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名義借り詐欺認定 元院長に有罪判決介護報酬不正13億円

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勤務実態のない医師の名義を借り、介護報酬13億2千万円余を北海道国民健康保険団体連合会(国保連)からだまし取ったとして詐欺罪に問われた北海道岩見沢市の医療法人・緑仁会病院の元院長馬原克夫被告(48)らに対する判決が26日、札幌地裁岩見沢支部であった。嶋原文雄裁判長は名義借りについて「順法精神の欠如が著しい」としたうえで、「事件は氷山の一角と考えられる」などと述ベ、馬原元院長に懲役3年執行猶予4年(求刑懲役4年)の有罪判決を言い渡した。
病院と医師の契約に基づく一連の名義借り、名義貸しが詐欺罪にあたると認定された。介護療養型医療施設の指定を受けるためとはいえ、現場の医師不足から、事実上、病院運営を支える形になってきた名義借り問題が社会問題化する中で、司法が厳しい判決を下したことは、全国の病院に影響を与えそうだ。
馬原元院長と同罪に問われた同病院元事務長の今野鎮彦被告(56)にも懲役2年執行猶予3年(求刑懲役3年)の有罪判決が言い渡された。
嶋原裁判長は名義借りが起きた背景について「地方の老人病院では必要な医師数を確保することが困難だった」としたうえで「そのような現状があったとしても、設備に応じたサービスを供給すれば良かったのだから、名義借りが正当化されることにならない」と指摘。「長期にわたって名義借りをしていたのは、順法精神の欠如が著しい」と述べた。
そのうえで、個人的な経済利益を目的とした犯行でないことや、実質的な財産被害の約6700万円を返還しているなど有利な情状を挙げ「地域医療の現場ではこの名義貸しが横行し、事件は違法な慣習の氷山の一角と考えられる」などと執行猶予つきの判決を選択した理由を述べた。
判決によると両被告は、同病院に常勤2人、非常勤1人の医師しかいないのに、介護療養型施設の指定を受けられるよう、札幌医大出身の医師の名義を借りて常勤3人、非常勤2人を配置して指定条件を満たしていると虚偽の申請をし、00〜02年に計27回にわたって国保連から計約13億2千万円をだまし取った。
緑仁会病院をめぐっては、02年に名義借り問題が発覚し、岩見沢保健所が立ち入り検査。その後、同病院で今野元事務長らが放射線技師の資格を持たないのに、X線撮影をしていたとして同保健所が馬原元院長らを診療放射線技師法違反容疑で北海道警に告発し、家宅捜索を実施した道警が03年7月に馬原元院長らを逮捕した。両被告は同法違反にも問われていた。
名義借りによって介護療養型施設の指定を受けた病院は北海道内だけでも約70施設あり、緑仁会病院を含めて6施設がすでに指定を取り消されている。医療関係者は「これらの施設に支給されている給付費もすべて、詐欺になるという判決だ」と衝撃を受けている。

キーワード 医師の名義貸し問題

大学病院の医師が、実際には勤務していない外部の病院に名前を貸し、常勤医のように装って給料を受け取る行為。慢性的な医師不足に悩む一般病院側と、若手医師の収入を増やしたいなどの大学病院側の事情が背景にある。今年1月の文部科学省の調査で全国の大学病院に広がっていることが判明。さらに厚生労働省の調べで、名義を借りた医療機関は少なくても399カ所、医師数は1128人にのぼることが分かった。

一般病院も構図は同じ 解説

介護報酬をだまし取ったとして詐欺罪認定された元院長の運営する北海道岩見市の医療法人緑仁病院は、痴呆(ちほう)症の高齢者の患者らが入院する介護療養型医療施設の指定も取っていた。この施設は、医療法で定められた医師や看護師らの配置基準が、一般の病院より少人数でいい。また、収入も介護保険から支払われる介護報酬で、医療保険の診療報酬とは違う。
しかし、どちらも必要な人数を決めた配置基準の6割を切った場合、報酬が減額される。減額措置を避けるために、医師らの人数を水増ししたのは、これまで明らかにな
っている一般病院での名義借りと同じ構図だ。
名義を借りる医師の供給元は、同病院の場合は札幌医科大だった。収入のない大学院生らの名義を医療機関に貸し出し、医師集めに悩んでいた病院側と利害が一致した。勤務実態が全くない医師に社会保険に加入させ、給与を出した。週数回しか来ていなくても常勤の扱いをしたケース
もあった。
背景には、医師の地方での遍在がある。判決でも「地方の老人病院では、医師数を確保することが困難」と指摘。しかし「名義借りが正当化されることにはならない」とした。北海道に端を発した名義借り問題は、文部科学省調査で全国51の大学病院に広がった。
この問題は古くから医療関係者の間で語られながら、手が付けられていなかった。今回の判決を受けて、厚生労働省の担当者は「捜査機関が事件として立件するのは、高額の不正受給など悪質なケースに限られるのではないか。現段階ではこちらが、詐欺容疑で告発することは考えていない」としている。今後、明らかになった名義借り問題について、保険医療機関の指定取り消しなども視野に実態調査を進める。

名義借り詐欺認定 「サービス成り立たぬ」地方病院医師不足、解決見えず

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医師の名義借りについて札幌地裁岩見沢支部は、やはり、詐欺と認めた。名義借りで不正に診療報酬を受給していたのも事実だが、地域医療での医師不足がある。だが、一方で名義を借りていた多くの病院の責任者は、「詐欺とはいえ、地方の実情も理解して欲しい」と話す。
北海道内では、名義を借りていた病院が170施設にのぼりこのうち、介護保険制度創設時に名義を借りていた病院が、約70施設に上ることが分かっている。
ある道内の病院の関係者は「苦渋の虚偽申請だった。それが『詐欺』となればこれらの病院で続けられている介護サービスは成り立たなくなる。現場は大混乱だ」と衝撃を受ける。
名義借り問題で、介護施設の指定を取り消された興部国保病院の開設者である硲一寿町長は「今回の民間病院への判決と、小さな町の公立病院とケースは違うと考える」としながらも、絶対的な医師不足に悩む地方の実情に触れ、「今回の判断は、こうした地域医療の実態を見直すきっかけにしなくてはならない」と話した。
東北大医学部の大学院生らによる名義貸し問題で揺れる宮城県内にも衝撃が走った。
医師名義を借りて介護報酬を水増し受給した疑いが出ている同県松島町の松島病院の事務長は「詐欺という認識はなかった。厳しい判決を聞いて不安を感じる」。
医学部や同県の調査では、松島病院を含む県内の24病院と1診療所に名義を借りていた疑いが出ており、宮城社会保険事務局による調べが進んでいる。
名義貸しの中には、非常勤医なのに常勤医扱いにして健康保険証の発給を受けていた「名義貸し類似行為」も含まれる。
類似行為をしていた東北大学の元大学院生は、「すでに使った医療費の返還請求がきている仲間もいるが、納得できない…」と話す。今回の判決について「中核病院以外の地域の病院からの医師はがしはより進むだろう」と見る。
数年前まで名義借りをしていた東北地方のある病院長は「今回の判決は詐欺に問われて当然だ。ただ、医師不足は施設基準についての問題で、地域に本当にそれだけの医師数が必要であるかを考え
てほしい」と話した。
「警鐘」受け止めて 医事評論家の水野肇氏の話
医者の世界にはタブーがいっぱいある。そのひとつである名義借りの問題が司法の場で詐欺と認定されたことは、同様に名義借りしている病院も軒並み有罪となることを意味し、非常に画期的だ。医師不足に悩む過疎地でやむなく名義借りし、収入の増加に利用しない善意の病院もあるかもしれないが、あるべき姿ではない。警鐘として、しかと受け止めるべきだ。

カルテ改ざんに行政処分厚労省方針 保険医取消・戒告

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厚生労働省は24日、医師によるカルテ改ざんが判明した場合、健康保険法令に違反するとして、保険医の取り消しや戒告などの処分をする方針を決めた。心臓手術を受けた少女が死亡し、カルテを改ざんしたとして証拠隠滅罪で有罪判決を受けた東京女子医科大病院(東京都新宿区)の担当医についてこの処分を前提に調べる。過去にカルテ改ざんを理由に医師を行政処分した例はなく、処分が決まれば、初めてのケースになるという。
同省によると、医師には同法にもとづく省令により、カルテの記載義務がある。このため、改ざんは不実記載にあたる、と判断した。同省は同病院側に対し、カルテの記載内容など、事実関係についての報告を求める。
同病院が改ざんカルテをもとに請求した診療報酬が不正請求にあたるかどうかは、院長らの過失の度合いなどによって判断される。同省は院長らにも今後、事情を聴くことにしている。

帝王切開で出血死軽井沢病院側、ミス認める

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軽井沢病院(宮尾陽一院長)で昨年10月、帝王切開で男児を出産した女性(当時32)が手術後に大量出血し、死亡していたことがわかった。病院は23日に記者会見して「出血に気づかなかった」と過失を認め、町は賠償責任を負うとして遺族と話し合いを進めている。
同病院によると、女性は昨年10月4日、帝王切開の手術後、経過を見るために入っていた集中治療室(ICU)で容体が急変し「心臓が停止。佐久総合病院(同県臼田町)に搬送されたが死亡した。病理解剖の結果、子宮の縫合部から腹腔内に大量出血があり、死因は出血性ショックと判断された。
軽井沢病院の宮尾院長は「担当医師が手術直後に調べたときには出血はなかった。ICUでも出血に気付かなかった」と説明している。また当時、ICUに医師が不在で、容体の急変後に担当医師が駆けつけた。

入院患者から耐性菌 秋田大病院抗生物質を長期投与

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秋田市の秋田大医学部付属病院(加藤哲夫院長)は23日、心臓血管外科の入院患者3人から抗生物質がほとんど効かないとされるバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)が検出されたと発表した。
同病院によると、1月中旬に発熱した男性患者の検査でVREを検出。
その後この患者と接触した別の患者2人からもVREが見つかった。うち2人はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の治療のため、15日から19日間、抗生物質のバンコマイシンを連統投与されていたという。同病院の院内感染対策チームによるとこの抗生物質を長期投与すると耐性菌に感染しやすくなるため、同病院は通常1週間で見直す。同科で投与された量は通常より多かったと説明している。
また、VRE検出を受けて、過去5年間に同科で死亡した患者を調べたところ、8人からMRSAが検出されたとした。

埼玉医大医療過誤 主治医らに7600万円賠償命令

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埼玉県川越市の埼玉医大総合医療センターで00年、抗がん剤を過剰投与され死亡した同県鴻巣市の女子高生里古館友理さん(当時16)の遺族が、埼玉医大と元主治医(34)ら6医師を相手取り約2億3千万円の損害賠償を求めた訴訟で、さいたま地裁(広田民生裁判長)は24日、大学と主治医ら3医師の医療過誤を認め約7600万円の支払いを命じた。
裁判で遺族は、死因を故意に隠蔽され、精神的苦痛を受けたとして大学と院長ら4医師に慰謝料も求めていた。判決はこの点について「病死」とした死亡診断書の虚偽記載を認定したが、「積極的な隠蔽目的と認めるべき事情はない」と退けた。
古館さんの父文章さん(50)は判決後、この点を不服として近く「控訴する」と述べた。

医師名義借り延べ865人北海道調査

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医師の「名義借り」をしたとされる病院を対象に北海道が実態調査した結果、02年度までの5年間に170病院が延べ865人の医師の名義を借りて「常勤医」とする虚偽の報告をしていたことが23日、分かつた。道内の病院(20床上)の約25%で「名義借り」があった格好だ。
国立の北大医学部、旭川医大、道立の札幌医大の計3大学の「名義貸し」に関する自主調査を受け、道は病院を通じて「名義借り」の実態を独自に調べていた。
調査結果では、病院側が名義を借りていた医師は北大医学部444人、旭川医大149人、札幌医大188人、道外・その他84人の合わせて延ベ865人。

カルテ改ざん医師有罪 東京女子医大手術ミス事件 教授指示は認めず 東京地検

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東京女子医科大病院の心臓手術ミスで01年3月、小学6年の平柳明香さん(当時12)が死亡した事件で、同僚の医療ミスを隠すためカルテ類を改ざんしたとして証拠隠滅罪に問われた元同病院医師の瀬尾和宏被告(48)の判決が22日、東京地裁であつた。岡田雄一裁判長は、瀬尾被告に懲役1年執行猶予3年(求刑懲役1年)を言い渡した。
量刑について岡田裁判長は「カルテ類の隠滅行為は医師倫理に著しくもとる行為で言語道断。また、本件が医師や医療の現場に対する社会の信頼を大きく揺るがしたことを考えると、刑事責任は決して軽くないが、カルテ類の改ざんについては深く反省している」などとして、刑の執行を猶予した理由を述べた。
一連の事件では、人工心肺装置の操作を担当した瀬尾被告の同僚医師の佐藤一樹被告(40)が業務上過失致死罪で起訴され、公判中だ。瀬尾被告は初公判で佐藤被告の医療ミスを隠すため、人工心肺記録などを改ざんしたという起訴事実を認めた。しかし、公判途中で「刑事事件に発展するとは考えておらず、証拠隠滅の意図はなかった」と無罪主張に転じた。
これに対し、判決は、「報道を通じて、医療過誤で医師が起訴された例を知っていた」と瀬尾被告が自ら公判で供述している点を重視。佐藤被告が刑事責任を問われる可能性を認識していた、と結論づけた。
また、瀬尾被告は「証拠隠滅は元主任教授の今井康晴氏の指示だった」と主張。明香さんの遺族も共犯容疑で今井氏を東京地検に告訴していたことから、今井氏の共謀の有無に対する判断も注目されていた。
判決あh「瀬尾被告が、今井氏の指示を盾に取って看護師らに改ざんを命じた形跡はうかがわれず、事前の共謀は認められない」と判断した。

殺人容疑の医師不起訴 関電病院「安楽死」立証、困難

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関西電力病院(大阪市福島区)で95年2月、男性医師(49)が末期がんの男性患者(当時46)に薬剤を点滴して死亡させたとされた事件で、大阪地検は22日、殺人容疑で書類送検されていた医師を不起訴処分(嫌疑不十分)にした。医師は大阪府警の捜査では「家族を楽にしてあげたかった」などと容疑を認めたとされたが、地検の調べには否認。地検は、関係資料からも、薬剤投与と死亡の因果関係を立証できないとして、立件は困難と判断した。
医師の行為が安楽死として許容される要件としては、95年3月の横浜地裁判決が、「患者の意思表示がある」ことなど4点を示している。大阪地検は、今回の事件がこの要件にあてはまるかも含め、捜査してきた。しかし、男性の死因が特定できなかったことから、安楽死かどうかの判断にば踏み込まなかった。
調べによると、末期の直腸がんで入院していた男性患者は95年2月5日午後8時5分ごろ、医師から塩化カリウム溶液を点滴され、約5分後に死亡したとされる。府警は、医師が故意に溶液を原液で投与し、急性高カリウム血症で死亡させたとして、昨年8月、「刑事処分相当」と殺人容疑で書類送検していた。

派遣先に厳しい眼大学病院出す側も医師不足

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山形市の市立病院済生館(峯田武興館長)で、03年3月から1年間にわたり、がんなどの治療を受けた患者計25人が、過剰に放射線を照射されていたことが22日、分かった。治療機器の操作ミスが原因といい、うち1人は副作用とみられる症状が出ているという。
同病院によると、新たに導入した放射線発生装置で治療を受けた計255人のうち、25人が治療に必要な線量よりも3〜13%多い放射を受けたという。放射線を当てる患部の形状によっては、線量を少なくする装置を取り付けなげればならないのに、放射線科の医師が忘れていたという。
山形大の医学部付属病院などで放射線治療の線量ミスが相次いで発覚したことを受けて、チェックしたところ3月11日に発覚した。病院側によると、25人のうち、喉頭がんの治療を受けた患者1人に副作用と見られる症状が出ているといい、追加治療をするという。
4人はすでに死亡しているが、ミスとは関係ないとしている。
峯田館長は、「副作用の患者への治療を最優先させ、再発防止に務めたい」と話している。

派遣先に厳しい眼大学病院出す側も医師不足

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大学病院による派遣医師の引き揚げが都内の公立病院でも問題にになっているが、大学病院側はどう受け止めているのか。地方の病院にいきたがらない若い医師を説得する苦労もあった。大学病院側が若手医師の研修先にふさわしい病院を厳密に選ぶ傾向も出てきた。ただ、大学病院内で進行する「医師不足」への危機感だけは共通していた。
「今や教授は『偉い』んじやなくて『偉いこっちや』。傾いた会社の人事部長をやっているようなものですよ」東大病院(文京区本郷7丁目)のある教授が現状をたとえた。
あちこちの関連病院から「人が足りない、送ってくれ」と要請が来る。
ところが、若い医師の側は条件のいいところを選ぶ。給与待遇はもちろん、きつい当直は月何日か……。訴訟や刑事事件になる医療事故が相次ぐ最近では「(その病院は)安全ですか?」とさえ、聞かれる。
「そんな待遇では行けませんよ」と、はっきり断られることもある。
「『そこを何とか』『将来、損にはならないよ』と説得して、ようやく行ってもらうんですよ」。教授は注文を付けた。「医師本人が戻りたいから給与が下がっても大学に戻る。医師が来ない病院の中にはいままであぐらをかいていた病院もある。質をよくしてもらわないと」大学病院の医師不足も目立ち出している。
東大病院の心臓外科は毎夜、医師3人が当直につく。国の予算上の手当は1人分しかなく、残りは医局費で補助する。麻酔専門医も人数が足りず、手術室を掛け持つ。
迫い打ちのように、4月から新人医師の臨床研修が2年間必修化されれば、これまでのような安い労働力としての研修医がいなくなる。労働基準法の1日8時間労働も厳格に適用されそうだ。
永井良三院長は強調した。「医師不足は深刻。今後、どこの大学病院も、本気で人を集めることになる」
副医学部長の名川弘一・腫瘍外科教授が付け加えた。「大学病院がつぶれないという神話はなく、甘い顔はできない」
「AAA」「CCC」順天堂大学付属順天堂医院(文京区本郷3丁目)の外科の医局では、医師派遣先の関連病院をランク付けしている。
年間手術数、派遣医師の執刀数などのデータに加え、派遣医師へのアンケートで指導者の質、給与水準、満足度などを数値化し分類する。まるで金融機関の格付けだ。
同院からは卒後3年目以降の医師約60人が29病院に派遣されている。うち今回の格付けに基づき、下位6病院から約10人を夏までに引き揚げる。
宮野武院長がきっばり言う。「これまでの関係のみを配慮していられない状況です。サバイバルです。向こうは大変でしよう。院長が嘆願にも来る。でも、当院も余裕はない。研修先として、いい病院との関係を残す」

医療「事故」率10.9% 100人調査半数防げた可能性 厚労省研究班

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入院患者のカルテを調べて医療事故の発生率を推計している厚生労働省の研究班(主任研究者、堺秀人
・東海大病院副院長)は19日、中間的な報告をまとめた。昨年度に入院した700人のうち、何らかの医療事故で死期が早まったり、入院延長されたりした患者は76人で10.9%で達していた。
うち半数は治療方針や院内体制の変更で防げた可能性がある、と分析した。
大学病院や中規模の病院など7施設から、入院患者100人ずつのカルテを無作為抽出。うち予定外の再手術、術後の合併症、院内感染、転倒外傷などで患者が被害に遭った事例を、ミスの有無は問わずに「事故」として分類した。
事故が防げたかどうかも、同研究班が個別に判定。「高い割合で防げた可能性がある」は23.7%、「可能性は低いが防げたかもしれない」が26.3%だった。残り50%は「予防は事実上不可能」だった。
同じ手法で分析した豪州調査(94年)の事故発生率は16.6%、ニュージーランド調査(01年)は12.9%、今回調査とほぼ同じ傾向だった。研究班は05年度末までに1万5千人分のカルテを調べ、最終報告を出す。

患者交え「調査委」設置へ 東京女子医大

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相次ぐ医療事故を受けて東京女子医科大学病院(東間紘院長、東京都新宿区)は18日、患者側や外部の専門医らを含めて原因を分析する「医療事故調査検討委員会」(仮称)を院内に設置する方針を明らかにした。第三者機関をつくることで、患者側に募る不信を打開したい考えだ。当事者である患者が参加した機関設置はほかの大学病院にも例がないという。
委員会は患者側から申し出があった場合に設置。病院側から院長、副院長、主治医、弁護士が、患者側から本人や家族・遺族、弁護士が参加する。第三者として病院、患者側が合意ずつ専門医を選ぶ。人選に合意できない場合も、双方が1人ずつ専門医を指名する。
委員会では、カルテ、手術ビデオ、検査写真など診療記録の原本、第三者の見解をもとに、経過や原因について確認し、半年以内に報告書をまとめる。見解がまとまらなかった場合には、それぞれの意見を併記する。審議は原則公開する。

医療事故や医師らの「ヒヤリ」事例 ネットで公開検討

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第三者機関が原因分析・対策

続発する医療事故に対処するため、厚生労働省は17日、全国約250の大学病院や国立病院などに義務づける事故報告を第三者機関に原因分析してもらい、新年度中にも公表することを決めた。患者が死亡したケースを始め、事故には至らなかったが医師や看護師が「ヒヤリ」としたり「ハッ」としたりした事例を類型化して分析。その結果をデータベース化し、インターネットなどを通じて公開することを倹討している。
同省は全国の大学病院などから、医療ミスの有無は問わず、予測しない死亡例や重い障害が残った事例の報告を義務づける。さらに、医師、看護師が驚いた「ヒヤリ・ハット事例」も報告してもらう。
これらの事例を財団法人・日本医療機能評価機構(東京都千代田区、工藤敦夫理事長)で分析する。例えば、医師の指示の誤り、看護師の確認不足など事故原因に結びついたと見られる行為や手術、検査、薬剤投与など事故の起こった場面をいくつかのケースに類型化し、起こりやすい原因を探る。
再発防止に役立てるため、事故事例や分析結果は、同機構がインターネットなどを通じて公開することを検討している。医療機関に役立つと思われる対策も示す。
同省は01年から、手をあげた全国約240の病院から「ヒヤリ・ハット事例」の報告を受けている。約1万5千件にのぼり、同省の専門家会議などが内容を分析してきた。しかし、同じような事例が相次いでおり、医療現場に分析結果がうまく還元されていないという問題点が、指摘されていた。
そのため同省がこれらの「ヒヤリ・ハット事例」も、同機構に管理をまかせ、一体的に分析を進めることにした。事例集は試験的にホームページ(http://133.148.66.26/hiyarihatto/index.jsp)で公表されている。
■事例集
ヒヤリ・ハット情報のデータベースに接続し、「与薬」というキーワードで検索すると、多数の事例が登場する。
例えば「インスリンの指示変更にかかわる投与量間違い」では、経験5年の看護師が手術後の男性患者に対し、インスリンの投与量の変更を見落として、少ない量しか投与しなかった例が記載されている。改善策として、指示が変更された場合には、前勤務者との申し送りの確認が挙げられている。
「複数の輸液ポンプ使用中のラインの誤接続」
では、患者の体をふき、寝間着を交換する際、2本の点滴チューブをつなぎ間違えた事例が記載されている。看護師が寝間着の袖から点滴を外そうとしてイライラし、別の患者の機器の警報音にせかされていた状況が挙げられている。

青戸病院死亡事故医師の処分答申 有罪確定前、初の適用

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東京慈恵会医大青戸病院(東京都葛飾区)で腹腔鏡手術を受けた男性患者が死亡した事故で、医道審議会分科会は17日、業務上過失致死罪に問われている医師2人=東京地裁で公判中=と、同罪で書類送検された元診療部長=起訴猶予=について、それぞれ2年間と3カ月間の業務停止処分とするよう厚生労働相に答申した。18日に処分が決まる。
答申の対象となった医師らは、02年1月、腹腔鏡手術で前立腺がんの摘出を試みたが、患者が大量出血を起こして1カ月後に死亡。執刀医ら3人が逮捕、起訴された。手術を許可した診療部長と麻酔科の医師2人も書類送検されたが、起訴されなかった。
厚労省は、医師免許の取り消しや業務停止などの処分については、主に刑事裁判で罰金刑以上が確定した場合を対象にしていた。だが、昨年10月、重大な事故では刑事処分の確定を待たずに処分する方針を決め、今回が初の適用となる。

青戸病院死亡事故上司ら3人業務停止

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東京慈恵会医大青戸病院(東京都葛飾区)で腹腔鏡手術を受けた男性(当時60)が死亡した事故で、厚生労働省は18日、業務上過失致死罪に問われている斑目旬被告(38)ら公判中の医師2人と起訴猶予処分になった上司の計3人に、業務停止2年から3カ月の処分を決めた。医療過誤で刑事責任が確定する前に処分したのは初めて。
業務停止2年は、執刀医だった斑目被告と、患者の主治医だった長谷川太朗被告(34)。業務停止3カ月は、手術を許可した元診療部長(53)で、2被告に対する監督責任があるとして、医療事故の当事者以外で初めて処分された。
この医療事故で2被告とともに業務上過失致死罪に問われ、公判で「大量出血して死亡するとは予見できなかった」と無罪を主張した医師1人についても、厚労省は本人から事情を聴いており、処分を検討している。
また、厚労省は、埼玉医大総合医療センターで00年、抗がん剤を過剰投与し、女性患者(当時16)が死亡した事故で、業務上過失致死罪で禁固2年、執行猶予3年の判決が昨年3月に出て確定した元主治医の墨一郎医師(34)について、業務停止3年6カ月の処分にした。同省によると、過去に医療事故で有罪が確定した医師では、業務停止1年6カ月が最も重い処分だという。

健保数の減少最大 今年度企業のリストラで打撃

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大企業のラリーマンら約3100万人が加入する健康保険組合数の減少が、03年度は過去最大になることが17日、健康保険組合連合会(健保連)のまとめでわかった。企業の人員削減や賃金カットによる保険料収入の減少に加え、高齢者医療費の負担増で、各組合の財政が軒並み悪化、3月1日までに54組合が解散や合併に追い込まれた。加盟組合数は1622と約30年前の水準まで落ち込み、減少に歯止めがかかりそうもない。
組合数の2けた減は98年度から6年連続。ピークの91年度より約200組合減り、これまで最大の減少幅だった02年度の50組合を03年度途中で上回つた。03年度はサラリーマン本人の医療費の自己負担が3割に引き上げられたため、保険金給付の伸びが抑制されるなど健保組合の財政好転が期待されたが、高齢者の医療費をまかなうために各組合へ割り当てられた拠出金の負担が増え、重荷になっている。
健保組合が解散した場合、従業員は政府が運営し、中小企業のサラリーマンらが加入する政府管掌健康保険に移り、医療費補助など健保組合独自の恩恵は受けられなくなる。政管健保も保険料収入の減少や、高齢者医療費の負担などで経営悪化が続いている。

東北大名義貸し学長ら69人を訓告・厳重注意

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東北大医学部の医師の名義貸し問題で、同大は16日、前医学部長の吉本高志学長を含む大学関係者計69人を処分すると発表した。名義貸しをしていた院生ら49人を「社会的常識を欠いた行為」として医学部長名で厳正注意処分とし、院生らが所属していた医局の教授18人や、吉本学長、玉井信・医学部長の計20人については「監督責任」などを指摘し、学内規に基づく訓告処分とした。
同大では、吉本学長や玉井教授ら医学部教授が、医師派遣先の公立病院から多額の現金を受け取り、仙台市民オンブズマンから収賄容疑で告発されている。しかし同大は「金銭の受け入れと医師派遣には関連性がない」として、今回の処分では金銭受領問題に踏み込まなかった。

「ア」で検索…659種類、「アル」で検索…77種類。薬を1、2字で探せる病院45%

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日本病院薬剤師会 取り違いの危険指摘

血圧降下薬「アルマール」と糖尿病薬「アマリール」など、似た名前の薬を誤って患者に投与する医療事故が後を絶たないが、医師が薬を選ぶ際に、カタカナの頭の1、2文字だけの入力で検索できるコンピューターシステムを導入している病院が45%もあることが日本病院薬剤師会の調べでわかった。
昨年11月、全国の病院に勤める会員に聞いた。
回答のあった123病院のうち、1文字から検索できるシステムになっているのは39病院(31.7%)、2文字からは17席院(13.8%)。3文字は60病院(48.8%)、4文字と5文字は各1病院(0.8%)だった。
約7千種類の内服薬でみると、2文字の入力で1種類だけが示されるのは10%しかなく、3文字で67%、4文字で90%になる。例えば、「ア」と入力した場合、画面に表示される薬は659種類、「アル」で77種類、「アルマ」で3種類、「アルマー」でアルマールだけになる。画面に多くの薬が並べば、誤って選ぶ危険性は高くなる。
同会は「実態はわからないが、1文字または2文字の入力で検索できれば、多くの医師はそれを使ってしまうだろう。リスクの少ない3文字以上にしていない病院は安全性より利便性を優先している」としている。

「病院から金銭」で東北大 医師派遣の調整一本化

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医学部教授らが医師派遣先の公立病院から多額の金銭を受け取っていた問題を受け、改善策を協議していた東北大の社会貢献策検討委員会は15日、新しい医師派遣システム案をまとめた。学内に医学部教授や、行政、地方病院、医師会の関係者らからなる「地域医療支援機関」(仮称)を設置。地方病院からの医師の派遣要請を一本化して受け付け、必要に応じて医師のあっせんを行うという。
新システム案によると、支援機関は要請を受けた後、医師派遣の必要性を検討。「必要」と判断した場合には、支援機関が各医局に医師を派遣するよう依頼する。依頼に強制力はなく、実際に医師が病院に行くかどうかは医師個人の判断に任
される。
従来の医師派遣システムでは、過疎地の病院長などが、医師の人事権を持つ医局の教授に派遣を直接依頼するケースが多く、地方病院から多額の寄付金が大学側に寄せられる背景とされていた。

ミスを多発医師の処分「民事訴訟、対象に」

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同じ医師が医療ミスを繰り返す問題について、医療事故被害者の家族らが15日、刑事裁判だけではなく、民事訴訟でミスが認められた医師らも行政処分の対象にするよう、厚生労働省に申し入れた。
要望したのは、抗がん剤の投与ミスで長女(当時16)を失った古館文章さん(50)ら。
これまで医師免許の取り消しなど行政処分の対象は、刑事裁判で有罪が確定した医師や歯科医師に限られた。厚労省は、民事訴訟で過失が認められた場合も、処分の対象にする方針を決めているが、実際の処分はまだ行われていない。一方、東京慈恵会医大青戸病院で腹腔(ふくくう)鏡手術ミスにより患者が死亡した事件については、業務上過失致死罪に問われている医師3人=東京地裁で公判中=の行政処分を、17日の医道審議会分科会に諮問する。

大腸がん起こす遺伝子異常判明 日米のグルーブ

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大腸がんは細胞増殖を抑制するSFRPという遺伝子の異常が原因になっていることを、札幌医大第1内科と米ジョンズホプキンス大の共同研究グループが突き止めた。
SFRP遺伝子の働きを回復させる薬剤が開発されれば、大半の大腸がんを抑制できる可能性があるという。英科学誌ネイチャー・ジェネティクス電子版に15日、論文が掲載された。
大腸がんの発生はこれまで、がん抑制遺伝子の突然変異などが要因とされていた。
研究グループはこれとは別に、正常な細胞増殖を促すWNTと呼ばれるたんぱく質を調整する機能に、何らかの異変が起きているのではと推測した。
大腸がん細胞を調べたところ、WNTの働きを抑制するSFRP遺伝子に異常が起きているため、がん細胞が増え続けることがわかった。正常なSFRP遺伝子をがん細胞に入れたところ、増殖が抑制され、がん細胞の死も確認したという。

院内感染?3人死亡 北海道・北見病院患者からMRSA

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北海道北見市の道立北見病院(山口保院長)で入院患者3人がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が原因とみられる敗血症で死亡していたことが13日分かつた。病院によると、ほかに6人がMRSAを保菌しうち2人が発症しているが、症状は軽いという。
死亡したのは40代の男性、60代の女性、70代の男性。同病院や道の説明では、女性は昨年12月、男性2人は先月と入院時期は異なるが、今月6〜11日の間に相次いで亡くなったことから、院内感染の疑いが強いという。
同病院は感染経路を調ベるとともに、手術や心臓血管造影検査を中止している。
記者会見した山口院長は「院内感染の疑いが強く、責任者として責任を感じており、申し訳なく思っている。今後は院内消毒などを徹底させたい」と話した。
MRSAは抗生物質が効きにくい性質を持っている。健康な人は保菌者になっても発症しないが、高齢者や幼児、抵抗力が落ちている手術後の患者などは敗血症や肺炎、骨髄炎などを引き起こすことがある。

東北大学病院・国立仙台病院来月、麻酔医が激減「手術1〜2割減る」

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東北大学病院(仙台市)で手術時の麻酔を担当する医師25人のうち約半数の11人が、3月末で同病院の麻酔科勤務を離れることがわかった。国立仙台病院(同市)でも常勤の麻酔科医6人のうち5人が今月末で退職する意向だ。産休や他の病院への転職、開業などが理由という。
東北大病院麻酔科長の加藤正人教授によると、同科を離れる医師は男性2人、女性9人。うち産休が3人で、残る8人は別の診療科や病院に移るために退職する。
同病院は、全身麻酔手術を年間約4500件(03年実績)実施しているが、今回の大量退職を受けて、外科系から麻酔経験を持つ医師の応援をもらうなどして「手術数は1〜2割の減少で食い止めたい」(山田章吾病院長)としている。
国立仙台病院では、麻酔科医6人のうち1人が開業のため今月末で退職するが、医師を派遺していた東北大が「余裕がない」として代わりの医師の派遣を断り、残された医師も負担増を懸念して相次いで他病院への転職を決めた。
同病院は「痛手だが、救急救命センターの使命があり、患者受け入れは減らせない」と話す。院内の外科系医師にも応援をもらうなどするという。

都内メーカー注射器 薬過剰投与の恐れ

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製薬会社アベンティスファーマ(東京都)は5日、同社が昨年12月に発売したインスリン注射器「オプチペンプロー」を使うと薬剤の過剰投与の恐れがあるとして、使用法の指導を徹底する緊急安全性情報を医師向けに出した。
この注射器は糖尿病患者が自分でインスリンを注射するのに使う。0.01ミリリットル単位で投与量を調節できるが、薬液の入ったカートリッジを取り付けた際、注射前に「空うち」をしないと、最大で0.6ミリリットルのインスリンが出ることがあるという。

医師名義貸し 病院立ち入り、処分も 都府県など判明の399ケ所

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医師の「名義貸し」問題で厚生労働省は2日、不正が判明した全国51の大学医学部、医科大の調査状況をまとめた。35大学から報告があり、名義を借りた医療機関数は399カ所、医師数は1128人にのぼる。名義貸しは診報報酬の不正請求につながる可能性がある。対象の都府県や社会保険事務局は近く病院などを立ち入り調査し、悪質なケースは保険医療機関の指定取り消し処分を検討する。
35大学のうち北海道大、旭川医大、札幌医大、東北大に対しては、北海道や宮城県などが先行して調査に入っている。4大学を除く31大学についてみると、02年4月からの1年半で名義を借りた医療機関数は、32都府県にまたがる155カ所。名義を貸した医師数は実数で265人だった。
このなかには、病院側が診療報酬の減額を避けるために、大学院生らの名前を借りたケースや非常勤なのに偽って常勤とした例も含まれる。
32都府県は、大学側の情報提供にもとづいて今後、病院、診療所に立ち入り調査し、医療法にもとづく人員報告状況、医師の勤務実態を調べる。実態が医師数の配置基準を大幅に下回っていれば、診療報酬の減額措置を不正に逃れていた疑いが強い。地方社会保険事務局の調査は1年程度かけて、保険医療機関の指定取り消しを検討する。
北海道では昨年9月までに北海道大など3医系大で、200以上の医療機関に名義貸しが行われていたことが道庁などの調べで分かった。このため北海道社会保険事務局は、診療報酬の不正請求があったとして6病院の保険医療機関の指定を取り消した。
厚労省に報告かあった大学のうち、干葉大は千葉、茨城、栃木、岡山の各県にある18医療機関に、医師35人の名義を貸していた。愛媛大は、愛媛県の23医療機関に40人
を、大分大は、11医療機関に12人の名前を貸していた。報告が未提出の16大学のうち11大学は、3月中旬までに同省に資料を提出する予定。4大学とは提供を求めて協議中。今後、医療機関数、医師数とも増える見込みだ。
●2日現在で厚労省に回答していない大学は次の通り。
帝京(名義貸しが歯科医師のため報告を取り下げ)▽東京女子医科▽金沢▽金沢医科▽名古屋▽名古屋市立▽愛知医科▽藤田保健衛生▽京都▽大阪▽大阪市立▽神戸▽岡山▽川崎医科▽広島▽鹿児島

手術ミスで脳障害 長野県、7900万円支払い

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長野県立木曽病院(宮坂斉院長)で98年3月、水頭症の男性患者の内視鏡手術中に脳内血管を鉗子で傷つけて出血させ、患者に高次脳機能障害が残つたとして、県は1日までに、医療ミスを認め、7900万円の損害賠償金を支払う方針を決めた。
県衛生部県立病院室によると、水頭症と診断された県内の会社員の男性患者(39)が98年3月、県立木曽病院で内視鏡手術を受けたところ、誤って鉗子で脳内血管を傷つけられ、約20分間出血した。手術後、男性は注意力や気力の低下などの症状が出て、2カ月後に会社を辞めたという。
その後、男性が別の病院で診断を受けた結果、高次脳機能障害と診断された。脳の損傷で記憶障害や注意力低下などの症状が現れるという障害。患者側は手術ミスが原因として、弁護士を通じ、県側と示談交渉を重ねていた。
同病院の久米田茂喜副院長は「本人や家族に迷惑をかけて申し訳ない。患者の今後の生活を救済することを第一目標に損害賠償金を支払うことを決めた」と話している。

がん治療ホルモン剤投与の5人死亡

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前立腺がんなどの治療に使われる黄体ホルモン剤・酢酸クロルマジノンを投与された5人が、96年から03年にかけて劇症肝炎で死亡していたことがわかり、厚生労働省は26日、製薬会社に対して医師への注意喚起の添付文書を改訂するよう指示した。この薬は年間約15万人に投与されている。甲状腺異常の治療用ホルモン剤・チアマゾールについても、免疫機能が弱まる無顆粒球症で、この2年間に5人が死亡していたことがわかり、定期的な血液検査を促すよう、製薬会社に文書の改訂を求めた。

産婦人科学会 長野の医師、再入会

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日本産科婦人科学会は26日、非配偶者間の体外受精を公表して98年に同学会を除名された、諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘(やひろ)医師の再入会を認めた。
根津医師が除名処分の無効を訴えていた民事訴訟が、昨年、以後1年間の同医師の行動に問題がなければ再入会を認め、同医師は学会ルールの順守を誓約することで和解していたことによる。

産婦人科医の団体ミス多い医師に研修 事故報告も義務化

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産婦人科開業医ら約1万3千人が加入する日本産婦人科医会(坂元正一会長)の理事会は、会員に医療事故の報告を義務づけ、ミスを繰り返す医師には研修をする方針を決めた。報告や研修に応じない場合は除名処分も検討する。目立つ産婦人科医の医療ミスを防ぐのが目的だ。
3月の総会で正式決定し、4月から実施する。同会は都道府県支部ごとに医療事故安全対策委員会を設けて会員から事故報告を受け、過誤の有無を調べる。たとえば、妊産婦や新生児の死亡、新生児の脳性まひなどの重大事故、訴訟になった事例が対象となる。
重大なミスを繰り返したり、社会的な信頼を大きく損なつたりした医師には、指導や特別研修を受けるよう求める。改善がみられないときや、求めに応じない場合は処分もありうる。
処分は戒告、除名のほか、人工妊娠中絶が認められる母体保護法指定医の資格停止を都道府県医師会に要請することも想定している。
同会によると、日本医師会医師賠償責任保険の支払いのうち産婦人科は50%を占める。過去30年間で4回以上の事故を繰り返した医師は全体で約30人いるが、多くが産婦人科医だという。

受精卵診断男女産み分け 大谷院長を除名方針 産婦人科学会

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大谷産婦人科(神戸市灘区)の大谷徹郎院長が男女産み分けのための受精卵診断を実施した問題で、日本産科婦人科学会(会長・野沢志朗慶応大教授)は21日、東京都内で理事会を開き、学会が定める会告(指針)に違反するとして大谷院長を除名処分にする方針を決めた。
今後、本人から弁明を聞くなどしたうえで4月に開く総会に諮り正式決定する。ただし学会が除名しても医師免許には直接影響せず、診療を続けることはできる。
受精卵診断の実施について、同学会は重い遺伝性の病気に限り、学会に申請して審査を受けることを条件としている。大谷院長は学会に申請せず実施しており、出席した23人の理事で擁護する意見は出なかったという。
野沢会長は記者会見で「生命の選別になりうるため、慎重にならなければならない。一線は越えてはならす、学会として社会的責任を果たしていきたい」と話した。
大谷徹郎院長は21日、神戸市灘区の大谷産婦人科で会見し、「学会から連絡がなく正式にコメントできない」としたうえで、「中絶で男女産み分けが行われているのに、心と体への負担が少ない受精卵診断が認められないのは不完全だ。医師や患者らの署名を集めるなどして、理解を呼びかけたい」と述べた。一方で「会告を知りながら破ったのは事実であり、処分は受け入れる。万一、学会に残れることになれば会告に従う」とも話した。

フィブリノゲン前納入リスト要求へ 厚労省が製造元に 最大5500病院公表か

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C型肝炎の感染源になったとされる血液製剤「フィブリノゲン」の納入先の公表問題で、坂口厚労相は、同製剤を使ったとみられる医療機関をすべて把握し公表するため、製造元の三菱ウェルファーマ社(旧ミドリ十字)に対し、7004カ所の医療機関リストの調査や提供など協力を求める方針を決めた。現在手元にある約500の医療機関名しか公表しないとしてきた同省は方針を再度転換した。公表される医療機関名は最大5500にのぼる可能性がある。
ウ社は01年に納入先の調査を実施し、80年以降に同製剤を納入したとの記録がある7004カ所のうち、廃業した医療機関などを除く約5500カ所と連絡がとれ、使用実態を聴いている。
公開審査会から答申を受けて20日、過去のウ社提供資料に含まれていた約500医療機関名だけを、4月中にも公表する方針を決めた。だが、坂口厚労相は「(使用された医療機関の一部である)500だけを公開するのは一貰性がない。それ以外は知らないというのは行政の怠慢。背景を含めて調べて出すべきだ」と事務方の意向を覆した。
C型肝炎の感染源は同製剤だけではない。同省は公表と同時に、投与患者だけでなく、輸血などを受けたことがある国民らに、肝炎検査を受けるよう、呼びかける。

研修医、勤務後2カ月 4人に1人うつ状態 文科省研究班調査

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病院で臨床研修を始めた研修医の4人に1人が、1〜2カ月後には「うつ状態」に陥っている。そんな深刻な実態が文部科学省の研究班の調査でわかった。勤務時間の長さや受け持ち患者の多さが一因になっているとみられる。「必要な検査や処置をしなかったことがある」と答えた研修医の中で、うつ状態の人の割合は高く、うつの早期発見が医療事故の防止につながる、と研究班は指摘する。22日に川崎市で開かれる日本総合診療医学会で発表される。
協力の得られた全国40カ所の病院(大学病院8、一般病院32)で、昨年春から研修を始めた341人を対象に調査した。研修開始直後と1〜2カ月後の2回、アンケート方式で調ベ、気分の落ち込みなどを質問する「CES−D」と呼ばれる測定方法で判定した。
その結果、1〜2カ月後の時点でうつ病と珍断される可能性の高い「うつ状態」と判断されたのは132人(39%)に上った。このうち、研修が始まってから新たにうつ状態となった人は86人(25%)おり、調査対象者全体でみて4人に1人の割合だった。
新たにうつ状態になった人は、それ以外の人に比ベ、受け持ち患者数が1.7人多い8.05人、週の勤務時間も3.3時間多い81時間だった。一方、1日あたりの自由時間は1時間37分で、40分少なかった。
また、うつ状態の研修医は、「本来なら行うべき検査・処置をやらなかった」ことが「非常にある」
「まあまあある」と回答した28人のうち22人(79%)を占めた。「医療事故を起こしそうになった」と回答した19人のうち14人(74%)も、うつ状態の研修医だった。
調査をまとめた筑波大臨床医学系の前野哲博・助教授は「労働環境の改善はもちろん、やりがいを感じる仕事を与えるなどストレスの緩和に配慮する必要がある。うつの予防・早期発見が安全な医療につながる」と指摘している。

学会鑑定「医療ミス」昭和大藤が丘病院腹腔鏡手術で死亡 膵臓傷つけ出血

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横浜市青葉区の昭和大学藤が丘病院で、腹腔鏡を使った副腎の腫瘍摘出手術を受けた川崎市の会社員中沢操さん(当時29)が死亡した問題で、鈴木晟時・同病院長は20日記者会見し、改めて医療ミスを認めたうえで、「病院で真実を解明できなかった」と謝罪した。病院側が当初の姿勢を一転し、医療ミスを認めざるを得なくなったのは、専門学会による手術中のビデオ鑑定結果がきっかけだった。
神奈川県警も学会の鑑定意見書を受け、業務上過失致死容疑で病院側を調べている。
鑑定したのは日本泌尿器科学会関連の日本EE学会(大島伸一理事長)。同学会によると、鑑定は昨年11月ごろ、同病院と県警の双方から依頼された。病院側から提供された手術中のビデオを、学会所属の専門医2人が鑑定した結果、副腎と背中合わせの膵臓に手術で傷をつけ、膵液が漏れて大量出血を招いたことが原因と分かった。
今年1月、病院と県警に鑑定意見書をそれぞれ送付したという。
02年に摘出手術を受けた中沢さんが1カ月後に死亡したことが、昨年10月に発覚。遺族側は「手術中のミスによる出血が原因」と主張したが、病院側は「手術中のビデオを見たがミスはなかった」と否定していた。
記者会見した鈴木病院長らによると、学会に鑑定を依頼したのは、病院内の調査では死因につながる直接の原因がはっきりしなかったため、第三者による客観的な検証が必要と考えたからだという。
学会の大島理事長によると、医療事故にかかわる資料の鑑定を依頼されたのは、学会としては初めてという。「医学的にしっかりと鑑定結果を出さなければならないと考え、学会の名で鑑定した。信頼を取り戻すために何ができるかを考えた」と話している。

医学部などに1.3億円を寄付 北海道の22自治体

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医師不足に悩む北海道の22自治体が、医師派遣の見返りとして、北海道大医学部の医局などに2年間で総額約1億3千万円の寄付をしていたことが20日、北海道の調査で分かった。寄付は最少で年60万円、最大で2800万円、平均額は590万円だった。内訳は北大が4796万円、旭川医大が684万円、道立札幌医大が110万円だった。このほか、道外の私立医大に7400万円の寄付があった。
昨年、医師の名義貸し問題が次々と明らかになった際、自治体から大学医局への寄付が判明。北大、旭川医大については「地方公共団体から国への寄付を原則禁止とする地方財政再建促進特別措置法(地財特法)に抵触する恐れがあるとして、道は02、03年度分の寄付について自治体側に照会して調べていた。
北大医学部と札幌医大は教授会などで「寄付受領の禁止」の方針を打ち出し、旭川医大も同様の検討を進めている。

「悪質」医師除名処分も 日本医師会が方針

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日本医師会(日医)は17日、診療報酬の不正請求や悪質な医療事故を繰り返す会員医師らに、除名などの処分をする方針を固めた。近く各都道府県医師会などに対し、処分に相当する医師らを把握し、処分が必要かどうかを判断する「自浄作用活性化委員会」の設置を求める。日医はこれまで、厚労省が出す行政処分に追随して処分をしていたが、方針を転換。自らの手で処分する姿勢をみせることで再発防止や国民の信頼回復を目指す。
日医の自浄作用活性化委員会(石川育成委員長)が同日までに、坪井栄孝会長に答申した報告書にもとづく。地域の医師会に設置される委員会が処分に相当すると判断し、日医に報告があった場合に対応を検討する。
「ひどいケースがあれば、地域から訴えがなくとも、日医が直接乗り出すこともありうる」としている。
地域の医師会に求める設置の期限などは今後、検討する。また事故を繰り返す医師らへの特別講習の実施可能性についても探る。日医の会員数は、約16万人で、全医師数の6割。

就学時検診45年怠る 北海道北見「医師不足で慣習に」

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小学校に入学する前に子どもの健康状態をつかむため、学校保健法が義務付けている「就学時健康診断」を、北海道北見市教育委員会が、同法が施行された1958年から45年間にわたって実施していないことが分かった。加藤元章市教育長は「当初、医師不足などから実施しなかった。その悪い慣習が長年続いた」と言っている。
同法は、翌春入学予定の子どもに対し、入学の4カ月前までに目や歯、内科などの健康診断を実施することとしている。各市町村単位で、既往症や身体状況などをチェックし、学校が保健指導などの参考資料とすることとされている。
ところが、北見市教委は長年の慣習として、毎年9〜10月にかけ、翌年入学する子どもの保護者に調査票を送り、既往症のある子どもにだけ診断を受けさせ、就学時健診の代用としてきた。04年度の新入学予定の子ども1042人では、診断を受けたのは約1割の112人だけだった。
北海道教委は「前代未聞の事態」として、1月29日付で4月の新入学児童の診断を適正に実施するよう指導したが、北見市教委は「医師会との協議などの関係で就学時検診は05年度から実施したい。04年度については、入学後の健診を早期に実施することで対応したい」としている。

C型肝炎母子感染1割 厚労省調査 早期治療で回復

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C型肝炎に妊婦が感染している場合、出産時に1割前後の確率で母子感染が起きていることが、厚生労働省の研究班の調査でわかった。C型肝炎の母子感染の詳細な実態調査はこれが初めて。子供の感染にはインターフェロンによる治療効果が高いこともわかった。研究班は、感染に気づけば子供のうちの早期治療が勧められる場合もあるとして、医師、妊婦向けの指導指針を夏までに作成する方針だ。
研究班(班長、白木和夫・鳥取大名誉教授)は大学病院など8施設でC型肝炎ウイルス(HCV)に感染している妊婦計約400人を調査した。各施設では7.3〜14%の割合で母子感染が起き、平均の感染率は9.4%だった。
現在、妊婦のC型肝炎感染率は0.4〜0.7%程度とされている。年間120万人が出産しており、約500〜800人の新生児が母子感染している計算になる。
出産時に破れた胎盤を通じて感染している可能性が高く、通常の帝王切開での感染はほとんどなかった。母乳による感染例もなかった。
感染した子供の3割は3歳までに自然にウイルスが消えていた。4〜5歳でインターフェロンによる薬物治療をした場合、4割でウイルスが消えた。治療中の副作用は軽い発熱ぐらいで、治療後、6年間の迫跡調査でも発育障害などの副作用はみられなかった。
また感染が続いても、B型肝炎の母子感染のように肝硬変や肝臓がんなどの重症例はみられなかった。ただ、長期的な影響ははっきりせず、成人後に慢性肝炎になる可能性も否定できないという。
C型肝炎の母子感染は医師の間でもあまり認識されておらず、妊娠時にも検査はほとんどされていない。研究班は夏までに作成する指導指針で、母子感染の実態を詳しく解説し、検査の重要性や治療が勧められる場合の対応などを盛り込む。
白木名誉教授は「感染を知っていれば、治療が必要か判断できる。手術歴や輸血歴のある妊婦や、家族に肝臓の病気のある妊婦は、検査が重要だ。ただ、子供が感染していても生活上、何ら制限はなく、過度な心配は要らない」と話している。
C型肝炎ウイルスに汚染された血液を介して感染し、国内には150万〜200万人の感染者がいると推定される。90年代初めまで感染予防策がとられておらず、輸血、手術などの医療行為を通じて感染した人が多い。成人の場合、ウイルスを保持したままの持続感染者の7割が慢性肝炎になり、一部が肝硬変、肝臓がんに進行する危険がある。

臨床研修必修化の影響 大学の医局はどうなる?ごっそり消える研修医

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今年4月から実施される医師の「臨床研修必修化」がクローズアップされている。この新制度導入を機に、大学医学部の医局が地域の関連病院から医師を引き揚げ、ただでさえ医師が不足しがちな各地の病院で、診療科の廃止など深刻な影響が出ている。なぜ、臨床研修の必修化が地域の病院の医師不足を助長しているのか。Q&Aの形で考えてみた。
そもそも、臨床研修必修化とはなに?
医学部生は、医師国家試験に合格すると、大学病院か指定された病院で研修を受ける。強制ではないが、9割以上にあたる8千人前後が、毎年、研修を受けてきた。ところが、今年4月からは、2年以上の臨床研修が必修となるだけでなく、内科、外科、産婦人科、地域医療など各分野を一定の期間ずつ回ることが義務づけられた。
専門領域しか診られないのではなく、初期診療の知識を身につけてもらう制度で、みんながかかりやすい病気を的確に診て治療できる医師養成を目指したものだ。
これがなぜ、医師不足の原因になるの?
従来の研修制度では、7割を超える研修医が、大学医学部の医局に籍を置き、大学病院で研修を受けていた。
医局は各診療科ごとに分かれているから、研修内容は外科なら外科、産婦人科なら産婦人科に偏るケースが多かった。医局に入った研修医は、研修というより、医局の下働きをする労働力とみられていた面がある。
新しい研修制度では、研修医は各分野を一定期間、回ることになるから、原則的に医局には籍を置かない。これまで医局の「労働力」だった研修医が、ごっそり姿を消すことになるのだ。おのずと医局は、関連病院から代わりの医師を呼び戻さざるを得なくなる。
研修医の約4割が、大学以外の研修指定病院で研修を受けるが、医師不足が問題になるような病院は指定病院になっていないから、医師不足解消にはつながらない。
これとは別に、国立大医学部の場合、4月からの独立行政法人化をにらみ、研究実績を上げるために医師を引き揚げだいとの思惑もある。
地方関連病院との関係は?派遣医師呼び戻す
これまでは、医局と病院との関係はどんなだった?
かつて関連病院を増やすことが教授の力量と言われた時代があった。誰も行きたがらないような地方の関連病院に、強力な人事権を持つ教授が、医師を半ば強制的に派遺してきた。地域医療を支えてきたのは、実はこのいきょうくだった。
一方、病院や病院をもつ自治体は、定期的に医学部や医局に研究費などを寄付したり、無給の大学院生を当直や非常勤医として雇って生活費を稼がせるなど、長年の間で培われたもちつもたれつの関係があった。
その医局から研修医が消えるというのは「本丸の火事」とも言える事態で、地方に散っていた傘下の医師たちが「火消し」に呼び集められた、といった構図だ。
問題なのは、「医師引き揚げ」という事態に陥ることを、厚生労働省も各自治体も予想していなかったことだ。いまになって行政側も地域医療の崩壊につながりかねないと真剣に検討を始めた。
地域によっては、人口に比べて病院や病床が多すぎるところもある。それぞれの地域にどれくらいの規模の病院が、いくつ必要なのかをふまえ、病院の再編を本格的に検討しない限り、地域医療の医師不足は解決しそうにない。

人工透析 峠越え 相乗り30キロ 週3回往復

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慢性疾患。ことに治療を続けないと命を保てない患者にとって、身近に専門の医師がいないつらさはひときわだ。富城県の北東の外れ、南三陸の人工透析患者たちは、3年前、身近な病院の専門医を失い、以来、遠くの病院まで治療に通い続けている。目の前に病院がある。透析機もある。医師だけがいない。
宮城県志津川町の公立志津川病院では01年、1人しかいない泌尿器科の医師が、所属する大学の医局に引き揚げられて透析室が閉じられた。
後に残った27人の患者のひとり西城幸良さん(73)は、引き揚げの報を透析中のベッドで医師本人から聞いた。
「大学に戻ることになりました」「代わりは」「いないみたいです」
病院側によると、「医局の人手不足」が引き揚げの理由だった。
南三陸に位置する志津川町は、四方を海と山に囲まれ、半径30キロ圏内に透析施設がない。
透析室の閉鎖で、患者は約30キロ離れた南方町のクリニックで治療を受けることになった。マイクロバスに相乗りし、片道約1時間。長年の透析で体力が落ちた中高年の患者たちは、片側1車線の曲がりくねった山道を、週に3度往復し、その間に毎回4時間の透析を受けてきた。昨年当初、南方町に通う透析患者は29人に増えたが、1年でこのうち5人が死亡した。
西城さんは「近くに透析施設があれば3人は死を免れた」と思っている。「体力がなく、バスの乗り降りさえつらいという人もいる。峠越えの通院で消耗しないはずがない。目の前にちゃんとした病院あるのに……」
病院側も手をこまねいていたわけではない。
院長は3年の間、医師を探し続けてきた。医学部がある東北地方すべての大学に派遣を懇願してきたが、新たな医師は見つからなかった。
4月に始まる臨床研修必修化を前に、医局による医師の引き揚げが進む最近は、医局を束ねる教授らとは面会の予約すらとれないのが実情という。
一方で、閉鎖した人工透析室は「医師が見つかればすぐに再開できるように」と整備を続けてきた。透析機を2日に1度動かし、フィルター交換も定期的に続けている。整備費は年約200万円。16億円の累積赤字を抱える志津川病院にとっては大金だが、「患者さんのことを考えると撤収には踏み切れない、
朝日新聞のアンケートでは、志津川病院のほか全国の8病院が透析医を募集中で、うち6病院が「確保が難しい」と回答した。
このうち佐賀県の病院では、派遣元の大学の要請で常勤医が非常勤となり、透析の治療日が週6日から3日に半減した。福岡県の病院では、3人いる透析医のうち最大2人の引き揚げを打診され、夜間透析の廃止を検討している。アンケート外だか、山形県でも医師引き揚げで夜間透析を廃止する病院が出てい
る。
人工透析(血液透析)
腎臓の機能が低下した患者らに対して行う。血液を体外に取り出し、透析機(人工の膜)に通して、血液中の不要な老廃物や水分を除去。きれい
になっだ血液を再び体内に戻す。全国腎臓病協議会によると、全国の透析患者は02年12月現在、約23万人。高齢化や成人病の増加で、毎年1万人ずつ増え続けている。

乳がん・卵巣がん遺伝子診断 予防切除も検討 5機関で研究

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乳がんを手術する際、特定の遺伝子変異が関係しているとわかったら、健康な方の乳房も発がん予防のため切除する−−こんな方法を選択肢に含めた乳がんと卵巣がんの遺伝子診断の臨床研究を、国立がんセンター(東京)など5医療機関が近く共同で始める。米国では発病していなくても遺伝子変異があれば乳房を予防切除するケースもある。共同研究は発病した人だけを対象にするが、予防切除に踏み込むことに慎重な見方もある。
がんセンター中央病院のほか、癌研究会付属病院、聖路加国際病院(ともに東京)、栃木県立がんセンター。慶応大学病院も加わる予定。
対象は、本人に加え、姉妹、母、祖母、叔母ら血縁者が発病したか、発病している「家族性乳がん・卵巣がん」の患者。日本には統計がないが、米国では乳がん・卵巣がんの7〜10%とされる。
調べるのは、BRCA1とBRCA2という遺伝子。これらの遺伝子の変異を親から受け継いでいると、そうでない場合より乳がんや卵巣がんになりやすいとされる。これまで複数の医療機関で研究が行われたが、予防的治療に結びつけられたものはなかった。
今回の研究は日本人で変異がある人の割合や、変異が発病や治療の経過にどう影響しているかを分析するのが目的。5医療機関で計200人の患者を公募、2年かけて調べる。検査はは臨床検査会社ファルコバイオシステムズ(京都市)で行う。
患者が希望すれば結果を知らせる。変異があれば定期検診の強化を指導。米国では新たな発がんの予防のため、ホルモン剤を飲む方法があるほか、がんができていない方の乳房や卵巣切除も行われていることを説明。患者が予防切除を強く望めば各医療機関の倫理委員会で是非を検討する。ただ遺伝子に変異があっても必ず発病するとは限らないし、発病するにしても、いつなのかはわからない。また、家族にどう伝えるかも問題だ。
患者には遺伝についてカウンセリングをし、詳しく説明する。
研究代表者の福富隆志・国立がんセンター中央病院外科医長は「検査後の患者支援として予防的治療も情報として伝える必要がある」と説明している。
米国人女性の場合、70歳までに乳がんになるのは一般に7%とされるが、両方の遺伝子に変異が見つかると87%に高まる。BRCA1に変異がある場合、卵巣がんになるのは2%以下から28%〜44%に増えるなどと報告されている。

名義貸し北大、300人処分へ

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北大医学部に在籍する医師の名義貸し問題で北大は、自治体から受け取っていた顧問料を大学側に過少に報告していた藤堂省・第一外科教授を国家公務員法に基づく懲戒(減給)とするなど、関与した大学院生らと指導教授ら計約300人を処分する方針を12日までに固めた。指導教授らについては同法に基づく「戒告」や、「訓告」とするほか、大学院生らは学内規定に基づく「厳重注意」とする方針。
同大医学部で医師免許を持つ学生、教官は計1100人(03年4月現在)。在籍する4人に1人以上の大量処分となる。
藤堂教授は、医師派遺先の四つの自治体病院から月額20万〜30万円の顧問料を受け取っていたが、大学側には月額10万円と報告していた。名義貸しをしていた大学院生らが所属する診療科などの教授らは約30人。名義貸しの当事者ではないが、管理責任を問い、国家公務員法に基づく「戒告」の懲戒処分や「訓告」が検討されている。

心臓に針、男性死亡 防衛医大医師2人書類送検 診断書偽造容疑も

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埼玉県所沢市の防衛医大病院で01年10月、心臓に過つて針を刺し、同県川島町の男性会社員(当時48)を死亡させたとして、県警捜査1課と所沢署は12日、当時の主治医(34)と指導医(38)を業務上過失致死と公文書偽造の容疑で書類送検した。調べでは、主治医は指導医の指導を受け、01年10月、男性の心臓と周囲の膜の間にたまった水を抜くため、膜に針を刺して水を吸い取る「心嚢穿刺」の手術を実施した際、過って心臓に針を刺し、男性を死亡させた疑い。また、死亡診断書には「病死及び自然死」に丸が付けられており、死因を偽った診断書を作成した疑い。
県警は鑑定医から02年「過って心臓に針を刺したため出血したのが死因」とされる鑑定書の提出を受け、医師らの注意義務や危険回避義務について捜査を進めていた。
主治医は手術の慎重さを欠いていたとして、指導医は心嚢穿刺の経験がほとんどない主治医に、指導を十分せずに手術をさせたとして、それぞれ書類送検した。

移植患者検索、新たなミス

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腎臓移植を受けられたはずの患者が、コンピューターの患者検紫ソフトのミスで機会を逸した問題で、日本臓器移植ネットワーク(東京都港区)は10日、ソフトに新たに別のミスが見つかったと発表した。一連のミスで移植を受けられなかった人は4人という。
新たなミスは、臓器提供者のHLA型(白血球型)が特殊なケースでの検索。ソフトは厚生労働省の通達に基づいて作られるがこのケースでの取り扱いが、通達に示されていなかったという。正しい方法で検索すると、前回公表されたミスで移植の機会を逸したとされた6人のうち、2人は選ばれなかったことになり、結果として該当者は4人。

細る医療、地域に不安 大学の派遣引き揚げ 病院自体も存続危機

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地域医療が揺れている。ただでさえ医師の確保に頭を悩ませていた地方など全国各地の病院から、次々と医師が姿を消しているためだ。4月に始まる臨床研修必修化の余波で、大学医学部の医局が系列の病院に供給してきた医師を引き揚げ始めたのが影響している。
北海道北部にある公立病院の院長が、医師派遣を受ける大学の教授から呼び出されたのは昨年末のことだ。
「循環器内科の医師をすべて引き揚げる」
突然の通告だった。循環器・呼吸器内科の常勤医5人のうち、2人が開業するなどの理由で今年3月で辞める。これまでなら、医局に要請すれば新たに派遣してくれた。
「2人欠けては診療体制がもたないでしょう。残り3人も6月で引き揚げます。後は期待しないで欲しい」
約500床を持ち、道北医療圏の中核を担うこの病院の外来は1日平均千人以上。4分の1が内科系の患者だ。
02年度、この病院のある地域での救急搬送は700件弱。ほとんどがこの病院に運ばれた。循環器・呼吸器系の内科医がいなくなれば、心筋梗塞や肺炎等の重症患者は別の病院に送られることになる。だが、専門医がいる最寄りの病院までは約20キロ。「一刻を争う」時の不安が募る。
そればかりか外来の患者も専門外の医師が診るしかなく、医療の質の低下は避けられない。
大阪府の泉大津市立病院(215床)。関西の大学の医局から派遣されていた産婦人科医5人と耳鼻咽喉科の医師2人が、6月までに退職したり、大学に引き揚げたりして全員いなくなる。
発端は昨年10月。派遣されていた産婦人科部長が開業を理由に退職を申し出た。新たな医師の派遣を求めたが、医局トップの教授の回答は驚くベき内容だっだ。「代わりの指導医が見当たらない。若手だけの派遺は難しい」
代わりどころか、逆に残り4人全員の引き揚げを伝えたのだっだ。
地域の中核病院で、特に産婦人科では月に70件もの分娩をこなしてきた。同科は経営面でも収入の7分の1を稼ぎ出している。もし6月までに医師を確保できなければ、病院そのものの存続が危ぶまれる。
再三の要請に先月、教授が病院を訪れた。
「やはり派遣はできません。苦渋の選択です」
理由は専門の指導医がいないことと、臨床研修の必修化で若手医師か不足することだった。
1月から新規の分娩を受け付けていない。妊婦たちは今後、遠い市外の病院に行くしかない。
「04年度中に医師を確保できなければ、05年度は診療を継続できない」
千葉県東部の公立病院。院長は1月、県に提出する新年度の最重要課題についてこう記した。
常勤医二十数人は、医局から研修の一環として派遣された若い医師が3分の1を占める。すでに貴重な戦力の彼らは、来年には別の病院に移るが、代わりの予定がない。
「お宅がつぶれたら、次はうちだな」
院長は最近、同規模の別の病院の院長から冗談とも本気ともつかない口調でそう言われた。
北海道や東北地方など一部の県では、医局に頼らない医師供給システムを模索する動きや、医師を効率的に配置するための病院の統廃合の計画づくりが始まっている。
臨床研修必修化
医師免許取得後、任意だった臨床研修が04年4月から必修化される。これまでは、約7割が大学病院の医局に入り、目指す診療科しか学ばないことが多かった。新制度は医局に属さず、内科、外科、小児科、産婦人科、地域保健・医療などを学び、初期診療の能力を身につけるのが狙い。

大学病院からの医師派遣 自治体病院25%打切りを経験

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大学病院から自治体病院への医師派遣が次々と打ち切られていることが、朝日新聞社の実施した全国調査(対象1066病院)で分かった。回答した887病院のうち、派遣打ち切りを経験した病院は4分の1に当たる218病院。その結果、手術の制限や診療科の休診などが起きている。3分の1強の病院が、4月から新人医師に課せられる臨床研修が医師確保に影響しているとした。大学側に金銭や研究費を渡したことがある病院は14%で、医師をつなぎ留めようとする実態が浮かび上がった。
厚生労働省は昨年11月、文部科学省、総務省と連絡会議を設け、地方の医師不足の解決策を検討中で、近く対策をまとめる。本社調査は、医師確保が難しい現状や患者への影響を探るため、地域の基幹病院である自治体などが設置する病院を対象にアンケートで実施。83.2%の有効回答を得た。
派遣が打ち切られた医師を診療科別にみると、内科医が68病院と一番多く、外科医(29病院)、産婦人科(同)、小児科医(同)と続いた。
「派遣打ち切り」には(1)大学病院から派遺している医師を引き揚げられる(2)開業などで生じた欠員を補充してもらえない、などのケースがある。理由として、3分の1の病院が「大学病院の医局の人手不足を補うため」とみていた。
医師確保で「臨床研修必修化の影響がでている」と回答した病院は全体の37%だった。新制度は、各診療科を回って研修を受け、医師として基本的な診断能力を養うのが目的。大学病院にとっては、診療現場を支えてきた研修医の医局への入局がなくなる。そのため派遣していた医師を引き揚げるなど、地域医療にしわ寄せが生じている。
また、728病院(82%)が現在「医師確保が難しい」と感じていた。
地域別に見ると、東北が93%で最も高く、中部が85%、北海道が84%、関東が81%と続いた。今後については、755病院(85%)が「難しくなる」予想している。
現在、確保が難しい医師は、小児科(310病院)がトップ。続いて内科(261病院)、麻酔(186病院)、整形外科(158病院)、産婦人科(147病院)だった。
患者への影響では「常勤の麻酔科医が確保できず手術件数が制限される」「小児科の入院受け入れをやめた」「救急の受け入れを制限」「産科をやめた」などの現象が出ている。
一方、過去5年間、大学病院や医学部、医局、同窓会などに金銭や研究費を渡したことがある病院は、127病院(14%)あった。医師確保のためには寄付や謝礼が必要だと考えるところは約1割の84病院。「お金以外に手立てがない」(岩手県の病院)、「医局制度があるからへき地の病院にも医者がくる」(富山県、滋賀県の病院)などの意見もあった。

アベンティスファーマ インスリン製剤を回収

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アベンティス・ファーマ(東京都港区)は5日、昨年12月に発売した糖尿病治療のための自己注射用インスリン製剤「ランタス注キット300」に不具合があり、全販売数にあたる約7万本を対象に自主回収する、と発表した。操作を間違えると投与量を設定するダイヤル部分が壊れて、予定より多い量のインスリンが注入される恐れがあるという。
インスリンが多く投与されると低血糠になり、昏睡(こんすい)状態に陥るなど重い健康被害を起こす恐れがある。同社には発売後、11件の故障の連絡があり、うち1件では患者が故障に気付かず注射し、予定の20倍以上の量を投与した。その後軽快したが、一時は意識障害などを起こしたという。病院や薬局を通じて回収にあたる。問い合わせは同社(0120・49・7010)へ。

発がん、日本3.2%放射線診断での被爆が原因 英大学推計

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医療機関での放射線診断による被爆が原因の発がんは日本が最高で、年間の全がん発症者の3.2%を占める−英オックスフォード大が国際比較研究でそんな推定値を出した。15カ国を対象に調査した。この研究成果は英医学誌ランセットに載った。
研究は各国のX線、コンピューター断層撮影(CT)などの放射線診断の頻度や、それによる被曝量などから、75歳までの発がん者を推定した。その上ですべての発がん者数の中での割合を算出した。
それによると、15カ国の平均は1.2%で、日本は3.2%と飛び抜けて高かった。日本に次いで高いのはクロアチアの1.8%。ほかはいずれも日本の半分以下で、米国ば0.9%。英国とポーランドは0.6%と最も低かった。
また、千人あたりの年間X線検査数は、日本は1477回で15カ国平均の1.8倍と最も多い。この検査での被曝によってがんになった例は年間7587例と推定した。
この研究に対しミュンヘン大研究者らは「診断によるがんの早期発見のメリットを正しく評価していない」と指摘する。
日本放射線腫瘍学会理事の晴山雅人・札幌医科大教授(放射線医学)の話
日本はCTなど人口あたりの放射線診断機器数が欧米に比べ多い。胃の検診でのバリウムX線検査も欧米では一般的でないが、日本では胃がんが多いため実施されている。これらの影響で日本人の医療被曝量は多いと、以前から言われていた。診断での被曝は患者にメリットがないといけない。その見極めが日本は甘いのではないか。不必要な診断はしないよう努めるべきだ。

民間医局 弱まるか病院の学閥支配

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日本の医療界はれっきとした学閥社会だ。大学病院の医局が関連病院の医師の人事を支配する「封建制」が生きている。問題化した名義借りなど、医局と一般病院の不明朗な関係の元だ。
そんな学閥を超えて医師を紹介しようという動きが目立っている。その最大手、メディカル・プリンシプル社(東京都港区)が運営する「民間医局」には9千人の医師と3千病院が登録。昨年は常勤150件、非常勤3千件の紹介をした。
しかし、同社の中村敬彦社長によると、大学医局の権勢はまだまだ強い。最近の例だ。
派遣を断られたA大学関連病院に頼まれ、別の大学出身の医師を紹介した。A大学出身の医師らが結託、患者のカルテを見せないなどの嫌がらせをした。
地方大学病院の医師の希望で病院を紹介した。ところが出身医局がそれを認めず、「OB会から除名する」と圧力をかけた。医師がノイローゼ状態になり、紹介は実現しなかった。
今春からの新たな臨床研修制度は学閥の力を確実に弱める。とくに地方の国立大は深刻だ。
学費が安いため医師志望者が全国から集まり、地元出身者が減っている。研修先が選べるようになり学生は地元に残らない。大学病院の研修医が減ると一般病院に派遣できる医師も減る。一般病院も自前で研修医を獲得できれば大学に追従する必要がなくなる。
新制度では研修が終わつた「3年目」の行き先が問題だ。優秀な研修医はそのまま病院の医師に採用されることもある。残れなければ別の病院を探して臨床医を続ける道がある。大学病院の医局に入るにしても、母校なのか、研修病院の関連大学にするのか、まったく無関係の大学を選ぶのか、選択肢はいくつも出てくる。
医師の流動化は、中村さんたちの商機につながる。自由な紹介が増えれば増えるほど、大学医局の力は低下していく。
一方で中村さんは「今は教授の命令があるから過疎地の病院にも医師が行く。医局の力がなくなるとどうなるか」と心配する。
「いくらでも方法がある」と言うのは黒川清・日本学術会議会長だ。
「2年目の研修医は義務として3カ月間、無医地区で診療する」ことを提案する。
1地区に研修医を複数配置できる。2年目は力がついているし、自分たちだけでなく、それぞれの指導医らに電話などで相談しながら診療すればいい。都会の病院と違う初期診療が勉強できる。
「研修制度に税金をつぎ込む以上、国民に分かりやすい見返りが必要だ」と黒川さん。
新制度が進むと、大学病院の存在意義が問われる可能性も出てくる。さしあたっては「3年目」に大学の医局を選ぶ医師がどれだけいるか注目される。
黒川さんによれば、大学の唯一の強みは学位(博士号)。診療能力に関係がないのに博士号が開業時の看板になる、と信じられている。博士号がほしいから医師は大学に残って研究する。医療界の「診療より研究」風潮の原因、というのだ。
診療志向が高まれば、博士号にこだわる医師が減り、大学病院の価値が下がる。「大学医学部は研究に協力する病院が必要だが、直接の付属病院は要らない」と黒川さんは考える。激動の最初の一歩が始まる。5年後、10年後、医療現場はどこまで変わるのだろうか。

患者を取り違えて輸血 横浜の病院 同室に同姓 意識高めるはずが

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横浜市栄区の横浜栄共済病院(元田憲院長、455床)で、入院中の女性患者(79)に輸血するはずの血液を、同室にいる同姓の女性患者(73)に輸血する事故があったことが2日、わかった。輸血された患者が約30ミリリットルほど輸血されたところで寒気を訴えたため、間違いに気づいた。今は回復しているが、今後、腎不全になる可能性もあるといい、集中治療室で治療を受けている。
病院によると、間違えて輸血された女性の血液型はO型。1月29日に整形外科の手術を受け、30日に輸血をした。同姓の女性の血液型はA独型で、31日に輸血を受ける予定だつた。2人は同じ病室で、ベッドも隣り合っていた。
31日に輸血をする際、看護師が名字だけしか確認せず、輸血する患者を間違えた。午前10時40分ごろに輸血を始め、15分後、女性が寒気を感じて看護師を呼んだ。看護師が調ベ、患者を取り違えたことに気づいた。
同病院は輸血の際、患者の姓名を確認するよう看護師に指導している。また、同姓の患者を同じ病室に集め、姓名の確認の大切さを強く意識するようにしているという。今回は看護師が名字だけしか確認せずに裏目になったという。
病院は「今後は姓名を最後まで確認するよう徹底していきたい」と話している。

手術受け意識不明 56歳男性死亡 聖路加国際病院

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聖路加国際病院(東京都中央区)で昨年11月、脳の手術を受け意識不明の重体になった都内の男性患者(56)が16日朝、死亡した。警視庁は17日に司法解剖して死因を調ベ、業務上過失致死の疑いで捜査している。
築地署や病院によると、男性は、脳動脈瘤に詰め物を入れて出血を防ぐ手術中、くも膜下出血を起こした。意識不明になった原因として病院は、血管を傷つけたか、詰め物で動脈瘤が破裂したか、二つの可能性を挙げている。

東京女子医大に2600万円賠償命令 心臓病治療めぐり

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「妻が心臓病で死亡したのは病院側がすみやかに治療しなかったためだ」として、遺族の夫らが東京女子医大(東京都新宿区)と担当医を相手に4400万円余の損害賠償を求めた訴訟の判決が2日、東京地裁であった。貝阿弥誠裁判長は「医師には速やかにぺースメーカーを埋め込まなかった過失がある」と述ベ、病院側に約2600万円の支払いを命じた。
判決によると、神奈川県相模原市の女性(当時55)は不整脈の一種を発症し、97年10月17日に同病院で診察を受けた。担当医はぺースメーカーの埋め込みが必要だと判断し、同月31日に入院させたうえ11月4日に埋め込み手術をする計画を立てた。ところが女性は手術前日に心臓発作を起こし、8日後に死亡した。判決は、緊急治療の必要があったと結論づけた。

看護師15人を処分

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厚生労働省は30日、刑事事件で罰金以上の刑が確定した看護師15人について、免許取り消しや業務停止2カ月から2年の処分をそれぞれ決めた。
免許取り消しの女性看護師(35)は03年2月、訪問看護先の男性宅に侵入し、現金1万4500円や預金通帳を盗んだ。業務停止2年の男性看護師(36)は00年9月、女性宅に侵入して下着を盗んだほか、02年3月から6月にかけ、別の女性にストーカー行為をした。

検査結果顧みず胃の大半を切除

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愛知、「悪性所見なし」愛知県立尾張病院(清水武院長、同県一宮市)は30日、胃がんの疑いで入院した70代の女性に対して、がんを否定する検査結果が出たのに確認せず、胃の3分の2を切除する手術をしていたことを明らかにした。女性は胃潰瘍で、手術の必要はなかった。なかった。
清水院長の説明では、昨年11月13日に、主治医の内科医長(45)が、内視鏡検査などから胃がんと診断。検査で取り出した組織の病理検査では、「悪性所見なし」との結果が同20日に出て、カルテにも添付された。
しかし、主治医と執刀した外科の部長職の医師(48)らは、12月3日の症例検討会でも検査結果を確認せず、同8日に胃の摘出手術を実施。切除した組織の病理検査でも「悪性の所見なし」と出たため、ミスに気付いたという。
術後の合併症で胃と十二指腸との縫合部に穴があいたため、同月に2度緊急手術を実施。その際の病理検査でも同じ結果が出た。
清水院長は「基本的な確認行為を怠っており、弁明の余地はない」と謝罪した。

都立広尾病院事件 都などに6000万円賠償命令 東京地検個人責任も認定

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東京都立広尾病院の看護師が99年2月、入院中の主婦永井悦子さん(当時58)に誤って消毒液を注射して死亡させた事で、夫の裕之さん=千葉県浦安市=ら遺族5人が都などを相手に総額1億4500万円余の損害賠償を求めた訴訟の判決30日、東京地裁であった。大門匡裁判長は元病院長と元主治医に事故を隠蔽した個人責任も認定。総額6千万円の支払いを命じた。
都とともに訴えられたのは、岡井清士・元院長、都病院事業元副参事や当時の主治医ら5人。遺族側は、医療にたずさわる個人も真相解明に誠実に対応してほしいとして、個人の責任も追及。立場に応じて720万〜60万円を請求していた。
被告のうち元都副参事は警察への届け出を怠った医師法違反罪への共謀を否定されて刑事事件で罪が確定したが、判決は「元副参事は事故に適切に対応せず、届け出を回避するよう助言した」と認定。ただ、賠償責任は都が負うと判断した。
一方、元院長と元主治医については「必要かつ可能な限度で死因を解明し、遺族らに説明する義務を怠った」と判断。元院長には100万円、元主治医に50万円の支払い
を命じた。
都は裁判で看護師のミスを争っておらず、判決も病院側の過失を認定した。
岡井元院長と元副参事は刑事事件でも、警察への届け出を遅らせたとして、医師法(異状死体等届け出義務)違反の罪で在宅起訴された。元院長は一、二審で有罪判決を受けて上告中だ。元主治医は同罪で罰金2万円の略式命令を受けている。消毒液を誤って投与した2看護師も業務上過失致死罪で有罪が確定した。
「画期的な判決」原告側弁護団
判決後、原告側の弁護団は「額は少ないが、個人責任を認めた画期的な判決」と評価した。事故の隠蔽を図ろうとした病院側の責任を追求し続けた夫裕之さんは、感極まって号泣した。一方、都病院経営本部は「判決を厳粛に受け止める。心からご冥福をお祈りする」とのコメントを出した。

水虫治療の内服薬 肝障害で死亡例

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水虫、たむしなどの内服薬「ラミシール錠」の副作用と見られる肝障害の死亡例があったとして、厚生労働省は、29日、販売する日本チバガイギーに対し、医師らに肝機能検査を定期的に行うなどの患者の経過観察を徹底させるよう注意喚起した。

リウマチ薬「アラバ」服用後5人死亡 肺炎などの症状起こす

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アベンティスファーマ(東京)が昨年9月に発売した関節リウマチの治療薬「アラバ」を服用した患者5人が肺炎などの症状で死亡していたことが27日、わかった。同社は医療機関向けに文書などで注意を換気するとともに、因果関係について調査を進めている。
同社などによると「アラバ」は患者の免疫細胞の数を抑えて、自身の組織を攻撃しないようにし、関節の痛みや炎症を抑える飲み薬。日本では、昨年9月に発売されこれまでに約3400人が服用している。だが、今年になってから服用者の5人に肺炎などの症状が出て死亡した。
厚生労働省も同社に対し、医療機関への注意喚起を求めている。患者に発熱やせきなどの症状が出た場合には、X線撮影を徹底する。

慈恵医大補助金1550万円不正受給 資格外申請医局内で流用

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東京慈恵会医科大学(東京都港区)第1外科の医局員が、国の補助金を不正に受給していたことが24日、朝日新聞の調べでわかった。文部科学省の外郭団体「日本学術振興会」の科学研究費補助金(科研費)で、少なくとも96年度から13人、計1550万円にのぼる。同科の山崎洋次教授が指示し、受給した医局員とは違う、別の医局員の研究に流用していた。山崎教授は、一部について「私が使途を指示した。受給の適正さに問題があった」と認めている。
不正受給があったのは科研費の「奨励研究A」(現・若手研究B)。37歳以下の研究者が1人で行う研究に、2年間、支給される。
応募資格は、公募要領で「我が国の研究機関に常勤の研究者として所属する者」と決まっていて、「外国出張その他の理由により、長期にわたって研究機関を離れると予想される場合には避けること」と、国内での研究に限っている。
13人は、医局員らで年1回発行する「同窓会年報」に、海外留学生活の手記を写真付きで投稿していた。それによると、受給前から留学生活が続いていたり、受給後2、3カ月だけ国内にいた後、2年間の海外留学に出たりしたことになる。学術振興会の長沢公洋研究助成課長は「通常なら、支給対象にならないケースだ」と話している。
13人が受給した科研費は、96年1件100万97年度3件340万円など、01年度までに計17件1550万円。そのうち、01年度の5件540万円は、同大が「手続きにミスがあった」と、同年度末に返還した。00年度以前の分は返還していない。
同科は毎年、山崎教授の指示で医局員ほぼ全員の約100人が応募。96年度〜01年度には、約130件分を受給した。
医局員の一人は「留学中も関係なく、教授が申請させた。多く申請すれば採択数も高くなるとの雰囲気が医局にあった」と話す。米国留学中に不正受給した医局員は「教授に申請を指示された。医局のためと思ったがやはりまずかった。科研費は一切もらっていない」と明かす。
支給対象の2年間、ほとんど留学先から帰国せず、国内で研究した事実がない医局員もいる。山崎教授は「医局で類似研究をしている人たちが使った。その指示は私がした。本来は返すべきだった」と話している。文科省は02年11月、内部告発を受け、同大に97年度の過去5年の科研費の使用調査を命じた。同大は「不正はない」とする調査結果を報告した。
医局員「教授が指示」科研費申請留学先に電話
東京慈恵会医科大(東京)第1外科が、海外留学者らの名前で国内向けの科学研究費補助金(科研費)を受けていた問題で、医局員らは、担当の山崎洋次教授に申請の指示を受けていたと話している。
科研費の申請書類には研究者の氏名や施設、研究計画・目的などを書かねばならない。さらに期間の終了後、研究実績を報告する義務があり、大学を通じて提出される。
留学先の米国で申請書類を書いたという医局員は「突然、日本の山崎教授から電話があり、申請書類を作るよう指示された」と話す。自分の研究テーマに沿った文献などを調ベ、研究計画をまとめ、日本に送った。
しかし、書いたのは研究計画書だけ。研究者名や研究施設などは求められなかった。「後はだれがどのように提出したかわからない。終了後に報告する研究実績も書いた覚えはない」という。
だが、科研費を出す日本学術振興会などには、その海外留学者らの研究実績が提出されている。一部の実績報告に「米国の大学に短期間留学した」とあるものの、ほとんどは留学について触れていない。複数の医局関係者の話では、留学中だった医局員の申請書類や研究実績の一部は、大学に残るほかの医局員が書いていたという。
科研費は大学に振り込まれた後、受給者本人に支給されて自分の研究に使うが、同大学などによると、第1外科は、山崎教授が支出を「調整」していたという。
米国で申請書類を書いた医局員のもとに受給決定後、支給額などを書いた大学の書類が日本から郵送されてきたが「お金は一切もらっていない」という。別の医局員も「山崎教授が管理し、他人の研究費に回すなどし、不満や疑問が医局内にあった」と明かす。
山崎教授は、これらの申請について「受給時には留学を終えて帰っているという想定だった」と話している。
同大は02年度から、教授を通さずに受給者本人が、自分の科研費を大学に請求し、使えるよう変更したという。

科研費 不適切な例、昨年48件

国の科研費を不正に受給する事例は続発している。97年に富山大、99年に三重大、00年には順天堂大、02年に徳島大。03年にも東大と愛媛大で発覚した。水増しなどで不正に請求して、申請目的外に流用するという形で手口は似ている。
03年には、会計検査院が科研費の申請手続きを検査の対象にした。77大学などに支給された772件の科研費を検査。その結果、受給者が留学などで長期間研究機関を離れているのに受給辞退しない不適切なケースが、48件計約7千万円分あったことが分かった。これを受け、科研費の審査や交付の実務を担当している日本学術振興会が、各大学などに注意喚起と手続きの周知徹底を要請した。
振興会によると、医学分野で審査をへて採択されるのは毎年、2千件近くある。一つずつについてどのように使われたかをチェックするのは「入員が足りず不可能だ」という。
また「振興会や文科省に対して大学に報告義務があるのは、研究結果だけで、科研費の使途を報告する必要はない。領収書や請求書類は、大学に保管されるだけというのが実情という。
振興会は「不正をしないという信頼関係に立って支給しているのに、非常に残念だ」と話している。

キーワード 化学研究費補助金

国が大学研究者らに研究費を助成する制度。7省で年間約3500億円。文部科学省関係分が最も多く、03年度は約1765億円。医学分野は全国から6千件近い申請があり採択率は約3割。

医師名義貸し51大学 全国の3分の2延べ人数は1100人超 文科省調査

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医学系の大学に在籍する医師が、実際には勤務していない外部の病院に名前を貸して常勤医として勤務していたように装う「名義貸し」問題で、文部科学省は22日、02年4月からの1年半に、全国79の大学医学部、医科大学の6割を超える51の医学部、医科大に在籍する大学院生ら計延べ1161人が名義貸しを行っていたと発表した。名義貸しは医療機関による診療報酬の不正請求に間接的にかかわる行為であるため同省は事態を重視。各大学に名義貸しの根絶を求める方針だ。
名義貸し問題は札幌医科大学などで相次ぎ明らかになった。これを受けて文科省は昨年9月、全国の大学医学部と医科大に調査票を送り、回答を求めた。非常勤なのに常勤扱いだった場合も含まれている。調査は約7万3千人が対象となった。ただ「自己申告」によることもあり、実態がすべて把握できているかどうかははっきりしない。
各大学の回答を集計すると、名義貸しを行っていたのは、国立大が42校中29校の延べ854人▽公立大8校中3校の延べ108人▽私立大29校中19校の延べ199人。名義貸しそのものは行っていないものの、仲介、あっせんに関与していた医師も計延べ6人いた。
年度別の実数は02年度736人、03年度(9月1日まで)425人。03年3〜4月に年度をまたがって名義貸しをした場合は両年度で各1人と数えている。
名義貸しを行っていた医師が最も多いのは北海道大の延べ177人で、岡山大の71人、神戸大の65人、広島大の61人、藤田保健衛生大(愛知県豊明市)の60人と続く。
名義貸しは、地方の大学だけでなく、名古屋大や京都大、神戸大など都市部の大学でも数多く行われていた。名義貸しをしていた医師のうち、83%にあたる延べ964人が大学院生だった。
現行の保険医療制度では、医療機関は医療法によつて患者数に応じた医師の標準数が定められている。その6割以下しかいないと診療報酬が減額される。医師を確保できない病院側は、大学に在籍する医師の名義を借りて常勤医として登録すれば、診療報酬の減額を免れることができる。
一方の大学側には無給や低賃金で研究や診療を続ける大学院生や研修医が多勢在籍している。大学側にとっては、名義貸しをした医師が報酬を得たり、健康保険証の取得など派遣先の制度に加入できたりして、若手医師の生活の面倒を病院側に肩代わりしてもらえるメリットがあった。

名義貸し先病院調査へ指定取り消しも
今回の文科省調査を受け、都道府県は大学に対し、名義を貸した先の病院名の提供を求めることになる。病院を調査し、人員水増しによる診療報酬の不正請求が見つかれば、社会保険庁の出先である地方社会保険事務局が厚生労働省と協議の上、健康保険法に基づいて保険医療機関の指定取り消し処分を検討する。
保険医療機関の指定を取り消されると、病院は医療費を保険請求できなくなる。患者は全額自己負担することになる。病院は原則5年(へき地は2年)、指定の再申請ができない。
名義を貸した医師も保険医の取り消し処分の対象となる。

医薬品のTV電話利用販売 条件厳しく容認 省令改正へ

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大型量販店「ドン・キホーテ」がテレビ電話を通じて薬剤師に応対させ、医薬品を販売していた問題で、厚生労働省の有識者会議は22日、深夜早朝に限り、薬剤師が店に不在でも、こうしたテレビ電話によって遠隔地から応対する方式で大衆薬の販売を可能とする最終報告書をまとめた。同省は4月にも省令を改正し、実施を可能にする。
ただし、報告書、薬剤師が待機する場所を「販売店舖と同一県内にあべきだ」などの条件をつけた。首都圏の店鋪を1カ所の薬剤師待機センターでカバーしようと計画するチェーンドラッグ店からみると、厳しい内容となっている。
有識者会議は、午後10時〜午前6時に限って、テレビ電話などの情報通信機器を使った薬剤師相談をした上でなら、一部の効き目の強い医薬品を除く大衆薬の販売を容認する方針を報告書に明記。条件として、医薬品名、対応した店舖従業員、センター薬剤師の氏名などを記録し、1年間保存することを求めている。

院生の無給改善検討 「名義貸し」土壌と判断 札幌医大

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医師の「名義貸し」の背景に大学院生や研究生の「生活苦」があるとして、北海道立札幌医大は、医師免許を持つ大学院生が付属病院で無給で勤務していた態勢を見直し、院生らを付属病院の臨時職員として採用し、賃金を支払う検討を始めた。同医大はこの院生の無給制度が、名義料が得られる「名義貸し」の土壌の一つになっていたとみており、来年度、150人程度を採用したいとしている。
同医大の調査では、97年から5年半の間に名義貸しをしていた医師は124人。このうち院生は半数以上の66人で、研究生は36人。残る2人は教員だが、名義貸しの時期は院生か研究生時代だった。大学側の聴取に対し、多くが「生活支援として名義料などを提供された」と答えたという。
医科系大学では、医学部卒業後に医師免許を取得し、4〜5年研修医をした後、大半が大学院に入る。本来、専門テーマの研究が目的だが、人手の少ない医局の診療科では、院生らが「臨床研究」の名目で無給で診療に当たることが多く、「名義料」で生活を支える実態があったという。
札幌医大は、月額17万〜20万円の賃金と社会保険料などの共済費を支給する方向で検討しており、単年度の予算は約3億4千万円程度になる。
同医大病院課は「院生らに賃金を支払うのは異例かも知れないが、名義貸しを反省し、厳しい財政下でも付属病院スタッフとして働いている実態を評価しようという試み」と説明する。
名義貸しは東北大や北大など国立大学でも問題になつており、同様の構造が指摘されている。しかし、文部科学省は「院生は学生であり、賃金を支払う予算措置は講じていない」としている。

補助人工心臓臨床試験で「半永久」狙う テルモ、ドイツで駆動部に新技術

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半永久的に使うことをめざした新型補助人工心臓の世界初の臨床試験を、医療機器メーカーのテルモ(東京都渋谷区)がドイツの病院で始めた。動物実験で世界最長の生存期間を記録しており、臨床試験で良好な結果が出れば、移植以外に治療法がないとされる重度の心臓病患者の新たな選択肢となる。
補助人工心臓は、心筋梗塞等で機能が低下した心臓のそばに埋め込み、ポンプで血液循環を助ける。電力供給用のコードを体外に出して、小型
のバッテリーや調整装置と接続する。
テルモが開発した人工心臓は15日、ドイツ北部の大学病院で、重度の心臓病の男性患者に埋めこまれた。経過は良好で、当面3カ月使い続け
て効果をみるという。
従来の人工心臓は、駆動部分の摩擦熟による血液成分の損傷、血流の乱れによる血栓の発生、部品の摩耗などのため、最長でも数年の使用が限界だった。多くは心臓移植を受けるまでの「つなぎ」として使われている。
新型人工心臓は、血液を押し出す羽車を磁力で浮かせ、滑らかに回転させる「磁気浮上方式」のためこれらの弱点を軽減できる。97年にヒツジに埋め込み、864日間生存させた。現在主流の非拍動型の人工心臓で当時の世界紀録を倍以上も更新した。


HIV感染 輸血原因と確認

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エイズウイルス(HIV)が混入した献血血液が検査をすり抜け、輸血された人がHIVに感染していた間題で、原因はこの献血血液だったことが20日、日本赤十字社の調査で確認された。献血血液と患者の血液から見つかったHIVの遺伝子の型が一致した。99年10月に献血時の検査に高感度検査を導入して以後、輸血によるHIV感染が確認されたのは初めて。
日赤によると、献血したのは20代の男性。昨年11月、献血時の検査でHIV陽性がわかった。男性は同年5月にも献血しており、日赤で保管していた血液の検体を調べたところ、12月17日にHIVが検出された。
5月の献血血液からは輸血用の赤血球製剤と血漿製剤が1本ずつ作られ
血漿製剤が患者1人に使われた。患者は輸血前の検査でHIV陰性だったが、昨年12月の検査で陽性反応が出た。

介護報酬不正受給4億円 岡山津山老保施設 勤務時間多く申請

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岡山県津山市の介護老人保健施設「洋山ナーシングホーム」(三島正枝施設長、88人入所)が約3年間にわたり、医師や理学療法士の勤務時間を多く申告したとして、県が介護報酬計約4億円の返還を求めていることが分かった。ホームを運営する同県勝北町、社会福祉法人「日本原荘」(福原信行理事長)は返還に応じるという。
県によると、同ホームは介護保険制度が始まった00年4月から03年5月にかけ、医師の勤務時間が介護保険法に定められた常勤時間に足りていたように申告。理学療法士についても、同法で報酬の加算が認められる勤務時間を満たしたように申告し、県国民健康保険団体連合会から介護報酬として、毎月約1050万円、計約4億円を余分に受け取ったとされる。
県に03年4月に提出された勤務報告書で、医師は常勤で週6日、計42時間の勤務となっていたが、県と社会保険事務所に出された別の書類で自分の医院とホームの両方で常勤となっていることが判明した。ホーム側は「故意ではなかったが、反省している」と話している。

腎移植6人機会逃す 移植ネット順位検索ソフト不備

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日本臓器移植ネツトワーク(東京都港区)は18日、移植希望の腎臓病患者6人が、コンピューターの患者検索ソフトのミスで移植の機会を得られなかったと発表した。当人と関係医療機関には電話で17日に謝罪し、今後役員が面会して謝罪する。移植ネットの野本久雄副理事長は「信頼を裏切り、申し訳ない」と語った。
移植ネットでは、臓器提供者が出るたびに、登録者の中から移植を受ける患者をコンピューターで検索。腎臓では、待機日数、白血球の型を示すHLAの一致度など4項目をもとに患者を順位付け。上位者から順に移植を受けるか打診する。
長期間待機している患者も対象になるよう、腎臓では順位付けの基準が02年1月10日に改めら、HLAの一致度につての基準も緩和された。検索ソフトは抜本的に作り直したが、HLA一致度の条件の一部は従来のままだったという。
基準改正後から現在まで130件の腎臓提供があり、そのうち心停止後の提供だった5件で問題が起きた。1人から二つの腎臓が提供されるため、10人が移植を受けた。うち6人は本来、優先度の低い人で、優先度の高いはずの6人は移植を受けられなかった。
再発を防ぐため、当面HLAの条件の入力の仕方を工夫して対応する。
公平、公正であるべき患者選びが2年間、間違った条件で続き、腎臓病患者6人が移植を受ける機会を奪われた。18日明らかになった日本臓器移植ネツトワークによる患者選びのミス。ミスの内容単純、見つかったのは全くの偶然だ。「患者が生きているのは幸運に過ぎない」。患者団体から怒りの声が上がった。
「臓器移植の源にかかわる問題。心からおわび申し上げたい」。18日午前11時から厚生労働省で始まった会見で野本亀久雄副理事長ら日本臓器移植ネットワークの関係者は深々と頭を下げた。
02年1月から使われている患者を選ぶための検索ソフトでは、HLA(白血球型)の比重は以前に比べて下がっている。本部の他、大阪、名古屋にある支部でも検索ソフトを動かせる。
欠陥発見のきっかけは、1人の支部コーディネーターから15日にあつた問い合わせ。この人がたまたま、架空の条件で検索ソフトを使ったら、HLAでは予想とは違う結果が出た。本部で調べてHLAの基準緩和がソフトに反映されていないことがわかった。
支部コディネーターの試みがなければ、欠陥の発覚はさらに遅れた。野本副理事長は「ショックですぐにどうするかは考えられない。まず冷静になって、再発防止策を考えたい」とした。
人工透析を受けている腎臓病患者は01年時点で22万人。15年前の86年の3倍に上る。死者からの腎臓移植の件数は89年の261件をピークに減っており、01年は151件だ。97年の臓器移植法の施行後も脳死判定に至ったのは27例に過ぎない。腎臓移植は依然として、近親者からが中心。
移植ネツトの仲介による腎臓移植を待っているのは1万2609人。移植を受けるまでの期間は01年が7年半、02年は14年だった。
全国腎臓病協議会の油井清治会長(70)は23年間、週2回、病院で1回5時間の人工透析を受けてきた。血管や心臓などあちこちに負担がかかる。「心臓移植だったらもっと深刻な事態になっていただろう」と憤る。
移植ネットの理事で20年前に妹から生体腎移植を受けた日本移植者協議会の大久保道方理事長(56)は「ネットの人数(全国で35人)が手薄だと感じていた。原因と責任を明確にし、組織を強化する必要があるのでばないか」と提案する。
胆道閉鎖症の子供を守る会の石丸雄次郎代表は「信じられないミス。患者の生存は幸運だったに過ぎない」と話した。
日本臓器移植ネツトワークの会見で、細部は菊地耕三理事が説明した。主な内容は次の通り。
−ミスの理由は。
新しく検索ソフトを作る際、HLA(白血球型)の条件付けを間違えてプログラム会社に発注した。実際に使う前に検証したが、欠陥を見抜けなかった。すべて我々の責任だと思っている。
−他に問題は。
現時点では発見されていない。腎臓移植については、HLA以外の条件についてもすべて検証し直す。他の臓器についても検索ソフトに問題がないか調べる。
−6人への対応は。
本人と、本人が受珍している医療機関に状況を電話で報告し謝罪した。患者さんは特にに怒りをあらわにした人はいなかったが「残念です」と話す方もいた。今後、患者さんを直接訪問し、改めて謝罪したい。
−6人が今後、優先的に移植を受けられるようにする考えは。
現時点では何とも申し上げられない。膨大な人数の中から順位付けをするため、6人だけの優先度を上げるのは簡単ではない。
人による確認徹底を求める 厚労省
日本臓器移植ネツトワークのミスについて、厚生労働省の臓器移植対策室は「待機患者の選定でのミスは、移植の公平性を保つ上であってはならない間違い」と重く受け止めている。すでに、移植ネットに対して、原因の究明を指示するとともに、患者の選定をコンピューター任せにせず、人による確認作業を徹底するなどの改善策をまとめるよう求めた。

介助入浴中に床に転落、死亡 板橋の病院

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東京都板橋区の医療法人慈誠会「東武練馬中央病院」(熊木敏郎院長)で14日、同区に住む女性入院患者(92)が介助を受けて入浴中に床に転落し、翌日に死亡していたことがわかった。警視庁は業務上過失致死の疑いで、女性ヘルパーら病院関係者から事情を聴いている。
高島平署によると、患者は14日午後4時前、ストレッチャーに乗せられ、浴槽脇にある高さ約80センチの台で女性ヘルパー2人に体を洗われている際に床に転落した。頭などを打って意識不明になり、翌15日午前4時ごろ死亡した。体をストレッチヤーに固定する留め金が正しく留められていなかった可能性があるという。

鳥インフルエンザ 予防薬の投与 厚労省が促す

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山口県で鳥インフルエンザが発生した問題で、厚生労働省は、感染した鶏に触れる可能性がある養鶏業者らに、インフルエンザワクチンの接種や抗ウイルス薬の予防投与を求めるよう都道府県などに指示した。16日に開かれた厚生科学審議会感染症分科会で報告した。

医師120人名義貸し 東北大医学部33医療機関に

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東北大医学部の医師による名義貸し問題で、東北地方の33の公私立の医療機関が、同大の医師約120人から名義を借りて医師の数を水増ししていたことが、16日までの各県の調査でわかった。水増しによって診療報酬を不正に受給した疑いもでている。各地の社会保険事務局は、不正受給分の返還請求や保険医療機関の指定取り消しを検討する方針だ。
名義を借りた医療機関数は青森4、岩手0、秋田1、宮城23、山形2、福島3。このうち少なくとも青森の2施設では、「名義貸し」医師の水増し分を除くと、実際の医師数が、診療報酬が減額される基準を下回っていた疑いがある。この場合、病院側は3〜30%の減額を免れたことになり、社会保険事務局から不正受給について返還請求される可能性がある。
貸した医師の中には、実際には毎月1〜3日しか勤務していないのに、月額30万〜40万円の報酬を得ていた例もあった。勤務日数から、本来は得られないはずの保険証の交付を受けていた例もある。
宮城県内の郡部にある医療機関は「医師不足を乗り切るため、やむを得なかった」と話した。山形県内の医療機関は、同県の調べに「医学部側に頼まれた」と話しているという。
同大医学部は「医局の組織的な関与はなかった。名義を貸していた医師の処分は今後検討していく」と話している。

肝炎感染予防接種原因と認定 札幌高裁判決原告3人に損害賠償

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「B型肝ウイルスに感染したのは、注射器などを連続使用した集団予防接種が原因」として、札幌市などに住む男性患者ら5人(うち1人は死亡)が、国を相手に総額5750万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が16日、札幌高裁であった。山崎健二裁判長は請求を棄却した一審の札幌地裁判決を変更し、未発症の専門学校生ら原告3人の請求を一部認め、国に計1650万円の支払いを命じた。
この裁判は、集団予防接種による感染被害をめぐり国家賠償を求めた全国で唯一のケース。原告5人は幼児期にツベルクリン反応などの集団予防接種を受けていた。死亡者を除く原告は20歳から52歳の男性4人。うち3人は慢性肝炎患者で、1人は未発症の持続感染者(キャリア)で最年少の専門学校生。一審判決は、過去の集団予防接種について「針と筒を連続使用し、感染させる可能性があった」と認めたが、「別の注射など一般の医療行為、家族内の感染などの可能性かある。高度の可能性の証明はない」と指摘し、原告側の主張を退けていた。
原告側は、5人には輪血の経験や母子間の感染もないなどの点を強調し、「予防接種以外の感染経路は考えられない」と主張していた。

保険診療に上乗せ負担 患者1人当たり5万円徴収 乳がん治療、計数千万円 大船の病院

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乳がんの乳房温存療法で知られる大船中央病院(神奈川県鎌倉市)の雨宮厚外科部長が、患者から保険診療とは別に検査費などを上乗せ徴収し、厚生労働省が原則として認めない「混合診療」を続けていたことが分かった。同病院は、過去5年間の上乗せ分の金額を患者に返すことを決め、作業を始めた。対象は一人当たり5万円前後で、合計で数千万円に上る見込みだ。さらに手術代を本来よりも高額な項目で計算していたとして、その差額も返金する。
雨宮氏によるとこの病院で乳がん手術を年間で約200件、10年間で約2千件執刀した。保険診療だが、一部の手術材料費や保険適用外の検査費を、患者に十分な説明をせずに払わせていた。
一人あだり4万〜6万円程度で、最近は手術材料費1万2千円、3種類の検査費4万2千円の計5万4千円(消費税込み5万6700円)の場合が多いという。病院側もこの混合診療を黙認していたという。
また、雨宮氏がしてきた乳房温存療法の手術代について、同病院はこれまで保険点数が26600点(26万6千円)でわきの下のリンパ節切除を伴う「乳房部分切除術」で計算してきたが、本来は保険点数10400点(10万4千円)の「単純乳房切除術」で計算すべきだったとして、差額を返金していく考えだ。
同病院は今月5日付で患者に「治療費に誤りがあった」と、返金を伝えるおわびの手紙を作成。順次、送付を始めた。当面は5年前までの患者を対象にするという。
この問題は、乳房温存療法の先駆者で、雨宮氏に多くの患者を紹介してきた慶応大医学部放射線科の近藤誠講師が、大船中央病院の診療報酬の請求方法に問題があると訴えて発覚した。
雨宮氏は「患者によりよい医療を施すため、保険適用外の検査をし、自費で負担してもらった。合法的なやり方を考えるべきだったが、結果的に混合診療という形になってしまった」と請求に問題があったと認めた。
大船中央病院は166床。52年に設立された。診療科11科のうち、胸部外科は有名で全国から患者を集めている。01年8月には新鋭の設備で乳がんの治療をする「乳房センター」も開設し、2人の医師が年間約1万3500人の外来患者を診ている。

「裏切られた」返還受けた患者
大船中央病院から返金を受けたという60代の女性は、「雨宮先生は名医として有名で、絶対的に信頼していた。この先生に診てもらってだめならだめと覚悟して手術を受けたぐらいなのに、裏切られた思いです」と、過剰だった請求について怒りを隠さない。昨年11月に乳房温存療法の手術を受け、12月に再訪したところ、自費で払った5万6700円をいきなり返金されたという。
11月に退院したとき、入院費など計約24万円のうち、「その他」として自費で払った5万6700円の名目について病院に問い合わせていた。ところが「先生から説明があったはず」と、取り合ってもらえなかった。
6年前に同じ手術を受けた、女性(48)は、「自費検査2件」という付箋と共に、3万6420円を徴収された。現在、病院に返還方法について問い合わせ中だという。

混合診療
健康保険を使う保険診療と、保険がきかない薬や検査、治療などの自由診療を一緒に行うこと。厚生労働省の省令の「保険医療機関及び保険医療養担当規則」は、保険医療機関は患者から診療費の一定額(3割)の支払いを受けるもの、と定めておりこれ以上の額を徴収することはできない。違反した場合、金額や期間などによっては、保険医療機関の指定を取り消される場合がある。ただし、高度先進医療や差額ベッド代などは特定療養費制度として保険診療との組み合わせが認められる。

女児、11月に死亡 京大病院で肝・小腸移植

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京都大病院で昨年9月に国内で初めて肝臓と小腸の同時生体移植を受けた山口県の1歳の女児が11月に亡くなったと12日、同病院が発表した。死因は移植した小腸の拒絶反応などによる多臓器不全という。成功率が低い小腸移植に肝移植を組み合わせて2人の臓器提供者に負担をかけた手術の是非や、情報公開の遅れが今後問われそうだ。
女児は、小腸が繰り返しふさがる小腸多発閉鎖症で、患部を切除する手術を4回受け、ほとんど小腸がなくなっていた。点滴で栄養を補給していたが、副作用で肝不全を併発。山口県から京大病院に転院直後に「移植しなければ約1週間で亡くなる」と診断を受け、昨年9月19日から20日未明にかけ、父から肝臓の一部、叔母から小腸の一部の提供を受けた。
手術の2週間後、移植した小腸に拒絶反応が現れ、免疫抑制剤で治療したが改善しなかった。その後、免疫機能の低下などから感染症にかかり、11月16日に亡くなった。

イ患者と会話し脳手術、生中継 山形大付属病院

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脳の手術中に患者と会話をし、言語機能をつかさど部分を傷つけないように確認しながら患部を切除する「覚醒下脳手術」が10日、山形大学医学部付属病院(山形市)であった。患者の同意を得て報道陣に公開され、インドネシアで開かれている脳神経外科の国際学会に生中継された。
「これ、なんですか?」手術台の患者の女性にパソコンを見せながら、医師が画面に表示されたイラストを尋ねた。「猿です」女性は、ばっきりとした声で応じた。この日は脳腫瘍を取り除いたさ。全身麻酔をかけ、左前頭部は6〜8センチ四方開頭された。その後、局部麻酔は効いているものの、女性は意識のある状態になった。執刀医の嘉山孝正・同大医学部教授は会話を聞きながら、腫瘍周辺の脳に、電極をあてて反応を確かめ、患部を切除した。開頭から縫合まで約7時間。手術は無事終了した。
言論中枢にあたる脳の表面に電極をあてて微弱な電流を流すと、その間はマヒしてしゃべることが出来なくなるこのため、手術中に絵を見せて答えさせたり、簡単な計算をさせたりして会話しながら言語中枢を特定し、切除しても障害が出ない範囲を正確に見極める。脳そのものは痛みを感じないため、手術中に患者を目覚めさせて会話することが可能という。
国内での施術は200例ほどあるというが、アジアでは日本以外の国ではまだ施術例がほとんどない。アジア諸国の医師約200人が参加し、インドネシアで開かれた脳神経外科の学会で中継の要望があった。

インフルエンザ流行入り、今冬は北から

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厚生労働省は9日、インフルエンザの流行が始まった、と発表した。昨冬と比べると今のところ増え方は緩やかで、西日本で少ないのが特徴だ。
厚労省によると、12月22日から28日に全国約5千の医療機関から報告された患者数が1施設あたり1.79人になり、流行の目安となる1.00人を超えた。
特徴的なのは、広がり方だ。国立感染症研究所・感染症情報センターによると、昨年12月21日までに警報(定点あたりの発生報告が30人を超えた保健所がある)が出されたのは北海道と山形県。注意報(同10人)は、福島、群馬、埼玉の3県で、北日本から広がっているらしい。
この数年間は九州や中国地方から広がる傾向が続いていた。

手術後、女性死亡 腸に穴開け見落とす 慈恵医大病院

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東京慈恵会医科大学付属病院(東京都港区)で昨年12月に子宮の止血手術を受けた女性(38)が、その後腸から出血して意識不明になり、今月1日に死亡していたことがわかった。警視庁は、開腹した際に腸管に穴を開けこれを見落としていた可能性があるとみて執刀医らから事情を聴いている。
愛宕署の調べでは、女性は同病院に勤める医師。妊娠8週間で胎児が死亡したため12月10日、渋谷区内の産婦人科医院で胎児を取り除く手術を受けた。子宮からの出血が止まらず、同日中に慈恵医大付属病院に移されて止血手術を受け、12日に意識不明になった。
腸管に開いた穴から出血しているのがわかり緊急手術を受けたが、翌13日に心肺機能が停止し、意織が戻らないまま1月1日午前0時25分ごろに死亡した。病院側は「どうして穴が開いたかわからない」と説明している。同署は産婦人科医院での手術で腸管に穴が開くことは考えにくく、慈恵医大での止血手術で開腹した際に子宮近、くの腸管が傷ついた可能性があるとみている。
同病院広報課は「調査中で現段階ではコメントできない」と話している。

生体膵腎移植を国内初実施 国立佐倉病院

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重症の糖尿病で腎不全も起きた30代の女性に、60代の父親から膵臓の一部と腎臓を移植する「生体膵腎同時移植」が国立佐倉病院(千葉県佐倉市)で7日実施された。
臓器移植法に基づく脳死者からの膵腎同時移植は国内で9例あるが、生体からのケースは国内で初めて。
手術は同病院の剣持敬・外科医長らが計画し、昨年同病院の倫理委員会で承認されていた。
女性は血糖値を下げるインスリンがうまく作れない重症の1型糖尿病で、腎臓の働きも悪化。
入退院を繰り返していたことから、父親が提供を申し出ていた。手術では、父親の膵臓の半分ほどと腎臓の片方を摘出し、女性に移植された。
膵臓は腎臓と違って一つしかなく、再生しないため、半分を提供すると残った膵臓の機能が低下して提供者が糖尿病になる可能性も否定できない。病院側はこうした危険性を親子に複数回説明し、同意を得たため、実施に踏み切った。

東北大医学部の現金受領 2900万円使途不明 文部次官通知違反の疑いも

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東北大医学部の教授らが、医師を派遣している公立病院から多額の現金を受け取っていた問題で、受領した現金約4100万円のうち、教授らが国庫に納めたのは約1200万円で、残りの約2900万円については使途が不明なことが7日、わかった。文部科学省の事務次官通知では「国立大の研究や教育に充てる目的で外部から受けた資金は、公費扱いで処理する」としており、教授らの行為は、通知に反する疑いがある。
朝日新聞記者の情報公開請求に対し、東北大が開示した資料や医学部調査委員会の資料などで明ららかになった。
開示資料や医学部などによると、98〜03年度の間に16分野の教授らが計4132万円を研究助成などの名目で受け取つた。受領後、公費として分野の教授らの計1230万円だけだった。
残る計2902万円の使途については、教授らは「研究費及び教育費へ支出」「医療技術向上のための費用として管理保管中」などと大学側に説明しているが、詳しい使途の明細は、あいまいなままだ。
医学部で、最も多額な現金を受け取っていたのは吉本高志学長で、1090万円だった。しかし、吉本学長は現金を国庫などには納めておらず、使途の詳細について「検察庁に告発されている状況から、コメントしかねる」としている。
この問題では現金を受け取った吉本学長ら医学部教授ら13人は、仙台市民オンブズマンから収賄容疑で仙台地検に告発され、受理されている。
文科省によると、国立大などで、不適切な外部資金の受け入れが問題になったことから、67年に次官通知を出した。
医学部事務部は「通知は大学当局が対象。医局は任意団体なので抵触しないと認識している」と説明しているが、文科省の担当課は「任意団体であっても受け入れた資金についてはこの通知に該当する」と話している。

投薬名間違え一時意識不明 山形県立河北病院

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山形県立河北病院(千葉昌和院長)で昨年11月、人工透析を受けるために通院していた県内の50代の男性に対し、血圧降下剤「アルマール」の代わりに誤って血糖降下剤「アマリール」を渡し、服用した男性が低血糖のため2日間意識不明になっていたことが6日わかった。男性は意識が回復したものの、現在も体調がすぐれず、同病院に入院中という。
同病院や県によると、薬を間違えたのは昨年11月20日。薬の名前が似ていたため、薬剤師が取り違えたという。
男性は自宅で「アマリール」を服用、24日に意識不明になり同病院に入院した。血糖値が通常の4分の1ほどに下がっていた。ぷどう糖の注射で血糖値が戻り、翌日意識は回復したが、病院側は低血糖になった理由が分からなかった。このため、男性は意識回復後の26日も「アマリール」を服用し、再び血糖値が下がったという。
病院側は26日夜になって薬の間違いに気づき、27日、男性に経緯を説明、12月4日に県に報告した。青山泰・薬局長は「同様の過誤が全国で問題になっていることは認識しており、医師には注意を促していた。申し訳ない」と話している。

「名義借り」1300万円追徴

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医師の「名義貸し」に関連し、名義を借りた北海道内の二つの医療機関に、札幌国税局が重加算税を含め総額約1300万円の追徴課税をしていたことが7日までに分かった。迫徴課税されたのは医師数を水増しし、介護給付費約4億4千万円をだまし取った詐欺容疑で昨年夏に元院長らが逮捕・起訴された岩見沢市の岩見沢緑仁会病院と、富良野市のふらの西病院(152床)。緑仁会病院は保険医療機関の指定を取り消され、現在は閉鎖されている。
岩見沢緑仁会病院は札幌医大の医師11人から名義を借り、給与として処理した「名義料」約3100万円が経費の水増し申告にあたると判断された。重加算税も含め約1千万円が追徴課税されたという。
ふらの西病院は昨年10月の定期の税務調査の際に、旭川医大の医師1人に支出していた過去4年分の「名義料」480万円が経費と認められずに医師への寄付と指摘され、重加算税も含めて320万円が追徴課税されたという。
道内には20床以上の医療機関が638施設あり、うち3分の1以上の239施設で勤務実体のない「名義貸し」や、非常勤なのに常勤として扱う「名義貸し類似行為」があった。同国税局は医療機関への税務調査を続けるとともに、「名義料」を受け取った医師にも雑所得として修正申告を求める方針だ。

埼玉医大医療過誤 元教授側が上告

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埼玉医大総合医療センター(埼玉県川越市)で00年、高校生(当時16)に抗がん剤を過剰投与して死亡させたとして業務上過失致死罪に問われ、先月、東京高裁で禁固1年執行猶予3年(求刑禁固2年)の判決を受けた元教授の川端五十鈴被告(68)が5日、最高裁に上告した。
川端被告は当時の耳鼻咽喉(いんこう)科科長。患者の古館友理さんを死亡させたとして、主治医らとともに起訴されていた。
代理人の弁護士は「科全体を監督しなければならない科長にも監督責任だけでなく治療責任があるとした前例のない判決。医療界への影響が大きく、最高裁の判断を仰ぎたい」としている。
川端被告は一、二審とも無罪を主張。一審判決は主治医への監督責任のみを認め罰金20万円としたが、東京高裁は先月24日、これを破棄し「科長回診で患者の容体を把握するなど、川端被告にも治療医としての責任があった」とする判決を言い渡した。主治医については一審判決が確定している。

乳児に麻酔誤注射7分心停止 神奈川こども医療センター

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横浜市南区の神奈川県立こども医療センター(後藤彰子センター所長)で02年6月、乳児の腹部の手術中に、血液製剤と間違えて麻酔薬を注射し、乳児が心停止する医療ミスがあったことが分かった。乳児は約7分後に蘇生した。同病院は「神経学的な後遺症はない」としているが、心停止の原因が麻酔薬の誤注入であることを認め、家族に謝罪した。
 県が朝日新聞社の情報公開請求に応じて資料を開示した。
 その「事故・紛争報告書」や同病院の説明によると、02年6月、乳児の腹部の手術中に血圧が低下したため、麻酔科の医師が血圧を高める目的で血液製剤「アルブミン液」を注射しようとした。その際、誤って麻酔薬「ラボナール液」を3ミリリットル注入し、直後に乳児の心臓が停止した。だが、この時点でも間違いに気が付かず、心停止後も誤注入を続け、計20ミリリットルの麻酔薬を投与した。
 心臓マッサージや強心剤投与などの処置をし、約7分後に心拍が再開。乳児は4日後に自発呼吸を始め、約1カ月後に退院した。手術の翌日になって残っている薬剤の量を確認し、誤注入に気が付いた。
 同病院によると、麻酔薬を大量に投与すると心臓の拍動が遅くなる。今回誤注入したのと同じ量の麻酔薬で死亡する可能性もあったという。
 麻酔薬「ラボナール液」と血液製剤「アルブミン液」はともに薄い黄色の液体。医師は手術前に薬剤を用意する際、事前に作ったもので、本来は廃棄すべきだった麻酔薬の残りを血液製剤と勘違いした。作った薬剤には名前を書いたラベルを張ることが院内のマニュアルで決められているが、守られていなかったという。
 同病院の康井制洋副院長は「医療事故は最も信頼を失う要因だ。再発防止につとめる」と話している。

青戸病院死亡事故3人を懲戒解雇

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東京慈恵会医科大付属青戸病院(東京都葛飾区)で腹腔鏡による前立腺摘出手術を受けた男性(当時60)が死亡した医療事故について、同大学は26日、関係者の処分を発表した。業務上過失致死罪に問われている医師の斑目旬(38)、長谷川太郎(34)の両被告と、手術を許可した当時の泌尿器科診療部長の大西哲郎助教授(52)を12月31日付けで懲戒解雇、とした。同罪に問われている医師の前田重孝被告(32)については、手術関与への責任が軽いとして判決確定後の出勤停止10日間とした。このほか、麻酔科医がけん責処分を受け、大石幸彦付属病院長が31日付で辞任する。

医療被害救済制度化を訴え

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医療の苦情相談を受けてきた市民団体「医療消費者ネットワークMECON(メコン)」が来年1月に発足10年を迎えるのを機に、今月19日、医療被害者を救済するための公的制度づくりを求める要望書を、厚生労働省などに提出した。千葉大教授(英文学)で代表世話人の清水とよ子さん(61)は「現状の解決策では限界がある。10年を経て、こう言わざるを得ない」と語る。
医療被害者は、まず真相を知りたいと願うが、隠蔽(いんぺい)体質の医療界では、その実現が難しいという。「国や自治体に対応してもらえず、メコンへ回されてくる人も少なくない。もう、市民団体に丸投げして済まされる問題ではない」

手術ミス隠蔽懲役1年求刑 東京女子医大元医師

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東京女子医科大病院の心臓手術ミスで01年3月、小学校6年の平柳明香
さん(当時12)が死亡した事件に絡み、医療記録を改ざんしたとして証拠隠滅罪に問われた元同病院医師の瀬尾和宏被告(48)の公判が25日、東京地裁であった。検察側は論告で「隠蔽行為は、家族の真実を知りたいという気持ちを封じ込めるもので許されない」と述ベ、懲役1年年を求刑した。

青戸病院死亡事故 2被告は起訴事実認める

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東京慈恵会医科大学付属青戸病院(東京都葛飾区)で腹腔鏡手術を受けた男性(当時60)が死亡した事故で、業務上過失致死罪に問われた医師3人の初公判が25日、東京地裁であった。斑目旬(38)、長谷川太郎(34)の両被告は「間違いありません」と起訴事実を認めたうえ、死亡した男性と遺族に謝罪した。前田重孝被告(32)も謝罪したが、「大量出血して死亡するとは予見できなかった」と無罪を主張した。
検察側の冒頭陳述によると、被害者の男性は前立腺がんと診断され、02年11月8日に同病院で患部の摘出手術を受けた。主治医の長谷川医師は、「新しい手術に挑戦し、実績を上げたい」と思い、腹腔鏡手術を選択。前田医師も「患者にどの程度の利点があるのか確かめたい」と思って助手を引き受けた。長谷川医師から執刀の依頼を受けた斑目医師も、この手術方式に強いあこがれを抱き続けていたことから、執刀を引き受けた。
男性は手術中に大量出血。前立腺を摘出したときには前田医師は「はーい、生まれました。男の子でーす」と冗談を言っていた。その後、斑目医師が開腹手術への変更を提案したが、長谷川医師は「出血も大したことない」と述べて続行。手術室を巡回してきた麻酔医から「さっさと術式を変えて終わらせなさい」と怒鳴られても、3人は無視して続けた。

元主治医上司2人に禁固刑 抗がん剤過剰投与

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埼玉県川越市の埼玉医大総合医療センターで00年、高校生古館友理さん(当時16)が抗がん剤を過剰投与されて死亡した事件で、業務上過失致死罪に問われた元主治医(33)の上司2人に対する控訴審判決が24日、東京高裁であった。中川武隆裁判長は「監督責任だけでなく治療医としての注意義務があった」として、罰金刑にとどめた一審のさいたま地裁判決を一部破棄し、元教授の川端五十鈴被告(68)に禁固1年執行猶予3年、元指導医の本間利生被告(37)に禁固1年6カ月執行猶予3年(求刑はともに禁固2年)を言い渡した。

ミス犯す医師再教育 医療安全対策厚労省公表へ 新薬使用医、限定も

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多発する医療事故を受けて厚生労働省は、医療ミスを繰り返す医師らの再教育や事故危険度の高い手術室のガイドラインづくりなど、総合的な安全対策を打ち出す。24日にも坂口厚労相が緊急アピールとして公表する。
一部は来年度中に先行実施を目指す。残りは同年度に研究班を設置し、具体的指針の作成に着手する。医師らの資質に焦点を当てた総合対策は同省として初めてで、手術の透明性確保など、患者側の医療不信に応える内容も盛り込んだ。
アピール案などによると、「人」「施設」「モノ」の三つの視点から事故防止策を検討する。
「人」の面では、医師や歯科医師の資質向上を掲げた。最新の治療法などについて学会や医師会が開く生涯教育の受講歴を、医師法に基づく2年ごとの届け出で報告させる。医療ミスを繰り返す医師らは刑事処分に至らなくても行政処分の対象とし、処分内容をホームぺージで公開。医師免許の取り消しに至らない場合でも、業務停止期間に委託機関で再教育の実習を受けさせる。省令改正で実施可能な生涯教育受講の届け出などは、04年度中の実施をめざす。
「施設」面の施策では医療事故の4割を占める手術中のリスク要因の特定や、安全ガイドラインの作成が柱。事故率を左右する麻酔担当医の専門性をきちんと評価する案が出ている。手術ビデオを患者に提供するシステムも検討される。
「モノ」対策には医薬品や機器、情報が入る。肺がん治療に詳しくない医師も多用して副作用死が相次いだ抗がん刑イレッサ問題などを受け、最先端の新薬は利用できる医師を専門医らに限定できるようにする基準をつくる。取り違えやすい名称や外観の医薬品はデータベースをつくって混同をさける、としている。
対策は医療事故の多発を受けて厚労相が指示。来年4月の診療報酬改定にも一部を反映、医療機関が安全対策を向上するよう誘導策をとる。医師法の改正などが必要とされれば、06年の通常国会に上程する見通しだ。

異型輸血で92歳女性死亡 千葉の病院

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千葉県茂原市にある公立長生病院(小野豊院長)は20日、同市の女性患者(92)の骨折の手術中、誤った血液型の輸血をしたため、多臓器不全で死亡したと発表した。手術前の準備で、看護師(39)がこの女性と同姓の別の入院患者を勘違いしたため、血液型を誤ったという。県警茂原署は業務上過失致死の疑いで関係者から事情を聴いている。
同病院によると、女性患者は17日深夜、右大腿骨骨折で緊急入院。19日正午ごろ始まった手術で40ccの輸血を受けた。手術は予定通り午後1時過ぎに終わったが、同3時ごろから血圧が下がるなどし、同6時26分に死亡した。
女性の血液型を検査する際、看護師が、1カ月以上前から入院していた同姓の男性患者(87)と勘違いして採血したことがわかったという。

北大へ寄付1億2600万円 効率20病院、5年間 医学部調査

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北海道大医学部の医局に北海道内の公立病院から多額の寄付が寄せられていた問題で、同医学部の調査委員会は19日、調査結果を発表した。98〜02年度の5年間で、道内の20を超える公立病院から四つの医局に、研究活動資金などの名目で総額1億2600万円が提供されていた。また教授・助教授11人が、公立病院など計14の機関と顧問医契約を結び、顧問料を得ていた。同医学部は年度内に関係者の処分や改善策をまとめる方針。
調査委によると、寄付のうち1億1080万円は、第一外科医局が資金を管理するOB会組織、楡刀会に出されていた。
同医局が医師を派遣している14の公立病院が、年間2千万円前後を提供していた。
寄付金は秘書の人件費、書籍購入費、研修費などに充てられ、約2200万円は奨学金として使われていたという。
国立大が外部から受けた寄付金は、67年の文部事務次官通知で「公費扱いで処理する」とされている。調査委は今回の寄付が公的に扱われず、職員が研究や教育費に個人的に使っていた点を重視。事務次官通知の趣旨に反する「不適切な支出」と指摘、寄付の受け入れの自粛を求めた。
一方、調査委は顧間料の総額は明らかにしなかったが、臓器移植の第一人者といわれる藤堂省・第一外科教授について公表し、問題点を指摘。藤堂教授は四つの公立病院から「月1回1時間程度、報酬額は月額10万円」と学内で届けていたが、実際は1回20万〜30万円、年間1200万円の顧問料を得ていたという。
顧問料については、支出した公立病院が第一外科から医師派遺を受けていることから、関係者の間では「派遣の謝」との指摘も出ている。調査に対し、支出した病院側や藤堂教授本人は「業務の対価」と説明したという。
通常、名義貸しは研修医や研究生が実際には勤務していない病院に名義を貸し、見返りに給料を得る例が多い。病院側は医師数の水増しで定数を満たし、診療報酬を不正に得るケースが少なくない。これに対し寄付金は、地域の病院が医師を実際に派遣してくれている医局に、派遣の継続などを期待して贈っているとされる。
北大の場合は、名義かしの調査の過程で、名義料とは別に、公立病院から医局への寄付や教授らと顧問契約があったことが明らかになった。

連合 レセプト請求、組合員に要請

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連合は18日、医療費を点検して無駄な出費を抑えようと、約680万人の加盟組合員に対し、診療報酬明細書(レセプト)の開示を求めるよう働きかけることを決めた。医療機関にかかったら、まず窓口で料金の内訳が記載された領収書を要求し、応じてもらえない場合はレセプトの開示を請求してもらうという。ただちに開始し、来年6月にも中間報告をまとめる。全国のレセブト開示請求件数は00年度で約1万2500件でこれが実行されれば、大きく増加する可能性がある。

うつぶせ寝訴訟 東邦大の敗訴が確定

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東邦大医学部付属大橋病院(東京都目黒区)で95年、新生児をうつぶせ寝にして死亡させたとして、両親が病院を経営する東邦大学(大田区)を相手に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第一小法廷(深沢武久裁判長)は18日、大学側の上告を棄却する決定をした。うつぶせ寝用の寝具を使わなかった病院側の過失を認め、約4850万円の支払いを同大に命じた一、二審判決が確定した。

手術後死亡訴訟 病院の控訴棄却

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神奈川県鎌倉市の「佐藤病院」で虫垂炎の手術を受けた後に死亡した男子中学生(当時12)の両親が、同病院を経営する医療法人「大樹会」に約7千万円の損害賠償を求めた訴訟の差し戻し後の控訴審判決が17日、東京高裁であった。江見弘武裁判長は「手術後に適切な治療をしていれば延命の可能性は高かった」と述ベ、約5330万円の支払いを同会に命じた一審・横浜地裁の判決を支持して同会の控訴を棄却した。
横浜地裁は94年に原告の主張を認めたが、差し戻し前の東京高裁は98年、請求を棄却する逆転判決を言い渡した。最高裁が01年2月、審理を同高裁に差し戻していた。

「手術ミスで死亡」容疑の医師を告訴

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東大医学部付属病院(東京都文京区)で心臓の手術を受けた男性(当時29)が1カ月後に死亡したのは執刀医らの医療ミスが原因だとして、男性の両親が16日、同病院の医師ら13人について業務上過失致死容疑で東京地検に告訴状を提出した。
告訴状によると、死亡したのは埼玉県越谷市千間台西3丁目、無職竹田剛成さん。竹田さんは昨年11月13日、大動脈瘤(りゆう)を除去する手術を同病院で受けた。その際、執刀医らが冠動脈や心臓の一部を過って損傷し、出血させたのに、十分な止血措置をとらなかったという。竹田さんは手術から約1カ月後、意識が戻らないまま死亡した。
東大医学部付属病院の話
当時の診療記録を精査しつつ、関係者の事情聴取をしているが医療ミスがあったとは判断していない。

自分のカルテ内容 7割の患者「知りたい」

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自分のカルテ内容を「知りたい」患者は7割いるのに、「見せてもらった」のは1割にとどまることが16日公表された厚労省調査で分かった。
調査は昨秋、同省が全国488カ所の医療機関に入院、通院する患者約11万7千人を対象に実施した。回収率は77%。
結果によると、カルテ内容を「ぜび知りたい」「病名・病状によっては知りたい」は、入院患者と外来患者がそれぞれ68%と69%だった。3年前の前回調査に比べて、13ポイントと5ポイント増えた。ところが、実際に要望して見せてもらったかを聞くと、「ある」は入院、外来とも9%だった。カルテを見たい理由は「治療への理解を深めたい」が最も多く、入院43%で外来48%。「病名、病状などについて本当のことが知りたいから」が27%と21%で続いた。

昭和大論文問題 調査委、捏造を否定

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昭和大学医学部(東京都品川区)脳神経外科の阿部琢巳教授(44)が架空症例や事実と異なる内容を入れた論文を作成し、国内外の学会誌に発表していたと指摘されている問題で、学内の調査委員会(委員長・片桐敬医学部長)は8日、一部錯誤が認められたが、架空症例や虚偽による論文捏造は認められなかった」とする調査結果をまとめた。論文に虚偽記載などがあると報じた朝日新聞の記事に対し、大学として謝罪と訂正を求める文書を送付する、としている。
調査委は学内の教授8人と顧問弁護士1人の計9人で構成され、計4回委員会を開いてきた。
教授の当初説明と隔たり
発表された調査結果は、朝日新聞の取材に対して、先月12日に阿部氏自身が説明した内容と大きく食い違っている。調査委が明らかにしなかつた点もある。
阿部氏が架空症例を載せたと認めていた論文は2本ある。
1本目は97年11月号の日本脳神経外科学会誌に発表された脳下垂体腫瘍を段階的に取り除く手術に関する論文。阿部氏は7例のうち1例については、根拠となる文書やカルテを示すことが出来ず、架空であると認めていた。もう1例についても、実際には1回しかしていない手術を2回したことにしたと認めていた。
阿部氏は「論文の審査官から、症例数を増やせないかと言われたのがきっかけだった」と取材に答えていた。
これに対して、学内の調査委は「この2例は阿部教授が他の施設で手術したもので、架空や水増しはない」と説明。施設名については言えない」と答えなかった。
2本目は01年5月号の「脳神経外科ジャーナル」に発表された、腫瘍を超音波で吸引する器具を使った手術に関する論文。阿部氏は、4例のうち1例が架空ではないかと取材で指摘され、当初は38歳の男性であると主張した。しかし、論文に記載された平均年齢とつじつまが合わず、「架空と言われても仕方ない」と認めた。
調査委は「この症例は65歳の女性」と全く別の症例を挙げ、「手術記録やカルテで確認された」と説明。「性や平均年齢に誤記があったため、著者(阿部氏)に訂正を雑誌に掲載するよう求めている」とした。
阿部氏が事実と異なる記載をしたとされる論文は3本ある。
鼻の付け根奥の骨の底から髄液が漏れないようにセラミックのプレートでふたをする再建手術に関して、論文では「髄液漏れなどの合併症は1例も認められていない」とした。だが実際には2回手術し直しても漏れを防げない症例があった。
調査委の報告は「もともと髄液が漏れていたので併発したのではない」とした。
また、実際には昭和大病院の一般病棟で院内感染による敗皿症で亡くなったのに「ホスピスで死亡」とした論文については、「ホスピスとは緩和治療の状態を表現している。敗皿症は論文の趣旨とは関係ない」とした。
阿部氏は、取材に対しては「外国の論文ではホスピスで亡くなったという例が多いので、その方がいいと思った」などと話していた。先月14日の調査委発足後、阿部氏は取材に応じていない。
阿部氏の論文をめぐっては、日本脳神経外科学会も独自に調査委を設け、現在、事実関係を調べている。

東北大、寄付金220万円返還今週中にも3病院に

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東北大医学部が宮城、岩手、福島の各県の三つの自治体病院から、関連財団を通さずに寄付金を受け取っていた問題で、東北大は8日、97〜00年に受け取った計220万円を病院側に返還することを決めた。自治体から国への寄付を禁じている地方財政再建促進特別措置法に抵触すると判断した。病院側は受け取る姿勢を示しているといい、大学側は今週中にも、受け取った同額を国庫から返還する方針。
東北大によると、医学部の関連財団「艮陵医学振興会」を通さずに受け取ったのは、岩手県金ケ崎町の町国民健康保険金ケ崎病院から97〜99年度に計150万円▼宮城県鹿島台町の町国民健康保険病院から00年度に30万円▼福島県いわき市の市立総合磐城共立病院から97〜00年度に計40万円。研究助成などの名目だった。東北大は、「今後はチェック態勢を強化したい」と話している。

医療事故防げ医師会、対策を発表

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日本医師会(坪井栄孝会長、16万人)は8日「患者の安全確保に資する医療事故防止策」をまとめ、発表した。
「医療事故を繰り返すなど、職業倫理観の欠加した医療従事者などが問題」とし、改革や検討課題として?ケース次第では独自調査しし、事故を起こした会員を指導?指導を受け入れない場合は会員資格停止などの処分もする?生涯教育の義務化−などを挙げた。

投与の鎮静剤、10倍 業務致死容疑 看護師を書類送検 足立の85歳死亡

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東京都足立区の東和病院に入院中の女性(当時85)が6月、鎮静剤を注射された後に死亡した事故で、警視庁は4日、女性看護師(33)が量を多く間違えて注射したことが原因として、この看護師を業務上過失致死容疑で書類送検した。
綾瀬署の調べでは、看護師は6月11日午後3時半ごろ、磁気共鳴断層撮影(MRI)検査の際、この女性に適量の10倍の鎮静剤を注射し、薬剤性ショックなどで約1時間半後に死亡させた疑い。
鎮静剤は、麻酔剤2ミリリットルと生理食塩水10ミリリットルを混ぜてつくった。10分の1の1.2ミリリットルが適量だったのにすべてを使った。注射する時には主治医を呼ぶよう指示されていたが、看護師は連絡せずに注射したという。調べに「早く検査を終えてしまいたい一念でやってしまった」と話しているという。
東和病院は「事実関係がよくわからないので、コメントできない」と話している。

東北大医学部 財団通さず寄付受領 3自治体病院から150万円

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東北大医学部の関連財団「艮陵医学振興会」に東北5県の自治体や公立病院から多額の寄付金が寄せられている問題で、医学部が98〜00年度、宮城、岩手、福島の各県の自治体病院から、財団を通さずに計150万円を受けていたことがわかった。地方財政再建促進特別措置法では、自治体から国への寄付は原則的に禁じられている。
朝日新聞の情報公開請求に対し、東北大が開示した98〜02年度の「奨学寄付金受入決定内訳書」などで明らかになった。
開示された資料などによると、岩手県金ケ崎町の町国民健康保険金ケ崎病院は98、99年度、各50万円の計100万円▽宮城県鹿島台町の町国民健康保険病院は00年度、3回に分けて各10万円計30万円▽福島県いわき市の市立総合磐城共立病院は99、00年度に各10万円計20万円を、研究助成などの名目で寄付した。
寄付が同法に触れる可能性について、総合磐城共立病院は「法への抵触は免れないと思う」。鹿島台町国保病院は「抵触するかどうかを調べている」としており、国保金ケ崎病院は「法に抵触するかどうかは関係当局の判断を待ちたい」と話している。
東北大医学部は同法に違反している可能性を認め、「あり得ないことが起きており、驚いている。調査委員会で今後のシステムのあり方を検討したい」と話している。

昭和大発 医学部論文捏造 教授が握る医局人事 就任後すぐ「反対派」異動

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昭和大医学部脳神経外科の阿部琢巳教授が論文に架空の症例を加えた問題で、学内の調査が続いている。阿部氏は昨年5月、講師から助教授を飛び越えて教授になった。42歳という異例の若さだった。阿部氏は朝日新聞の取材に対し、論文の数を意識し始めたのは90年代後半と答えている。教授の座を意識し始めた時期でもあった。そこまでして手に入れたかった教授というポストとは何なのだろう。
多くの医局員が象徴的な場面として覚えている出来事がある。98年10月の教授回診の朝だった。
当時の教授が、医局員が控える部屋に見知らぬ医師を従えて入ってきた。「今日から助教授になってもらう先生です」紹介された医師は教授と同じ日本医大から来た医師だった。
前任助教授は闘病生活を送っていて不在が続いていた。新たな助教授出現に、多くの医局員は戸惑った。3年半後に教授の定年を控え、だれが助教授になるかで、次期教授をめぐって医局の勢力地図が塗り替えられるからだ。
当時、筆頭講師として助教授の仕事を肩代わりしていた阿部氏も戸惑ったようだ。先輩医局員に電話をかけている。「どうしてぼくじゃ、だめなんでしょうか」
昭和大の生え抜きの阿部氏は、取材に対して「外の大学から助教授が来たことで、負けたくない気持ちがあった」と認める。脳神経外科の医局ができた68年以来、昭和大出身教授はまだ一人もいなかった。
阿部氏が、架空の症例を加えたことを認めた論文のひとつは00年7月に投稿されている。虚偽の記載をした論文も01年1月の投稿だ。ポストへのあせりがこのころ、良心を曲げても論文量産へと駆り立てていったのかもしれない。
教授選には11人が立候補。過去の論文などの審査を経て、昭和大出身の阿部氏と日本医大出身の助教授、東大出身の医師の計3人が侯補となった。昭和大医学部の全主任教授と関連病院の院長ら約40人による投票になり、1回目は助教授が阿部氏を上回った。しかし決選投票で阿部氏が数票差で逆転。43人の医局員の人事権を握るトップに立った。
その晩、大学近くの小料理屋で開かれた祝宴では、人事のことが話題となった。「お前が教授になるのを反対した医局員の首を切るな」。先輩医局員らが口々に諭したという。出席者のひとりは「教授選のしこりを残してはいけないと思った」と振り返る。だがしこりは残った。教授になってすぐ、阿部氏は医局員を1人ずつ呼び出した。「大学残って一緒に仕事をする気がありますか」目指す方向が違うと、複数の医局員が医局を去った。阿部氏と反目していた中堅医師の一人は、自分の人事について阿部氏に「医局の判断にお任せします」と答えた。数カ月後、阿部氏から関連病院を紹介されこれに従った。別の中堅医師も同じ道をたどった。この医局に30年以上在籍する医師は「教授が決める人事は実力ではなく、好き嫌いの世界。医局員の人生を棒にふらせる権力が教授にはある」。
昨年3月、阿部氏と入れ替わりで退任した教授は毎年、新年会を自宅で開いていた。だが現役を退いた途端、医局員は遠ざかった。年賀状が減った。忘年会にも呼ばれない。「手のひらを返したようだ」とこぼす。ある医局員は「教授をやめれば、ただの人」と打ち明ける。
取材に対し、架空症例を加えたことについて「忸怩たる思いがあった」と話していた阿部氏は、大学の調査委員会には「記載の誤認や誤記があったかも知れないが、捏造ではない」と否定した。教授職にとどまる意向のようだ。(岡崎明子、蔭西晴子)

腸洗浄の男性死亡 高知の病院

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高知県宿毛市の県立幡多けんみん病院で、重い便秘症状を訴えて入院した70代の男性が、経口の腸管洗浄剤の投与を受けた直後に強い腹痛を訴えて死亡していたことがわかった。山下邦康院長が29日記者会見し、洗浄剤の副作用で男性が腸閉塞を引き起こしていたことを明らかにし、「投与後の処置に問題があった。副作用に気づくのが遅れ、開腹手術などの対応がとれなかった」とミスを認めた。
山下院長によると、この男性は26日に入院。翌27日朝に便秘の原因を調べる内視鏡検査を受ける際、約1.8リットルの水に溶かした粉末状の経口腸管洗浄剤100グラムを服用した。ところが直後から腹痛を訴えて容体が急変、心肺停止状態になったという。死因は腸閉塞だった。
山下院長は「医師らも情報について認識していたが、患者の容体変化に適切な対応がとれなかった」と遺族に謝罪した。

豊胸手術ミス植物状態 東京地裁1億7000万円賠償命令

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豊胸手術を受けた際、ずさんな全身麻酔で低酸素脳症に陥り植物状態になったとして、埼玉県内の20代の女性と元夫が、美容外科医院の医師に損害賠償を求めだ訴訟で、東京地裁は28日、ほぼ請求通り1億7051万円の支払いを命じる判決を言い渡した。前田順司裁判長は、医療ミスの責任追求を逃れるため、医師がカルテなどを捏造し、救急搬送先の病院での適切な治療を妨げたと指摘。「医師にあるまじき悪質な行為に終始し、責任は極めて重い」と非難した。
賠償を命じられたのは東京都渋谷区神宮前の「アクアクリニック東京本院」を経営する布施信彦医師。同医院は、雑誌の広告などで「高度の麻酔技術で針を刺す痛みすら感じず、手術後も痛みがない」などと宣伝していた。
判決によると、女性は01年4月、代金126万円で豊胸手術を受けた。麻酔医や看護師は立ち会わず、布施医師は手術の危険をまったく説明しないまま、1人で麻酔と手術をした。手術後、意識が戻らず、震えや体の硬直が起こり、救急車で大学病院に運ばれたが植物状態のまま回復の見込みがないという。
裁判では、手術開始−終了−救急車要請の時刻が、布施医師作成のカルテと大学病院の記録とで全く食い違うことが明らかになった。
前田裁判長は?証拠保全手続きで裁判官が医院に足を運びカルテなどの提示を求めたのに「自宅にある」などと拒んだ?後日提出したカルテは英語表記や略語がなく、不自然と指摘。「手術を終えて29分後には救急車を呼んだとするカルテは責任逃れのための捏造で、実際は2時間41分の間、適切な治療などの措置を取らずに放置し、麻酔管理に過失があった」と結論づけた。

聖路加国際病院 手術中、くも膜下出血 55才男性、意識不明に

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聖路加国際病院(東京都中央区)で脳動脈瘤に詰め物を入れて出血を防ぐ手術を受けた男性(55)が、手術中にくも膜下出血を起こし、意識不明の重体に陥っていることが28日、わかつた。病院は同日会見を開き、事故調査委員会を設置し、原因究明中であると発表した。
手術は21日、放射線科部長(63)と2人の医師が実施。足の付け根から動脈瘤までカテーテルを通してコイルを詰めるめる「コイル塞栓術」と呼ばれる方法で手術中、くも膜下出血を起こしたという。
原因として病院側は、1.コイルにより動脈瘤が破裂した。2.カテーテルが血管を傷つけた−の二つの可能性を挙げた。
放射線科部長は、約100例の脳動脈瘤手術の経験がある。桜井健司院長は「誠意を持って対応したい一と話している。

はしか接種「生後15カ月内」に 厚労省、1才児対策強化

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はしか(麻疹)ワクチンの予防接種について、厚生労働省は28日、予防接種実施要領を見直して、接種時期の目安を現行の「生後12カ月〜24カ月から「生後12カ月〜15カ月」に短縮し、市町村へ通知した。早めに接種することで、はしかに最もかかりやすい1歳児の流行を減らす狙いだ。また、1歳児の接種率が実態を反映していないため、接種率の算定方法を近く改め、年齢別の厳密な調査を導入する。
はしかワクチンは予防接種法による定期接種の一つ。同法では生後12カ月〜90カ月未満の接種が公費負担の対象となるが、厚労省は予防椄種実施要領で生後12カ月〜24カ月に接種するよう市町村を通じて勧めてきた。
しかし、1歳代の予防接種率は現在、50%程度。厚労省の感染症発生動向調査では、患者数は1歳代が一番多く、平均入院率は40%と高い。同法の対象となる12カ月を迎えたら、なるべく早く接種をすることによって流行を防げるよう、接種時期の目安を15カ月までにした。即日、実施に移してもらう。
予防接種の機会を年間2回などに限定している自治体には、体制を見直してもらう。
一方、同省は「1歳代前半の接種率95%以上を目標にしているが、国の現在の接種率算定方法は、1年間に公費負担で接種した子ども数を、1歳代の人口で割る方式。このため、2歳から7歳半までの接種児も入ってしまい、接種率が「実際よりかなり高く出ている」(厚労省)。実際、01年度の接種率は105.8%という奇妙な数字となっている。新たな算定方式は、年齢階層ごとに実施率を算出する。予防接種は市町村の自治事務のため、総務省との協議が整い次第改める。

小児科医が微増 高齢化も歯止め 厚労省02年調査

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小児科を専門とする医師は微増し、医師の高齢化率に歯止めがかかっていることが、28日発表された厚生労働省の02年調査で分かった。一方で「内科小児科」などと複数の診療科を掲げる医師は減る傾向にある。
同省は医師法にもとづいて全医師に対し、従事する診療科や勤務地などの報告を2年ごとに求めており、02年末現在の結果をまとめた。
それによると、02年に小児科を専門あるいは主に診ていると報告した医師は計1万4481人で、前回調査の00年に比べて2.3%増えた。平均年齢は00年と同じ47.6歳。98年に47.9歳まで高まった平均年齢に歯止めがかかった形だ。

腹腔鏡手術ミスで?死亡 福島・猪苗代

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福島県猪苗代町の県立猪苗代病院で、胆のう摘出のため、腹腔鏡手術を19日に受けた60代の男性患者が出血性ショツクで22日に死亡していたことが28日、わかつた。この手術は腹部に小さな穴を開けて内視鏡や器具を入れ、モニター画面を見ながら患部を摘出する。医師が過って器具で動脈を傷つけたとみられる。病院側から届け出を受けた県警は、業務上過失致死の疑いもあるとみて関係者から事情を聴く方針。

インターフェロン 副作用で脳梗塞 厚労省注意喚起

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B・C型肝炎の治療に使われるインターフェロン製剤や併用療法で使われるリバビリンを投与後、副作用と見られる脳硬塞となり、内1人が死亡した例があるとして、厚生労働省は27日、計6種類の製剤すべての添付文書に、脳梗塞を重要な副作用として記載するよう製薬会社8社に指示した。併せて医師らへの注意喚起も求めた。
指示対象はシェリング・プラウ、住友製薬など。同省に入つた報告では、C型慢性肝炎のため約1カ月間の投与を受けていた50代女性が、脳梗塞で倒れてまもなく死亡した。ほかにも投与十数日〜数カ月後に脳梗塞が起こった患者が計27人おり、同省は同製剤投与との関連も否定できないと判断した。

SARS感染1時間で判定 検査キツト承認申請

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再流行が懸念されている新型肺炎SARS対策で、感染の有無を約1時間で判定できる検査キットを国立感染症研究所などと共同開発したとして、検査薬メーカーの栄研化学(東京都)は27日、厚生労働省に製造承認を申請した。同省は優先的に審査して、早ければ年内にも成田や関西といった国際空港の検疫所に配置する予定だ。

厚労省、医薬品・医療用具等安全性情報195号を公表

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厚生労働省は11月27日、医薬品・医療用具等安全性情報195号を公表した。今回、抗ウイルス剤のリバビリンに、脳梗塞などの副作用情報が追加されるなど、9剤について、重要な副作用などに関する改訂情報と関連する参考文献、改訂の根拠となった症例に関する情報が掲載された。また、解熱鎮痛消炎薬のアセメタシンなど9剤について、使用上の注意の改訂についての情報が掲載された。
以下の9薬剤について、重大な副作用に関する表記の追加、改訂が行われた。概要を次のとおり。
1.アジスロマイシン水和物
販売名:ジスロマック細粒小児用ほか(ファイザー)。
重大な副作用など:QT延長、心室性頻脈(Torsades de pointesを含む)など。
2.インターフェロンアルファ(NAMALWA)
販売名:スミフェロン300ほか(住友製薬)
重大な副作用など:貧血、赤芽球癆、脳梗塞、皮膚潰瘍、皮膚壊死など。
3.インターフェロンアルファ-2a(遺伝子組み替え)
販売名:キャンフェロンA300ほか(武田薬品工業、中外製薬)
重大な副作用など:脳梗塞
4.インターフェロンアルファ-2b(遺伝子組み替え)
販売名:イントロンA注射用300ほか(シェリング・プラウ)
重大な副作用など:肺水腫、不整脈、脳梗塞、皮膚粘膜眼症候群など。
5.インターフェロンアルファコン-1
販売名:アドバフェロン注射液1200ほか(山之内製薬)
重大な副作用:脳梗塞
6.インターフェロンベータ
販売名:IFNβモチダ(100万IU)ほか(持田製薬ほか)
重大な副作用:心筋梗塞、脳梗塞
7.塩酸セベラマー
販売名:フォスブロック錠250mgほか。(麒麟麦酒ほか)
重大な副作用:腸管穿孔、腸閉塞
腸閉塞の患者に対しては、腸管穿孔を起こすおそれがあるので、禁忌とされた。腸閉塞の発症例と腸管穿孔による死亡例が記載されている。
8.クエン酸マグネシウム
販売名:マグコロールPほか(堀井薬品工業ほか)
重大な副作用:腸管穿孔、腸閉塞、虚血性大腸炎、高マグネシウム血症
使用禁忌の対象として、消化管に閉塞のある患者、またはその疑いがある患者が追加された。
9.リバビリン
販売名:レベトールカプセル200mg(シェリング・プラウ)
重大な副作用:脳梗塞、無顆粒球症、汎血球減少、間質性肺炎、不整脈、敗血症など。
高血圧症の合併があるC型慢性肝炎患者に対して投与157日目に脳梗塞出現した症例が掲載されている。
195号にはこのほか、解熱鎮痛消炎薬のアセメタシン(販売名:ランツジールコーワ錠)など9件について、使用上の注意の改訂が掲載されている。詳しくはこちらまで

麻酔薬10倍量、死亡 京都の病院危篤の男性、延命で

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京都伏見区の松ヶ崎記念病院(梅原誼院長)で、脳幹梗塞で入院中の男性(73)が通常の10倍の量の麻酔薬を注射され、直後に死亡したことがわかった。伏見署が医療過誤の可能性もあるとみて調べている。同病院は22日に記者会見し、「ミスによる死亡の可能性があり、ご遺族には申し訳ありません」と謝罪した。
病院によると、患者の男性は01年1月に入院。意識のない状態が続いていた。今月15日に危篤状態になり、病院は家族に連絡。梅原院長が延命措置として麻酔薬のリドカイン製剤を注射するよう指示し、看護師(34)が10%溶液を10ミリリットル注射した。患者は5分後に心停止となり、心臓マツサージなどをしたが死亡した。通常は2%溶液を5ミリリットル注射するが、誤って10倍の量の薬剤を注射したという。
病院は事故で死亡した可能性があるとして遺族に同日謝罪し、伏見署に届けた。同署は遺体を司法解剖して死因を調ベ、10倍の薬剤を注射した経緯を確認している。
日本病院薬剤師会はりドカイン製剤の10%溶液は2%溶液との取り違えによる事故が起きやすいとして、病棟から撤去することなどを10月に呼びかけたが、松ケ崎記念病院は撤去していなかった。

山形新聞医療法に抵触も 「企画特集」掲載を中止 記事体裁の「広告」

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山形新聞は、10月末まで随時掲載していた病院の医療活動などを紹介する「企画特集」について、「医療法に抵触する恐れがある」として掲載を中止した。
特集は、昨年11月から計12回掲載され、6病院が登場した。1ページを使って病院の機能や活動を写真入りで詳しく紹介、医療関連会社の広告もあわせて掲載している。
一般記事のような体裁をとっているが、朝日新聞の取材に対し、同社はこの特集については「広告企画」と説明。しかし、病院側に対しては「記事と誤認させるようなまぎらわしい説明をしていた」という。
さらに、病院側には「広告料」としてではなく、企画料や掲載後に贈る紙面のパネル代などの名目で料金を請求、病院側も一部を除いて応じ、100万円を払ったところもあったという。
医療法は、医療機関が広告に掲載できる内容を、病院名や診療科名などに限定していることから、「医療法に触れるのではないか」との指摘があり、社内調査した結果、「同法に抵触する恐れがある」と判断した。
厚生労働省などによると、外観上は記事の形でも広告料を支払っているような場合は規制対象で、病院の写真も掲載できないという。

東京医大 骨髄検査後に心停止 「異常死」と警察に届け

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東京医科大学病院(東京都新宿区)で3月、検査のために骨髄を採取した70歳代の男性患者が直後に心停止状態となり、約2カ月後に亡くなつていたことがわかった。病院は「心停止の原因は不明」とし、「異常死」として新宿署に届けた。医療ミスかどうか結論は出ていないという。
20日夜、臼井正彦院長らが記会見して明らかにした。説明によると、男性は白血病の疑いがあり、診断のために胸骨から骨髄液を抜く検査を実施した。担当医は器具(針の長さ35ミリ、太さ2ミリ)を使った一般的手法で実施したが、男性は検査直後に心停止となり、4月下旬、昏睡状態のまま亡くなった。
医師は同様の検査を200例以上経験しており、手法にも問題点がみられなかったことから、病院は「予期せぬ心停止」と判断。死亡当日に新宿署に届け出たという。
病院は今月17日まで都と厚生労働省に報告していなかった。病院側は「他の業務に忙しく、報告を怠った」と話した。
同病院では今月、カテーテルの誤挿入で患者が脳死状態になった医療事故が判明、20日には左右の耳を間違えて切開した事故が発覚している。

左右の耳間違え切開 難聴の幼児に 東京医大でミス

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東京医科大学病院(東京都新宿区)で今年4月、難聴の幼児に「人工内耳」を埋め込む手術をした際、医師が右耳と左耳を間違えて切開していたことが、20日分かった。次に手術を受ける患者と勘違いした。手術途中に気づき、人工内耳は予定通りの耳に埋め込まれ、幼児の容体に問題はないという。東京都に医療ミスとして報告した。臼井正彦病院長らはこの日、記者会見して陳謝した。
病院側と都によると、手術を受けたのは、先天性の重度の難聴だった幼児。右耳の後ろを切開して人工内耳の体内器を埋め込む予定だったが、切開担当の医師は左耳の後ろを約4センチ切ってしまった。別の医師がこのミスに気づき、左耳の切開した部分を縫合し、右耳に埋め込んだという。
この幼児の手術の後にも、人工内耳の手術が予定されており、看護師がこの患者と勘違いして、左右取り違えて手術の準備をした。切開担当の医師はこの取り違いに気づかず、そのまま手術を始めてしまったという。病院は今月14日、この医療事故を東京都に報告した。
東京医大病院では今月、静脈に挿入する点滴用のカテーテルがうまく入らず、患者が脳死状態になった事故が判明している。病院側は12月1日から、予防策を実施する予定だという。
臼井院長は「あってはならない事故を起こしてしまった。理由はともあれ取り違いをしたことは事実。今後、詳細な調査と原因究明をし、周知徹底したい」としている。

京大病院 動脈損傷し?死亡 肺がん手術の女性患者

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京都大医学部付属病院(京都市左京区、田中紘一病院長)は20日、京都府内の肺がんの女性(63)の左肺を切除する手術の際に動脈から大量出血し、血管壁がはがれて血液が正常に循環しなくなり死亡した、と発表した。手術中に過って動脈を切った可能性もあるという。病院は同日、文部科学省や近畿厚生局、川端署に報告し、院外委員も含めた医療事故調査委員会を近く設置する。川端署は関係者から事情を聴くことを検討している。
記者会見した中村孝志・副病院長らによると、女性は今月12日、肺がんの手術のため入院。18日、がんのある左肺の上部を切除する手術後、肺を胸壁につないでいるじん帯を電気メスで切る最中に大量出血した。過って動脈を切った可能性もあるという。
止血処理でもなかなか出血は止まらなかった。人工呼吸器を付けたが、女性は19日に亡くなつた。手術を担当したのは同様の手術を18例経験している呼吸器外科の講師らだった。
中村副病院長は「このような事態が生じたことを心より謝罪したい」と述べた。

投薬ミス5日後死亡 秋田

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秋田県湯沢市の佐藤病院(佐藤恵一院長)の精神科で、女性患者が9月に別の患者の鎮痛薬を投与され、転院先の病院で5日後に死亡していたことが20日、分かった。湯沢保健所が同病院を立ち入り検査したほか、県警が遺体を司法解剖し、業務上過失致死などの疑いもあるとみて調べている。
同病院と県医務薬事課によると、9月3日朝、40代の准看護師が入院中の女性患者に、誤って別の入院患者用の鎮痛薬を投与。女性患者は4日午前1時ごろ、呼吸不全となり、同市内の別の病院に運ばれたが、8日午前、脳出血で死亡した。

心臓に傷?乳児死亡 神戸大病院カテーテル挿入中

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神戸大学医学部付属病院(神戸市中央区、横山光宏病院長)は19日、入院中の乳児に心臓近くの静脈にカテーテルを挿入する処置をしていたところ、血圧低下などの状態になり、3日後に死亡したと発表した。同病院はカテーテルで心臓を傷つけた事故の可能性があるとして家族に事情を説明し、文部科学省や生田署に報告した。同署は業務上過失致死の疑いもあるとみて、事情を聴く。
この日記者会見した横山病院長らによると、乳児は今月上旬に口の中に腫瘍があるために来院し、悪性と珍断された。病院は抗がん剤を点滴するために心臓に近い静脈にカテーテルを入れたところ、処置中に脈が遅くなり、血圧が低下。開胸して血液循環を補助しようとしたところ、心臓の右房壁に約3ミリの穴があき、心臓周辺に血液がたまって心機能に障害が起こる心タンポナーデを発症していたという。

国保水沢病院、東北大側へ寄付 500万円「医師確保のため」

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東北大医学部の教授や卒業生らでつくる財団法人「艮陵(ごんりよう)医学振興会」が昨年度、医師を派遣している公立病院から多額の寄付を受けていた問題で、500万円を寄付した岩手県水沢市の国保総合水沢病院は朝日新聞の取材に対し、寄付の理由について「医師の引き揚げを勘弁してほしかったからだ」と説明した。医師の引き揚げで病院の経営が立ちゆかなくなることを恐れたためで、「必死の思いだった」という。
「常勤医1人で収入2億円 5人帰任/赤字20億円超
同病院は昨年秋、同財団に初めて500万円を振り込んだ。この際、目的の教授に寄付金が届くように、同財団に出す寄付金申込書の余白に教授と教室の名前、金額を鉛筆で書き込んだという。鉛筆で書いたのは「後で消せるように」というのが理由だった。
内科や外科など14の診療科がある同病院は、常勤医師22人のうち12人を東北大からの派遣に頼っている。しかし、年度末になると、大学側から「来月から医師を引き揚げる」などと電話があり、医師が大学に戻ってしまうケースが相次いだ。
97年には耳鼻咽喉科、00年には神経内科、01年には眼科、02年に産婦人科と泌尿器科で、計5人の常勤医師が大学に戻った。この影響で、これらの診療科の担当は週に1、2度通ってくる非常勤医師となり、急患や入院患者を受け入れられない状況に陥ったという。
同病院の昨年度の単年度赤字は約3億7千万円で、累横赤字も20億円を超えている。しかし、年間1500万〜2千万円の報酬を支払って常勤医師を1人置けば、1億5千万〜2億円の収入が見込める、という。「500万円を寄付しても、十分に補える」と言い、寄付後は、医師を引き場げられることはなかった。
公立病院から同財団への寄付とは別に、同大の吉本高志学長や医学部教授ら10人が、釜石市民病院(岩手県釜石市)から現金計2300万円を教授室などで直接受け取っていたことが分かっており、「仙台市民オンブズマン」が仙台地検に同学長らを収賄容疑で告発、受理されている。
地方自治体から国立大への寄付は、地方財政再建促進特別措置法で、住民福祉の増進などの場合に限り、総務省との協議の上で認められる。
病院側は「市長や院長らが菓子折りを持って大学を何度も訪問したが、教授には『要望は聞いておきます』と言われただけ。県も27ある県立病院の運営で手いっぱいで、市立病院の医師確保まで手がまわらない。寄付でくい止めるしかなかった」と話している。
臨床研修必修化 派遣、さらに厳しく
地域の病院に医師を派遣していた大学の医局側が、派遣を中止したり、常勤から非常勤に格下げしたりする傾向は「全国的に見られる」(厚生労働省)という。背景には、04年4月から始まる医師免許取得後の臨床研修必修化や若い医師の都会や専門医志向がある。
免許を取ったばかりの医師は現在、大学の医局などに入局し研修をする。医局が事実上、医局員の人事権を持ち、関連病院へ派運してきた。
しかし、臨床研修制度が始まると順番で各科を回って研修を受けるため、2年間は医局に配属されない。そのため、数年前から「大学の医局で人が足りなくなる」(東北地方の医大)との懸念から、中小病院への医師派遣を取りやめたり、非常勤に切り替えたりする現象が起きていた。
宮城県内のある病院長は、「地方では高齢化が進み、骨粗鬆症が分かる整形外科医が必要だが、医局が派遣してくれない」と嘆く。中小病院での医師不足が顕著な北海道・東北は、年収2千万円でも確保できないのが現実だ。
ただ、教授の指示一つで派遣できなくなってきているのも事実だ。厚労省は昨年10月、職業安定違反の恐れがあるとして、「医局長からの指示・命令ではなく、自由意思に基づき、関連病院に就職するように」との通知を出した。

臨床研修必修化 派遣さらに厳しく
地域の病院に医師を派遣していた大学の医局側が、派遣を中止したり、常勤から非常勤に格下げしたりする傾向は「全国的に見られる」(厚生労働省)という。背景には、04年4月から始まる医師免許取得後の臨床研修必修化や若い医師の都会や専門医志向がある。
免許を取ったばかりの医師は現在、大学の医局などに入局し研修をする。医局が事実上、医局員の人事権を持ち、関連病院へ派運してきた。
しかし、臨床研修制度が始まると順番で各科を回って研修を受けるため、2年間は医局に配属されない。そのため、数年前から「大学の医局で人が足りなくなる」(東北地方の医大)との懸念から、中小病院への医師派遣を取りやめたり、非常勤に切り替えたりする現象が起きていた。
宮城県内のある病院長は、「地方では高齢化が進み、骨粗鬆症が分かる整形外科医が必要だが、医局が派遣してくれない」と嘆く。中小病院での医師不足が顕著な北海道・東北は、年収2千万円でも確保できないのが現実だ。
ただ、教授の指示一つで派遣できなくなってきているのも事実だ。厚労省は昨年10月、職業安定違反の恐れがあるとして、「医局長からの指示・命令ではなく、自由意思に基づき、関連病院に就職するように」との通知を出した。