請を受け、エボラ出血熱の感染が拡大している西アフリカ・シエラレオネで先月、治療に当たった足立拓也・豊島病院感染 症内科医長が27日、BS日テレの「深層NEWS」に出演し、「医療従事者の人手、医薬品が足りない」と、厳しい現地の状況を報告した。
 エボラ出血熱が猛威をふるう西アフリカでは、1400人を超える死者が出ている。足立医長は「日本も人材や物資の供給などを行うべきだ」と話した。

C型肝炎治療薬 副作用3人死亡 indexへ

 厚生労働省は26日、C型肝炎治療薬「ソブリアードカプセル」(一般名・シメプレビルナトリウム)を使用した患者3人が、敗血症や脳出血などの重い副作用で死亡したと発表した。
 同省の指示を受け、製造元のヤンセンファーマは薬の添付文書に、二つの副作用への注意を促す記述を加えた。
 ソブリアードは、従来の薬だけでは治療が難しい患者に対し、他の治療薬と併用して使う。昨年12月に販売を開始、今年5月までに推定約1万5000人が服用した。

小児へ生体ドミノ肝移植…国内初、自治医大など成功 indexへ

  国立成育医療研究センターと自治医大は25日、父親(34)から生体肝移植を受けたメープルシロップ尿症の女児(1)から摘出した肝臓を、プロテインC欠 損症の別の女児(1)に移植する「ドミノ肝移植」を行ったと発表した。小児に対する生体ドミノ肝移植は国内で初めて。移植は6月18日に行われ、2人は順 調に回復しているという。
 メープルシロップ尿症は、アミノ酸を分解する全身の機能が低下する病気。女児は重症で、意識障害など命に関わる恐れがあった。アミノ酸の分解機能の一部を担う肝臓の移植が有効とされ、父親の肝臓の一部が提供された。
  一方、プロテインC欠損症の女児は、血液の凝固を防ぐたんぱく質が肝臓から分泌されず、脳出血などを繰り返していた。両親にも持病があり、脳死患者の肝移 植を待っていた。メープルシロップ尿症の女児から摘出した肝臓は、このたんぱく質を作り出す機能があり、移植に踏み切った。この肝臓を移植された女児が メープルシロップ尿症を発症することはないという。
 父親から娘への移植は自治医大で実施。娘から摘出した肝臓を直ちに同センターに搬送し、プロテインC欠損症の女児に移植された。同センターの笠原群生
むれお
・臓器移植センター長は「今後、移植が必要な子供を救う選択肢を広げていきたい」と話す。

医療機器審査不十分、認証機関業務停止に…厚労省 indexへ

 厚生労働省は18日、不十分な審査で医療機器の認証を行ったとして、登録認証機関「フジファルマ」(静岡県富士市)に対し、薬事法に基づく15日間の業務停止命令を出した。
 2005年の薬事法改正で、民間機関による医療機器の第三者認証制度が始まったが、業務停止命令処分が出たのは初めて。
 厚労省によると、同社は07年に認証機関に登録され、扱う医療機器は約40品目。同省が今年1月と3月に行った立ち入り検査で、審査記録の記載漏れがあるのに、同社が一部の医療機器を認証していたことが確認された。
 同社は昨年3月にも、必要な審査工程を経ずに歯科用インプラントの部材や歯石除去装置など3製品を認証していたなどとして、業務改善命令を受けていた。

AED設置10年、20万台で使用は3・7% indexへ

 市民も使用できるよう、駅などの公共の場に自動体外式除細動器(AED)が設置されてから、今年で10年が経過した。
  設置数は全国で20万台を超えたが、心肺停止状態で救急搬送された人に対する市民の使用率は3・7%(2012年)と低調だ。NPO法人AED普及協会 (埼玉県)は「今でも命の現場にかかわることをためらう人が多い。以前よりAEDの操作が簡単になったが、知られていない。周知徹底が必要だ」と話す。
  総務省消防庁によると、AED設置が始まった翌年の05年の心肺停止による救急搬送数は、全国で1万7882件。このうち、AEDを使用したケースは46 件、使用率は0・2%だった。最新の統計となる12年では、心肺停止による救急搬送数は2万3797件。このうち881件でAEDを使い、使用率は3・ 7%と上昇した。
 また、AEDで電気ショックを受けた患者の1か月後の生存率も26・1%(05年)から41・4%(12年)に向上した。12年の搬送数のうち、AEDで電気ショックを受けなかった人たちの1か月後の生存率は10・3%だった。

歯科医が「顔のしわ取り」急増 indexへ

 歯科医がヒアルロン酸注射による顔のしわ取りに参入する動きが広がっている。
 普通は美容医療だが、歯科診療の延長で口周りのしわ取りも治療メニューに加えるというもの。
 歯科医過剰の時代、他との差別化による生き残り策の一環というが、厚生労働省は「一般的な歯科治療ではない」と困惑、歯科医によるしわ取りの実態について情報収集を始めた。
■医師が一般的
 ヒアルロン酸によるしわ取りは、一般的には美容外科医ら医師が手がける。保険の利かない自由診療で、医師が海外の製剤を個人輸入するなどして行う。
 ところが、輸入代行会社ウェルハート(東京都千代田区)によると、2、3年前から歯科医の注文が増え始め、ゼロだった輸入希望者は今や500人近く。同社が開く歯科医向け美容治療セミナーも、毎月開催するほど希望者が多い。
 7月に都内で開かれたセミナーには、歯科医5人が参加。座学と実技に熱心に取り組んだ。講師の美容歯科医、清水洋利さんは「歯科治療の延長上の選択肢として希望者に行うなら問題ない。技術的にも、麻酔で日常的に注射をする歯科医には向いている」と話す。
 参加した40代の男性歯科医は「入れ歯をインプラント(人工歯根)にして上唇の縦じわが残り、気にする人がいる。美容外科より気軽な歯科で治療できれば喜ばれる」という。
■過当競争
 厚労省によると、医療施設で働く歯科医は2012年時点で全国に約10万人おり、人口10万人当たりの数は40年前の倍ほど。歯科診療所は約6万8000という過当競争の時代だ。
  そもそも顔のしわ取りは、歯科の診療領域なのか。関係者が根拠としているのは、厚労省の専門家会議が1996年、歯科の診療領域の一つに「口唇」を挙げた こと。解剖学的に口唇とは、唇だけでなく口周り全体を指すため、鼻の下やほうれい線のしわ取りも治療対象になるという解釈だ。日本歯科医師会も違法行為に は当たらないとしている。
■眉間や目尻まで
 ただ、関係者によると、眉間や目尻のしわ取りにまで手を広げている歯科医もいる。ヒアルロン酸の注射は、感染で腫れたり、不適切な場所に入って不自然に盛り上がる部分ができたりする心配がある。
 厚労省は「しわ取り目的で顔に注射するのは広く認知された歯科治療ではない。ケース・バイ・ケースで直ちに違法とは言えないが、患者が、このようなしわ取りを受ける時はよく説明を聞くなど、慎重な対応が必要だ」としている。
ヒアルロン酸 体内に元々ある成分で水分や弾力性を保つ作用がある。この成分を使った製剤を皮下に注入すると肌に張りが出てしわが目立たなくなり、効果は数か月続くとされる。

期限切れワクチン接種、5~6歳の3人 indexへ

 山形県尾花沢市は12日、同市新町の市中央診療所で5~7月、有効期限が切れたMRワクチン(はしか風疹混合ワクチン)を、市内の5~6歳の3人に誤って予防接種したと発表した。健康への影響は確認されていないという。
  市によると、ワクチンは有効期限を約1~3か月過ぎていた。7月に接種を受けた女児の保護者が今月5日、母子手帳に貼られた有効期限などを示すシールに気 付き、診療所へ連絡してきた。市が過去1年間の接種記録を調べたところ、別の男児と女児にも期限切れワクチンが使われていた。
 問題のワク チンは、風疹の流行でワクチンの供給不足が懸念された昨年8月に診療所が購入していた。診療所の薬局内の冷蔵庫に保管されていたため、薬剤師は3人の予防 接種の予約が入った際、通常はその都度行う医薬品メーカーへの注文を行わなかった。医師や看護師も、期限の確認などマニュアルで定められた手順を徹底して いなかった。
 市は今後、3人の健康状態について、月に数回のペースで経過観察を続ける。期限切れワクチンは効能が低下することもあるため、2、3か月後には抗体検査を行い、抗体が不十分な場合には再接種を行う。
 市健康福祉課は「不注意により市民に迷惑をかけ、申し訳ない。在庫管理の徹底や、二重、三重のチェック体制で再発防止に努めたい」としている。

大病院「紹介状なし」受診の負担増…厚労省 indexへ

 厚生労働省は、高度な医療を担う大病院を、紹介状なしで受診する患者の費用負担を引き上げる方針を固めた。
 軽症の患者の治療は診療所や中小の病院が担い、大病院は重症患者の治療に専念しやすくする狙いがある。厚労省は、社会保障審議会の部会で、対象となる大病院の基準や引き上げ額などを協議し、来年の通常国会に関連法案を提出したい考えだ。
 厚労省は引き上げ方法について、〈1〉初診料(2820円)や再診料(720~730円)の患者負担を、現行の1~3割から全額に上げる〈2〉診療を受けて患者が負担する通常の費用に加えて定額の負担も求める――などの案を検討している。
 現行でも、200床以上の病院は独自の判断で紹介状なしの患者に追加の自己負担を求められる。ただ、対象の約2700病院のうち、追加負担を求めているのは半数弱で、外来患者の6~8割は紹介状を持っていない。

人工心肺使わず、高齢者の心臓バイパス手術急増 indexへ

 心臓の主要な手術の一つ、冠動脈バイパス手術を昨年受けた8人に1人が80歳以上の高齢者だったことが日本冠動脈外科学会の調査で分かった。
 割合は10年前に比べ倍増した。体に負担をかけない手術法の普及が背景にある。20日発行の同学会英文誌に掲載する。
  冠動脈バイパス手術は、心筋梗塞や狭心症などに対する手術。調査は心臓手術をしている442病院を対象として、330病院(75%)から回答を得た。集計 によると、昨年行われた初回手術9187例(緊急を除く)のうち、80歳以上は1130例(12・3%)、70歳以上は4850例(52・8%)。 2003年は80歳以上が6・2%、70歳以上が44・3%だった。
 駿河台日本大学病院の折目由紀彦心臓血管外科部長は「心臓を動かしたままで行うオフポンプ手術が普及してきた。脳梗塞などの心配が低く、回復も早いため、高齢者にも広がった」と話す。

「死亡状態」と判断の女性、うめき声上げ脈も… indexへ

 青森消防本部は1日、青森市内に出動した中央消防署の救急隊員が、生きている50歳代女性を死亡と判断して引き返したため、搬送が約14分遅れたと発表した。
 女性は脳疾患で入院している。
  発表によると、7月31日午前、「数日前から女性の姿が見えない」と付近住民から通報を受けた県警青森署員が、自宅で倒れている女性を発見。午前9時14 分に119番した。同20分に救急隊員3人が到着したが、男性救急隊長(41)は体に触れて冷たいと感じたため、「死亡状態」と判断。呼吸や脈拍は確認せ ず、署員に引き継いで現場を離れたという。
 ところが、同30分に同署から「うめき声を上げ、脈もある」と再度の119番を受けた。同34分に救急隊員が戻り、女性を搬送した。

ノバ社に業務改善命令…副作用の報告義務違反 indexへ

 厚生労働省は31日、白血病治療薬の重篤な副作用情報を報告しなかったなどとして、製薬大手「ノバルティスファーマ」(東京都港区)に対し、薬事法に基づく業務改善命令を出した。
 国への報告徹底や、社員教育などの再発防止策をとるよう求めた。厚労省によると、副作用の報告義務違反で行政処分するのは初めて。
 ノバ社は、今回の問題とは別に、高血圧治療薬「ディオバン」の臨床研究データ改ざん事件を巡っても薬事法違反(誇大記述・広告)で起訴された。厚労省の担当者は、この事案についても「公判を見つつ、厳正に対処したい」としている。
 今回、ノバ社が国への報告を怠ったのは、2種類の白血病治療薬に関する16人(21件)の重い副作用。薬の添付文書に記載がないB型肝炎など、未知の副 作用3例も含まれていた。同社は、これらの副作用情報を把握しながら、最長で約4年2か月、国に報告しなかった。

祖父の精子で誕生、医師が詳細を発表 indexへ

 夫の実父の精子による非配偶者間体外受精で118人の子どもが生まれたとの結果をまとめた諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘院長 は31日、東京都内で開かれた日本受精着床学会で詳細を発表した。この治療を受けた夫婦の約4分の1は、それ以前に匿名の第三者の精子提供による人工授精 の治療を受けていたことを明らかにした。
  根津院長によると、1996年11月から昨年末までに、夫に精子がなく、実父(50歳代~70歳代)の精子と妻の卵子による体外受精を行った夫婦110組 中27組は、他施設で第三者の精子を妻の子宮に注入する人工授精を受けたが妊娠せず、同クリニックの治療により、21組が子どもを出産した。

児童・園児、4人に1人が虫歯…鼻などアレルギー増加傾向 indexへ

 岡山県教委は、県内の幼稚園児から高校生までを対象に、疾病・異常の状況などをまとめた2013年度の「学校保健概要」を発表した。
 幼稚園児、小学生で最も多い疾病・異常は「虫歯」。歯磨き指導などで割合の縮小傾向は続く一方、治療率は伸び悩んでおり、担当者は「小児医療費の補助制度などの紹介や啓発に力を入れたい」と話している。
 学校保健概要は、子どもたちの健康状態を把握する目的で毎年度実施。県内全ての国公私立幼稚園、小学校、中学校、高校と特別支援学校で調査している。
 定期健診で医師などにより、疾病・異常と診断された割合を示す「被患率」では、小学校(406校)で最多となった「虫歯」は26・4%。「裸眼視力1・ 0未満」(19・9%)、慢性鼻炎や扁桃肥大などの「鼻咽頭疾患」(17・3%)が続き、幼稚園(315園)も同順だった。
 中学校(174校)では「裸眼視力1・0未満」(23・2%)がトップで、「虫歯」(17・5%)は3番目。高校(95校)は「矯正視力1・0未満」が最多となり、「虫歯」(19・9%)が続く結果となった。
  虫歯については、中学1年生(12歳児)1人当たりの永久歯虫歯数で、2004年度の1・70本(全国1・91本)から、13年度は0・88本(同1・ 05本)と減り、学校種別の被患率も低下している。しかし、治療を勧められ、その年の12月1日までに治療した割合は、幼稚園児、小学生で60%台半ば、 中高生では40%強にとどまっている。
 一方、学校医や保護者への調査で、学校の把握したアレルギー疾患の児童生徒の割合は、花粉症といった「鼻アレルギー」が、03年の9・5%から、13年には14・7%と大きく増えたほか、目や皮膚などのアレルギーでも増加傾向だった。
 県教委保健体育課は「今後も推移を注意深く見守り、健康維持に向けた教育や治療・対策に役立てたい」としている。

社員の糖尿病、企業の3分の1が把握せず indexへ

 従業員の糖尿病の有無を企業の3分の1が把握しておらず、健康診断で受診を促す基準にもばらつきがあることが、中部ろうさい病院(名古屋市)の中島英太郎・糖尿病・内分泌内科部長らの調査でわかった。
 調査は2012年6~12月、全国9195社に糖尿病対策についてアンケート方式で聞き、810社から回答があった。
 従業員が糖尿病かどうか把握していない企業は36・5%だった。企業の規模が小さくなるほど把握率は下がる一方、糖尿病の有病率は高くなる傾向があった。
  健康診断で血糖値の状態をみるヘモグロビンA1cの値について、健診施設の基準とは別に、社員の健康指導のために独自の判定基準を設けている企業が190 社あったが、内容はまちまちだった。例えば、52・6%の企業がA判定(異常なし)の上限を5・5~6・1%の間に設定する一方、同じ値の幅の間にD判定 (要受診・要再検査)の下限を設定している企業も41・6%あった。B判定(軽度異常)、C判定(要経過観察)の社員に、4分の3の企業は特別な対応をし ていなかった。
 中島部長は「健康診断が糖尿病の予防や悪化防止に十分役立てられておらず、判定基準も統一されていない。治療と就労の両立支援マニュアルを作成し、企業の対策を促していきたい」と話している。

祖父の精子で誕生118人…体外受精、17年間で indexへ

 夫婦以外の卵子や精子を使った非配偶者間体外受精の実施を国内で初めて公表した諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町、根津八紘院長)は、これま でに夫婦79組が、夫の実父から精子提供を受け、118人の子どもが誕生したとする結果をまとめた。31日、東京都内で開かれる日本受精着床学会で発表す る。
 同クリニックによると、1996年11月から昨年末まで、夫に精子がない110組が、夫の実父(50歳代~70歳代)の精子と妻の卵子で体外受精をした。子どもを得た79組中19組が2回以上出産した。移植1回当たりの妊娠率は38%だった。
  非配偶者間体外受精に関する法規定はないが、日本産科婦人科学会(日産婦)は体外受精を夫婦間に限っている。一方、厚生労働省審議会は2003年、匿名の 第三者からの体外受精を認める報告書を出し、兄弟姉妹らからの提供は人間関係が複雑になりやすいなどの理由で当面は認めないとした。
 匿名の第三者の精子を妻の子宮に注入する非配偶者間人工授精では、国内で49年以降、1万人以上が生まれたとされる。日産婦も97年に追認している。
 国内の多くの医療機関では、精子がない夫婦が子どもを望む場合、選択肢として非配偶者間人工授精と養子縁組のみを示している。
 根津院長は「身内からの提供を望む夫婦は少なくない。カウンセリングを重ねて、慎重に行っている。血のつながりがあった方が、提供者家族も含めて良好な家族関係を築きやすい、出自が明確になるという面もある」と話している。

C型肝炎薬で15人副作用死…「田辺三菱」製 indexへ

 2011年に発売されたC型肝炎治療薬「テラビック」(一般名・テラプレビル)を服用した患者の4人に1人に全身の皮膚炎や肝不全などの重い副作用が起き、15人が死亡していたことが、製造販売元の田辺三菱製薬(大阪市中央区)などへの取材でわかった。
 発売前の臨床試験(治験)中から副作用の危険性が指摘され、重い肝硬変や肝臓がん患者は処方の対象外となっていた。しかし死亡例の多くで医師の判断で対象外の患者に投与されていた。
  同社によると、テラビックは11年11月の発売以降、昨年9月までの約2年間に1万1135人が服用、23%の2588人に重い副作用症状が出た。うち 13人が肝不全や皮膚炎、腎障害などで死亡、さらに今年2月までに2人が亡くなった。いずれも薬の服用との因果関係が疑われた。
 テラビックは、治験中に重い副作用が頻発したため、厚生労働省は市販にあたり、同社に第三者委員会の設置を指示。同委による分析で対象外の患者への使用が判明した。
 同委の報告書によると、ある高齢女性は、過去に肝硬変と診断されていたが、医師が処方を開始。食欲減退などの症状が出たが、同じ治療を約3か月間継続。肝炎ウイルスは検出されなくなったものの、急性肝不全で死亡した。
 60歳代の男性患者は服用開始直後に皮膚の発疹などが現れ、いったん治った。ところが50日目に再発した後は悪化の一途をたどり、全身の皮膚がただれて亡くなった。同委は、副作用の兆候を見逃した疑いがある例と判断した。
 この薬は皮膚の状態を注意深く観察すれば、副作用の悪化が防げることが治験で判明。厚労省は処方可能な医療機関を肝臓病と皮膚病の専門医がそろう約800施設に限っていた。
 同社によると、死亡例以外でも、服用した人に副作用の兆候である皮膚の症状が現れたのに、専門医が重症化を防ぐ措置を十分に行わなかった例も目立ったと いう。薬の副作用に詳しい「医薬品・治療研究会」代表の別府宏圀医師(75)は「専門医に限る対策が根本的な副作用対策にならないことは、過去の副作用被 害でも明らかだ。今回の問題点を検討し、警鐘とすべきだ」と話している。
 テラビック 肝炎ウイルスの増殖を抑える飲み薬(1日3回)で、免疫を活性化させる治療薬の注射(週1回)と、抗ウイルスの飲み薬(1日2回)と併用する。昨年12月、副作用が少ない新たな治療薬が発売され、テラビックの使用量は減少傾向にある。

東海大病院で放射線照射ミス、7人に健康被害 indexへ

 東海大学医学部付属病院(神奈川県伊勢原市)であった子宮がんなど女性患者約100人に対する放射線治療の照射ミスで、同病院は24日、うち7人に照射ミスが原因とみられる健康被害が起きたとする外部調査結果を発表した。
  調査したのは、日本放射線腫瘍学会、日本放射線技術学会、日本医学物理学会の3学会。報告書などによると、2007年7月~13年11月に同病院で行った 放射線治療で照射すべき位置から約3センチずれたところに誤照射していた。7人には、尿道狭窄(きょうさく)や尿道潰瘍などの症状が出た。うち5人は8か 月~1年で治癒したが、2人は現在も通院中という。
 報告書は、放射線源(イリジウム)を誘導するカテーテル(管)の長さが、挿入器具全体より3センチ短かったのに、放射線技師が同じ長さと思いこみ照射したために起きたとしている。同病院は、患者に対する補償について「症状に応じて検討する」としている。

「ヘルパンギーナ」東京都が流行警報…高熱や口内に水疱 indexへ

 東京都は17日、ウイルス感染症「ヘルパンギーナ」の流行警報を発令した。
 都福祉保健局によると、7~13日に都内264の医療機関から報告された患者数は平均7.13人となり、発令基準の6人を超えた。ヘルパンギーナは6歳 以下の子供に多い感染症で、高熱や口内の水疱などの症状が出る。飛沫感染するため、都は感染者に対してはマスクの着用や、こまめな手洗いなどを呼びかけて いる。

スマホでCT画像共有…15病院で導入予定 indexへ

  スマートフォン(スマホ)やタブレット端末のアプリを使ってCT(コンピューター断層撮影)などの画像を医師らが共有し、情報交換するシステムをNTTド コモなどが8月4日から提供する。慈恵医大病院(東京都港区)など東京、千葉、神奈川、静岡、大分の計15病院が導入予定で、専門医の判断が必要な夜間の 緊急対応や、過疎地の医療支援に役立つと期待される。
 同大の村山雄一教授ら脳神経外科医が提案し、ドコモと、システム開発会社スキルアップジャパン(東京都渋谷区)が開発を進めてきた。アプリはソフトバンクモバイル、KDDI(au)のスマホ、米アップルのiPhone(アイフォーン)でも使える。
 病院で撮影した画像をクラウドのコンピューターを通じて閲覧。院外にいても、手術中の映像を同時に見て指示を送ることができる。治療に関わる医師、看護 師などでグループを作り、メッセージを送るタイムライン機能も付けた。患者のプライバシー保護のため氏名は表示しない。
 20台のスマホで情報を共有する場合、運営コストは年間約120万円。病院内に専用サーバーを設置する必要がないため、低コスト化が可能になった。

小児禁止鎮静剤 20施設で…307か所調査 indexへ

 東京女子医大病院(東京都新宿区)で、集中治療室での人工呼吸中の小児患者に 投与が禁止されている鎮静剤「プロポフォール」の投与後に小児患者12人が死亡した問題に関連し、全国の少なくとも20の医療施設が同様の条件下でこの鎮 静剤を使っていたことが13日、日本集中治療医学会の調査で分かった。この薬の全国的な使用実態が明らかになったのは初めて。
 調査は今年3月から5月にかけて、同学会の専門医研修認定施設や小児集中治療室がある病院など計307か所を対象に実施。106施設(回答率35%)から回答があった。
  それによると、約2割に当たる20施設が、禁止されている条件下でプロポフォールを使ったことがあると回答。このうち、年齢や体重によって使用基準を定め ているのは4施設、投与時間の上限(6~24時間)を設定しているのは4施設だった。使用時に親など親権者から同意を得ているのは3施設(15%)にとど まった。
 この薬を長時間使うと、骨格筋の細胞が溶け出すことによる痛みや脱力、心停止などの「プロポフォール症候群」を発症する危険性があり、海外では小児の死亡例も確認されている。
 今回の調査では3施設が、プロポフォール症候群か、そうと疑われる事例があった、と回答。死亡例はなかった。
 同学会は近く研究班を発足させ、禁止された条件下でプロポフォールを使うことの妥当性や安全性などを検証する。

使用の是非 割れる意見

 薬の添付文書で使用禁止が明記されている「禁忌薬」が、医療現場で使われることは少なからずある。法律で禁じられているわけではなく、使っても罰則はないからだ。
プロポフォールは鎮静効果がすぐに表れ、切れると短時間で目が覚める特徴から、大人の患者を中心に現場では広く使われている。専門医の間でも、「小児には絶対に投与しない」「適切に使えば有用」などと意見が分かれる。
 ただ、仮に使用する場合、親への十分な説明や同意が欠かせないが、今回の調査で事前に同意を得たのはわずか3施設。薬を慎重に使うことへの意識が希薄だと言わざるを得ない。
死亡者が出た以上、「禁忌」とされる薬の使用が医学的に許容されるのかどうか、患者や家族の不安を払拭するためにも、学会は専門家としての見解を早急に明示する必要がある。


小児禁止鎮静剤、鹿児島市立病院が9人に投与 indexへ

 鹿児島市立病院は8日、人工呼吸中の小児患者への投与が禁止されている鎮静剤「プロポフォール」を2010~13年、重篤の小児患者9人に投与していたことを明らかにした。
 9人のうち3人は投与後に死亡した。いずれも搬送された時点で脳や全身に致命的な損傷を受けており、同病院は、投与と死亡との因果関係はないとしている。
  プロポフォールは劇薬で、全身麻酔などに使われる。同病院によると、9人は7~14歳で、交通事故での頭部外傷や感電による全身やけどなどで搬送されてき た。「患者の術後の覚醒が早い」などと判断し、集中治療中に5時間半~2週間程度使用した。亡くなったのは9歳の2人と14歳で、いずれも搬送時から重篤 な状況だったという。
 東京女子医大病院(東京都新宿区)で2月、首の腫瘍の手術を受けた男児が人工呼吸中に大量に投与されて死亡したことなどを受け、院内調査を行って判明し た。調査の結果、人工呼吸中の小児患者への投与が禁止されていることを把握せずに使用したケースもあったという。

高齢糖尿病患者、3割にうつ症状 indexへ

 高齢の糖尿病患者の3割にうつ症状があり、症状が重いほど合併症も多い傾向にあるという調査結果を、東京女子医大糖尿病センターの石沢香野助教らがまとめた。
 2012年から、外来の糖尿病患者約1万人を追跡調査。同年にアンケートに答えた65歳以上の高齢患者4365人を分析し、患者の30・6%に当たる1334人にうつ症状があった。
 うつ症状がない人、軽症のうつ、中等度以上のうつと3段階に分け、合併症との関連を調べたところ、うつ症状が重い人ほど、視力低下や神経障害によるしびれ・痛み、自律神経障害が多くなる傾向にあった。また、過去1年間の入院回数も多くなっていた。
  調査責任者の内潟安子・糖尿病センター長によると、老化による身体機能の低下と共に、うつが原因で運動量などが減り、血糖の値が悪くなって合併症を起こす パターンと、合併症の影響や不安からうつ症状が出るパターンの双方向からの影響があるとみられる。内潟センター長は「精神科や心療内科と連携するほか、薬 剤師や看護師、栄養士、理学療法士らを総動員して心身の健康を守るべきだ」と話している。

子宮頸がん、ワクチン副作用176件 indexへ

 子宮頸がんワクチンの接種後に体の痛みなどの重い症状が出ている問題で、厚生労働省は4日、検査しても原因が分からない痛みや運動障害などの副作用が、 2009年12月から今年3月末までに176件報告されていることを、同日開かれた有識者検討会で報告した。
 同省によると、医療機関やワクチン製造販売業者が報告した重い副作用は617件あり、脳脊髄炎や、アレルギー反応による呼吸困難、じんましんなどが確認されている。
 このうち、原因となる病気が特定できないのに、広範囲に広がる慢性的な痛みや手足の動かしにくさなどの症状が表れ、子宮頸がんワクチン接種後の副作用として特に問題になっている症例は176件だった。
 子宮頸がんワクチンは、昨年4月から国が接種を勧める定期予防接種となったが、重い副作用の報告が相次いだ。厚労省は同年6月にワクチンの接種を積極的に勧めることを中止しており、この日の検討会でも引き続き議論を続けることを確認した。
 一方、昨年6月以降の接種者は月に約2000人で、同省は今後、接種後の危険性や注意点などについてまとめた手引を作成し、接種を受ける子どもや保護者などに情報提供を進める。

接種後の痛み、治療で7割改善…子宮頸がんワクチン indexへ

 子宮頸がんワクチンの接種後に激しい痛みなどの重い症状が出ている問題で、厚生労働省研究班(代表・牛田享宏愛知医大教授)は、治療を続けた患者の約7割が改善したとする調査結果をまとめた。4日の有識者検討会で公表する。
 研究班の医師が所属する全国11病院を受診した患者を調べた。治療を続けた70人の患者のうち、「痛みが良くなった」患者は47人で約7割を占めた。「変わらない」は22人、「悪化した」は1人だった。
  研究班によると、症状が重い患者は「痛みが増すのではないか」といった不安や、日常生活でストレスを抱えていることが多いという。治療は、カウンセリング やストレッチの指導が主で、心身の不安や緊張を和らげる。牛田教授は「不安の軽減が、症状の改善につながる」と分析している。

脳卒中から5年内で死亡リスク10倍 indexへ

 脳卒中の発症後5年以内に自殺や交通事故などで死亡するリスクは、発症していない人に比べ、10倍高いことが国立がん研究センターなどの調査で分かった。
 うつ状態になったり、体に障害が残ったりするのが原因と考えられる。海外の研究で、脳卒中の発症後1年以内はうつ病のリスクが高まることが知られているが、自殺、事故死に関する調査は初めて。
  研究グループは、岩手、長野、沖縄県など全国9か所に住む40~69歳の約9万3000人を平均17年にわたり追跡調査した。そのうち脳卒中を発症した約 4800人を調べた。その結果、発症後5年以内に17人が自殺し、34人が交通事故や転落などで死亡していた。脳卒中になっていない人に比べると、自殺、 事故で死亡するリスクは10倍高かった。脳卒中発症の5年後以降では、自殺、事故死ともリスクは変わらなかった。
 データを分析した国立精神・神経医療研究センターの山内貴史研究員は「リハビリで障害を減らすとともに、患者の心のケアが大切だ」と話している。

女子選手の疲労骨折防げ…月経異常2000人調査 indexへ

 2020年東京五輪・パラリンピックに向け、女子選手の体調管理を支援しようと、日本産科婦人科学会と国立スポーツ科学センター(東京都北区)は、女子選手2000人を対象に月経異常の調査を始めた。
 激しい練習で月経が止まり、骨を強くする女性ホルモンの分泌が低下し、疲労骨折する選手が多いためで、調査を基に対策を講じる。
 対象は日本代表約300人と大学生約1700人。月経周期、競技に支障が出る症状、疲労骨折の経験のほか、婦人科受診歴、月経の時期を調整する低用量ピルを使っているかも尋ねる。
 また、指導者約300人にも、教え子の月経に対する意識や対応を聞く。結果は今年中にまとめ、来年は、疲労骨折のリスクが特に高い高校生への調査を検討している。
 10歳代の日本代表選手を対象にした過去の調査では、無月経の選手は、月経のある選手より疲労骨折を経験した割合が3・5倍高かったとの報告もある。無月経が続くと不妊のリスクも高まるが、現状では、女子選手に適した治療指針もない。
 疲労骨折の痛みに悩まされた元マラソン選手の増田明美さんは「若い有望選手を教える指導者が、無月経による健康への影響を認識するきっかけになれば」と話している。