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輸血で感染、女性重症 パルポウイルス昨年10月、製剤投与

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東京都内の病院で昨年10月に輸血を受けた女性(29)が、貧血を悪化させるパルボウイルスB19に感染し、今も重い症状が続いていることがわかった。輸血血液から同ウイルスが検出されたことなどから、輸血が原因とみられる。日本赤十字社は、輸血による同ウイルス感染では国内初の重症例とし、全国の医療機関に注意を呼びかける。入院先の担当医の説明によると、女性は貧血を起こし昨年10月に来院、輸血用血液の赤血球製剤を投与された。しかし、症状が悪化。赤血球のもとになる細胞を破壊するパルボウイルスB19の感染が疑われ、日赤が献血血液を調べたところ、同ウイルスが検出された。
女性は免疫力が落ち、今もウイルスが血液中に残っている状態。今年9月に退院したが、10月から再入院している。
日赤は97年から献血時の同ウイルスの検査を導入したが、感度に限界があり、すり抜けることもあり得る、としている。同ウイルスの感染で輸血が疑われるのは00年に1件、02年に3件、それぞれ医療機関から報告されているという。
日赤は「貧血患者に輸血する際は、このウイルス感染にも注意し経過を見ることなどを医療機関に求めたい」としている。
パルボウイルスB19
ほおや手足に赤い発疹ができる「りんご病」(伝染性紅斑)の病原体として知られる。主にせきやくしゃみによるしぶきで感染する。ほとんどは自然に治るが、妊婦が感染すると流産や死産の原因になることもある。貧血の患者を重症化させる恐れもある。

狭心症、注射で血管再生 岐阜大教授ら成功「患者負担少なく

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手術が難しい重度の狭心症患者に対し、骨髄中の幹細胞を増やす薬物を注射して心臓の血管を再生させることに、岐阜大大学院再生医科学循環器内科の藤原久義教授、荒井正純講師、鈴木幸二医師らの研究グループが成功した。同グループは12日、米国・オーランドで開かれている米国心臓協会の年次学会でこれらの成果を発表した。
この薬は顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)。心臓の血管が狭まり、血流か悪くなる狭心症は、日本人の心臓病の中で最多。年間十数万人が、カテーテル(細い管)を入れて風船のようなもので血管を広げたり、バイパス手術をしたりする治療を受けている。
血管などが壊れると、骨髄から血液中に流れ出ている幹細胞がそこで血管細胞に変化する。藤原教授らは、G−CSFによって増殖した幹細胞で血管再生を促進させ、狭まった血管の周辺にある毛細血管を増やすことをめざした。
昨年から岐阜大付属病院で臨床試験を実施。手術が難しい重度の狭心症患者15人にG−CSFを注射したところ、ほとんどの患者で血流が回復し、症状の改善が確認されたという。
再生医療に詳しい関西医科大再生医学難病治療センターの池原進センター長は「幹細胞を薬で増やす方法は、患者の負担が少ない。今後、効果を見極めていく必要がある」と話している。

細菌汚染血液、逆流の恐れ 真空採血管で厚労省指導へ

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血液検査で使う「真空採血管」という容器が細菌に汚染され、採血時に患者の血筒内に汚染血液が逆流して敗血症などを起こす恐れがある、として厚生労働省は12日、メーカーに対し、添付文書を改訂し、血液が逆流しない採血方法を病院などに徹底するよう指導する方針を決めた。採血管を取り外すまで、上腕部を圧迫するバンドを緩めないようにすれば、逆流しないという。同省は今後、段階的に滅菌製品に切り替えるよう指導していく方針だ。真空採血管は血管に刺した注射針から浸透圧で自然に血液が入る容器。同省などによると、欧米では全製品が滅菌処理されているが、日本では年間使用数約8億本のうち、3割が滅菌処理されていないという。

架空老人ホーム詐欺 医師に懲役6年の判決

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架空の会員制老人ホームの開設話をもちかけて福島県いわき市の医師の妻から3億900万円をだまし取ったとして詐欺罪に問われた東京都新宿区の医師河野公信被告(58)の判決が12日、東京地裁であった。川口宰護裁判長は「計画ば当初から資金的裏付けがなく、1億1600万円を私的に流用しており事業を進める意思がなかった」と認定して懲役6年(求刑懲役8年)を言い渡した。
判決は、「昭和天皇の遣産を相続した皇族から多額の出資を受けるなどという被告の弁解は信用できない」と指摘、「計画には実現可能性があり、詐欺ではない」という被告
側の無罪主張を退けた。

奥羽大地位確認訴訟 控訴審で和解

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奥羽大(福島県郡山市)の歯科医師国家試験の漏洩(ろうえい)疑惑をめぐり、学長職を解任された保母須弥也(すみや)氏(66)が大学を運営する学校法人晴川学舎を相手に地位確認を求めた控訴審で、双方は12日、解任を撤回した上で保母氏は退任するなどとした仙台高裁の条件を受け入れ、和解した。

東北大学長ら告発状 仙台地検が受理

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東北大の吉本高志学長をはじめ教授ら10人が、医師派迫先の釜石市民病院(岩手県釜石市)から現金計2300万円を受け取っていた問題で、仙台地検は12日、仙台市民オンブズマン(小野寺信一代表)が提出した吉本学長らに対する収賄容疑の告発状を受理した。

生体小腸移植7例目、東北大で

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東北大病院(仙台市青葉区)は12日、先天性腸機能不全の10代の少年に、親族から摘出した小腸を移植する生体部分小腸移植を実施したと発表した。国内では京大、大阪大に続いて7例目で、東北大では初めて。

束京医科大ミスを否定

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カテ−テル事故東京医科大学病院(臼井正彦・病院長)で、心臓近くの静脈に挿入するカテーテルがうまく入らす、女性患者(51)が脳死状態になった事故で、同病院は11日午後、記者会見し、「患者さんの家族に2度おわびしたが、避けられない事故だった。医療過誤ではなく、病院の手順に落ち度はないと考えている」と医療ミスを否定した。
患者は今年8月、直腸がんの手術を受けた。その際、血菅を破ったカテーテルから点滴液が漏れ出し、肺の周囲にたまって圧迫。呼吸ができず、脳死状態に陥ったとみられる。

医師の過失認める小6医療過誤最高裁判決

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兵庫県川西市の内科・小科科医院で88年、当時小学6年だった男性に対する初期診断ミスで重い脳障害が残ったとして、この男性(27)が院長に6851万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第三小法廷(浜田邦夫裁判長)は11日、請求を退けた一、二審判決を破棄し、審理を大阪高裁に差し戻す判決を言い渡した。
訴えられたのは、川西市の「上月医院」の上月清司院長。同小法廷は医師の過失を認めた上で、「適切な医療機関への転送の遅れと後遺症との因果関係が証明できなくても、重大な後遺症が残らずに済んだ相当の可能性が証明されれば、医師の判断ミスは不法行為となる」とする初判断を示した。
一審・神戸地裁、二審・大阪高裁はいずれも「医療ミスはなかった」として請求を退けたが、同小法廷は「院長は総合病院への転送を決めた前日の段階で急性脳症を含む重大な病気にかかっている可能性を認識できたのに適切な治療を怠った過失がある」と判断した。
一、二審判決によると男児は88年9月、頭痛と発熱を訴えて来院した。
院長は「上気道炎」「右頸部リンパ腺炎」と診断し、アスピリンなどを処方。2日目、診断名に「扁桃腺炎」を加え、薬を2倍に増やした。その後男児は大量に嘔吐。5日目も咄吐が続き、この日だけで3度も来院したが、院長は「急性胃腸炎及び脱水症状」と診断し、点滴をして帰宅させた。
ところが、6日目に容体が急変して総合病院に緊急入院。5カ月後に「原因不明の急性脳症」と診断された。運動機能に重い障害が残り、現在も日常生活全般で常時介護が必要な状態となった。

カテーテル誤挿入脳死状態 東京医科大病院 50代女性患者に

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東京医科大学病院(東京都新宿区)で今年8月、直腸がんの手術を受けた女性患者(51)が、心臓に通じる太い静脈(中心静脈)に入れる点滴用カテーテルの挿入ミスから、脳死の状態に陥っていたことが11日、分かった。病院側は医療事故であることを認め、家族に事情を説明したという。
都医療安全課や病院などによると、がんの手術は8月4日に行われた。手術の際、栄養剤や抗生剤を投与するため、麻酔科医が首の右側の頸静脈から、点滴用のカテーテル(直径約1.5ミリ)を血管内に挿入した。
手術翌朝、女性が意識不明の重体に陥り、心肺停止状態となった。すぐに蘇生措置が取られ、心臓は動き出したが、意識は戻らなかった。
医師らが調べたところ、カテーテルの先が静脈を突き破っており、点摘の輪液が胸の中に漏れ出していた。この輸液が胸にたまって肺を圧迫、呼吸ができなくなり、低酸素脳症に陥ったとみられる。
患者が重体に陥った当初、医師らは脳硬塞などを疑ったが、患者のCT(コンピューター断層撮影)の結果、初めてミスをしていることに気づいた。カテーテル挿入から約24時間たっており、この間、約3.4リットルの点滴液が投与されたという。
病院はがんの手術自体は成功したと、都に説明している。
中心静脈へのカテーテル挿入は、首の付け根に近い鎖骨付近の静脈から入れて、栄養剤や抗生剤を心臓近くの太い静脈へ直接点滴する方法だ。腕の血管に針を刺す点滴に比ベ、高濃度で高カロリーの点滴液を投与できる。手術後まもなく、食事ができない患者に対して使われる。
厚生労働省医療安全推進室によると、カテーテルがきちんと入ったかどうかは、挿入後に注射器に血液が逆流してくるのをみて確認できる。さらに胸の撮影をして、カテーテルが血管に沿ったカーブを描いているかどうかを見る、という確認方法もある。ただ、結核を患ったことのある患者や、極度にやせている患者はわかりにくいこともある、という。
また、カテーテルの針が静脈を突き破って肺に達し、空気がたまる気胸は、起こりやすいミスの典型例だ。同省は都からの詳しい報告を待って対応を判断する、という。


頭大けがで「植物状態」6割、ケアで意識回復 阪大病院調査

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頭に大けがをして「植物状態」になった患者でも、十分なケアをすれば約6割の人が意識を回復できることが、大阪大病院救命救急センターのまとめで分かった。約7年間続けてきた調査結果で、同様の長期研究は世界的にも珍しいという。31日、大阪市で開かれた厚生労働省研究班の会合で報告された。
96年10月以降に同センターで治療を受け、けがの1カ月後の段階で植物状態だった患者34人の経過を調べた。これまでに、21人(62%)か家族らの声に応えて体を動かしたり会話をしたりできるまでに意識が回復した。
このうち、男性2人(10代と20代)が仕事に復帰したほか、けがをしてから3年以上たってから話ができるようになった人が6人いたという。
方、亡くなったのは7人。治療時に意識状態の悪い人は、回復するのが難しい傾向があった。調査の中心になった同センターの塩崎忠彦助手は「当初、意識回復は2割程度だと思っていたので驚いた。植物状態が続いても医療スタッフや家族はあきらめずに治療やリハビリに取り組むことに意義があることが分かった」と話す。
回復例が多くなっているのは、入院中の感染症を防ぐなど患者をケアする技術が進んだためとみられる。
今後、全国の救命救急施設が加わって調査数を増やす予定。回復した例を詳しく調べ、より効果的な治療法に結びつけたいという。

専門医資格3医師停止 青戸病院医療事故

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東京慈恵会医科大学付属青戸病院(東京都葛飾区)で前立腺がん摘出のため腹腔鏡手術を受けた男性が死亡した事故で、日本泌尿器科学会と日本エンド口口ジー・ESWL学会は30日、業務上過失致死罪で起訴された執刀医ら3医師の会員資格や専門医資格を一時停止する、と発表した。また、両学会は腹腔鏡による前立腺摘出手術について指針をまとめた。?腹腔鏡による腎摘出で20例以上の経験がある?前立腺摘出を習熟医の下で計10例以上経験した?過去の手術件数、成績を患者に事前に説明する、ことなどを手術の条件としている。

日赤本社着手遅れ 肝炎ウイルス混入献血の追跡 下部から97年提案今年まで動かず

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輸血による肝炎感染の問題で、日本赤十字社の新たな「不作為」が明らかになった。全国の血液センターの半数以上が、肝炎ウイルスの混入した可能性がある献血血液の迫跡調査を試み、一部のセンターは97年ごろから日赤本社へ調査の全国実施を提案していだにもかかわらず、本社は高感度の検査を過信して、見送ってきた。追跡調査は今年まで着手されず、汚染の可能性がある血液を輸血された人は、97年以降で数万人規模に上るとみられるが、感染の確認はほとんどできていない。
日赤本社血液事業部によると、96年から02年までに、傘下の全国75カ所の血液センターのうち40カ所が、試験的に迫跡調査を実施していた。調査本数は198本だった。
このうち、過去の献血で検査のすり抜けがわかったのは、B型肝炎ウイルスで48本、C型肝炎ウイルスで5本の計53本あった。この結果は、すべて本社に報告されていた。また、日赤中央血液センター(東京)の幹部は「97年ごろから本社血液事業部へ、全国調査を早く導入するよう何度も求めてきた」と話す。
しかし、日赤が全国で迫跡調査を始めたのは厚生労働省の指導を受けた今年6月。99年4月から今年9月までの4年半の献血を調べた結果、検査をすり抜けた疑いのある血液を使った輸血用血液は2万6575本あり、大半は投与されていた。
調査は途中だが、3人の感染が確認された。
追跡調査で汚染の可能性のある血液を投与された患者が見つかれば、感染の有無を確認し、早期に治療を開始できる。汚染の可能性がある輸血用血液は年平均6千本前後。97年から迫跡調査を始めていれば、検査対象者は3万6千人に上る計算でこれらの人のほとんどが感染の確認をされないままになっている。
日赤血液事業部は「高感度検査を導入すれば、すり抜けは解決できると考え、99年の導入後は、その効果を過信した。国が調査の指針を策定するのを待っていた」と説明。大勢の血液を集めてつくる血液製剤の供給に影響が出かねないと心配し、消極的になった面もあるという。

献血血液の追跡調査

献血時の血液検査でウイルスなどの感染が疑われた場合、同じ献血者が過去に献血した際の血液も汚染されていなかったか調査すること。遡及(そきゆう)調査ともいう。繰り返し献血する人は多く、献血の直前に肝炎などのウイルスに感染すると、まだウイルスが増殖しておらず、検査をすり抜けてしまう空白期間(ウインドーピリオド)があるためだ。

不整脈剤、10倍の量注射 浜松の病院、点滴用、66歳男性死亡

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静岡県浜松市の聖隷三方原病院(萩野和功病院長)が19日、心筋梗塞の疑いで連ばれた市内の男性(66)に、規定の5倍の濃度で10倍量の抗不整脈剤を注射し、男性は死亡した。病院側が20日、記者会見し、ミスと死亡との因果関係を認めた。浜松中央署は病院の報告を受け、業務上過失致死容疑で捜査を始めた。
病院側によると男性は19日牛前10時40分過ぎ、胸の痛みを訴えて市内から救急車で運ばれた。抗不整脈剤の「リドカイン」を成分とした静脈注射用「リドクイック」(商品名、濃度2%、100ミリグラム入り)を2度に分けて打つべきところ、循環器科の医師(29)が看護師(39)に対し同じ成分の「キシロカイン」を打つように指示した。
看護師は点滴用として使われている濃度10%のキシロカインを500ミリグラムすっ2回、注射したという。
患者は注射前に心停止に近い状態だったが、注射後は全身けいれんなどの症状がでて午前11時50分ごろ死亡した。処置に立ち会った医師4人らは気づかなかっだが、注射した看護師ら2人から「打つべき薬剤をまちがえたのでは」と循環器科の部長に申し出があった。空き瓶を調ベ、間違いがわかったという。

流動食チユーブの患者死亡 医師、交換ミス容疑

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千葉県警捜査1課と船橋署は20日、体外から胃に通した流動食などの通り道「胃ろう」のチユーブ交換で、適切な処置を怠って患者を死亡させたなどとして、船橋市立医療センター(清川尚院長)の元脳神経外科医師(46)と同科部長(51)の男性2人を業務上過失致死の疑いで千葉地検に書類送検した。
調べでは、元医師は昨年2月28日、入院していた同県市川市、派遣社員の女性(当時24)のチユーブを交換した際、チューブ(太さ約5ミリ)が胃に達していなかったのに放置。流動食が腹腔にたまったことによる敗血症を起こさせ、同年3月2日に死亡させた疑い。
また、同科部長は看護の担当者から「流動食が入らない」などの報告を受けなから、緊急性の判断を誤った疑い。
同センターによると、女性は01年9月、脳内出血で同病院に入院したが、意識不明の状態か続いた。02年2月に家族の呼びかけに反応するようになったため、胃ろうの手術を受けたという。
千葉大医学部付属病院第1内科の丸山紀史医師によると、胃ろうは脳に後遺症が残るなどして、食べ物をのみ込めない患者に対し、みぞおち付近から胃にチユーブを入れ、流動食を流し込む。
同センターでは事故当時、数段階に分けて徐々に太いチューブに取りかえる方法をとり、女性は約5ミリのチューブを入れる3度目の処置を受けた。胃にチューブが連しているかの確認は、胃に空気を入れて音を聞く方法がとられ、元医師はこの方法で「確認した」と話していたという。
同センターは女性死亡当日に同署に届け出。この医師は同年3月未で自己都合退職した。
この女性の遺族は元医師らの書類送検について「コメントする心境にない」と話した。
同センターの清川院長は「事態を重く受け止めている。二度とこのような事故が起こることのないよう院内に設置した医療事故防止対策委員会で検討を行い、改善に努力したい」とするコメントを出した。

鹿児島大病院、1字違いの抗がん剤投与64歳男性死亡

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児島市の鹿児島大学医学部・歯学部付属病院(愛甲孝院長)に肺がんで入院していた鹿児島県内の男性(64)が、治療計画と違う種類の抗がん剤を誤って投与され、約1カ月後に死亡していたことがわかった。使われた抗がん剤は正しい薬とは商品名が一文字違いで、投薬の指示書を作った研修医がパソコンに誤入力した。病院は投薬ミスと死亡との因果関係をはっきりとは認めていないが、県警は業務上過失致死の疑いもあるとみて関係者から事情を聴いている。
愛甲院長が21日に会見して公表した。男性は8月に入院し、医師になって10年目の指導医と5カ月の研修医が受け持った。投与が予定されていたのは「タキソール」だが、研修医が指示書をパソコンに入力する際、「タキソテール」と誤った。
両方とも肺がんや乳がんに使われる抗がん剤だが、タキソテールの強さはタキソールの3.5倍あり、白血球の減少など人体への悪影響が大きいとされる。
指示書は指導医が確認して署名することになっていたが、署名のないまま薬剤部と病棟に送られ、看護師が9月上旬、点滴で投与した。両方とも抗がん剤のため、看護師も疑問に思わなかった。
男性は投与から7日目に白血球数が低下し、呼吸状態も悪化、循環器に異常が出た。その段階で、指導医と研修医が指示書を調ベ、ミスが判明した。男性は一時回復したが、9月下句に再び肺炎などを起こし、今月18日に死亡した。
病院は投与ミスがわかった段階で男性の遺族に説明し、謝罪した。会見で愛甲院長は「遺族に大変申し訳ない」と話した。

健保連、専門医や治療法ネットで 全国2,227病院情報公開

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約1500万人が加入する「健康保険組合連合会」(健保連、東京都港区)は16日、全国2227病院の専門医数や常勤医師数、疾病ごとに採用する治療法などを検索できる病院情報データベースを構築した、と発表した。20日からインターネットで公開する。全国の病院の4分の1をカバーし、無料でだれでも医療情報を一覧、検索できるデータベースは異例。治療や病院選びに役立ててもらい、医療の質をめぐる病院間の競争を促す目的だ。
全国約9200病院に今春から調査票を配布、回答してもらった。準公的機関がこれだけの規模で患者に役立つ病院の医療情報を公開するのは初めてだ。
診療科、専門外来、常勤医師数などのほかに、学会認定専門医数や約300分類の疾病ごとにその病院が採用している治療法、検査法、手術方式を集めた。夜間休日に専門医が小児救急を受け入れるか、疾患ごとにセカンドオピニオンを引き受けるかどうか、差額ベッドの数と料金、日帰り手術の実施状況なども情報提供。ほかに、先進的な医療技術を一部保険診療で施せる「高度先進医療制度」が使える病院名、疾病名のデータベースなどともリンクしている。
1、2年以内に全病院の情報を掲載するよう目指すほか、将来的には手術件数などの治療実績も比較可能な形で提供していきたい、という。健保連の鈴木久雄参与は「医療の質の評価にかかわる調査を一覧できるようにし、病院版ミシュランに育てたい」と話す。20日からの情報提供のホームページはhttp://www.kenporen-hios.com

慈恵医大手術ミス医師3人を起訴

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「これからの主流は腹腔鏡手術だ。早く身につけなければ時流に遅れてしまう」。内視鏡を使った前立腺がんの摘出手術で、男性患者を死なせたとして起訴された医師の1人は、警視庁の調べにそう話した。昨年11月8日の手術を捜査幹部は「技術と経験の乏しい医師の功名心で行われた。患者を練習台にしたようなもので、やってはならなかった」と指摘する。手術の経緯が、捜査で明らかになった。
東京慈恵会医科大学付属青戸病院(東京都葛飾区、落合和彦院長)で昨年11月、前立腺がん摘出のため、腹腔鏡手術を受けた千葉県戸市の男性(当時60)が1カ月後に死亡した事故で、東京地検は15日、執刀した斑目旬容疑者(38)ら同病院の医師3人=いずれも逮捕、拘留中=を業務上過失致死罪で起訴した。
起訴されたのは、ほかに長谷川太郎容疑者(34)と前田重孝容疑者(32)。3人はいずれも起訴事実を認めているという。書類送検された診療部長と麻酔科の医師2人は近く不起訴処分になる見通し。
同病院を運営する学校法人慈恵大学の粟原敏理事長は15日、「厳粛に受け止めている。深くおわび申し上げる」とするコメントを発表した。
●キーワード 腹腔鏡手術 腹部の数カ所に開けた直径約1センチの穴から内視鏡や器具を入れ、モニター画面を見ながら患部を摘出する。開腹手術より患者の体への負担が少ないが、難度が高く、熟練した技術が求められる。東京慈恵会医科大学の付属病院では、大学の倫理委員会と各病院にある部会の承認が前に必要だが、青戸病院は承認の手続きを踏まないまま実施した。
昨年10月下旬、泌尿器科の会議室。主冶医の長谷川容疑者は「腹腔鏡でやりたい」。診療部長に迫った。「経験のあるベテラン医師に立ち会ってもらえ」。許可権限を持つ部長は難色を示した。
執刀予定の医師3人のうちこの方法による前立腺がん摘出手術の経験があるのは斑目容疑者だけ。それも助手としての2度だ。長谷川容疑者らは「自分たちだけでやって(手術の)問題点を明らかにしたい」と主張した。
「熱意にほだされた。安易に許可したことが悲劇の始まりだった」と調べに部長は話した。
手術は午前9時41分に始まった。前立腺につながる静脈から出血した。何本もの静脈が集まる束の部分を縛れず、止められない。熟練者なら20分で可能な止血が2時間たっても終わらない。縛りが浅いまま最も難しいまとされる膀胱の切断に移った。
「もうできない」。午後5時ごろ、斑目容疑者が開腹手術への切り替えを求めた。長谷川容疑者は「最後まで自分たちでやろう」と励ました。捜査幹部は「最悪でもこの時点で変えていれば助かったかもしれない」と話す。
出血は続いた。前立腺を摘出した午後7時すぎには、尿と一緒に出た血液をためる3リットルの容器が満杯になった。
用意していた輸血用血液は560ミリリットル。不安になった麻酔医が追加注文を求めたが、斑目容疑者らは「止血は終わっている」と断った。
尿道と膀胱の縫合にも手間取る。1時間で縫えたのは1針だけだ。男性の血圧と赤血球内の酸素量がどんどん低下する。麻酔医が「もうやめてください」と求めた。午後9時25分、ようやく開腹手術に切り替た。
同10時35分、手術終了。尿を含む最終的な出血量は6リットルだった。長谷川容疑者は男性の家族に摘出した前立腺を見せ、「まだ目覚めていませんが、手術は無事終わりました」と告げた。
男性は、意識を取り戻さないまま昨年12月8日朝、死亡した。

10人、2300万円受領 派遣医師教育委託 釜石市の病院から

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東北大(仙台市)の吉本高志学長らが釜石市民病院(岩手県)と派遣医師の教育委託契約を結び、金銭を受け取っていた問題で、釜石市に資料が残っているの99〜02年度の4年間で、東北大の10人の教授らが同様の契約で現金を受け取り、総額は計2300万円に上つていることが朝日新聞の調べでわかった。吉本学長の受受領額は、少なくても99〜01年度で計220万円になっている。同病院によると、すべての教授が契約後、個人名の受領書を病院側に渡しているという。10人の教授は各年度末の現金授受の際、契約が年度初めに締結されたとする偽りの契約書を病院側と交わしていた。釜石市民病院の病院長や事務長らは毎年度、釜石市内で現金を下ろし、50万〜150万円ずつ祝儀袋に分け入れた後、車で約4時間かけて仙台市の東北大を訪れて、教授室などで現金を渡した。
同病院は81年度から総額約1億2500万円を東北大側に渡しているが、市には99年度までの資料しか残っていないため、98年以前の詳しい提供状況についてはわからないという。

投薬ミス、乳児死亡兵庫県立尼崎病院

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兵庫県尼崎市の県立尼崎病院(平尾敬男院長)は15日、同県内に住む生後5カ月の男児が処方箋の10倍の強心剤を調剤されて服用し、死亡する医療事故があったと発表した。同病院は家族に謝罪し、尼崎東署と県医療課に報告。同署は業務上過失致死の疑いで薬剤部長ら病院側から事情を聴くとともに司法解剖をして死因を詳しく調べる。
平尾院長らの説明によると、男児は8月に同病院で手術を受け、入院。
10月5日に退院した。その際、強心剤のジギタリス製剤「ジゴシン」を渡された。退院後しばらくは入院中に渡された正しい分量の薬を自宅で服用していたが、その後、なくなったため退院時に渡された薬を服用し始めた。12日に発熱と嘔吐がひどくなり、14日朝に緊急入院したが、同日夕、心不全のため死亡した。
男児の担当医は、この薬を1千倍に薄めた粉末を1日当たり0.03グラム与えるよう指示した処方を出した。だが、退院時に調剤した薬剤師(33)は院内規定により、1万倍に薄めた粉末0.3グラムを使うつもりだったが、実際には1千倍に薄めた粉末の瓶から10倍にあたる1日当たり0.3グラムを調剤して渡してしまった。薬剤師は薬の瓶を取り違えたことについて「なぜ間違えたのか分からない」と話しているという。

腎臓移植あっせん・運搬費「100万円以上」が4割

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腎臓移植の約4割で、保険適用のない斡旋や運搬費用が100万円以上ののぼることが、東京女子医大の上塚芳郎・助教授らの調査でわかった。
01年に実施された心停止後の腎臓移植57例について調べたところ、移植コーディネー夕ーの人件費や腎臓の運搬費用などの合計額は60万円台が13例で最も多かった。100万円以上を合わせると21例あり、最高額は約368万円だった。これらの費用は、移植を受けた患者の自己負担のほか、日本臓器移植ネツトワークへの国の補助などによって賄われている。

昭和大学藤が丘病院2年前にも患者死亡 腔鏡手術の1カ月半後

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昨年10月に腹腔鏡手術を受けた女性患者が手術後に死亡したことが明らかになった昭和大学藤が丘病院(横浜市青英区)で、2年前にも腹腔鏡を使った子宮の腫瘍摘出手術を受けた女性が手術の約1カ月半後に亡くなつていたことがわかった。病院側は手術が死亡につながった可能性は認めたが、医療ミスについては否定している。遺族は「死因はミスによるもの」として、同病院に損害賠償を求める訴訟の準備を進めている。
亡くなったのは、東京都町田市の主婦川内明美さん(当時40)。
夫の康羊さん(47)によると、明美さんは01年11月5日、同病院で腹腔鏡による子宮筋腫と卵巣膿腫の摘出手術を受けた。手術は4時間ほどで終了した。
同7日未明、明美さんの血圧が低下。主治医はいったん膵炎と診断して投薬治療した。しかし、その後の検査で腹膜炎と診断を変え、同日昼ごろに開腹手術をした。開腹した際、腸に4センチほどの穴が見つかった。臓器洗浄などをして手術は終了したが、明美さんの容体は快復せず、約1カ月半後の12月21日に亡くなったという。
遺族側は腹腔鏡手術で腸に傷をつけたのと、手術後に腹膜炎だと気づくのが遅れた医療ミスが原因とみている。
これに対し、病院側は腸に穴が開いていたことを認めたうえ、「手術が何らかの原因になっている」とする執刀医らの説明文書を01年11月から12月にかけて遺族側に提出した。しかし、手術のビデオを見ても腸に傷をつけるようなことはしていないと、同じ文書の中で医療ミスを否定している。
執刀医を指導する立場だった同病院の教授は朝日新聞社の取材に、「手術中のビデオを検討したが、どこで腸に傷をつけたかは分からず、医療ミスかどうかははっきりしない。臨床データに基づいて膵炎と判断したが、術後の症状悪化の原因はほかの点も疑うべきだった」と話している。

東北大学長 医師派遣病院から現金 指導名目兼業禁止抵触か

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東北大(仙台市)の吉本高志学長(神経外科)が医学部付属病院長などをしていた00、01両年度、同大が医師を派遣している釜石市民病院(岩手県)と、派遣医師への教育指導名目で「卒後教育委託」契約を個人名で結び、計約160万円を受け取っていたことが朝日新聞の調べでわかった。玉井信医学部長(眼科)も00〜02年度に同様に計約260万円を受領していた。東北大は、契約が国家公務員法で原則禁止されている兼業にあたる可能性が強いとして学内の調査委員会で調べている。
病院側「パイプ保持が目的」
同大では、派遣医師の名義貸しと公立病院などからの寄付金をめぐってすでに調査委があり、今回の問題もこの中で調ベている。
関係者によると、吉本学長や玉井学部長と釜石市民病院側は各年度末の現金授受の際に、契約が年度初めに締結されたとする偽りの契約書を交わしていた。病院側によると、00〜02年度には2人以外にも複数の教授と同じような契約をしたといい、こうした方法は81年度から続けられ、総額約1億2500万円が支払われているという。
契約書によると、契約期間は各年度ごとで、いずれも年度初めの「4月1日」に契約が結ばれたことになっていた。病院側は吉本学長や玉井学部長に神経外科や眼科の医師の指導を委託する代わりに年60〜100万円を支払うとしている。
関係者によると、病院側は、院長や事務長らが年度末に吉本学長や玉井学部長の教授室を訪れて契約を交わし、現金を渡した。同病院には東北大から複数の医師が派遺されており、契約は医師たちの論文指導などの名目だったが、病院側は「実際は東北大とのパイプを保つのが目的だった」と話している。
内部資料などによると、吉本学長は、01年2月23日に00年度の契約を結んで60万円▽02年1月24日には01年度の契約をして100万円−を渡された。当時は医学部付属病院長や同大大院医学系研究科長だった。
玉井学部長は01年2月23日に00年度の契約を結び60万円▽02年3月28日に01年度の契約をし100万円▽今年2月17日に02年度の契約をして100万円−−を受領。当時、付属病院の病院長などをしていた。2人とも個人名を記した受領書に個人の印鑑を押して釜石市民病院側に渡していた。同病院側は「事後契約と取られても仕方なく、好ましいことではなかった」と話す。
取材に対し、玉丼学部長は、大学に兼業の申講をしなかったことを認め、「契約書は病院側が持ってきたもので、日時には注意を払わなかった。社会通念上問題があると言われても仕方がない」とし、「現金は国庫に入れてから眼科の研究に使った」と話した。吉本学長については、大学側が「調査委員会でしらべているのでコメントできない」としている。

手術で後遺症2億円支払え 千葉の医療法人に命令

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帝王切開の手術を受けた際の出血が原因で重い後遺症が残ったとして、東京都葛飾区の夫妻が、産婦人科医院を経営する医療法人社団寛和会(千葉県習志野市)や担当医師らに約2億7千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が9日、東京地裁であった。貝阿弥誠裁判長は「別の救急病院への搬送が遅れた過失があった」として、2億2271万円の支払いを同会側に命じた。
判決によると、妻は01年6月に同会の医院で帝王切開手術を受けた際、「気分が悪い」などと訴えたが、すぐには救急病院に搬送されなかった。その後運ばれた医療センターで出血性ショックと診断、子宮が摘出され、一命をとりとめたものの意識は回復せず、介護が必要な状態が続いている。

手術ミス否定 昭和大藤が丘病院

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昭和大学藤が丘病院(横浜市青葉区)で昨年10月、腹腔鏡を使った副腎の腫瘍の摘出手術を受けた川崎市の会社員中沢操さん(当時29)が約1花月後に死亡したことについて、病院の鈴木晟時院長らが9日正午、事実関係を説明し、医療事故ではないとの見解を示した。手術中何が起きたのか。死因と手術との因果関係はあるのか。遺族の言い分とは、大きく食い違う。
副腎からホルモンが過剰に分泌されるクッシング症候群の治療のため、副腎にできた腫瘍を取り除く手術が昨年10月1日午後、始まった。
病院側は腹腔鏡手術について「手術中のビデオを見たが、ミスはなかった」と説明。手術に時間がかかったのは、副腎に脂肪が固く付着していたので、腫瘍を二つに分けて摘出したためなどと話した。
司法解剖の結果では、死因は「副腎動脈縫合不全」による「出血死」とされた。
これについては、病院側は「死因は手術のミスではなく、実後の合併症で重症膵炎だった」と、違う見解を示した。しかし、膵炎になった理由は明確に示さなかった。
母親によると、主治医は開腹手術が必要になったのは「血管をとめるクリップがはずれていたため」などと説明し、「医療ミスか」と問うと、「そういわれても仕方ない」と答えたという。
このクリップがはずれたことについて泌尿器科教授は「血管から出血を止めていたクリップが斜めになって、そこから出血しており、止血した」とし、死亡したこととの因果関係を否定した。

腹腔鏡手術で「出血死」 昭和大藤か丘病院遺族ミス主張

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昭和大学藤が丘病院(横浜市青葉区)で昨年10月、副腎の腫瘍摘出のために腹腔鏡手術を受けた女性(当時29)が、手術の約1カ月後に死亡していたことがわかった。遺族が8日、記者会見した。遺族は、副腎動脈の縫合が完全でなかったための「出血死」とする司法解剖の結果をもとに、医療ミスを主張、神奈川県警は業務上過失致死の疑いがあるとみて、カルテなどの任意提出を受けて調べている。
亡くなったのは川崎市の会社員中沢操さん。会見した母親の美智代さん(55)によると、操さんは昨年8月、副腎に腫瘍が出来たために、副腎からホルモンが過剰に分泌されて体がむくむクッシング症候群と診断された。
昨年9月中旬に昭和大藤が丘病院に入院。主治医(38)に副腎の腫瘍摘出のための腹腔鏡手術を勧められた。「治りが早く、術のあともきれいだ」との説明だったという。
10月1日午後2時過ぎに手術が始まったが、なかなか終わらず、最終的に8時間以上かかった。途中、説明を求めると、「順調だ」といわれ、家族は一時、帰宅した。翌朝早く、主治医から「出血多量でショック状態になった」と電話で伝えられ、間もなく開腹手術が始まったが、操さんの意識は戻らず、10月28日に亡くなった。
母親によると、病院側は、腹腔鏡による副腎腫瘍摘出手術が主治医にとって今回で5例目だと説明。うち2例は、開腹手術が必要になったという。また、主治医は、操さんの開腹手術が改めて必要になったのは、血管をとめるクリップが1カ所はずれていたためだと説明し、「医療ミスか」と間うと、「そういわれても仕方ない」と答えたという。
しかし、亡くなった当日に遺族へ謝罪した病院幹部らは、医療ミスかどうかは明言しなかったという。
不審に思った遺族は神奈川県警に司法解剖を依頼。監察医の所見は「副腎動脈縫合不全」による「出血死」だった。
一方、病院側は、手術時間が長くなったのは腫瘍が別にもう一つあったためといい、死因については「出血ではなく、急性膵炎から汎発性血管内凝固症候群に発展し、くも膜下出血になった」と遺族に説明しているという。
神奈川県警青葉署は、すでに主治医から事情聴取し、今年6月には病院の実況見分をしている。
また、病院から手術の様子を収めたビデオテープなどの任意提出を受けている。
腹腔鏡手術を巡っては、東京慈恵会医科大学付属青戸病院の医師3人が経験の浅いまま前立腺がん摘出手術を行い、患者を死亡させたとして9月に逮捕されている。

改善策うむ契機にして 遺族会見

美智代さんは8日、東京都内で記者会見し、「多くの人に危険性を知らせ、改善策をうむ契機にしていただけたら」と、公表に至った思いを述べた。病院側は手術中に血管を留める金属製のクリップがはすれたミスは認めるものの、「出血が死因ではない」と主張したという。手術時間を巡っても、「平均4時間の手術に8時間以上かかった。出血多量ではないか」との疑念がぬぐえない。
「腹腔鏡手術にどれぐらいリスクがあるかも知らず、医師の言う通りにしたことを後悔しています」と話した。

病院側医療事故を否定

昭和大藤が丘病院は8日夜、事務長が、詰めかけた記者たちに対し「医療事故とは考えていない」とコメントした。9日午前11時から、記者に対して経過説明会を開く。
一方、執刀した主治医(38)は「手術後に亡くなった後、ご家族から何度か質問をいただき、回答文書を渡してご説明してきた。指摘される死因などについては、現在、病院の調査委員会で調べているのでその回答が出るまで詳しい話しはできない」と話している。

専門医「日常的な手術」

腹腔鏡を使って副腎の腫瘍を切除する手術法は、8年ほど前から広がり、現在では医療保険も適用される標準的な治療法だ。東京慈恵会医科大付属青戸病院で死亡事故が起きた前立腺がんの手術のような難しい手術ではない。
腹腔鏡手術では腹部などに1、2センチの穴をいくつか開けて器具を通し、モニターを見ながら処置具などで腫瘍を切除。翌日には歩けるようになり数日で退院できる。
ある大学の泌尿器科教授は「腎臓や副腎の腹腔鏡手術は日常的で、総合病院なら経験を積んでいるはすだ」と指摘。副腎の手術の場合、腫瘍の大きさなどに左右されるが、「小さな腫瘍なら2時間ほどで終わる。何か事情があったのだろうか」と首をひねる。
日本EE(泌尿器内視鏡)学会理事を務める別の教授も「開腹よりはるかにメリットが大きく、大半の泌尿器科医は、患者の同意が得られれば、こちらを選ぶはずだ」と話す。さらに「副腎の動脈はとても細かく、出血しても自然に止まる。内視鏡で損傷して縫合不全で失血死するとは通常は考えにくい」という。

輸血直後に患者急死 血液から緑膿菌検出 大阪の病院

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大阪府の民間総合病院で9月下旬、手術後の女性患者(56)が赤血球製剤の輸血を受けた直後に容体が急変し、敗血症で死亡したことがわかった。患者の血液からは緑膿菌が検出され、この菌が原因で敗血症になったとみられる。製剤を出荷した日本赤十字社は、製剤が緑膿菌に汚染されていたかどうか検査している。
厚生労働省安全対策課の担当者は「点滴など輸血以外の医療行為での感染や患者の体内にいた緑膿菌が原因になった可能性もある。日赤の検査結果を待って対応を考えたい」と話している。
緑膿菌は抗生剤が効かない多剤耐性緑膿菌が問題化しており、01年に新潟県と神奈川県で患者が死亡した。この2例は院内感染か患者白身の菌が原因になった可能性が高く、輸血用血液が原因となった死亡例は国内では確認されていない。日赤などによると、患者は9月19日、この病院で解離性大動脈瘤の手術を受けた。22日午前、貧血気味だったことから病院は赤血球製剤560ミリリットルを輸血した。その直後に容体が悪化し、23日午後3時に死亡した。
病院の説明によると、患者は22日、輸血中に血圧が下がり、敗血症とみられるショック症状に陥った。敗血症は細菌が血液中に入って増殖し、全身に広がる重篤な感染症。死亡直前には血液の中の緑膿菌が急激に増加していた。担当医は赤血球製剤が緑膿菌で汚染されていた疑いがあると判断。24日、手術前と後の患者の血液と、製剤が入っていた血液バッグのチユーブを日赤に提出した。
病院の副院長は「手術後は集中治療室で処置しており、院内感染の可能性はないと思う。患者が保菌していた菌の可能性は否定できないが、菌が多い腸の手術ではないので、急にショック症状になるほど菌が増えることは考えにくい」と話している。
患者に輸血された赤血球製剤は、9月9日に4人が行った献血からつくられ、手術当日の19日に病院に納品した、と日赤は説明している。赤血球を除いた血漿は日赤側が保官しており、日赤は細菌の検出調査を公的機関に依頼した。

緑膿菌

自然界に広く存在し、感染力は比較的弱い。健康な人には害がないが、病気で抵抗力が落ちた患者や高齢者が、敗血症などを起こして死亡することもある。抗生剤が効かない多剤耐性菌が各地で院内感染を近年引き起こしているといわれる。

薬ラベルの表示面積測ったら 成分・濃度「小さすぎ」金沢大調査

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薬剤師が調剤する薬の容器のラベルは、成分含有量や使用期限などの表示が小さすぎる−−。金沢大学の古川裕之・助教授らが医療用の粉薬のラベルを調べたところ、製薬会社の社名やマークは大きいのに、中身の重要情報は冷遇されていた。
「ラベル表示の見にくさが調剤ミスの一因になっている」という。
調査は、金沢大付属病院の薬剤師と、薬剤師免許を持つ大学院生、製薬会社の医薬情報担当者(MR)の各25人にラベル表示の中で「注目している項目」を尋ね、実際の面積を計測した。
薬剤師と院生では、商品名、成分含有量、濃度などが上位に挙がった。同じ成分で含有量や濃度が異なる製品が複数あり、間違えて調剤すると、危険な場合もあるからだ。
一方、大手側薬会社の粉薬95品を調べるとラベル全体に占める大きさの割合の平均は、商品名が5.29%あったものの、成分含有量は0.33%、濃度は1.45%、薬効分類は1.45%、使用期限は0.72%と、いずれも小さな面積にとどまった。逆に、MRが注目する社名は4.11%、マークは2.35%あり、バーコードや空白などを除けば、商品名に次ぐ大きな面横を占めていた。
古川助教授は「企業本位の視点で作られており、製薬会社に改善を求めたい」と話している。

院内感染で後遺症 昭和大に賠償命令

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院内感染で重大な後遺症が残ったとして東京都品川区の女性(32)と家族が昭和大学(品川区)に約1億6千万円の損害賠償や将来の介護費用を求めた訴訟の判決が7日、東京地裁であった。近藤寿邦裁判長は「菌に有効な抗生物質の投与が遅れた過失がある」と述べて約1億円の賠償金と毎日1万5千円の看護料を支払うよう命じた。

歯科医の救急研修再開 厚労省容認 ガイドライン作成

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歯科医師に気管挿管などの救命措置を教える救急救命研修が2年ぶりに復活しそうだ。研修中の歯科医師による資格外の医療行為をめぐって告発があって以来中止されていたが、厚生労働省が6日までに方針を修正して容認に転じたためだ。歯科でも麻酔のショックなどで患者の容体が急変する場合があり、医師、歯科医師らが再開を求めていた。
厚労省が研修のガイドラインを作り、同日までに日本医師会や日本歯科医師会、都道府県などに通知した。
厚労省研究班(主任研究者=前川剛志・山口大医学部教授)がまとめたガイドラインでは、研修を受けられるのは歯科の臨床経験が1年以上あり、全身麻酔を20例以上手がけた歯科医師。気管挿管や気通の確保などの特別講習を受けたうえで、病院の指導医に学ぶ。歯科医師の救急研修をめぐっては01年秋、札幌市立札幌病院で、救命救急センター部長の医師が研修を受けていた歯科医師に資格外の医療行為をさせたとして医師法違反の疑いで保健所から告発され、3月に札幌地裁で罰金6万円の判決が出た。医師は控訴している。

輸血感染、新たに2人

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B型肝炎ウイルス(HBV)などに汚染された可能性がある輸血用血液約7千本の追跡調査で、新たに2人の感染がわかり、感染者は計3人になつた。日本赤十字社が1日、厚生労働省の血液事業部会運営委員会で報告した。
感染がわかったのは、西日本の病院で02年11月に血小板を投与された60代の男性ら2人。2人とも輸血前はHBVに感染していなかった。

気道管誤り食道に 病院と搬送先「過失」巡りズレ半日見逃し死亡

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横浜市の市立市民病院(福島恒男院長)で2日、50代の男性患者の気管チューブが誤って食道に挿管されていたのを、半口以上見逃す医療事故があったことが分かった。男性は9月30日に肺炎で別の民間病院から搬送され、翌日肺炎が原因で死亡した。市民病院は2日、「直接の原因ではないが、死期を早めた可能性がある」と謝罪した。
誤挿管について市民病院は「搬送前にされた可能性がある」としたが、搬送前の民間病院は誤挿管を認めておらず、意見が食い違っている。
市民病院によると、9月30日午後7時ごろ、県内の男性患者が呼吸困難を伴う肺炎で、同市磯子区の民間病院から救急搬送されてきた。患者には、空気を肺に送るポンプの付いた気管チユーブが挿管されていた。担当医(39)が、状況を確認したりしたが、その時は違和感は無かったという。
翌日の1日午前10時半ごろ、患者は心肺停止状態に陥り、呼吸器科専門医(32)が蘇生措置を行ったところ、チューブから胃の内容物が出てきたため誤挿管に気づいたという。患者は午前11時40分ごろ死亡した。県警は2日、司法解剖の結果、死因を肺炎と特定した。市民病院の福島院長は2日記者会見し、「気づく機会はあった。過失による医療事故で申し訳なく思う」と話した。
民間病院は「チユーブに空気を入れて肺が動くのを確認した。ミスはなかった」としている。

血液治療自分の血使い再生 神戸の医療機関 患者の負担より軽く

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自分の血液中にある血管のもとになる細胞を使い、病気の部分の血管を再生させる新しい治療法を、神戸市にある先端医療センターが始める。細胞の発見から積み上げた研究の応用で、同センターの再生医療審査委員会が1日、臨床研究を承認した。糖尿病などで足の血管がつまる「閉塞性動脈硬化症」の重症患者が対象で、体への負担が少なく、治療効果が期待できるという。早ければ10月中にも実施する。
新治療を申請したのは同センターの浅原孝之・再生医療研究部長。計画では、血管のもとになる血管内皮前駆細胞を薬で増やした後、血液を体外に循環させながらこの細胞を採取し、患部に注射する。神戸市立中央市氏病院と協力し治療を希望する患者を約15人募る。この細胞は骨髄細胞の中にも含まれ、すでに複数の医療機関が同じ病気の患者に自分の骨髄細胞を注射する臨床研究を行っている。しかし、骨髄採取には全身麻酔が必要で、患者の負担が重い。骨髄細胞には骨や筋肉などのもとになるほかの細胞も混ざっている。
新治療ではこうした問題点が避けられる。浅原部長は「薬の副作用などリスクはあるが、骨髄細胞と同等以上の効果が期待できると思う」と話す。同様の方法で心筋梗塞の治療も近く申請する予定。

輸血で?HIV感染 8人から献血血液 因果関係を調査

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関東地方の病院で今年3〜7月にかけて8人分の献血血液の輸血を受けだ男性患者が、エイズウイルス(HIV)に感染していたことが、厚生労働省の調査で分かった。8人分の血液からHIVは検出されていないが、微量のウイルスが献血時の検査をすりぬけて男性に感染した疑いもあるとして、同省は1日、緊急事態に対応する血液事業部会運営委員会に報告する。
輸血によるHIV感染が確認されれば、99年の高感度検査導入後、初めての感染事例となるが、同省は因果関係について慎重に調査を進めている。8人についても、感染の有無を確かめる。
男性患者は腎障害のため貧血状態に陥り、5カ月にわたって計8人の献血者から採血された赤血球の投与を受けた。転院先の病院で今年9月、HIV感染が判明したという。性行為などによる感染の可能性は低いとして主治医から同月、同省に連絡があった。
日赤の調査では、保管されていた献血者8人の血液からは、さらに感度を高めて再検査してもウイルスが検出されなかった。献血したのが感染直後で、ウイルスが検査で検出できる量まで増えていなかった疑いもある。
赤血球も迫跡調査。3人分はウイルスの感染力をなくす処理をしていない新鮮凍結血漿として別の患者3人に使用されていた。そのうち1人はほかの病気ですでに死亡。残る2人は主治医と連絡をとって経過を調査中。5人分はウイルス処理をした血液製剤の原料に回る前だった。
同省は男性患者のHIV感染や病状進行などの状況も継続して情報収集しており、さらに因果関係について調査を進める。

遺族、都内の病院に質問状 適切処置なく5歳児死亡

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東京都葛飾区の東部地域病院(鈴木謙三院長)で、区内の豊田理貴ちゃん(5)が適切な医療を受けられずに腸閉塞で亡くなった問題で、遺族は29日、病院に質問状を提出した。
理貴ちゃんは今年3月9日に死亡。質問状は1、最初に診察した看護師が、当直の小児科医=諭旨免職=に外科医への相談や大学病院へ紹介を勧めたのに、なぜ対応しなかったのか2、当直医は事故以前から、患者を無意味に待たせたり、入院患者を診なかったりする行動があったのに、病院の監督責任をどのように考えるのか、など4項目の質問に答えるよう求めている。

医療事故、市民が判定 模擬「陪審制」試み 救済制度設立めざす弁護士

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医療事故の被害者救済と再発防止を目指す弁護士らのグループが28日、市民から選んだ「陪審員」による事故の模擬判定会を名古屋市内で開いた。参加者たちは様々な意見を述べ合い、解決の道を探った。
主催は「『医療被害防止・救済システムの実現をめざす会』(仮称)準備室」。全国の弁護士で作る医療事故惰報センターの活動から生まれ、特殊法人「医療被害防止・救済センター」の設立を提唱している。
構想では、事例ごとに選ばれる陪審チームが専門家の意見を踏まえ、被害救済の是非を検討。医療行為で被害を受けたと証明されれば、医療者側の過失の有無に関係なく被害者側に金銭を支給する。
模擬判定会で「陪審員」となったのは、名古庁市中区の40〜65歳の有権者の中から無作為に選ぶなどした計8人。調査員役の弁護士が架空の2症例を説明、論議した。
うち1例は、高脂血症の持病があり、1日2箱野たばこを吸う中年男性が心筋梗塞の疑いを指摘され、心臓の血管に管を通す検査で血管が傷ついて死亡したケース。担当医は「上手な医師でも1万人に1人くらいの確率で起こる」と主張。持病で血管がもろくなっていた可能性があるとの設定だった。
「救済すべきだ」との意見が相次ぐなか、「本人が健康に気を付けるべきだった」との異論も。「たばこは政府が認めている。ヘビースモーカーを差別するのは間違っている」との指摘も出た。最終的には救済の方向でほぼまとまった。
「陪審員」となった40代の女性は「素人が重大な判定をしていいのかと心配だったが、素直に考えて結論を出せば、市民でもできるのでは」と話した。

「乳がん専門医」広告OK学会、法人格取得へ

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日本乳癌学会(光山昌珠会長・会員約7千人)は、学会が認定する「専門医」の資格を病院の看板や電話帳などで広告できるよう、近く法人格取得の申請手続きを取る。学会に法人格がないと乳がん専門医の表示が公にできないため、現在、患者から「どこで診てもらえばいいかわからない」という声が出ている。早ければ来年春にも実現する。病院や医師を選ぶ際の重要な目安となる。
厚生労働省は、医師自身が専門医であることや、医療機関が専門医を置いていることを広告できる要件として、専門医を認定する学会に9項目の基準を定めている。
基準は「法人格を持っ」「会貝千人以上で8割は医師」「専門医の名簿を公表している」など。専門医の認定試験を実施する主要47学会のうち、基準を満たしているのは内科学会や外科学会、糖尿病学会など22学会にとどまる。
乳癌学会の場合、98年から認定制度をスタートさせ、100件以上の手術経験や五つ以上の論文発表、一定期間の研修などを満たした医師に受験資格を与えてきた。すでに約500人の乳がん専門医が認定されている。だが、法人格を持たないため、看板などの広告に「乳がん専門医」と明記してPRできない。学会のホームページで、専門医師の名前だけは掲載しているが、病院名までは載せていないため、一般の人にはわかりづらい状態になっている。
一方、「乳腺外科」や「乳腺科」も、いまのところ診療科として公に掲げることが認められていない。このため、産婦人科を専門科と思い込む患者も多く、学会は「専門医の広告だけでも急ぐべきだ」と、法人格取得へ動き始めた。
専門医は一定の研修や手術数を経験して、学会の試験に合格すると、認定される。その分野で知識や技量が秀でていると学会が認める制度。昨年春、医療法が改正され、学会が厚労省の基準を満たすことを条件に、広告できることになった。
園尾博司・日本乳癖学会副会長は、NPO法人か中間法人を取得する案を検討中といい、「専門医を広告することで、患者の役に立てるし、診療現場の意識も高まる」と期待している。

ピロリ菌除菌で胃ガン予防効果 発症率3分の1

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胃潰瘍を起こすとされる細菌、ヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)を薬で除菌すると、胃がんになるリスクが3分の1になるという調査結果を浅香正博・北海道大教授(梢化器内科学)らがまとめた。感染者約3400人を調べた結果で、除菌による胃がんの予防効果が明らかになった。27日まで名古屋市で開かれた日本癌学会で発表した。
同大学や東北大など全国23の医療施設が協力し、ピロリ菌感染者で除菌をしていない1233人と、除菌した2186人について、5年以上にわたって胃がん発症の有無を祈調べた。その結果、除菌していない人では3.5%(43人)が胃がんになった。一方、除菌した人で胃がんになったのは1.1%(23人)で、除菌によって胃がんの発症が3分の1以下に抑えられた、
ピロリ菌は胃の粘膜に感染し、炎症や潰瘍につながる。胃潰瘍の治療では、薬による除菌が普及している。しかし、除菌で胃がん発症を予防できるかどうかはまだ明らかになっていなかった。胃がんはがんの死囚の第2位で、01年には約5万人が死亡した。浅香教授は「食生活などの生活習慣を改めるとともに除菌をすることで、胃がんの7、8割を抑えられる可能性がでてきた」と話している。
富永祐民・愛知県がんセンター名誉総長の話
大規模試験の結果であり、除菌の胃がん予防効果がほぼ証明されたと思う。今後は、発症するリスクが高い人など、どのような人を対象に除菌をするかを見極めなければならない。

内視鏡の映像警視庁が押収

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内視鏡を使った前立腺がん摘出手術をめぐり、東京慈恵会医科大学付属青戸病院の医師3人が業務上過失致死容疑で逮捕された事件で、内視鏡の映像が記録されていたことがわかった。主治医の長谷川太郎容疑者(34)らが記録目的で録画した。止血に手間取った様子などがビデオテープに収録されている。警視庁はこのテープを押収、男性患者(60)が死亡した経緯を解明している。捜査1課の調べでは、手術は昨年11月8日、体内の様子をモニター画面で見ながら進められた。医師3人は患部周辺の静脈の止血に手間取ったうえ、膀胱と尿道の縫合にも時間がかかり、大量出血した。ビデオにはこの様子が残されていた。長谷川容疑者は手術前の10月下旬、診療部長(52)業務上過失致死容疑で書類送検=から「経験のある医師に立ち会ってもらえ」と指導されたが、「自分たちだけでやってみたい」と訴え、許可を得ていた。

アレルギー体質、1日で判明 遺伝子検査キット開発

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アレルギーが発症する体質かどうかを判別する「遺伝子検査キット」を、岐阜大医学部小児病態学(小児科)の近藤直実教授と松井永子助手らのグループが開発した。大手検査会社ビー・エム・エル(本社・東京)を通じ、今年中に製品化する見通し。これまでは大規模な実験機器で1〜2週間かけて遺伝子の異常を判別していたがこのキットを使えば簡便に1日以内で結果がわかる。
一般病院などに普及すれば、発症予防に役立てられるようになる可能性があるという。
10月3日から岐阜市で開かれる日本小児アレルギー学会で、松井助手が開発経過を発表する。
アレルギー疾患では、ダニや食物などの抗原にリンパ球が反応して抗体ができ、この抗体が引き金となってヒスタミンなどの物質が生み出され、呼吸困難やかゆみの症状が出る。これらを抑制するために、抗原を認識する細胞からインターロイキン(IL)12やIL18というたんぱく質を活性化させる。たんぱく質がうまく働かないと、症状が悪化する原因になる。
近藤教授は「生まれてすぐ異常が分かれば、アレルギーの原因物質から遠ざけ、発症を予防することができるだろう」と話している。

市販薬で副作用死10人 3年間発毛剤、感冒薬でも

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発毛剤や総合感胃薬、鼻炎薬など薬局薬店で一般に市販されている薬品の副作用で亡くなった疑いのある人が、00年春からの3年余で計10人いると製薬会社から厚生労働省に報告されていることが26日、わかった。病院で処方される医療用医薬品による副作用死亡は年間約1200人いるが、一般薬が原因と疑われる死亡数が明らかになったのは初めて。
民主党の長妻昭衆院議員の質問主意書に、政府が答弁書を提出した。
答弁書などによると、発毛剤「リアップ」(成分名・ミノキシジル)を使用後、亡くなった男性が00年に3人いたと販売元の大正製薬から報告があった。
因果関係は不明という。
同薬は99年の発売直後から動機や胸痛などの副作用が500例以上報告された。99年末には外箱の説明書に狭心症、高血圧の人は注意するよう表示する措置がとられた。
総合感冒薬や鼻炎薬を使い、アレルギー性の発作のアナフィラキシーショックや、重い皮膚障害を起こして死亡した人は6人。肝硬変の女性が肝臓の働きをよくする漢方薬「小柴胡湯」を飲み、間質性肺炎を起こして亡くなった例も1件あった。
同省は「一般薬は、処方薬に比べて危険性は低いが、まれに重い副作用が起こることもある。注意書きをよく読んで、不調を感じたら飲むのをやめ、受診してほしい」と話している。

慈恵医大事件 難手術「やってみたい」逮捕の3医師学内手続き無視

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東京慈恵会医科大学付属青戸病院(東京都葛飾区)で手術を受けた男性(60)が死亡し、担当した斑目旬容疑者(38)ら医師3人が業務上過失致死容疑で逮捕された事件で、3人が手術前、許可する権限を持つ泌尿器科の診療部長(52)に対し「腹腔鏡手術をやってみたい。自分たちで研究したい」と求めていたことがわかった。
前立腺がん摘出のだめの腹腔鏡手術は難度が高いため、同大では五つある付属病院のうち、手術経験のあるベテラン医師が在籍する本院(港区)など3病院に限って実施し、青戸病院では認められていなかった。警視庁は、3人が助手としてか、動物実験しか経験したことのない手術をすることで、医師としての技術を向上させようとしたとみている。
また腹腔鏡手術は実施に際し、大学の倫理委員会と青戸病院内の部会での承認を得ることが内規で定められているが、斑目容疑者らはこの手続きを無視していた。
調べでは、男性は昨年9月、前立腺がんと診断され、同11月5日に入院した。主治医の長谷川太郎容疑者(34)は同日、患部の摘出方法として、男性本人と家族に対し、腹部に直径約1センチの穴を数カ所開けて内視鏡などを入れる腹腔鏡手術を行うことを説明した。しかし、この手術の難しさや命の危険が伴うことについて十分に説明しなかった。
男性側への説明に先立つ昨年10月下旬、手術の方法を決める泌尿器科内の会議があった。逮捕された3人は、腹腔鏡手術を採用し、助手としての経験が2度ある斑目容疑者を執刀医にすることを診療部長に提案した。この時「自分たちだけでやって(手術の)問題点を明らかにしたい」と求めたという。
診療部長これを了承し、「危なくなったら(安全な)開腹手術にしろよ」と指示した。部長は調べに「承認が必要とは知らなかった」と話しているという。病院によると、診療部長も前立腺がんの腹腔鏡手術の経験がなかったという。

出血危険「認識せず」手術中も発見遅れる

東京慈恵会医科大学付属青戸病院(東京都葛飾区)で腹腔鏡手術で前立腺がんの摘出を受けた男性(60)が死亡した事件で、業務上過失致死容疑で逮捕された医師3人がこの手術法では「大量出血の危険性があると認識していなかった」という趣旨の供述をしていることがわかった。男性は出血が長時間続き、出血性ショツク状態で心臓が停止した。警視庁は、手術中も出血に気づかず、より安全とされる開腹手術に変えるのが遅れたとみている。
捜査1課の調べでは、手術は昨年11月8日午前9時40分に始まった。手術は斑目旬(38)、長谷川太郎(34)、前田重孝(32)の3容疑者が担当した。患部周辺の静脈から出血したが止血に手間取り、患部摘出を終えたのは開始から9時間後の午後7時すぎ。この頃、出血量が多くなったという。
膀胱と尿道を縫合する段階で3人のうち1人が出血の多さに気づき、「開腹手術に変えるべきだ」と提案したが、続けた。
3人は調べに「患部摘出まではそんなに出血しているとは思わなかった」と話しているという。
警視庁は26日、泌尿器科の診療部長(52)と麻酔部の女性医師(38)、男性医師(30)の3人を業務上一過失致死容疑で書類送検した。

器具使い方知らず/業者が立ち会い マニュアル横目に執刀 慈恵医大ミス

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東京慈恵会医科大付属青戸病院(東京都葛飾区)で行われた前立腺がんの手術ミスで25日、同病院の医師3人が警視庁に逮捕された。腹腔鏡手術という難度の高い医療行為なのに、マニュアルを見ながらだったという。警視庁は医師に手術に関する知識、技量が不足していたと判断。医師の力量を問うという異例の強制捜査に踏み切り、病院などに家宅捜索に入った。
警視庁によると、男性患者を死なせた疑いで逮捕された斑目旬容疑者(38)ら3人の医師は器具の使い方が分からず手術室に業者を立ち会わせ、十分に用意しておくべき輸血も在庫がなかったという。
男性の手術は昨年11月8日午前9時40分に始まった。
逮補された医師は3人とも「腹腔鏡手術」の執刀経験はなかった。斑目容疑者は助手として数例立ち会ったことがあるだけだ。ほかの2人は動物実験での経験しかなかった。
3人は「腹腔鏡手術」のマニュアルを見ながら手術を進めた。手術に使う器具の使い方が分からなかった。器具メーカーの担当者を呼んで手術に立ち会わせ、途中で何度も聞いた。
途中で男性が大量に出血。止まらない。本来なら腹腔鏡式をやめ、開腹に早く切り替えなけれぱならない。開腹に変えたのは、手術開始から約11時間半後の午後9時25分だった。捜査幹部は「このケースなら遅くとも午後2時に変更するべきだった」という。
輸血の血液も足りなかった。今回のような手術には、細かい静脈が重なる部分にメスを入れるため、大量の出血が予想され、手術前に大量の輸血用血液を準備しておく必要があった。在庫の血液を使い切り、あわてて追加を注文した。手術は午後10時35分に終わった。
東京慈恵会医科大付属青戸病院
1938年に大島病院中川診療所として発足、86年から現在の名称になった。泌尿器科のほか循環器内科、外科など計20の診療科目があり、病床は390。東京都の2次救急医療機関に指定されている。
病院のホームページによると、泌尿器科の医療スタツフは和田鉄郎診療部長代行ら4人。和田部長代行が前立腺がんと尿路悪性腫瘍(しゅよう)を担当。前立腺がんの診療方針について「ホルモン療法、手術療法、放射線療法を各症例の病状、年齢に応じて行っている」と紹介している。

手術ミス医師3人逮捕 業務致死容疑がん患者死亡 慈恵医大青戸病院

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東京慈恵会医科大学付属青戸病院(東京都葛飾区、落合和彦病院長)で昨年11月、前立腺がん摘出のため「腹腔鏡手術」を受けた千葉県松戸市の男性(60)が1カ月後に死亡する事故があった。高度先進医療とされるこの手術法は、患者の体への負担が少ない一方、難度が高く、熟練した技術が求められるのに、未熟な医師が担当したことが原因とみて、警視庁は25日、執刀した泌尿器科の医師ら3人を業務上過失致死容疑で逮捕した。
警視庁は同日午前から、同病院の病院長室などがある管理棟や、泌尿器科医局などを家宅捜索している。手術を許可した診療部長(52)と麻麻酔部の2人の医師の計3人についても同容疑で書類送検する。1件の医療事故で6人もの医師が立件されるのは極めて異例だ。
逮捕に踏み切った理由を、捜査1課は?家族への説明などが不十分だった?別の手術方法を当初から検討しなかった?開腹手術にすれば死亡する可能性は低かったため、と説明している。
逮捕されたのは、いずれも泌尿器科医師で手術チームのリーダーの斑目旬(38)=品川区上大崎2丁目=、長谷川太郎(34)=練馬区田柄4丁目=、前田重孝(32)=杉並区阿佐谷北3丁目=の3容疑者。調べに対し、3人は「手術は成功すると思っていた。手術の結果、死亡したのは間違いない」などと話しているという。
調べでは、男性は前立腺がんと珍断され、昨年11月5日に入院。同8日に患部を摘出するため、腹腔鏡手術を受けた。手術中に長時間の出血が続き、出血性ショック状態から心停止状態になり、低酸素脳症に陥って12月8日に死亡した。病院は同日、警視庁に届けた。
斑目容疑者ら6人は、この腹腔鏡を使った手術を安全に行う知識や経験がなかった。技術不足のままこの方法を採れば、大量出血が起き、死亡する危険性があることを予見できたのに、より一般的な開腹手術をせず、男性を死なせた疑い。腹腔鏡手術を行う医師の要件について、日本内視鏡外科学会は?助手として10例以上?術者として指導者のもとで10例以上の経験を積んでいることなどを定めている。
ところが警視庁の調べで、斑目容疑者は助手としての経験が数度あるだけで、助手を務めた長谷川、前田の両容疑者は経験が験がまったくなかったことがわかった。
■腹腔鏡手術
開腹せずに小さな穴から内視鏡や手術器具を入れ、モニターを見ながら行う手術方法。前立腺がん早期の患者は高齢者が多いことから、重用される一方、患部を直接見られないため、技術も必要とされる。
内視鏡手術事故相次ぐ
内視鏡を使った手術は、術後の負担が少ないため増え続けている。半面、周辺を傷付けてしまうなどの事故も相次いでいる。
日本内視鏡外科学会が96年に改定した指針では、内視鏡による手術を行う医師は、経験豊かな指導者の下で、一般的な開胸、開腹手術を習得するほか、ビデオモニターに映る臓器の位置、構造を感覚的につかめるよう、適切なトレーニングを受けるよう勧告している。

院内で結核、3人死亡 患者・職員ら15人感染 茨城の病院

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茨城県保健予防課は24日、同県取手市戸頭の西間木病院(西間木秀雄院長)で入院患者や職員15人の結核感染が確認されたと発表した。うち86歳の男性患者1人が結核で死亡、また84歳と89歳の男性患者2人も結核が原因と見られる肺炎で死亡した。県は院内感染の疑いが強いとして、結核菌の遺伝子分析を進めている。
同課によると、6月に病院から結核患者が確認されたと報告があり、その後の検診で集団感染が確認された。15人のうち8人は70歳以上の入院患者。3人は8〜9月にかけて死亡した。残り7人は入院患者と接触していた看護師などだという。
このほかにも2人が結核の疑いがありうち1人は死亡しているという。

B型肝炎感染血を輸血 神奈川の病院 日赤が情報入力忘れ

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神奈川県赤十字血液センター(横浜市)で、B型肝炎ウイルス(HBV)の感染が判明した献血者の情報をコンピューターに人力し忘れ、その後、同じ献血者の血液が検査をすり抜けて患者に輸血されていたことが24日、わかった。輸血を受けた患者は今のところ、感染は確認されていないが、引き続き検査をしていく。日本赤十字社は全国約75の血液センターに情報管理の徹底を示した。日赤によると、今年4月、医療機関から輸血が原因と疑われるHBV感染の報告があった。同センターで調べたところ、昨年9月に献血した人の血液が使われており、保管していた血液を東京都赤十字血液センター(東京都渋谷区)に送った。高感度の検査で再検査した結果、感染がわかった。しかし、神奈川のセンターは、届いた再検査結果をセンター内の入力担当者らへ文書で伝えておらず、感染情報の入力漏れが生じたとう。また、献血者本人へも感染情報が知らされなかった。このため、今年7月、同じ献血者が再び献血し、検査で異常が見つからなかったため、8月に神奈川県内の病院で患者に輸血された。
この献血者は、感染後にウイルス量が大きく増加することがなく、通常の検査をすり抜けてしまう特殊な「低濃度キャリア」の感染者とみられるという。
神奈川県赤十字血液センターの諏訪城三所長は「患者と医療機関に迷惑をかけ申し訳ない。入力ミスがなぜ起こったのかを明らかにして、対策を立てたい」と話している。

心臓検査後72歳が死亡 帝京大病院

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東京都板橋区の帝京大医学部付属病院で9日、細い管を心臓の血管に入れて病気の有無を調べる「心臓カテーテル検査」を受けた都内の女性(72)が、4日後に死亡していたことがわかった。同病院から届け出を受けた板橋署は医療事故の可能性があるとして、司法解剖して死因を調べている。調べでは、検査は循環器科の医師ら3人が立ち会い、9日午前11時に始まった。カテーテル(導管)を女性の心臓左心室に入れたところ、血圧が低下するなど容体が急変した。その後、13日午前3時ごろ、死亡した。

院内感染防止 専任者を配置へ

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厚生労働省は18日、院内感染対策の一環として大学病院などに専任の担当者を置く方針を固めた。院内の態勢を把握し、責任を明確にするのがねらいで、今冬の実現を目指す。
配置するのは大学病院や国立がんセンター(東京都)など全国95の医療機関。
厚労省研究班による全国調査では、医師や看護師らが本来の仕事との兼務で感染対策マニュアルの改訂や施設の管理などを行っていることがわかり、研究班は「予防的な活動は十分とは言えない」と指摘していた。このため、厚労省は院内を巡回して態勢を確認したり、各科の調整役になったりする専任担当者の配置を省令で義務づけることにした。

歯科医師試験漏洩 元教授の有罪確定

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福島県郡山市の奥羽大を舞台にした歯科医師国家試験問題の漏洩(ろうえい)事件で、最高裁第三小法廷(浜田邦夫裁判長)は16日付で、歯科医師法違反の罪に問われた元北海道医療大教授上田五男被告(62)=懲戒解雇=の上告を棄却する決定をした。一、二審判決の懲役10カ月執行猶予3年が確定する。

名義貸し旭川医大は117人 53人は勤務実態なし

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国立旭川医科大学(北海道旭川市)は18日、「名義貸し」の学内調査を発表し、延べ128人が関係していたと明らかにした。勤務実態がないのに医療機関から報酬を受け取る「名義貸し」は53人。非常勤なのに常勤並みとして扱われ、健康保険証などの交付を受ける「名義貸し類似行為」に75人がかかわっていた。両方の行為に関係した医師も11人おり、実人員は117人。いずれも大学院生と研究生で、教員はいなかったという。
調査は、今年4月現在で在籍していた医師免許を持つ教員や学生471人と、学外に出た546人の計1017人が対象。期間は98〜02年度で、自己申告をまとめた。名義を借りていた医療機関は公立病院三つを含む46施設に及び、報酬は月2万〜数十万円だった。

厚労省方針自主回収取りやめ 処理済み血液製剤

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B型肝炎ウイルス(HBV)に汚染された献血血液が検査をすり抜けていた問題で、厚生労働省は17日、汚染された血液を原料に使っていても、ウイルスの感染力をなくす処理をした血液製剤は原則として日本赤十字社などに回収を求めない方針を固めた。
処理済みの血液製剤が原因の肝炎などの感染例が報告されておらず、この結論を出した。日赤は「微量のウイルスが混入しても製剤の安全性は確保されている」と回収しなくてもすむよう求めていた。
献血時の病原体検査で陽性となった人の過去の献血歴を調べる日赤の遡及調査で、HBVのすり抜けが37件報告されている。
献血血液からは、赤血球などの輸血用血液と、血友病や感染症等の治療に使われる血漿分画製剤ができる。今回、回収を求めない対象にしたのは血漿分画製剤で、不活化処理が導入されている。ただ、1千人から6万人の血奨を集めてつくるために1人分の汚染血液の混入でも全体に影響が出かねない、とされていた。輸血用血液は感染の危険が大きく、今後も回収の対象となる。

国立長野病院頭部連日手術15才死亡 綿残すミス麻酔重ねる

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長野県上田市緑が丘の国立長野病院(進藤政臣院長)が3日に行つた同内の男子中学生(15)の頭部手術で、血液吸収綿を残したまま縫合するミスがあり、翌4日、綿を取り除く手術で全身麻酔をしたところ中学生の心臓が一時停止し、15日になって死亡したことが分かった。病院から届け出を受けた上田署は、業務上過失致死容疑で関係者から事情を聴いている。病院側は「綿を残したことは明らかなミス」として遺族側に謝罪した。
病院や家族によると、右心室と左心室の間の壁に穴があり、3歳のころから東京女子医大の診察を受けていた。家族は「心臓に不安がある」と訴え、血液吸収綿の摘出手術の際にも「麻酔をたびたびかけて大丈夫か」と医師にも問い合わせていたという。
病院側は5日、厚生労働省関東信越厚生局と上田署に医療事故として報告。同署は15日に松本市の信大病院で司法解剖し死因を調べている。
同病院の村澤廣一庶務課長は「綿を頭部に残したことは明らかなミス。全身麻酔が死亡の原因となったかどうかは院内の医療安全委員会で調査している。患者が亡くなられたことば申し訳ない」と話す。翌日の手術についてあh「緊急ではないが、早く綿を取り除かないと感染のおそれがあるため急いだ」と説明した。
長野県上田市緑が丘の国立長野病院(進藤政臣院長)が3日に行つた同内の男子中学生(15)の頭部手術で、血液吸収綿を残したまま縫合するミスがあり、翌4日、綿を取り除く手術で全身麻酔をしたところ中学生の心臓が一時停止し、15日になって死亡したことが分かった。病院から届け出を受けた上田署は、業務上過失致死容疑で関係者から事情を聴いている。病院側は「綿を残したことは明らかなミス」として遺族側に謝罪した。
病院や家族によると、右心室と左心室の間の壁に穴があり、3歳のころから東京女子医大の診察を受けていた。家族は「心臓に不安がある」と訴え、血液吸収綿の摘出手術の際にも「麻酔をたびたびかけて大丈夫か」と医師にも問い合わせていたという。
病院側は5日、厚生労働省関東信越厚生局と上田署に医療事故として報告。同署は15日に松本市の信大病院で司法解剖し死因を調べている。
同病院の村澤廣一庶務課長は「綿を頭部に残したことは明らかなミス。全身麻酔が死亡の原因となったかどうかは院内の医療安全委員会で調査している。患者が亡くなられたことば申し訳ない」と話す。翌日の手術についてあh「緊急ではないが、早く綿を取り除かないと感染のおそれがあるため急いだ」と説明した。

乳がん診断 X線撮影装置半数が基準外 異常見逃す恐れ

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国内で使われている乳房X線撮影(マンモグラフィー)装置のうち、厚生労働省の指針が定める使用基準を満たさない古い装置が半数近くを占めていることが、明らかになった。基準外の装置でで撮影すると画像が不鮮明になることがあり、技量のある技師が撮影しないと乳がんを見逃す可能性が高くなる。厚労省は、X線撮影を全面的に導入する方針だが、仕様基準を満たしていない市町村の検診センターもあり、態勢の整備が急がれる。
日本乳癌検診学会などが作る「マンモグラフィ検診精度管理中央委員会(精中委)」のまとめによると、02年12月現在、全国に約2830台ある装置のうち、基準を満たしていない装置は約1400台に上った。市町村立の病院などが多く、大学病院も約30施設(分院含む)あった。
基準は日本医学放射線学会が定めたものを00年3月、厚労省が指針として採り入れた。線量を安定させる装置の装備など9項目ある。8社27機種が基準に合格している。
基準に満たない装置は古い機種がほとんどで、現在は販売されていない。
精中委の教育・研修委員会委員長を務める国立名古屋病院放射線科の遠藤登喜子医師によると、技師の技量にもよるが、基準外の装置は線量が一定でなかったり、弱かったりすることから、ぼやっとした画像になることがあるという。「検診で要精密検査となっても、精密検査を担当する病院のX線撮影がずさんで、『異常なし』とされる例も多い」と指摘する。
市民の集団検診を実施する千葉県内の検診センターでは、10年前に購入した基準外の装置を使用している。担当者は「毎年点検はしているが、古くなれば性能は悪くなるのあは確か。自動現像器もないため、画質の維持に苦労している」と認める。ただ、X線撮影装置は1台約1千万円と高価なため、すぐに買い替えられないという。
装置が基準を満たしていても、技師の腕などにより、画質が悪い場合も
多い。精中委では01年6月から、各医療機関の撮影フィルムを点数化し、合格点に達した医療機関を認定施設としているが、認定施設は全国に約180施設しかない。
市町村での整備は限界
<解説>厚生労働省が98年にまとめたがん検診の有効性評価では、マンモグラフィーを併用する検診のみが「死亡率を減少させる効果がある」とされた。
厚労省は、視触診単独の検診を廃止し、X線撮影を全面的に導入するなどの改革に乗り出した。
X線撮影は
1、撮影技員をもった診療放射線技師
2、x線写真を分析(読影)する技量をもった医師
3、仕様基準を満たす装置の3点がそろって、初めて効果を発揮する。
装置が古くても、撮影技術である程度はカバーできるが、それだけがん
の判明率は下がるとみられる。また乳腺が発達している若い世代は、X線撮影より超音波(エコー)検診の方が効果があるという専門家もいる。
厚労省は、専門家による検討会を10月にも開き、新たな検診方法を年内にも通知する。使用基準を満たさない装置については、検診で使うことは難しいだろう。
現在、検診の実施主体は市町村だが、単独で3点セットをそろえるのは不可能だ。国の支援を得て、個別検診と集団検診を併用しながら、県単位などで検診態勢を整備することが求められる。

B型肝炎ウイルスが混入 血液製剤回収指示

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厚生労働省は13日、原料の血液にB型肝炎ウイルス(HBV)が混入していたとして、日本赤十字社と日本製薬に対し、血液製剤約5万6千本を自主回収するよう指示した。この血液製剤は、加熱処理などがされており、厚労省は「感染の危険性は極めて低いが、万全を期すための措置」としている。
厚労省によると、01年2月に輸血された50代の男性がHBVに感染したとの連絡が医療機関からあつたと、今年8月に日本赤十字社から同省に報告された。保管されていた当時の献血者の血液を再検査したところ、HBVが検出された。この献血者の血漿が、血液製剤の原料に使われていた。

腸管洗浄剤で6人死亡

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腸内視鏡枚査や大腸の手術前に使われる腸管洗浄剤「ニフレック」などの服用で腸管に穴があいたり、腸閉塞の副作用を起こしたりして11年間に6人が死亡したことがわかり、厚生労働省は10日、「味の素ファルマ」(東京都中央区)など製造元の製薬会社5社に対し、医師や医療機関に飲み方や経過観察の注意を促す「緊急安全性情報」を出すよう指示した。
同薬剤は年間165万人が使用、検査や手術の数時間前や前日に粉末を2リットルの水に溶かして2時間かけて飲む。
同省への報告によると、副作用を起こしたのは発売された92年以降、18人。このうち、腹痛をがまんして飲んだ80代の男性がS状結腸が裂けて8日後に亡くなるなど70、80代の6人が死亡した。腫瘍や閉塞で狭くなった腸管に服用で圧力がかかり穴が開くなどしたため、とみられる。
同省は製薬会社に対して、腸閉塞の疑いがある患者には投与を禁止し、排便後も腹痛を訴えた場合は腸管に穴があく穿孔などを疑って検査するよう医師に求める注意事項を添付文書に追加するよう示した。特に高齢者は服用前に排便状況を確認しだり、服用時間を3時間にすることなどが必要だとしている。自宅で服用する患者も多いため、患者向けの注意点をまとめた説明文書も作成される。

特養で事故死、届けず 中野「併設病院で事故死」装う

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東京都中野区にある社会福祉法人の特別養護老人ホームで先月、入所していた女性(78)が食事をのどに詰まらせて死亡したにもかかわらず、施設側が警察や区役所に事故死の届けをしていなかったことが9日、分かった。施設側は、同じ法人が運営する病院に遺体を搬送し、病院もホームでなく、院内で急死したように死亡診断書を作成していた。
警視庁野方署は、女性が死亡した経緯について施設側から事情を聴く。
事故があったのは、中野区江古田2丁目の社会福祉法人「中野友愛ホーム」。医療機関として「武蔵野療園病院」を併設している。
法人の説明や、関係者によると、事故があったのは8月2日朝。女性は親族の一人と一緒に午前7時すぎから、自室で食事をとっていた。
同8時10分ごろ、職員が部屋を見回ったところ親族はおらず、女性がべッドでぐったりしていた。食事をのどにつまらせ、心肺停止状態だった。職員は、隣接する病院の医師らに連絡。のどからの吸引など救命措置を行ったが、8時半ごろ、自室で医師が死亡確認した。
しかし、関係者によると、法人幹部が「施設で起きたことが分かると管理責任が問われる。病院で死亡したことにする」と職員らに指示。死亡確認から1時間近くたって、女性を急患として病院へ搬送、午後に霊安室から出棺した。
死亡診断書の死亡場所は「病院」。死亡時刻は、まだ自室にいた「8時30分」になっている。死因は、呼吸不全となっていた。
厚生労働省老健局は「事故死として、警察に届け出るべきケースだ」としている。
法人は、9日までに中野区に、女性が事故死だったことを報告。法人幹部は「職員か関与しておらず、介護中の事故だという認識はなかった。死亡診断書には、不自然な点もあり、内部調査したい」と話している。

都立病院機器不具合で2児死亡 医師・業者ら書類送検

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東京都立豊島病院(板橋区)で00年11月と01年3月、人工呼吸中に乳児2人が死亡した事故で、警視庁は9日、同病院の医師と看護師、人工呼吸に使った器具の製造会社と輸入会社の幹部ら計9人を業務上過失致死容疑で書類送検した。乳児2人は、2種類の器具の接続不具合が原因で呼吸困難になって死亡したとみられる。警視庁は、医師らが器具接続の際に安全確認を怠ったことと、両社が器具の危険性を知りながら対策を取らなかったことが重なり事故につながったと判断した。
書類送検されたのは、豊島病院小児科の男性医師(39)ら医師3人と女性看護師2人、文京区の医療器具製造会社「アコマ医科工業」の事故当時の専務(44)ら役員2人、世田谷区の医療器具輸入販売会社「タイコヘルスケアジャパン」(旧マリンクロットジャパン)の幹部2人の計9人。都立豊島病院を管轄する都病院経営本部は「改めて患者さんのご冥福を祈るとともに、遺族にお悔やみ申し上げる。今後一層予防に努め、都民の皆様からの信頼に応えられるよう全力をあげていきたい」との談話を出した。

乳癌「視触診のみ」廃止検診見直し厚労省方針 X線、40代から

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見落としが続いている乳がん検診のあり方について、厚生労働省は、視触診のみの検診を廃止して乳房X線撮影(マンモグラフィー)を全面的に導入するなど大幅に見直す方針を固めた。近く専門家を集めた検討会を立ち上げ、今年中に結論を出して全国に通知する。現在、半数近い市町村で、乳房を触ってしこりの有無を調べる視触診のみの検診が行われているが、このままでは見落としが頻発しかねないと、見直しに踏み切った。厚労省が00年度にまとめたがん検診の有効性評価では、視触診だけの検診は「死亡率を減らす効果がない」とされた。だが、視触診だけの検診を受けた人は01年度に283万人に上るのに対し、「効果がある」とされるX線撮影と視触診の併用検診を受けた人は45万人にとどまっている。
産婦人科や整形外科など専門外の医師が視触診検診に携わることが多く、今夏、相次ぐ見落とし例が問題になった。厚労省は、05年度からけ老人保健第5次計画を前倒しして、検診を見直す必要があると判断した。まず視触診のみの検診については「効果がない」とし、事実上の廃止を求める。この指導は法的根拠はないが、「効果がない」とされた検診を続ける自治体は来年度からなくなるとみている。従来、視触診検診にあたっていた専門以外の診療所などは、検診ができなくなる可能性かある。
一方、50歳以上を対象としていたX線撮影と視触診の併用検診については、40歳以上に引き下げる方向で専門家の意見を聞く。米国やオーストラリアなどは、X線撮影単独か、視触診との併用を40歳以上の検診に義務づけており、世界的な水準に追いつくことになる。なお、30代の検診については、X撮影よりも超音波(エコー)検査の方ががんを発見しやすいとする専門家もおり、どのような検診にするか、専門家の判断を仰ぐ。今後、X線撮影の全面導入には解決すべき問題が少なくない。
ひとつは技量だ。厚労省は、X線撮影検診について、乳房の撮影にたけた診療放射線技師や画像を分析する読影能力のある医師に限定していく方針だ。
現在、日本乳癌学会などでつくるマンモグラフイ検診精度管理中央委員会が、読影能力の高い技師の資格制度を設けている。しかし、技量の高いA、B級の医師、技師は都市部や大病院に集中しており、さらなる有資格者の養成も検討していく。
また、財政的には1台3千万円以上するといわれるX線撮影の機器をどう整備するかの態勢づくりが課題だ。厚労省は、そのための財源や、市町村の検診費負担などについて、地方交付税を握る総務省との折衝を始めている。新たな財源が必要かどうかも検討する。

乳がん検診

乳がんにかかる人は98年度に年間約3万3600人(推計)に達し、女性では胃がんを抜いてトップ。乳がん検診は87年から老人保健法に基づいて義務づけられ、30歳以上を対象に主に視触診が実施されてきた。だが、視触診のみの検診はがん発見につながらないとし、厚労省は98年から法的な義務づけをはずすと同時に補助金を廃止した。現在は各市町村の判断で実施され、半数近い市町村で視触診のみの検診が続いている。01年度の受診率は12.3%。

薬効かぬHIV拡大 厚労省、対策乗り出す

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発症を抑えるための薬が効かないエイズウイルス(薬剤耐性HIV)が国内でも広がっていることが分かり、厚生労働省の研究班による対策会議は6日、対策の柱を決めた。発生状況の把握▽検査態勢の整備と精度向上▽感染者の中途半端な服薬を防ぐための支援▽適切な薬を医師が選べるようにする指針作りの4項目が中心になる。厚労省は来年度から、約1億円を出して耐性対策を具体化させる。
HIVは完全に消滅させることはできないが、ウイルスの増殖を抑えることで、エイズの発症を遅らせることができる。日本には現在、抗ウイルス薬が20種類近くあり、97年以降、3、4種類を同時にのむ多剤併用療法が治療の主流だ。
この療法により、感染者の死亡率は大幅に低下したが、薬剤耐性HIVが広まれば、治療が困難になる恐れがある。薬剤耐性HIVは治療中の感染者の体内で突然変異により生まれ、薬ののみ忘れなどで増える。欧米ではすでに新規感染者の1〜2割が耐性ウイルスを持っているとみられ、問題化している。
日本でも数年前から特定の薬が効かず、薬の選択に行き詰まる例が出てきた。この8月、全国14のHIV治療ブロック拠点病院を対象にした調査では、約半数の病院が「耐性ウイルスは増えていると思う」と答えた。薬剤耐性HIVは治療前の感染者からも見つかり始めている。国立国際医療センター(東京)が01年と02年に治療前の感染者138人でウイルスの遺伝子を調べたところ、4%から薬剤耐性を引き起こすと見られる変異が見つかった。
耐性検査は健康保険が適用されず、治療効果が上がらないときに医師が任意で実施している状態。検査数が増えれば対応できなくなる恐れがある。
《解説》日本に多剤併用療法が導入されて7年、早くも薬の効かないエイズウイルス(薬剤耐性HIV)が広がりを見せている背景には、副作用のある薬を規則正しく、生涯、服用することの難しさがある。
薬ののみ方は様々だ。1日3回空腹時に計18錠、1日2回食後に計16錠などが代表的で、のみ忘れが起きやすい。吐き気や下痢などの副作用が出ることも多い。社会生活を送るうちに、服用をやめてしまう人もいる。HIVはもともと突然変異を起こしやすいこともあり、服用を忘れると、耐性HIVが増殖しやすい状態になる。
薬剤耐性HIVによって治療効果が上がらないときは、どの薬が効かないのか検査で見極めてから、薬を切り替える必要がある。また、治療を始める前にも検査をしてから薬剤を選ぶのが望ましい。しかし、現状では医師によって対応がバラバラで、適切な薬が処方されていない例もあるという。
検査精度を上げていく必要もある。現在、遺伝子の変異で耐性を推測する方法が検査の主流になっている。地方のブロック拠点病院でも遺伝子の変異を調べる検査ができるようになってきたが、どの部分の変異がどの薬の耐性につながるかの解明は日進月歩で、医療機関で最新の情報を共有する仕組みが欠かせない。

名義貸し次々発覚「医大頼り」過疎地の現実 「花形」教授に顧問料

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花形教授への年間900万円の顧問料、商品券、カニ、サケなどの付け届け。277人にのぼる医師の「名義貸し」。北海道大学医学部が揺れている。医局によっては名義貸しが組織ぐるみだったことも分かつた。ドミノ倒しのように明るみに出た実態は、医局の支配、過疎地の医師不足を浮き彫りにした。
藤堂省第一外科教授(55)は96年、北大教授ヘの就任をいったん断っている。
脳死肝移植の研究・臨床で先端を走る米ピッツバーグ大教授だった。3千万円の年収、1億円の研究費。家族も米国で暮らし、子ども3人のうち2人は医大生になっていた。養育費に年1千万円かかる。北大教授になっても年収は1千万円強と、待遇の差は歴然としていた。当時は米マイアミ大からも年収5干万円程度の条件で移籍の誘いもあった。
しかし北大側はあきらめなかった。97年に臓器移植法の施行が見込まれ、移植医療が脚光を浴びていた。そこで学内の支援者らが副収入の「兼業」(顧問契約)を持ちかけたようだ。
藤堂教授も「移植のため渡米する日本人患者を自らの手で何とかしたい」との思いがあった。同年1月、第一外科医局のトップとして移籍した。
第一外科では、歴代教授が医師派遣先と顧問契約を結ぶ仕組みがすでにあった。藤堂教授には、四つの病院から1年間で計900万円、6年間で総額5400万円が支払われた。教授は医師派遣に関する人事権も握っている。派遣先の病院は、従来から続く付け屈けも怠らなかった。
長万部町立病院(63床)は、医師の「名義借り」も第一外科医局に頼った。02年に一般病床の一部を療養型病床に変更する際、医師の確保が必要になった。医療法で定める医師標準数を下回っていたためだ。医局から医師3人の名義を借り、3カ月で5日しか勤務していないのに「常勤医」として扱い、月50万円の給与3カ月分、計450万円を支払った。
同病院は第一外科医局の同窓会組織・楡刀会基金にも、「諸会費」として過去10年以上、年100万円ずつ提供していた。同基金には判明しただけで、道内10を超す自治体が「負担金」「助成金」「賛助金」など様々な名目で年約2500万円の「寄付」をしていたのが分かっている。
地方の病院が大学に医師派遣を頼るのは、慢性的な医師不足があるからだ。
道が02年3月、20床以上の道内の公立、民間病院計637施設を調べたところ、45%、291施設が医療法で定める医師標準数を満たしていなかった。「派遣の継続性と医師の質を考えれば医大が一番頼りになる。顧問料や助成金は『必要経費』と考えている」と道東の町幹部はいう。
第一外科の医局側も20近いへき地病院に医師派遺を続け、長年、地域医療を支えた自負がある。あるOBは「国の講座(研究)費は約300万円。実験動物費で消える。医局運営には年数千万円かかる。いい医者の育成にはそれなりの金は必要で、派遣先にある程度手助けされても不自然ではないのでは」という。

「医局で調整」教授証言

北大の第二内科や第二外科でも37人と35人が「名義貸し」をしていたことが判明した。北大の調査で計277人が名義貸しをし、関係する病院は120にのぼっており、第二内科が人数では最多だった。
第二内科の小池隆夫教授(55)は5日、名義貸ししに関し「不公平がないよう(医局内で)調整があった」と述ベ、だれをどの病院に名義貸しするか、医局が調整していたことを認めた。第二外科の加藤紘之教授(62)は「なれあいの中で続けてきた。教室の主宰者として(名義貸しは)僕に責任がある」。
藤堂教授も「いろんな(医局の)ひずみをないがしろにして乗っかってしまった」と話す。
「名義貸し」は東北大でも判明するなど広がりを見せている。
文部科学省は「医療や大学への信頼を裏切る問題だ」として5日、医学系の学部などがある全国79大学に実態調査をするよう通知した。

X線撮影は5割止まり 乳がん検診、市区町村は

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自治体の乳がん検診で、がんを発見するのに有効と認められている乳房X線撮影(マンモグラフィー)と視触診の併用検診を実施している市区町村は、全国で5割にとどまることが朝日新聞社の調べでわかった。国は00年、各自治体にマンモグラフィーによる検診を促したが、半数近くは今も「効果がない」とされる視触診だけの検診に頼っていることになる。検診にあたる医師を国の指針に沿った技量の持ち主に限定するよう指導している都道府県が少ない実態もわかった。
87年から老人保健法に基づいて導入された乳がん検診は、ほとんどの自治体で30歳以上の女性を対象に受診を呼びかけ、希望者に実施されてきた。当初は多くが視触診のみだったが、厚生省(当時)の研究班が98年、視触診単独では効果がないと、マンモグラフィー導入の必要性を報告した。同省は00年、50歳以上については原則として2年に1回、マンモグラフィー検診を実施するよう指針を出した。
朝日新聞社が47都道府県に各市区町村の検診実態を聞いたところ、調査した3220の市区町村のうち、マンモグラフィーを導入しているのは1691(一部01、02年度実績)。全市区町村の53%にあたり、国が指針を出した直後の01年度の40%から、13ポイントしか上がっていない。
県内全市町村でマンモグラフィーを導入しているのは山形と富山のみ。導入数が0の高知、2町村の山口のほか東京や大阪、兵庫、福岡など都市部の導入率が低く、自治体間の格差が大きい。
導入が進まない理由として、財政難を挙げるところが多かった。98年、検診費用の国庫補助が廃止されたことが背景にある。またマンモグラフィーは1台3千万円以上。搭載した検診車は1台約5千万〜6千万円という。
一方、マンモグラフィーの導入とともに、検診医には写真を分析する「読影」の専門知識が必要となる。日本乳癌検診学会などが作る「マンモグラフィ検診精度管理中央委員会」は、試験で十分な読影能力があると認めた医師をA、B級などとして認定している。
国の指針は、検診にあたる読影医は同委員会の講習会を修了することが望ましいとしているが、読影医をA、B級取得の医師に限るよう市区町村に指導している都道府県は7だけ。「資格をもつ医師が少なく、限定すると検診事業自体が成り立たなくなる」(岐阜)などの声もあった。
また読影は2人以上の医師が行うことと指針で定めているがこれを受け、要綱を定めるなど独自に市区町村を指導している都道府県は27だった。
厚労省によると、自治体の乳がん検診の受診率は01年度で12.3%で、実施していない自治体もある。

マンモグラフィー

乳房専用のX線撮影装置。乳房の上下、左右をそれぞれ板で挟んだ状態で撮影する。視触診や超音波検診で見つけにくい微小な白い粒(石灰化=がん組織が壊死〈えし〉したものなど)や腫瘍(しゅよう)が写り、これがもとでがんが見つかることがある。厚労省の研究班によると、米国や英仏など欧米ではマンモグラフィーによる検診制度が主流。

東大病院輸血ミス 国・都立ち入り検査

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東京大学医学部付属病院(東京都文京区)で手術中の輸血ミスで患者が重体になった事故で、厚生労働省と東京都は3日、東大病院に臨時の立ち入り検査をした。事故現場の手術室を調べたほか、輸血機器を操作した研修医らから安全管理の態勢などを聴いた。結果を受けて、厚労省は文書などで指導する方針。

東大病院 輸血ミス、意識不明

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東京大学医学部付属病院(東京都文京区)は2日、肝臓の手術を受けていた20歳代の女性患者に輸血中、誤って血管へ空気を注入する医療ミスをし、心停止状態になったと発表した。女性は自発呼吸は戻ったが、意識はなく、集中治療室で治療を受けている。病院は家族に謝罪し、警視庁本富士署に届け出た。
病院によると、手術は1日午前あった。大量に
輸血するるポンプつきの機器を使って手術した。しかし手術開始から二十数分後、患者に不整脈が出ていることに気づき、輸血ルートから空気が入っていることが分かった。
輸血量や輸液を送る管などは、麻酔の専門医(43)が設定した。しかし、手術開始から間もなく、この医師は他の手術状況を確認するため、現場を離れた。その間に、執刀医が、卒後1年目の研修医(24)へ「輸血量を増やすように示した」という。研修医が、機器の設定を変えたところ、何らかの理由で空気が混入したとみられるという。研修医は、操作するのは初めてで、病院の規定でも、研修医は機器に触れないように決められていた。

血液製剤に菌、患者死亡 日赤「因果関係不明」慈恵医大柏病院

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慈恵医大付属柏病院(千葉県柏市)で00年3月、50代の男性に輸血された日本赤十字社の血小板製剤に肺炎球菌が混入していたことが分かった。患者は輸血後間もなく死亡。同病院は血小板製剤に入っていた同菌が引き起こしたショック死とみている。日赤は菌の混入は認めているが、死亡との因果関係は不明としている。
男性は、骨髄の病気で99年から血小板製剤の輸血を外来で受けていた。
00年3月の輸血直後から吐き気や胸痛を訴えてショック状態になり、約9時間後に死亡した。輸血に使われた製剤と日赤に保存されていた献血者の血液を調べると、大量の肺炎球菌が検出され、遺伝子的にも同一の菌株と判明。さらに患者の肝臓の組織片からこの菌株の遺伝子が検出され、菌の感染が原因とみられる病変もあった。
同病院は、肺炎球菌に汚染された血小板製剤が原因によるショック死だと今年6月に日本臨床血液学会誌に発表した。
日赤は「混入の原因ば不明だが、肺炎球菌が入っていたことは否定できない。ただ、輸血から短時間で男性が死亡しており、菌が体内で増殖して死因となったかどうかは不明」と説明している。
血小板製剤に細菌が混入する原因には、採血時の汚染や、献血者が細菌感染症を発症していたことなどが考えられる。肺炎球菌は人の口や鼻の中に存在するが、皮膚に存在する菌ではないため、採血時の汚染は考えにくいという。

関節リウマチ「強い薬、早い段階で」厚労省班 積極治療転換へ指針

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関節リウマチの標準的な治療法を倹討してきた厚生労働省研究班の指針が固まった。効果の穏やかな薬を優先した従来の考え方を転換し、早い段階から効果の強い薬を積極的に使うことを打ち出す。これにより、関節が壊れるのを遅らせることが期待できる。指針は全国での治療のばらつきを減らすのが目的で、将来は患者への説明資料としても活用していく。
指針は越智隆弘・国立相模原病院長を主任研究者に、関節リウマチ治療の専門家らがまとめた。
関節リウマチは全身の関節が炎症を起こして壊れていく病気。強い痛みを伴う。これまで、比較的副作用の少ない「抗炎症薬」などを飲み、効果が足りなければ徐々に強い薬に変えていく治療が主流だっだ。だがこの方法では関節が壊れていくのを防げない。免疫の異常を抑える「抗リウマチ薬」をより早く使った方が、関節への障害を遅らせて生活の質を保つ効果が高いことが複数の臨床試験で分かってきた。
このため研究班はメトトレキサートといった抗リウマチ薬をできるだけ早く使うことを勧める。
一方、遺伝子組み換え技術で作られ、7月に関節リウマチ用に承認された新しい薬インフリキシマブについては、有効性があるが副作用のリスクも伴うことなどから「メトトレキサートを3カ月以上使っても十分効果が得られない例に点滴で投与する」としている。
米国の指針も同様で、抗リウマチ薬を「診断から3カ月以内に始めるべきだ」としている。
この病気は免疫の異常がかかわるとされるが原因はよく分からず、根本的な治療法は見つかっていない。国内患者は約70万人と推定されている。
越智病院長は「いずれは患者向けの分かりやすい指針も作り、治療法を選ぶ参考にしてもらいたい」と話している。

義借り「裏金」4000万円 国立療養所帯広病院4年間経費に充てる

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北海道帯広市の国立療養所帯広病院(270床)が、道立札幌医科大学第二外科の医師から「名義貸し」を受け、95年から4年間に国から支給される総額4千万円以上の給与を「裏金」としてプールしていたことが、30日までに分かった。名義を借りた医師は勤務実態がなく、金は備品の購入など病院の経費に充てていたという。裏金の捻出に名義貸が使われていたのか判明するのは初めて。
病院によると、名義を借りていたのは1人で、期間は95年4月〜99年6月の4年2カ月。医師の給与は年1千万円程度で、全額を別の会計に移していたという。
この医師の勤務形態について病院は保健所に「常勤医」と届け出て、医師が健康保険証の給付を受けられるよう使宜を図つていたとされる。プール金は99年7月以降は廃止したという。
今年4月の札幌医大の学内調査で同病院への
「名義貸し」が発覚。厚生労働省の出先機関、北海道厚生局が給与などの支出を調べるなかで裏金
が判明した。99年以前の会計書類が残っていないため、当時の事務長らに事情を聴いている。

師の名義貸し 東北大でも6人

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医学系の大学に所属する医師が、勤務実態がないのに民間病院などで常勤医として扱われる名義貸し問題で、東北大(仙台市)でも医師6人が東北地方の民間病院に名義を貸し出していたことがわかった。
同大は9月初めに学内に調査委員会を設置、医師全員を調査する。文部科学省には27日に報告した。
名義貸しが発覚したのは、同大大学院・医学系研究科の外科病態学講座の大学院生の医師6人。6人は仙台市内の1カ所と、青森県東部の5カ所の計六つの民間病院に常勤医として登録していたが、実際はアルバイト医師として週1回の勤務で、報酬は十数万円だったという。
健康保険証の交付を受けていた例もあり、東北
大は今後、名義貸しが行われた経緯などを調査する。玉井信・医学系研究科長は「名義貸しはかなり前から行われていたようだ。もっと早くわからなかったのが残念だ」と話している。

日医大、東邦大がセカンドオピニオン窓口を開設

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9月1日、日本医科大付属病院と東邦大大森病院の二つの特定機能病院がセカンドオピニオン専用窓口を開設する。全国の大規模病院で同様の動きが加速しそうだ。
日医大の名称は「セカンドオピニオン外来」。放射線科、小児科、整形外科、心臓血管外科、循環器内科、消化器科、老人科などが対象範囲。水曜日午前、木曜日午前午後、金曜日午前に専用の診療室で対応する。
東邦大は「セカンドオピニオンセンター」と名付けた。対象範囲は、消化器センター内科、消化器センター外科、循環器センター内科など29科と広い。月、水、金曜日の午後2時から時間枠を設定した。
両院とも、現在受診している医師の了解を得て紹介状や検査データなどを持参することが原則で、完全予約制。相談は基本的に教授や部長クラスなど経験豊富な医師が対応する。対象は家族か患者本人。元の医師に戻って治療することが前提となっている。料金は保険外の扱いで、全額患者自己負担(日医大30分2万円、東邦大30分1万円)。
日医大病院長の隈崎達夫氏は「事前に資料を送付してもらい、必要ならば複数の医師が前もって相談するなど、内容の濃いものにしたい」と抱負を語る。東邦大病院長の小山信彌氏は「患者サービス強化の一環。患者が治療を選択するサポートをしたい」と意味付けを述べる。
両院の動きは、東京都の「特定機能病院医療連携推進協議会」の動きと呼応したもの。都内の13の特定機能病院が参加する同協議会は、昨年から数回にわたり特定機能病院でのセカンドオピニオンのあり方について議論してきた。東京都健康局医療政策部の筒井健治氏は「他の病院も追随するだろう」と見通しを語る。
東京都は10月11日、都庁都民ホールで「セカンドオピニオンの推進〜患者が選択できる開かれた医療に向けて〜」と題した公開シンポジウムを行う。ここで東邦大窓口における最初の1カ月の成果が披露される見込みだ。

インフルエンザワクチン肝機能など副作用報告

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インフルエンザの予防接種に使われる「インフルエンザHAワクチン」によって、98年から今年4月までに副作用とみられる肝機能障害が9人、ぜんそく発作が11人出ているとの報告があり、厚生労働省は28日、医療機関に注意を呼びかけた。厚労省によると、肝機能障害の9人は50代以上で、うち2人が死亡。ぜんそく発作の11人は10歳未満が2人、10代と20代が各1人で、残りは50代以上。死亡例はなかった。
また、インフルエンザ治療薬の「リン酸オセルタミビル」(販売名・タミフル、輸入販売元・中外製薬)で、01年4月から今年5月までに、副作用とみられる急性腎不全が7人、白血球減少と血小板減少が19人報告された。死亡例はなかった。同薬の昨年度の使用患者は推定538万人。

東京都のインシデント・アクシデント収集活用事業に166病院が参加表明

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東京都は8月28日、9月から開始する医療安全推進事業に、166病院が参加意向を表明していることを明らかにした。都は「東京発医療改革」プロジェクトの一環として、医療現場で発生した事故事例(インシデント・アクシデント事例)を収集、分析し、病院にフィードバックすることで安全対策を向上させる事業を9月1日から3年間にわたって実施する。東京都医師会、東京都病院協会と共同で参加病院を募集した結果、8月26日現在で、166病院が参加意向を表明している。
参加病院は、インシデント・アクシデント事例のデータを、行政から独立して設置される「東京都医療安全推進事業評価委員会」に提出する。この委員会は病院代表、弁護士、学識経験者などで構成されていて、データ分析、事例のデータベース化、対策の検討などを行う。分析結果を基にチェックリストを作成し、各ケースを報告した病院にフィードバックし、安全対策を促す。全病院で情報を共有すべき事例については、詳細な分析を行ったうえで、改善策を提言として、提示するという。3年間の実施期間に収集された事例から、医療事故防止マニュアルと白書を作成し、都内全病院に配布する。東京都では、行政が関与した事故事例収集・活用の試みとしては、国内初の取り組みだとしている。
プレスリリースはhttp://www.kenkou.metro.tokyo.jp/ian/news/pressian030828.html

食肉からのE型肝炎感染相次ぎ、厚労省が啓発を強化

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北海道大医学部第一外科医局の藤堂省教授(55)に、同医局から医師派遣を受ける三つの公立病院から6年間に総額4千万円を超す顧問料が支払われていたことが分かった。藤堂教授は臓器移植の第一人者で、国内の脳死肝移植の多くで臓器摘出チームの総括役を務めている。
北大は「顧問契約の実態がどうだったか事実関係を調べたい」としている。
北大によると、顧問料を出していたのは北海道内の厚岸町立厚岸病院、長万部町立病院、羅臼町国保病院。3病院合わせて年720万円。名目は「診療アドバイザー」で、内容は派遣医への技術指導や病院経営の指導など。勤務は「月1回、1時間程度」とされている。しかし、藤堂教授は長万部町立病院には1度も訪問していなかった。同病院では00年4月から3カ月間、同医局の医師3人から「名義貸し」を受け、計450万円の報酬を支払っていた。ほかの病院への訪問は年3回程度だったという。
厚岸病院は「顧問料」として月20万円を計上しているが、北大と結んだ契約の報酬額は月10万円。上乗せした「ヤミ顧間料」は6年間で計720万円にのぼる。
同病院は「医局との関係維持のため、以前から『顧問契約』を結んでいるが、当初からお手盛りを続けていだのだと思う。町民に説明できない支出なので、今年4月から上乗せ分は廃止した」と説明している。
藤堂教授は「ヤミ顧問料」について「そうした認識はない」と話した。
顧問契約について「教授に就任した当初、医局内で『顧問契約をやります。了承してください』と言われ、引き受けた。学内には兼業届も提出している」としている。

北大教授顧問料4000万円 臓器移植第一人者3津の公立病院から

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厚生労働省は8月19日、都道府県・政令指定都市などに対し、肉の生食を避けることなどE型肝炎に関する情報提供を推進するように求める通知を出した。同省は8月1日付けで同様の通知を発出しているが、再度通知を実施したのは、英医学誌Journal of Virologyに、市販の豚レバーを食べた後、E型肝炎を発症した日本国内の事例が掲載されたため。同省ではE型肝炎に関するQ&A集も併せて改訂した。
これまでに報告されているのは、シカ肉やイノシシの肝臓を生食するという、やや特殊な例だったが、今回、英誌で報告された事例は食料品店で購入したパックの豚肉によるものであり、より一般的な状況での感染拡大が心配される。
E型肝炎はE型肝炎ウイルスの感染によって起きる。厚労省によれば、国内では1999年から2002年の間に十数例が報告されているだけだが、1993年に採血された健常人血清におけるE型肝炎ウイルスの抗体保有率は、20代0.4%、30代6.2%、40代16%、50代23%と、高年齢者では高率に感染しているという報告がある。妊婦や高齢者が感染した場合、致死率が高いという報告もあるため、同省としては今後、食肉の生食を避け、十分加熱して食べるよう、広く啓蒙を行っていく考えだ。

大学病院小児科増える女性医師 乏しい育児支援退職絶えず

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朝日新聞が全国80大学病院を対象に実施したアンケート(64病院回答)で、大学病院の小児科医局に所属する医師数が10年間で3割増えていることがわかった。ただ、増加の目立つ女性医師が、妊娠・出産をきっかけに当直を外れたり、辞めたりしており、小児救急の現場を中心に医師不足が解消しない一因となっているようだ。女性医師の働きやすい環境づくりが求められている。
集計した小児科医局所属の医師は、大学病院で働く小児科医と、医局から一般病院へ派遣されている小児科医の合計。一般病院の勤務医のほとんどは派遣元の大学病院の医局に所属している。
医局所属の小児科医の数は93年度に1大学病院当たり平均72人だったが、03年度は94人に増加。女性医師の割合は93年度の29%から03年度の34%へ、10年間で5ポイント上がった。今年度の新規入局者に限れば、43%が女性医師で、医師国家試験の女性合格者の割合(34%)を大きく上回る。
一方、この10年間に妊娠・出産などの理由で医局を辞めた女性医師は全体で172人に上った。仕事を続けていれば、小児科の女性勤務医は現在より1制近く増えていたはずだ。また、女性医師が育休を取る割合は平均77%、期間は同8.2カ月だった。過去10年間に5人以上が辞めている大学では取得率が50%と低く、期間も4.5カ月と平均より短い。子育てに厳しい環境が退職に結びついている。
一方、出産後に医局にとどまっていても、ハンディはある。小児救急医療で問題となる夜間・休日の当直は、就学前の子どもを育てている間は「担当していない」が全体で30%、「担当するが軽減している」が41%だった。
辞めずにすむ環境作り必要
日本小児科学会会長の衛藤義勝・東京慈恵会医科大教授の話
女性医師は今後も増えるだろうが、子どもを持つと男性医師の3〜5割程度しか働けないのが現状。小児救急の充実を求める社会の二ーズに応えるためにも、昼夜シフト制の導入や保育施設の整備、周囲の理解など、女性医師が辞めずにすむ環境づくりが必要だ。

大腸内視鏡でO157感染か 水戸中央病院

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茨城県保健福祉部は18日、水戸中央病院(小野陸院長)で、腸管出血性大腸菌O157を発症した患者に使った大腸内視鏡から、別の患者に○157が感染した可能性が高い、と発表した。県によると、7月18日、50代の女性が○157発症に伴い大腸内視鏡検査をした。翌19日、50代の男性が治療中の病気のため大腸内視鏡検査を受け、4日後に発症した。
県は、2人の接点が同病院以外にないことから大腸内視鏡が感染源とみている。水戸保健所は、消毒手順などに不備が考えられるとマニュアルなどの見直しを指導した。

過剰投薬で意識不明 患者が死亡 東京医科歯科大病院

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東京医科歯科大学医学部付属病院(東京都文京区)で、不整脈の治療薬として「キシロカイン」を過剰投与され、意識不明になっていた男性患者が死亡したことが警視庁の調べで分かった。同庁は業務上過失致死の疑いもあるとみて、関係者から事情を聴いている。
本富士署の調べでは、男性は都内に住む50歳代で、15日午後8時45分ごろ死亡した。同署は16日に司法解剖するなどして死因を調べている。

過剰投薬で心停止 東京医歯大病院 量3倍、濃度も間違う

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東京医科歯科大学医学部付属病院(東京都文京区)は7日、重症の心不全と不整脈で入院していた、都内の男性患者に、不整脈の治療薬「キシロカイン」を過剰投与し、一時心停止状態になったと発表した。患者は今も意識が戻らず、重体という。
病院によると、患者は50歳代。8月3日午前8時ごろ、顔色や呼吸状態の悪いことに看護師が気づいた。連絡を受けた当直の内科医(45)が、看護師にキシロカインを用意するように指示。看護師がつくっだ薬剤300ミリグラムを静脈注射した。
間もなく患者の容体が悪化、心停止したため、心臓マッサージなど蘇生措置を取ったという。大学によれば、キシロカインは通常、約100
ミリグラムを、患者の様子を見なから徐々に投与していく。しかし、内科医は短時間に300ミリグラムを投与したうえ、注射用の濃度2%の薬剤ではなく、10%のものを使った。

不妊治療患者取り違え 愛知市民病院 妻に別人の精子 妊娠は回避

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愛知県小牧市の小牧市民病院(末永裕之院長、544床)で昨年11月、不妊治療の一種で、夫の精液を妻の子宮に送り込む配偶者間人工授精(AIH)をした際、過って夫以外の精液を女性に注入していたことが9日、分かった。女性は妊娠しなかったが、結果が分かるまで精神的な苦痛を受けたという。市はミスを認め、院長が女性側に謝罪した。病院側は「患者の氏名を確認しなかった初歩的なミス」としている。病院の説明によると、被害にあったのは愛知県内の30代の女性。昨年11月下旬、外来で不妊治療に訪れた。ほぼ同じ時間に、別の患者の治療も予定されていた。
別の患者を先に診察室に呼び入れたはずだったが、実際には被害にあった女性が入室し、診察台に乗った。医師、看護師とも氏名を聞かないまま、女性に精液を送り込んだという。
注入を終えた後、女性は待合室で座っていたが、再び自分の名前が呼ばれたため不審に思い、すでに治療が終わったことを告げた。医師らが確認すると、女性に注入するはずの夫の精液が残っており、取り違えが分かった。すぐに、女性の子宮内を洗浄するなどしたため、妊娠はしなかった。
診察台は力ーテンで仕切られ、医師や看護師から女性の顔は見えないようになっていた。治療中、医師が女性に話しかけることも、ほとんどしなかったため声でも取り違えが分からなかった。市は賠償することで女性側と合意している。女性は被害にあうまで半年ほど治療に通っていたが、その後、同病院では不妊治療を受けていない、という。
末永院長は「女性や家族の心労は大変だっだと思う。再発防止策を徹底したい」と話してい
る。
東京医科歯科大学医学区)ば7日、轟症の心不全と不整脈で入院してい
た、都内の男性患者に、不整脈の沿療薬「キシロカイン」を過剰投与し、一時心停止状態になった
と発表した。患者は今も意識が戻らず、睡体という。病院によると、忠者は
駒歳代。8月3日午前8ごろ、顔色や呼吸状態の怒いことに右護師が気づいたQ連絡を受けた当膵の内科医(組)が、特護師にキシロカインを用意するように指示。〒護師がつくっだ焚荊300
、、rグラムを静脈注射した。間もなく忠者の容体が恕化、心件止したため、心臓マッサージなど蘇生描Hを取ったという。大学によれば、キシロカインは辿常、約100
ぐrグラムを、忠者の様子
を見なから徐々に押与していく。しかし、内科医は短時間に300〓rグラムを投与したうえ、注射用の濃度2%の薬剤ではなく、U%のものを使った。

関電病院「安楽死」当初の内部調査院長「不十分」

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関西電力病院(大阪市福島区)で95年、末期がん患者が担当の男性医師(48)から薬剤を投与されて死亡したとされる事件で、三河春樹院長は7日タ、記者会見し、医師が書類送検されたことについて「当初の内部調査が不十分だったと言わざるを得ない」と非を認めたうえで、「男性には普段から薄めた塩化カリウムを投与していた。死亡時の措置も医療行為として誤りではなく、安楽死ではない、と認識していた」と語った。

臨床研究、倫理置き去り 東大病院患者同意なく、増える申請足りぬ教育

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昨年9月、70代の女性患者が東京都文京区本郷の東大病院で急死した。腹部の大動脈にできた瘤が破裂するのを防ぐため、人工血管を入れる手術を受けてから4日目だった。
病院は死因を調査した。患者本人が昇圧剤の点滴の管を過って抜いたらしく、血圧低下によるショック死と見られ
た。
調査中、患者のカルテからA4判の紙が1枚出てきた。麻酔科のA医師(42)が作った研究計画の概要だった。これがきっかけとなり、15人の患者に無断で臨床研究か行われていた事実が発覚した。
病院によると、A医師は01年11月ごろ、血圧低下に伴う臓器不全の治療薬として承認されている「ウリナスタチン」に、手術に伴う体の炎症反応を防ぐ効果があるかどうか調べようと計画した。
対象には、腹部大動脈に人工血管を入れる手術の患者を選んだ。薬を投与するグループ10人と、投与しないグループ10人を比べる手法。前もって上司の麻酔科長に相談し、ほかの麻酔科医や手術担当の血管外科医にも協力を求めていた。
計画書には「研究への参加について自由意志による同意を得る」と書いてあった。だが、患者は誰もそのようなことを知らされていなかった。周囲の医師たちは「A医師が同意を取ったと思っていた」という。
A医師は東大医学部卒。15年ほど前から麻酔科の助手を務め、研修医や大学院生を指導する立場にいた。麻酔科長の花岡一雄教授によれば、講師以上に昇格できるかどうかの分かれ目にさしかかったところだった。
「(新薬の審査データを集めるための)臨床試験でも患者の同意が得られる割合は3割程度。説明すると参加者が得られにくいと思ったのかもしれない」と花岡教授。
医学部倫理委員長の大内尉義賑教授は「計画書は定式通り作成しだが、使い慣れた薬剤でもあり、あまり重大に考えなかったのではないか」と推測する。
人を対象にする医学研究の倫理について世界医師会は「ヘルシンキ宣言」で、患者の同意やプライバシーの保護などを定めている。東大は85年、同宣言の趣旨に沿い、医学研究の倫理審査規則を定めた。
研究者は計画の審査を倫理委員会に申請し、承認を得る決まりだ。A医師はこの申請もしていなかった。
昨年度の申請件数はヒトゲノム・遺伝子解析研究を含め151件。10年前の約6倍に増えた。今後、個人の遺伝的特性と薬の効果の関係などを調べる研究が多くなりそうだ。
東大は今回の問題を4月に公表した後、5月初めに学内向けの研究倫理セミナーを開き、改めて学内の研究指針や承認手統きを説明した。
医学部のある教授は「ヘルシンキ宣言をまともに読んでいる医師はあまりいない。学部教育で研究者の倫理を教えていかなけれぱ、再発を防止できない」と語る。
東大は5月末、加藤進昌病院長と花岡教授ら4人に対し、厳重注意などの処分をした。
だが、A医師は3月末に東大病院を辞め、都内の病院に転職したため処分対象にならなかった。
取材の申し入れに対し、「真摯に反省し、いまは臨床に没頭している。取材に応じるつもりはない」と話した。
同意が問題になった臨床試験など
94年11月香川医大病院で新薬臨床試験(治験)めぐる汚職事件
97年1月奈良県立医大教授が福祉施設で行ったアルツハイマー病薬の治験で医師でない施設長が説明したことが発覚
97年4月薬事法の改正で、治験での文書による説明・同意を義務付け
99年11月東北大による血液の無断遺伝子解析発覚
00年2月国立循環器病センターによる血液の無断遺伝子解析発覚
00年3月愛知県がんセンターで十分な説明を受けずに治験段階の抗がん剤を使って死亡した患者の遺族に損害賠償命令(名古屋地裁判決確定)
03年2月金沢大病院で無断で抗がん剤の比較試験の対象にされた患者遺族への損害賠償命令(金沢地裁、国側控訴)

大学薬学部6年制へ 文科・厚労省実習は半年以上

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文部科学省と厚生労働省は、質の高い薬剤師を養成するため、大学の薬学教育を現行の4年から6年に延長する方針を固めた。抗がん剤をはじめ新たな薬の開発が進み、より幅広い知識が必要になっている上、薬にからむ医療事故の防止など、医療現場で薬剤師に求められる役割が重みを増している。これに応えられるよう臨床教育を充実させるには4年では不十分と判断した。
両省それぞれの検討会が月内にもまとめる報告書を受け、文科省は学校教育法、厚労省は薬剤師法の改正作業を進め、法案を来年の通常国会に提出する。成立してから施行まで2、3年の周知期間をおき、新入生から適用する方針。
大学薬学部と薬科大は国公私立合わせて48ある。多くは薬剤師国家試験の受験資格が得られる6年制に移行する見込み。一部に4年制の学部を卒業して大学院に進学するコースも「研究者養成コース」として存続させる。学部4年、修士2年計6年の教育を受けた学生に受験資格を与えるかどうかは引き続き検討する。文科省では「薬学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」が昨秋から検討してきた。
報告書では「薬学の基礎的な能力に加え、臨床薬学を学ばせるためトータル6年間の教育が必要だ」と提言。夜間大学院や公開講座、通信講座などを通じて、大学が薬剤師の生涯学習を支援することなども求める。
厚労省の「薬剤師問題検討会」は、「医療人として一貫した内容の6年間の教育期間が必要」と報告書に明記する。いまは病院などでの実務実習は必須ではなく、多いところでも4週間程度だがこれを必須にし、期間を最低6カ月程度とすることなども盛り込む。
薬学教育の教育期間については94年に厚生省(当時)の検討会が6年制を提唱した。
しかし96年、文部省(同)の協力者会議は、教員の増員や施設整備に多額の投資が要る▽薬学部を志望する受験生への影響を見極める必要がある▽研究面の優秀な人材確保が困難になる−などを理由に、「現時点での年限延長は困難」とし、文部、厚生両省が対立する形となった。現在、薬学部と薬科大の入学定員は計8400人。卒業生の40%強が薬局や病院の薬剤師に、約25%が大学院修士課程に進学、約10%が製薬企業などに就職している。
日本では4年制の薬学部を卒業すれば薬剤師国家試験の受験資格が得られるが、米国では2年の基礎教育に3年か4年の薬学教育が必要。英国やドイツは4年の学部教育に1年間の卒後研修が必要としている。

新生児うつぶせ寝死 看護士の有罪確定

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東邦大医学部付属大橋病院(東京都目黒区)で95年、新生児をうつぶせ寝にして死亡させたとして業務上過失致死罪に問われ、一審,東京地裁で罰金40万円の有罪判決を受けた当時の担当看護師兼助産師川島三幸被告(36)が、29日までに東京高裁への控訴を取り下げた。乳児をうつぶせ寝死させた医療従事者を初めて有罪と認定した判決が確定した。亡くなったのは、東京都多摩市の舞台俳優井上達也さんと立子さん夫妻の次男湧介ちゃん。

医師歯科医師38人処分 医療過誤4人

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厚生労働省は31日、刑事事件で有罪が確定したり、診療報酬の不正請求で保険医登録を取り消されたりした医師29人と歯科医師9人の計38人の行政処分を発表した。免許の取り消しはなく、すベて業務停止(5年〜3カ月)だっだ。8月14日から発効する。
最長の5年は、奈良県立医科大の医師派遺をめぐる汚職事件で収賄罪が確定した土肥和紘医師(60)ら2人。
医療過誤では▽癌研究会付属病院(東京都)で抗がん剤を過剰投与して患者を死亡させた山尾剛一医師(39)▽金ケ崎病院(岩手県)でチユーブの誤挿入により気管支内に洗浄液を注入し、患者を死亡させた有住純也医師(38)▽三重大学病院で血液型を間違えて輸血して患者を死亡させた上村祥子医師(31)と辻明宏医師(29)の計4人がそれぞれ1年だった。
厚労省によると、行政処分を厚労相に答申する医道審議会医道分科会が、刑事事件になっていない医療過誤なども処分の対象にすることを決めた昨年12月以降、患者側からの処分の申し立ては計30件。しかし、だれがどのように事実確認をするのかなど、具体的な運用方法を検討中という。
このほかの主な処分は次の通り。(所属先は事件当時)
【業務停止5年】札海道、グリーン内科胃腸科医院、打矢透医師(61)=診療報酬不正請求など
【同4年】大阪府、にしうら内科外科クリニック、西浦徳明医師(55)=同
【同3年】愛媛県、三由内科医院、三由研一医師(48)=麻薬及び向精神薬取締法違反罪など
【同2年】愛知県、愛知医科大学病院、横井政秀医師(33)=覚せい剤取締法違反罪▽福岡県、とまとクリニック、伊勢和宏医師(36)=同

ウイルス感染恐れある血液6400本すでに使用 日赤「受診を」

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献血時の検査で肝炎ウイルスなどが陽性と判明した人の過去の献血血液が、検査をすり抜けていた可能性が指摘されている問題で、献血歴の遡及(そきゅう)調査をしていた日本赤十字社は29日、調査結果を厚生労働省に報告した。昨年6月から今年7月までの献血者を対象にさかのぼって調べたところ、すり抜けの可能性のある血液を原料にした輸血用血液は、95年から03年までに6419本に上り、ほとんどがすでに使用されていた。厚労省は、投与された患者へ情報提供するとともに、感染の有無を調べるよう日赤や医療機関に求めた。
日赤によると、遡及調査は、02年6月13日から今年7月21日までの献血時の検査でB型、C型肝炎ウイルス、エイズウイルス、梅毒が陽性になり、感染が疑われた12万6097人(献血者全体の2.1%相当)を対象に実施した。このうち、過去に献血歴があり、前回の検査などが陰性だった献血は7091件あった。
現在の検査方法では、感染直後でウイルスを検出できないことがあるため、のちに陽性と判明した人の過去の献血が、ウイルスに感染したまますり抜けた可能性を否定できない。
今回の7091件の献血からは、ウイルスを不活化・除去処理される血漿(けっしょう)分画製剤のほか、その処理ができない輸血用血液の製品6419本(全血65本、赤血球3756本、血小板518本、血漿2080本)が作られていた。有効期間が採血後72時間の血小板や、21日間の全血と赤血球は大半が使われたとみられる。回収できたのは、有効期間が1年ある血漿の13本だけだった。
日赤は今後、医療機関を通じて、投与された患者を特定し、「感染の可能性がある」と情報提供する。さらに、早期に検査を受けるよう呼びかける。その際、医療保険が適用されるとしている。
一方、保管がきく血漿については「欧州のように出荷前4〜6カ月の保管を義務づけていれば、陽性判明時に回収率が上がったはず」という指摘がある。今回の調査で、陽性と判明してから1年以内の分に限ってみると、すり抜けの可能性のある血漿は523本あった。このため、厚労省は日赤に対し、今後できる限り血漿を保管するよう、指導する。

輸血の危険浮き彫りに

〈解説〉輸血には肝炎などに感染する危険がつきものだ。今回の日赤の問題はそのことを改めて示した。
日赤は99年、献血時の検査に高感度検査を導入し、ウイルス発見の精度を飛躍的に上げた。しかし、それでも、感染直後の献血など、検査をすり抜ける可能性をゼロにすることはできない。次善の策は、陽性と分かった献血者の過去の献血歴をたどり、回収に努めることだったが、日赤はその努力を怠ってきた。
一方、医療現場では、輸血を受けた患者に対し、感染の危険性を周知し、輸血後、一定期間は検査で感染の有無を確認しなければならない。このことが十分に守られていないことも分かった。徹底されれば、献血検査のすりぬけを把握でき、患者本人の治療もすぐに始めることもできるだろう。
今後、日赤に求められるのは、血漿分画区製剤と同様に、輸血用血液にウイルスの不活化処理をを導入することだ。溯及調査野必要性をめぐって対立した厚労省との連携も必要だ。

血液法30日施行 血液製剤「自給」目指す

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血液製剤の原料を国内の献血でまかなうことを目指す血液法(安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律)と、血液製剤の投与記録を20年保管するよう医療機関に義務づける改正薬事法の一部が30日、施行される。米国性血液製剤で多数の血友病患者らにエイズウイルス(HIV)感染の被害を招いたことを教訓に、安全性の向上に取り組む。

岩手大教授鵜を麻酔科学会除名 試験問題漏洩、大学退職

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日本麻酔科学会の指導医認定試験問題が漏洩していた問題を調査していた同学会は28日、岩手医科大医学部教授の盛直久氏(54)が医局の医師5人に事前に問題を教えたと認定し、盛氏を「重大な不正を行った」として除名処分とすると発表した。岩手医大も同日開いた理事会で、盛氏を30日間の出勤停止処分とするとともに、退職願を受理。盛氏は同日付けで大学を依願退職した。
学会は、盛氏に問題を渡され、医局員に伝達した当時の医局長については、麻酔科専門医資格の2年間停止処分とした。

東大医学部堤教授、再処分へ 機器購入、虚偽の寄付申請

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国からの補助金を不正流用したとして1カ月の停職処分を受けた東京大医学部産婦人科の堤治教授(53)が、日本馬主協会連合会(東京都港区)に対し、医療機器を購入したなどと虚偽の寄付申請をしていたことが分かった。東大は28日までに学長らでつくる評議会に特別委員会を設置。異例の再処分となる公算が大きくなった。
同部の内部調査によると、堤教授は00年7月に同連合会から医学研究助成目的で2千万円の委任経理金(寄付)を受けているがこの寄付について「不妊治療の研究に使う医療機器を購入する」として申請していた。しかし、実際には機材を購入せず、同連合会に購入したと報告した機材は、すでに科学技術振興事業団で購入したものだったことが判明した。調査委員会は「申請は虚偽」との結果をまとめ、「処分相当」の報告を医学部教授会にしていた。

市民マラソンランナーはご用心、今、常識の「できるだけ水分を摂る」は危険

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女子選手の活躍もあって、日本でも市民マラソンの人気が年ごとに高まっている。こうした長距離走における体調管理で最も大切なのが水分摂取だ。最近の常識は、「喉が渇く前に十分飲む」というもの。のどの渇きを満たしただけでは水分不足が生じるという知識は、マラソンランナーの多くが書籍や指導者、仲間から聞かされる。ところが、この“常識”が時に死に至る危険をもたらすと指摘した論説(Editorial)が、British Medical Journal誌の2003年7月7日号に掲載された。
南アフリカCape Town大学人類生物学部のTimothy David Noakes氏は、運動中の水分摂取に関する既存のガイドラインは次の四つの前提に基づいているという。1.運動中の健康をおびやかす最大の危険は水分不足であり、運動中の体重減少は補う必要がある、2.のどの渇きを満たすだけでは真の水分欠乏を解消できない、3.運動中の水分補給の必要性はどの運動でも同様、4.大量の水分摂取は無害。この結果、アスリートは、体重減少に匹敵する量か、飲める限り多く飲む量として1時間に600〜1200ml飲むことが推奨されている。
しかし、これらの前提はエビデンスに基づいたものではないという。こうした「飲めるだけ飲むべき」とする常識がもたらす危険の一つが血液の希釈による低ナトリウム血性脳症だ。医学文献に報告されているだけで、少なくとも7人の死亡と、250人以上の症例が報告されているという。
Noakes氏は、水分の過剰摂取は有害無益であり、時に致命的な結果を招くことを周知する必要があると強調する。「おそらく(現段階での)最良の水分摂取法は、のどの渇きに応じて飲むことで、標準的な分量は1時間当たり400〜800ml、体格や運動の激しさによって増減すべきだ」。
日本ではマラソンランナーの推奨摂取量は15分間ごとに200ml程度とされている。体格差を考慮すると、もう少し少なくてもよい計算になる。常識としてきた「できるだけ水分を摂る」の見直しが急務となっているようだ。

都立府中病院で電子カルテを含む病院情報システムが本格稼動

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都立府中病院は、新たな病院情報システムを導入し、7月17日から正式運用を開始した。電子カルテ、医事会計、看護支援などの機能を統合したシステムで、電子カルテ端末700台、電子カルテサーバー15台、医事会計端末80台の規模。富士通が受注した。開発・導入金額は、今年度内に導入予定の駒込病院分と合わせて11億円(ハードウエアなどは除く)だという。
電子カルテ端末の画面上では、CTやX線などの画像表示、過去の検査データの時系列表示、再診の予約などが可能。外来診察室で患者と医師が画面を見て対話しながら診療を進めることができる。院長の前村大成氏は、「電子化は医療の透明化を実現する手段であり、患者サービスや医療関係者のモチベーション向上に大変有効」と期待する。なお、従来のカルテは既往歴の確認用として約半年間併用し、全面的に新システムに移行する。
新システム導入は、通常の病院運営を続けながら行われた。「これだけの規模(820床)の病院で、通常業務を継続しながら病院情報システムを導入した例はあまりないのではないか」(都病院経営本部)という。医師らの診療スタッフに対する導入研修はわずか10時間だったが、移行は順調なようで、年配の医師もスムーズに使いこなしていた。
府中病院の新システム導入は、都立病院改革プロジェクトの一環として進められている情報化の第一弾にあたり、今後、2003年度内に都立駒込病院、2004年度には都立広尾病院、都立大塚病院、都立墨東病院が相次ぎ新病院情報システムを導入する。都では、次のステージとして都立病院間の情報連携を目指しており、今年度中に都立松沢病院の敷地内に病院情報システムセンターを建設する。こうした病院間の情報連携が拡大していけば、転院、転科の際も情報を確実に確認でき、医療事故の防止などにも貢献しそうだ。

「宅直」死亡事故の桜台病院で当時の院長が復職で、都が交代命令

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東京都は7月14日、東京都練馬区の桜台病院に対し、8月15日までに現院長を交代させるよう命じる管理者変更命令を出した。桜台病院では2002年のほぼ1年間にわたって週3日間、宿直医を置かず、その時間帯に9人の入院患者が死亡する事態を引き起こした。その期間の大半に当たる2002年1月〜9月に院長職にあった院長が、前院長の辞任を理由に4月から再び院長に復職した。そのため、都では、「同氏が行った行為は重大な医療法違反であり、病院管理者として適さないと判断した」として、医療法28条に基づく管理者変更命令を発したもの。
 桜台病院では、特定の勤務医を「宅直」と称して、必要時のみ来院する自宅待機の条件で雇用する約束を交わし、宿直医がいない状態で運営し続けた。しかも、東京都が2002年12月に同病院の立ち入り検査などを行った際、事実の隠蔽、タイムカードや給与明細票の改ざん、虚偽の始末書提出などを行ったため、都は極めて悪質として、病院と理事長、前院長、現院長の4者をこの4月に刑事告発したもの。関係者は6月4日付けで書類送検された。
 本件に関するプレスリリースはこちらまで

痴呆症薬で麻薬中毒改善 京大教授ら動物実験成功

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痴呆をおこすアルツハイマー病の治療薬を使い、麻薬への依存や中毒症状を改善する動物実験に中西重忠・京都大教授(神経科学)らのグループが成功した。これまで難しかった麻薬中毒の治療に利用できるかもしれないという。
どの麻薬を続けて摂取すると、脳の中央部にある側坐核と呼ばれる部分の神経伝達物質ドーパミンの濃度が通常よけ高まり、神経細胞の働きが過剰に活発になる。それが麻薬の中毒症状や依存症につながると考えられている。
経伝達物質アセチルコリンが側坐核でドーパミンの働きを抑制することを明らかにした。アセチルコリンの濃度を高めれば麻薬中毒症状が和らぐかもしれないと考え、脳内でアセチルコリン濃度を高めるドネペジルやガランタミンという薬に注目した。これらはアルツハイマー病の治療薬として開発されたもの。
ネズミにモルヒネやコカインを連日与えると、与えられる場所を記憶して、麻薬が与えられなくてもその場所に好んで行くようになる。運動量も激増する。ネズミにドネペジルなどの薬を与えてから麻薬を与えると、場所の好みや連動量の増加が起こらず、薬で麻薬への依存や中毒症状が抑えられることが分かった。

町の薬局、お医者さん紹介 医薬進出コンビニに対抗

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東京都の杉並区薬剤師会(石井明会長、会員約240人)の有志が9月にも、薬局で地域住民に医師を紹介する事業を始める。区内の医師へのアンケートをもとに得意診療科などを把握し、住民の問い合わせに答える。規制緩和で、コンビニエンスストアなどでも副作用の懸念が少ない薬の販売が解禁される方針に対抗し、「かかりつけ薬局」の存在価値を高める作戦だ。
日本薬剤師会によると、こうした取り組みは全国でも珍しいという。
当面は会員のうち約30人が参加。今月から杉並区内で開業している医師約500人に、診療科の内容や時間外診療への対応など40項目程度のアンケートを実施している。
結果をまとめ、住民から「往診してくれる女性の内科医は?」「子どもに優しい小児科医は?」といった問い合わせや相談があれば、答えられるようにする。紹介は9月スタートを目指す。
「街の薬局」は大手チエーンの薬店に押され気味。今回の規制緩和が薬局離れをさらに加速させる可能性もある。逆風の中で、年間1割近くの住民が転出する杉並区の場合、新住民を中心に開業医に関する情報のニーズが高いと判断した。
杉並区薬剤師会の多田治理事は「このままでは薬剤師不要論が出てきてしまう。全国的に『杉並モデル』を普及させたい」と話している。

HIV、献血検査素通り 未使用「高感度方式」で初

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エイズウイルス(HIV)に感染した男性が昨年夏、2遇間の間隔をあけて献血した際、1度目の献血時の検査ではウイルスが検出されないまま通過していたことが、日本赤十字社の調べでわかった。血液は有効期間の長い血液凝固因子製剤などの原材料として保管され、2度目の献血時の検査で陽性と判明し、未使用のまま廃棄され、使用されることはなかった。
日赤は99年、献血された血液について、抗体などの1次の血検査に加えて、2次検査として高感度の検査方法を導入していたが、HIVが同検査をすり抜けたことが確認されたのは初めて。
日赤によると、昨年夏、献血した男性が1次の血清検査でHIV陽性と判明した。この血液を廃棄するとともに、男性の過去の献血歴を調べたところ、2週間前にも献血をしこのときは1次検査と、2次の高感度検査とも陰性と判定されていたことがわかった。
日赤は過去の献血歴を調べる遡及調査のため、毎回の献血血液の一部をすべて保管しており、男性の2週間前の1度目の血液について個別に高感度の検査で検査した結果、HIVが検出された。通常の2次の高感度検査は、1人当たりの血液0.004ミリリットルずつ50人分をまとめて調べるため、同0.2ミリリットルを分析する個別検査より感度は落ちる。
検査を通った血液が有効期間の短い輸血用血液製剤の原料となっていたら、患者に投与された可能性があった。男性は問題の2度の献血以前にも献血歴があるが、溯及調査の結果は陰性だった。
日赤が導入した高感度検査は、ウイルスの遺伝子を増幅して検出させる核酸増幅検査(NAT)。感染直後で抗体などの量がわずかだと、検査で陽性にならない空白期間があるが、NAT導入後はこの期間が短縮され、HIVは約11日とされる。
今回はこの空白期間とは関係なく、50人分をまとめて行うNATで、すり抜けが生じた。

献血輸血で肝炎感染 好感度検査すり抜け

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輸血によってB型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)に感染した疑いのある患者が、今年4月から3カ月間に日本赤十字社などから31人報告されていることが、厚生労働省のまとめでわかった。うち29人は、献血者の検体を高感度の検査方法で再検査しても、陰性(ウイルス未検出)の結果しか出なかった。国内の輸血用血液の供給を担う日赤は、この検査法が導入された99年以降、輸血による肝炎ウイルスの感染は激減した、としてきたが、今回の結果でこの検査の信頼性が揺らぐ可能性も出てきた。
今回の結果は、厚労省が医療機関や日本赤十字社からの報告をもとに初めて集計した。それによると、輸血後に肝炎に感染した報告数は42人で、このうち、医者が「手術時以外に輸血歴がない」「感染者との接触がない」などを理由に「輸血用血液製剤が原因と疑われる」などとしたのはHBVが19人、HCVが12人の計31人いた。血液製剤との関連性を「確実である」「可能性が高い」としたものだけに限っても10人に上る。
献血血液の検査では、献血者がウイルスに感染した直後でウイルスや抗体の量がわずかな場合、陽性にならずにすり抜けてしまう「空白期間(ウインドーピリオド)」がある。このため日赤は99年以降、ウイルスの遺伝子を増幅して検出する核酸増幅検査(NAT)を2次検査として導入し、一重のチェックをしてきた。それでも空白期間はHBVで約34日、HCVで約23日、エイズウイルス(HIV)で約11日あるとされる。
輸血による感染が疑われる場合、保存していた献血者の血液の検体を過去にさかのぼって検査し、迫跡調査することになっている。ところが、今回、報告された31人に輸血した血液の検体を個別にNATで調べ直したところ、2人分はHBV陽性と判明したが、29人分の検体は陰性のままで、高感度の検査をすり抜けた可能性を示した。
厚労省は今回の結果について「輸血で感染したことを否定できない」とし、検査体制の見直しを日赤側と検討する。
輸血血液の追跡調査
献血時の1次または2次の検査のいずれかでウイルス感染が見つかった場合、厚労省は、その献血者が過去に献血した輸血用血液を迫跡調査するよう、日赤を指導している。使用前であれば廃棄を、使用後であれば患者に感染していないかを調ベ、患者に感染の可能性があることを告げるよう求めている。しかし、日赤はこれまで原則として、2次検査で陽性になった場合しか、追跡調査をしておらず、その場合も、保管している献血血液の検体を一つずつNATで調べた結果が陰性であれば調査を打ち切ってきた。

医師の態度、再三注意 東部地域病院5歳児「誤診」死

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東京都葛飾区の東部地域病院で重い腸閉塞になった男児(5)が適切な治療を受けられず亡くなった問題でこの病院の元幹部が、誤診したとされる小児科医(32)=諭旨退職処分=に以前から問題があったとする文章を書き、現在勤める別の病院の職員に配っていたことがわかった。東部地域病院は10日タ、事故調査結果を遺族に説明する予定だ。
元幹部が配布した文書では、この小児科医について「救急患者の連絡があっても何だかんだ理由をつけて断る」「受け入れても意味もなく待たせる」「入院後も患者のベッドに一度も顔を出さない」などの行為があったと記述。診療態度が、たびたび問題視されていたことを明かしている。
元幹部によると、昨年4月に小児科医が着任した直後から、診療態度に疑問の声が出るようになった。トラブルの多くは患者への対応。看護師が患者や家族の苦情の矢面に立たされることも多く、当時の院長は何度も本人を呼び、「態度を改めるように」と指導したという。
今回の医療ミスでは、誤診とともに、急患で訪れた男児の治療のため、看護師が呼び出したのになかなか応じなかった点も問題視された。元幹部は「やはり起きたかという気持ちになった」と話している。文書は、今の職員に注意喚起する意味で書いた、とう。
一方で、治療内容で問題が起きたことはなかった。
元幹部は「病院として何度も指導した。態度が悪いというだけで、現場からはずすことはできない」と話した。医局の人事もからみ、すぐに代わりの医師を求めることも困難だったという。

鎮静剤注射後の85歳死亡

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東京都足立区の東和病院で6月上旬、鎮静剤を注射された区内の女性患者(85)が死亡していたことが6日、分かった。女性は呼吸不全に陥り、約2時間後に死亡。届け出を受けた警視庁は、鎮静剤の投与量が多すぎた可能性があるとみて、業務上過失致死容疑で病院側から事情を聴いている。
綾瀬署の調べでは、女性は6月初め、脳内出血のため入院した。数日後、磁気共鳴断層撮影(MR1)検査を受ける際、女性看護師から鎮静剤を注射された。心肺機能が低下して死亡。病院はその日のうちに同署に届け出た。調べに対し「女性の頭を、鎮静剤で動かなくするために注射した」と説明しているという。MRIは、磁気を使って体内の立体的な映像を映し出す機器。撮影には一定時間動かないことが必要で、患者の不安を取り除いたり、筋肉などを弛緩させて脱力させたりする目的で、鎮静剤を使用したりするという。


酒の飲み過ぎでC型肝炎の危険 米研究所発表

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米国立保健研究所(NIH)は26日、お酒の飲み過ぎのせいでC型肝炎を発病したり、病状が悪化したりするメ力二ズムが、実験で確かめられたと発表した。
米ペンシルベニア大などのチームがNIHの支援で実験した。
C型肝炎ウイルスに感染したヒト肝細胞にアルコールを加えたところ、特殊なたんぱく質の遺伝子が活性化。このたんぱく質が肝炎ウイルスの複製を促すため、肝炎ウィルスの量が増えていくことが分かった。
研究チームは「アルコールはC型肝炎の進行をうながし、発病後には治療を難しくする」と深酒を戒めている。

販売中の合成抗菌剤副作用で1人死亡

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厚生労働省は26日、昨年9月から販売されている合成抗菌剤「メシル酸パズフロキサシン」(成分名)を投与されて、急性腎不全やけいれん、大腸炎など、承認前の臨床試験では確認されていなかった副作用を起こしたとみられる患者が計21人報告されうち50代の女性1人が肝機能障害で死亡したことを明らかにした。厚労省は同日、医療機関に注意を呼びかける安全性情報を出した。

開頭手術後死亡 医師に賠償命令 小倉記念病院

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社会保険小倉記念病院(北九州小倉北区)で92年、脳腫瘍の開頭手術を受けた後死亡した高校2年の女子生徒(当時17)の両親が、病院を経営する社会福祉法人朝日新聞厚生文化事業団と当時の主治医に7300万円の損害賠償を求めた訴訟で、福岡地裁小倉支部は26日、約7270万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
杉本正樹裁判長は「未確定で不十分な病状把握を前提に開頭手術を選んだ。正確な病状や他の治療方法の説明があれば、原告らが手術に同意しなかった可能性は多分にあり、死亡することもなかった」と指摘。手術の選択・決定や手術後起きた脳硬塞の治療に主治医の過失があったと認定した。
訴えたのは福岡県宗像市の久能義也さん(68)と恒子さん(67)の医師夫妻。三女の紹子さんは視野が狭くなったため92年6月に入院、7月に腫瘍摘出手術を受けた。しかし直後に脳梗塞が起き、約1カ月後の転院後に死亡した。

副作用情報300件報告怠る 山之内製薬

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山之内製薬(本社・東京)が、97年に承認された胃腸薬「ガスター10」と「エフィール」の販売当初から今年1月末までに、社内のお客様相談窓口に寄せられた副作用に関する情報303件を副作用として扱わず、このうち、薬事法で厚生労働省に報告が義務づけられている重症などの症例が15例あったことが24日、わかった。うち2件は死亡例だった。
厚労省は、同社の情報収集体制に問題があったとして、改善を指導した。
「ガスター10」などは、それまで医療用にしか認められなかった成分を使った一般用の胃腸薬。

白内障目薬や飲み薬「有効性根拠ない」厚生労働省の研究班が診療指針

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白内障の治療法について、進行を抑える目的で使われている目薬や飲み薬は「有効性に関する十分な科学的根拠がない」とする初の診療指針を、厚生労働省の研究班がまとめた。人工レンズの移植手術を唯一の治療法と位置づけている。27日から京都市で始まる日本白内障学会で発表する。白内障は、目の中でレンズの役目をしている水晶体が濁り、視力が低下する病気。老化と関係が深く、80歳以上のほとんどに症状が見られる。
治療法は濁った水晶体を取り出して、人工レンズを入れる手術が一般的だ。日本では、症状の進行予防として目薬(成分名ピレノキシン、グルタチオン)や飲み楽(同チオプロニン、パロチン)なども使われてきた。
これらの薬は20年以上前に認可され、当時は有効性があると判断された。欧米では薬による治療はほとんどない。研究班は目薬などを使った白内障治療の発表文献などを調べた。信頼できる発表データがなく、現在の基準に照らすと有効性を裏付ける証拠はないと判断した。

救急科専門医、血液専門医、循環器専門医も広告可能に

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厚生労働省は6月25日付で、救急科専門医、血液専門医、循環器専門医を広告可能な専門医資格に追加すると都道府県に通知した。広告が認められている専門医資格は、今回分を含めて18専門医となった。専門医資格の広告は2002年4月から行えるようになったが、厚労省が学会からの届け出を受理するなどといった所定の条件を満たす必要がある。
なお、救急科専門医は日本救急医学会が、血液専門医は日本血液学会が、循環器専門医は日本循環器学会がそれぞれ認定している。
また、これまでに広告が可能となっている専門医資格とその認定学会については、以下の通り。
・整形外科専門医(日本整形外科学会
・皮膚科専門医(日本皮膚科学会
・麻酔科専門医(日本麻酔科学会
・放射線科専門医(日本医学放射線学会
・眼科専門医(日本眼科学会
・産婦人科専門医(日本産科婦人科学会
・耳鼻咽喉科専門医(日本耳鼻咽喉科学会
・泌尿器科専門医(日本泌尿器科学会
・形成外科専門医(日本形成外科学会
・病理専門医(日本病理学会
・内科専門医(日本内科学会
・外科専門医(日本外科学会)
・糖尿病専門医(日本糖尿病学会)
・肝臓専門医(日本肝臓学会)
・感染症専門医(日本感染症学会

治療ミスで右腕マヒ 昭和大学側に7000万円命じる

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「治療ミスで右腕がまひし、ゴルフのレッスンプロとして働くことができなくなった」として、横浜市の男性(故人)の遺族が、昭和大学藤が丘病院(横浜市青葉区)側に約2億の損害賠償を求めた訴訟の判決が18日、東京地裁であった。
井上哲男裁判長は「強心剤を血管に注入する管の装着ミスで皮下に薬剤が漏れ、右腕に障害が起きた」と述ベ、約7千万円の支払いを同病院側に命じた。
判決によると、男性は98年6月、急性心筋梗塞のため同病院に入院し、強心剤の注入などの治療を受けたが、翌日から右腕のしびれを感じた。その後のリハビリでも回復せず、右腕の関節や指が全く動かなくなった。判決は「口頭でのレッスンは可能で、ゴルフスクールの経営者としての収入もあったが、実演指導はできなくなった」と述べて、以前の3分の2の労働能力が失われたと認定。逸失利益5076万円などを認めた。男性は別の原因で02年に亡くなった。

【SARS速報】外来診療受け入れ医療機関は全国527病院、日本医師会が調査結果を発表

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日本医師会は6月17日、重症急性呼吸器症候群(SARS)の初期外来診療について、都道府県別の対応状況を公表した。都道府県医師会に対するアンケートに基づく6月3日時点の調査結果で回答率は100%だという。
一般市民からの電話による初期対応では、福井県を除く46都道府県が保健所で対応している。ほかに、SARS専門の行政窓口で対応しているのが、東京都、神奈川県などの14件、感染症指定医療機関など特定の医療機関で対応しているのが17件、一般医療機関で対応しているのが31件となっている。なお、福井県では、県健康福祉センターで集中対応する体制をとっている。
外来診療を受け入れる医療機関は全国で527施設。最も多いのが市町村立病院で131カ所、ついで日赤、済生会、厚生連、労災病院などの106カ所、県立病院66カ所、国立病院48カ所などとなっている。これらの受け入れ医療機関を市民に公表しているのは30件で、医療機関または医師会だけに通知しているのが13件、非公表が2件などとなっている。
一方、一般医療機関の感染予防体制の整備に対して、都道府県が補助金を出しているのは、島根県のみ。都道府県医師会が何らかの対応をしているのが9件で、37件では医療機関の独自対応のみとなっている。

アルツハイマー新しいワクチン開発 愛知・長寿鵜医療研究センター

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老人の痴呆の原因になるアルツハイマー病を治療する新しいワクチンを、国立療養所中部病院長寿医療研究センター(愛知県大府市)が開発した。日本では65歳以上の7%が痴呆の症状を示し、うち約半分はアルツハイマー病が原因といわれており、治療の切り札として期待される。18日から名古屋市で開かれる日本老年学会で発表する。
アルツハイマー病は、脳にべータアミロイドという独特のたんぱく質がたまり、大脳皮質などに老人斑を形成する。
同センターの原英夫研究員らは、ベータアミロイドを作るDNAを、人体には無害のウイルスに組み込み、ワクチンに仕立てた。これを患者が飲むと、腸の細胞でべータアミロイドが作られる。ここで免疫反応が引き起こされて、体内でべータアミロイドを攻撃する抗体が作られるようになるため、脳でも集積できなくな仕組みだ。
欧米で研究されているのは、ベータアミロイドを皮下注射するワクチン。注射する方法では、抗体を作る反応とは別に、劇作用を起こすTリンパ球の反応を引き起こすのが難点だった。飲む方法では、Tリンパ球が反応しないため、副作用が抑えられるとう。
原さんらは、ベータアミロイドが脳にたまるように遺伝子操作したマウスを使って実験。ワクチンを与えたマウスは形成されるはずの老人斑が消えていた。迷路を使った実験で、ワクチンを与えたマウスの方が知能が良い傾向もわかった。
田平武・長寿医療研究センター長は「ワクチンがこの病気の治療のもっとも早道になるだろう。サルを使った実験の後、来年にも人での臨床試験に取り組みたい」と話している。

HIV陽性者献血歴を謝査 厚労省が指示

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厚生労働省は13日までに、日本赤十字社に対し献血時の肝炎ウイルスやエイズウイルス(HIV)など検査で陽性になった人について、過去の献血歴を追跡調査するよう指示した。B型肝炎ウイルス(HBV)検査で陽性だった人が、その2カ月前の献血では検査をすり抜け、その血液を原料にした輸血用血液製剤を投与された患者がHBVに感染した疑いのある事例が報告されたことを受けた借置だ。

血友病薬供給中止へ HIV感染原因の2種 三菱ウェルファーマ

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三菱ウェルファーマ(本社・大阪市)は血友病治療に使う血液製剤の供給をやめる方針を固め、医療機関に通知した。治療の選択肢が狭くなるため、血友病専門医は反発、供給継続を求めている。同社は「治療現場の意見を聞いて最終決定したい」としている。この製剤は血友病患者用の第8因子製剤「コンコエイトーHT」と第9因子製剤「クリスマシンーM」。米国からの輸入血液を用いた非加熱製剤だった70年〜80年代、両製剤は血友病患者にエイズウイルス(HIV)を感染させる原因となった。現在は加熱処理などでウイルスを死滅させている。
三菱ウェルファーマは薬害エイズ事件を引き起こした旧ミドリ十字が母体企業の一つ。両製剤の国内シエアはコンコエイトが0.1%、クリスマシンが約10%という。同社広報・IR部は供給中止の理由について「供給本数がわずかとなり、代替製剤もあるため」と説明している。

研修医定員枠を拡大 厚労省基準緩和 指導医経験年数下げ

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厚生労働省は12日、04年度から必修化される医師の臨床研修制度について、3年間の限定で臨床研修病院の指定基準を緩和することを決め、都道府県に通知した。研修医の受け入れ定員枠を拡大し、指導医の臨床経験年数も引き下げた。昨年12月に決めた省令を半年で見直し、厚労省の作業部会が提言した研修の水準から後退することになった。
今回の基準緩和では、臨床研修病院の研修医の定員枠を、病床10床につき1人以下から8床に1人以下に改めた。
定員枠を設けたのは、研修医全体の7割を受け入れている大学病院から、市中の病院へ研修先を移行させ、研修医に一般の病気やけがの治療を広く経験させる狙いがあった。しかし、研修医が減ることなどを理由に、大学病院が関連病院に派遣していた医師を引き揚げ始めた。地方の病院が「医師が不足し、地域医療が崩壊する」と訴えたのを受け、大学病院の受け入れ研修医数がわずかに増えるよう配慮した。
調査した79の大学病院のうち、新制度によって研修医が現状より減る病院が51あったが、今回の措置を適用すれば、39にとどまるという。
また、指導医の臨床経験年数も7年以上から5年以上に引き下げた。作業部会は「学会の専門医レベルの7年が必要」と提言していたが、市中の病院からは「それだけの経験者を確保できない」
との声があがっていた。さらに、受け入れ病院は医療法で定めた医師の定員数を満たしていなくても可能とした。これを満たす病院ば北海道・東北では5割強しかなく、できるだけ多くの病院で臨床研修ができるようにしたという。ただし、研修医を受け入れる診療科については、十分な指導体制があるか点検する。
厚労省は3点の緩和措置について「実施状況を見て、継続するかどうかを決める」としている。

厚労省、ゼローダ錠など新医薬品5品目の薬価収載を官報告示

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厚労省、ゼローダ錠など新医薬品5品目の薬価収載を官報告示
厚労省は6月6日付けの官報に、医薬品5品目の薬価基準を告示した。収載品目は以下のとおり。
・中外製薬の手術不能または再発乳癌向けの経口抗悪性腫瘍剤「ゼローダ錠300」(一般名:カベシタビン)
収載薬価は、300mg1錠が398.20円。
・塩野義製薬の各種癌疼痛(中程度から高度)向けの経口徐放性鎮痛剤「オキシコンチン錠5mg、同10mg、同20mg、同40mg」(一般名:塩酸オキシコドン)
収載薬価は、5mg1錠が154円、10mg1錠が288.40円、20mg1錠が540.10円、40mg1錠が1011.50円。
・バクスターの慢性腎不全患者向け腹膜透析用剤「エクストラニール」(成分名:イコデキストリン、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム)
収載薬価は、1.5L1袋が1099円、1.5L1袋(排液バッグ付き)が2162円、2L1袋が1396円、2L1袋(排液バッグ付き)が2500円。
・グラクソ・スミスクラインの片頭痛向け点鼻薬「イミグラン点鼻液20」(一般名:スマトリプタン)
収載薬価は、20mg 0.1ml 1個が1171.10円。
・フェリングAB(製造)、協和発酵工業(輸入販売)の尿浸透圧、尿比重低下に伴う夜尿症向け点鼻薬「デスモプレシン・スプレー10協和」(一般名:酢酸デスモプレシン)
収載薬価は、500μg1瓶が7719.50円。

試験問題漏洩認める 岩手医大教授

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日本麻酔科学会の指導医認定試験の出題委員だった岩手医大医学部の盛直久教授(54)が事前に問題を漏らしていた問題で、同学会は11日夜、盛岡市から東京都内に盛教授を呼んで、事情を聞いた。盛教授は漏洩を認、謝罪したという。岩手医大も12日朝、盛教授が戻るのを待って事情を聴いた。同大は正午からの記会見で、調査委員会を発足させたことを明らかにした。
盛教授は11日正午前、靭日新聞のインタビユーで問題漏洩を認めた後、夕方に開かれた大学の教授会を欠席。医学部長の部屋に「束京へ行き、学会に話をしてきます」などと書いたメモを残して上京した。疑惑を受けて緊急に開かれた麻酔科学会の常務理事会で、盛教授は「学部の医師らに自分の知っている情報を伝えた。不正という認識もあった」と報告したという。
学会は学外の第三者を含めた調査委員会を設け、盛教授や問題を受け取った医師から話を聴き、経緯などを詳しく調べる方針だ。花岡一雄理事長は「許されないこと
でとても残念だ。まずは事実関係をはっきりさせたい」と話している。
大学側は、12日朝から、学長ら幹部が集まり対応を協議、盛教授から事情を聴いた後、午前11時から臨時教授会を開き、対応を協議した。正午からの記者会見で小川彰医学部長は「社会を騒がせたことを遺憾に感じている」と述ベ、弁護士を含む7人で調査委員会を発足させたことを説明。調査委は盛教授を含む、関係した医師からも事情を聴くことにしている。

人工心肺安全性 組合せでも確認を

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厚生労働省は、人工心肺装置など複数の機器を組み合わせて使用される医療機器について、承認審査の段階で、個々の機器だけでなく、組み合わせた状態でも安全性を確認する方針を固めた。11日の薬事・食品衛生審議会の部会の了承を得て、正式に決める。改正薬事法が施行される05年度よりも前に、通知で実施する方針。
例えば人工心肺装置の場合、人工心肺回路、人工肺、貯血槽、ポンプなどを組み合わせて使うが、個々の機器は承認されているものの、組み合わせた状態での安全性の確認は法的に明確でなかった。

医療廃棄物、8ヵ月 旧国立小児病院跡地

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旧国立小児病院(東京都世田谷区太子堂3丁目)跡地から大量の医療廃棄物が見つかった問題で、埋設場所は敷地内の8カ所にあることが厚生労働省の今春までの調べで分かった。病院は処分位置を次々と変えていたとみられ、5月からの再調査ではさらに8カ所以外でも見つかっている。いったん除去し終えた後で見つかる事態に、周辺住民から調査がずさんだったのではないか」との批判も出ている。
厚労省によるとこの土地は1899年に陸軍病院ができ、病棟や管理施設、宿舎、動物舎などが敷地内で何度か建て替えられていた。医療廃棄物や水銀汚染が一番多かったのは南西部の旧看護師宿舎前。このほか東側の旧保育所近く、空き地だった場所、周辺道路との境界線沿い付近で多く見つかった。
近くに住む男性(82)は「昔は敷地境界のあたりや南西側のくぼ地に医療廃棄物を捨てているのを診た」と語る。
5月からの試掘では、3月までに除去した地点の近くから百数十本の注射針や50個前後の小瓶が新たに見つかったほか、西側や北側からも出てきたため、厚労省は敷地全体の表面土壌の入れ替えも含め対策を検討してる。難しいのは処分位置の記録がないことや、建て替えで埋設物が拡散している可能性もある点。再調査では3万2千平方メートルの広大な敷地をマス目状に区切り、作業員が表土をシャベルですくって砕き、針などがないか確認している。
調査している関東信越厚生局は「主に南側の廃棄物や土壌を除去・搬出する際、何らかの原因で一部が落ちたことも考えられる」としている。
近くに住む男性は「いったん処理した後になぜ、注射針があちこちに落ちているのか、厚労省は説明する社会的責任がある。汚れたものは国がすべて責任を持って撤去すべきだ」と指摘。「他の国立病院でも同様のことがなかったか調査すべきだ」と話している。

保団連の調査、4月改定で健保本人の受診抑制の実態明らかに

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 全国保険医団体連合会はこのほど、今年4月に改定された健康保険法等の影響調査をまとめ、その中間報告を発表した。医療機関の窓口で支払う患者の自己負担分が4月から、これまでの2割から3割に引き上げられた。この負担増が患者の受診行動にどのような影響を与えたのか調べたもの。医療機関向けと患者向けに調査を実施。医療機関向けの結果からは、「負担増が原因で診療の中断があった」との回答が42%に上り、「受診抑制が深刻な状況」(保団連)であることが明らかになった。
 医療機関を対象にした調査は、負担増が導入されて1カ月後の5月9日から5月20日まで。5月29日までの回収は、医科815件、歯科450件の合計1265件だった。
 調査の結果概要をみると、まず6割の医療機関が「患者数が減った」と回答した。医科では68.7%、歯科では64.9%が「減った」と回答した。
 調査の主目的である患者の受診抑制については、「患者負担増が原因と思われる受診や治療の中断があった」と回答したのは、医科で42.2%、歯科で42.3%に上った。
 中断があったの指摘された患者の疾患をみると、医科では高血圧146件、高脂血症122件、糖尿病88件、腰・膝痛、関節症など81件、歯科では、歯周病103件、補綴関連95件、欠損歯63件などだった。

重症『察知』3度逃がした 東部地域病院の男児放置死

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東京都葛飾区の「東部地域病院」(鈴木謙三院長)で、同区の保育園児豊田理貴ちゃん(5)が十分な処置を受けられないまま腸閉塞で亡くなった問題で、病院側が重大な容体に気づくまでに、少なくとも3回の機会があったことが、家族の話や病院の説明からわかった。手のほどこしようがない状態に至った背景に、初期診療の甘さや引き継ぎミスなど複合要因がうかがえる。
都保健医療公社「東部地域病院」は、葛飾、足立など都の東部5区の中核病院だ。都指定の2次救急医療機関で、無休、24時間体制で小児科医が対応している。理貴ちゃ
んが病院に行った3月9日の日曜日も、小児科のほか、内科、外科など5人の当直医がいた。
最初に理貴ちゃんを診察した常勤の小児科医(32)は、日本小児科学会の認定医だ。
・張るおなか
家族によると、理貴ちゃんは母親とともに2度病院を訪れた。1度目は簡単な処置を受けて帰った。2度目は9日午前7時半ごろ。おなかを見た看護師は「すごい張りかたをしている」と言った。
午前8時、当直医は腹部のX線、コンピューター断層撮影(CT)を行った。病院が家族に渡した「入院診療計画書」によると、当直医は「麻痺性イレウス(腸閉塞)」
と診断している。内科的治療で快復することが多
い病気だ。
一方、死亡後に母親に伝えられた都監察医務院の解剖結果の死因は、「絞扼性イレウス」。腸がねじれて、壊死し、緊急手術を要する。
病院は問題発覚後、「もっと重症の可能性を考えてもよかった。待たせておけと言うなど、不適切な対応だった」と認めた。
・写真見ず?
病院によると、当直医は牛前9時ごろ、日勤の小児科医(43)に引き継いだ。その際、「腸閉塞の子が入院する」と説明したが、X線写真やカルテは見せず、口頭で話しただけだったという。
大学病院の小児科医らは、X線写真を見て、「すでに絞扼性の兆候がある」と指摘した。
当直医がこの写真さえしっかり見ていれば重大性を認識できたはず、との気持ちは同病院の関係者にもある。
病院側はいま、「診断の適否は今後、第三者に検討してもらうが、引き継ぎば不十分だった」と、この点は明確に認めている。
・危機感なし
日勤の医師は引き継ぎ後、病棟の患者十数人を回診し、午前10時半から救急外来に入った。
入院病棟に移った理貴ちゃんの容体は昼過ぎから、悪化の一途をたどる。家族は「先生に伝えて」と訴えた。口と鼻から黒茶色の液体を吐いた。これが、理貴ちゃん
が示した最後の「訴え」だった。が、母親は、看護師に危機感を感じられなかったという。
午後1時半、呼吸が弱まって初めて、看護師が医師を呼びに走った。
日勤の医師と外科医が朝のX線写真を取り寄せた。「なぜこんな状態になるまで放っておいたのか」。持ち直せば、大学病院に搬送しようとしたが、午後4時すぎ、死亡した。
病院は言う。「日勤の医師は外来の対応に忙しく、病室に行けなかった。駆けつけるまで、いつもより多い7人の患者を診察していた」
病院は現在、事故調査委員会を設置、治療内容や診療体制について検証している。

宿直医不在の桜大病院 理事長ら書類送検

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当直医を病院に宿直させず、自宅で「宅直」させていたとして、警視庁は4日、東京都練馬区豊玉南1丁目の桜台病院を
経営する医療法人野村慈豊会と、野村寿一理事長(63)ら7人を医療法違反(宿直医師不在の管理責任)などの疑いで、東京地検に書類送検した。
送検されたのはほかに現院長(78)、前院長(39)、事務長(65)慈豊会理事(60)、大学病院の勤務医(39)、事務職員(65)。
生活環境課と練馬署の調べでは、前院長や現院長らは、医師の宿直が義務づけられているにもかかわらす、昨年1〜12月、院内に宿直医師を置かずに大学病院の勤務医を自宅待機させる「宅直」を週3回、計125回実施した疑い。
野村理事長や事務長は昨年12月、都の立ち入り検査の際、宅直していた勤務医について「週3回宿直をお願いしていた」などと虚偽の報告をした疑い。

腸閉塞を放置 男児死亡 葛飾・東部地域病院

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東京都内の病院で今年3月、5歳の男児が亡くなった。腸がねじれて急激に悪化する腸閉塞だった。苦しむ子が病院に運ばれたのは朝。家族や看護師は何度も「早く診て」と訴えたが、当直医は「待たせておいて」と放置した。容体が悪化するなか、日勤の医師も昼過ぎまで、一度も病室を訪れなかった。小児救急の充実をめざす病院で起きた出来事だった。
東京都葛飾区に住む保育園児、豊田理貴ちゃんが苦しみだしたのは、父親の実家に泊まりに行った3月9日未明、日曜日のことだ。
急におなかを抱えて「痛い、痛い」と泣き始めた。母親(35)がみると、腹部がパンパンにはれている。午前4時半ごろ、近くの東京都保健医療公社「東部地域病院」に運んだ。以前、治療を受け、休日でも小児科が診てくれるので選んだ。いったんは痛みが治まったので、家に戻ったが、はれが引かない。心配で再び病院に連れて行ったのが午前7時半。顔は真っ青。苦しいのか、何度も寝返りをうった。
だが、当直の小児科医はなかなか現れない。看護師が当直室に3度、連絡した。看護師が気づいたことをつづっておく「状況報告書」にはこう記されている。
看護師 顔色が悪くおなかもふくれている。待てそうにないのですが。
当直医 なに考えている。待たせておいて。病棟処置中とか言ってさ。
3分後、再び電話。
看護師 すぐ診ていただけませんか。
当直医 いいから待たせておいて。
さらに10分後。
当直医 いま顔洗っているから。
医師が珍察した時刻は「午前8時前」。
母親によると、腹部のX線撮影などをした後、理貴ちゃんを診察した。
「腸が詰まってガスがたまっている。もう一度浣腸して検査しましょう」
と言い残して、部屋を出た。点滴、通常の浣腸以外の処置はなかった。
当直医はその後、一度も様子を見に来ず、午前11時ごろに帰宅した。日勤の小児科医に「重い腸閉塞の子がいる」と引き継いだが、X線写真は見せていなかった。
理貴ちゃんの容体は次第に悪化した。
突然、起き上がろうとする。「ハアハア」。息が荒い。母親が「痛くない?」と聞くと、「痛くない」。ニッコリほほ笑む。我慢強い子だった。
やがて、「アリさんのおうちが見える」。うわごとだった。天井に手を伸ばし、何かをつかもうとする。
母親が看護師に「先生に伝えてください」と訴えたが、医師は来ない。午後1時半すぎ。急に口と鼻から、液状のものを吐いた。黒茶色。呼吸が弱まる。看護師が医師を呼びに走った。
日勤の医師が駆けつけた。パジャマをまくりあげると、下腹部がどす黒く変色していた。内出血だ。薬剤投与に心臓マッサージ。一時、持ち直した。が、午後4時すぎ、亡くなった。死因は司法解剖で、絞扼性レイウス(腸閉塞)と判明した。
家族はX線フィルムを病院から入手した。下腹部に、ふつうではあり得ない水平な線が何本も写っている。腸閉塞の証拠だ。大量のガスが充満していることは、カルテに書かれている。
本紙記者が複数の小児科医にX線写真をみてもらった。「重い腸閉塞の場合、鼻から管を入れてガスを抜くか、高圧浣腸で様子をみる。だがこれだけたまったら、すぐに手術を検討するケースだ」と指摘した。
救急外来の看護師は報告書に医師を非難する言葉を残した。「迅速な対応をしてほしかった」
病院側は、その日の当直の状況や引き継ぎなどについて調べている。

診療体制を見直したい
 鈴木謙三・東部地域病院長の話
当初はベストを尽くしたと考えていたが、内部調査で医師が入院から急変までの間、回診に行けなかったことなど至らない点が明らかになった。ご家族におわびするとともに、病院の診療体制を見直し、医師をはじめとした医療スタッフの対応が適切だったかどうかについて今後検討していきたい。
東部地域病院 病床300。葛飾、足立、江戸川等東部5区の中核病院として90年7月に、東京都葛飾区亀有5丁目で開業。都の外郭団体「都保健医療公社」が運営する。診療科は内科、小児科、脳神経外科など13科。小児中心の救急外来の充実を掲げている。