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狂犬病ワクチン足りない! 予防接種中止の病院続出 indexへ

 36年ぶりに、国内で死者が出た狂犬病のワクチンが全国的に不足し、予防接種を一時的に取りやめる病院が続出している。フィリピンに滞在した2人が11〜12月、狂犬病にかかって亡くなり、年末年始の海外旅行シーズンを前に接種する人が増えているためだ。予防用は1カ月前から最低2回打つ必要がある。ワクチンは治療にも使うが、治療開始時期が生死を分ける。専門家は「接種していなくても海外で犬やコウモリにかまれたら、すぐに現地の病院で治療すれば大事に至ることはほとんどない」という。
 「渡航前接種の増加により、ワクチンの在庫が無くなりました」
 成田空港検疫所は27日、新たに入荷する2月上旬まで、ワクチン接種を一時的に中止するお知らせをホームページに載せた。治療に使う緊急用は確保しているが、医師の診断が必要だ。
 長崎大学病院の海外旅行外来でも、今月中旬から新規のワクチン接種を取りやめた。
 「インドネシアに社員20人が行くので事前に打っていきたい」との相談もあったが断った。宮城啓医師は「もし犬にかまれたら、傷口を洗い流して早めにワクチンを打てればまず大丈夫。現地では外国人がかかる医療機関をあらかじめ探しておいてほしい」と説明している。
 仙台検疫所では接種希望者に、「現地で動物をいじったり、大病院から遠い地方に行ったりしない限り、通常の短期の旅行で接種は必要ない」と説明、必要最小限しか接種していないという。
 予防接種を見合わせる病院は北海道や東京、大阪などでも出ている。長年、患者の発生がなく、供給が少なかったところに、急に需要が増えたため、ワクチンが不足したとみられる。
 狂犬病は発症すると、致死率がほぼ100%。潜伏期は通常1〜3カ月で、高熱やまひ、水や風を怖がるなどの症状が出る。予防用ワクチンは1カ月あけて2回、6〜12カ月後に3回目を打つ。かまれた後のワクチンは発症を抑える効果があり、予防用接種者は最低2回、未接種者は6回打つ必要がある。

「ノロ感染客、店は断れる?」 厚労省が対応マニュアル indexへ

 ノロウイルスの大流行を受けて、厚生労働省は、年末年始に大勢の人が集まるホテルや旅館、飲食店などで感染が拡大するのを防ぐ「対応マニュアル」をつくり、都道府県や業界団体に通知した。「感染している客の宿泊を断れるのか」などの問い合わせが保健所に殺到し、対応に苦慮していたのを受けてのもの。飲食店や宿泊業者から寄せられた相談例を分析し、対応策をまとめた。
 人の出入りが多い宿泊施設や飲食店などで、ウイルスが大量に含まれる患者の排泄(はいせつ)物や嘔吐(おうと)物が適切に処理されないと、感染が広がりかねない。下痢や腹痛などを訴えて感染が疑われる客がいる場合、どう対応するべきか悩む業者も少なくないという。
 厚労省が情報収集したところ、長野県では飲食店から「感染した従業員を休ませたが、いつから復帰させていいのか」との問い合わせが相次いでいた。大阪府では、高齢者や障害者の福祉施設から「共同浴場に感染者と健康な人を一緒に入れても大丈夫か」という相談が多く寄せられていた。
 全国的には、旅館やホテルなどから「客が吐いたものや便から感染が広がっても、営業停止の対象になるのか」「感染が疑われる客の宿泊を断れるのか」などの問い合わせが多かったという。
 こうした問い合わせを参考に、マニュアルは、消毒や感染予防、宿泊関係、就業関係など8項目についてQ&A形式で対応を紹介。感染が強く疑われる宿泊者には「施設の利用を控え、医療機関を受診するよう勧めることが望ましい」と指導。患者の汚物などに触れる場合は、ガウンやゴム製の手袋、マスクなどを着用し、衣類につけないことが重要としている。
 また、ノロウイルスは、発症後も1週間から1カ月程度、ウイルスの排泄が続くため、従業員が感染した場合は、症状がなくなってもしばらくは食品の取り扱いを控えるか、使い捨て手袋などを使用するよう、求めている。

75歳以上の外来医療、「定額制」を導入へ 厚労省 indexへ

 厚生労働省は28日、75歳以上のお年寄りの外来診療について、医師の治療を1カ月に何回受けても医療機関に支払われる診療報酬を一定にする「定額制」を導入する方針を固めた。寝たきりの在宅患者への往診など、高齢者向け医療の一部ではすでに定額制が導入されている。厚労省はこれを外来医療へと拡大して医療費の抑制を図る考えだ。高齢者に対して、必要度の高くない医療が過剰に行われているとされる現状を改善する狙いだが、患者の受診機会の制限につながる可能性や、医療機関がコストを下げようと必要な医療まで行わなくなる危険もあり、今後、適用する疾病の範囲や条件を慎重に検討する。
 06年の医療改革で、75歳以上を対象にした新しい保険制度を08年に創設することが決まっている。厚労省は来年3月までに、ここに盛り込む独自の診療報酬体系の基本方針を出す予定で、外来診療の定額制導入は、その柱となる。
 社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の特別部会で1月から本格的に検討を始める。患者は、高血圧や心臓病、関節障害など、特定の慢性疾患の医療機関をあらかじめ選ぶ。そこで一定回数以上受診すると、それ以上は何回受診して投薬や検査を受けても医療機関が健保組合から受け取る報酬は定額とする方法などが検討される見込みだ。
 現在の診療報酬は、個別の診察や検査、投薬について細かく料金が設定され、それを積み上げて治療費が決まる「出来高払い」が基本。患者に多くの治療を行うほど医療機関の収入が上がる仕組みで、高齢者の外来医療では「過剰な診療で、医療費の増加や病院・診療所のサロン化を招いている」との指摘もある。
 75歳以上の医療費(04年度)は9兆214億円で、医療費全体の28%を占める。患部を温める簡単な治療を受けるため患者が1カ月に20回以上診療所に通うなどのケースもある。
 厚労省は、医療の質を保ちつつ定額制を導入することは可能とみるが、患者は選んだ医療機関に一定期間は通い続けることが求められ、いつでもどの医療機関でも受診できる自由が一部制限される。受けられる治療の回数が減ったりすることも考えられ、反発が予想される。
 また、同じ病気について患者が同時期に複数の医療機関を受診すれば、逆に医療費がふくらむ恐れもあり、重複受診を防ぐ仕組みも必要となりそうだ。

ノロウイルス患者、4週連続最多 伸び率は鈍化 indexへ

 大半がノロウイルスによるとみられる感染症胃腸炎の患者数が17日までの1週間で6万8950人に上り、1医療機関当たりでは22.8人と前週より0.6人増え、1981年の調査開始以来、4週連続で過去最多を更新したことが28日、国立感染症研究所が公表した定点調査で分かった。
 定点調査による患者数は、11月下旬からの4週間で26万人を超えた。ただ、1医療機関当たりの人数は、以前に比べ増加率が緩やかになってきており、同研究所は「流行がピークを迎えつつある」としている。(時事)

「骨髄提供者に10万円」計画、移植財団は抗議も検討 indexへ

 骨髄移植推進財団(東京)は28日、京都市の任意団体が骨髄移植のドナーを募り、実際に骨髄を提供した場合に10万円を支払う活動を計画しているとして、財団の骨髄バンク事業とは一切関係ないとする声明を発表した。来年1月にも厚生労働省と協議し、団体に事業内容の説明を求めたうえで、抗議なども検討するという。
 この団体は、京都市の自営業者や会社員ら約10人でつくる「デラピ」。現在、NPO法人の認可を京都府に申請中だ。
 団体は、骨髄移植推進財団が運営する骨髄バンクに登録するか、登録を予定する人を年会費5000円でインターネットなどで募集。実際にバンクに骨髄を提供した場合は、ドナーを経済的に支援するため、団体が10万円の一時金を支払う、としている。
 財団は「公平性、公共性、広域性をうたう骨髄バンク事業の基本理念に抵触する恐れがある」として、この団体と協力関係を結ぶことはないとしている。財団は「こうした活動は、結果として臓器売買を助長する可能性もある」と話している。

左右の足を取り違えて手術 長崎県立島原病院 indexへ

 長崎県島原市の県立島原病院(向原茂明院長)は28日、右大腿(だいたい)骨の付け根を骨折した患者の手術で、骨折していない左股関節を切開するミスがあったと発表した。
 病院の説明によると、患者は島原市内の80代女性。転倒して骨折し7日に入院し、15日に人工骨を挿入する手術を受けた。入院時に外来担当医が、電子カルテに患部を「左」と誤入力し、執刀の整形外科医2人も手術部位の確認を怠ったという。
 手術開始から約30分後、医師が左右を取り違えたことに気づいて縫合。患者の家族に謝罪した。26日に患部を再手術し、経過は良好という。
 向原院長は「手術前に、口頭で患者に部位を確認することになっているが、認知症のためできなかった。二度とミスが起きないように確認手続きを改善した」と話した。

研究用に卵子提供依頼 厚労・文科省合同委が可否検討 indexへ

 生殖補助医療の研究指針づくりに取り組む文部科学省と厚生労働省の合同専門委員会が、体外受精で患者からインフォームド・コンセント(説明と同意)を得る際に、卵子を研究用に提供してもらう手続きの可否について検討する方針を固めた。07年1月中旬に開く会合で議論する。担当医への患者の気兼ねから、依頼が圧力と感じられる恐れもあり、公正さや透明性の徹底の確保が焦点になりそうだ。
 合同専門委メンバーで日本生殖医学会倫理委員長の石原理・埼玉医大教授(産婦人科)によると、日本では他人の不妊治療のために卵子を提供することは公式に認められていないが、定着している国は少なくない。英国などでは、研究用の提供も認められている。体外受精時に7〜8個採卵したうち、受精卵にして子宮に戻すのは1〜2個が一般的で、受精させない卵子数個を研究に提供してもらう。
 石原さんは「研究目的の提供は、同じように不妊に悩む人に提供するのと違って意義が実感しにくい。医療と研究の両方が同時に進むため、中立的なチェックの徹底なども課題になる」という。
 合同専門委では、こうした手続きを認める場合、医師側がお願いするのではなく、患者が自発的に卵子を提供することを申し出た場合だけに絞る可能性が高いが、委員の位田隆一・京都大教授(国際法・生命倫理)は「卵子が本当によい研究に使われるかどうかといった疑念を提供者が抱かないような対策が必要だろう」という。
 国の総合科学技術会議が生殖補助医療研究のための受精卵づくり、利用の指針の策定を厚労省などに求めている。第三者のボランティアによる卵子提供は原則禁止の方針で、卵子をどう確保するかが最大の焦点。指針対象を研究で扱った卵子を子宮に戻さない基礎研究に絞り、07年内に策定する見込みだ。
 向井亜紀さん夫婦らによって注目された代理出産や他人からの提供卵子による体外受精など、子を産むための生殖補助医療の指針整備のめどは立っておらず、研究指針が先行するいびつな状況に陥っている。

がん拠点病院、全都道府県に 118病院を指定 indexへ

 地域のがん治療の中心となる「がん診療連携拠点病院」について、厚生労働省の検討会は27日、これまで拠点病院が一つもない「空白県」だった秋田、兵庫の2県を含む36道府県計118病院の指定を承認した。来年1月にも厚労相が正式に指定する。拠点病院は全国で計286カ所となる。
 検討会は、36道府県から申請があった130病院について審議した。承認された118病院から更新分などを除くと、新たに107のがん拠点病院が増えることになる。
 がん拠点病院は、全国どこでも質の高いがん治療を受けられることを目標に、厚労省が01年度から整備している。緩和ケアや院内がん登録など一定要件を満たしていることが条件。厚労省は、全国約370の「2次医療圏」に最低1カ所ずつ拠点病院を設置するよう都道府県に求めている。

風評に配慮、カキ写真削除 厚労省のHP indexへ

 ノロウイルスの流行でカキの売り上げが減っているとして、全国漁業協同組合連合会(全漁連)が厚生労働省に風評被害を訴えた問題で、厚労省は26日、ホームページ(HP)の「ノロウイルスQ&A」を改訂した。カキの写真を削除したほか、「十分に加熱したカキを食べても問題ありません」との表現を加えた。
 全漁連の幹部らは22日、厚労省などを訪ね「消費者に正しい判断を促す情報提供を」と要望。原因食品としての「生カキ等の二枚貝」との表現や、加熱処理が殺菌に有効と説明する部分に掲載されていたカキの写真の削除を強く求めていた。
 厚労省は、「85度以上で1分以上加熱すれば感染性がなくなると伝えるのに、カキの写真を例示する必要はない」と判断し、削除した。原因食品のくだりは「生や加熱が不十分なカキ等の二枚貝」と改めた。
 HPでは、各地の漁連が衛生管理のために取り組んでいる自主検査の情報も見ることができる。
 厚労省によると、カキが原因とされたノロウイルスによる食中毒は、昨年は42件(505人)だったが、今年はこれまでに1件。厚労省は改訂について「必要な情報を加えるなど、被害の発生状況に即した内容に近づけた」と説明している。

人工呼吸器のチューブはずれ脳障害 神戸大付属病院 indexへ

 神戸大医学部付属病院(神戸市中央区)は27日、動脈瘤(りゅう)破裂で入院した兵庫県内の80代男性の治療中に人工呼吸器のチューブが外れ、低酸素症で重い脳障害が残る医療ミスがあった、と発表した。家族には経緯を説明して謝罪したという。
 同病院によると、男性は11月下旬、右ひざの動脈瘤破裂で入院。3日後、バイパスを作るなどの手術をしたが血流がよくならないため、同日、カテーテルを差し込んで血栓を溶かす治療をした。治療後、男性の顔が青ざめていることに医師が気づき、調べたところ、人工呼吸器のチューブが本体から外れていた。昇圧剤投与などの措置をしたが、男性は低酸素脳症のため、意識がほとんどない状態が続いている。
 同病院は、治療中に男性が乗った台を動かした際、チューブが外れた可能性があるとみている。チューブは10分程度外れていたとみられ、外部委員を含めた調査委員会で詳しい原因を調べる。
 春日雅人病院長は「男性の容体の変化に気づくのが遅れるなど不十分な点があった。男性とご家族に深くおわび申し上げる」と話した。

臨床検査事故23件 取り違えが最多 医療機能評価機構 indexへ

 検体検査や病理検査など臨床検査にかかわる医療事故が、今年9月末までの2年間に23件あったことがわかった。患者の取り違えが多く、大半の患者に障害が残ったという。財団法人「日本医療機能評価機構」(東京都)が全国約570(約20万床)の医療機関からの報告をまとめた。
 検体に張るラベルを間違えたため、別の患者の肺の一部を切除したり、乳房を切除したりするなど、がんの病理検査の検体間違いが3件。別の患者の採血結果の報告をもとに白血球の数が少ない患者に白血球低下の副作用が起こる抗がん剤を投与した例もあった。
 同機構は「確認を徹底して十分注意してほしい」と話す。同機構は医療体制やサービスの質などを審査する第三者機関。

病気腎移植、学会が統一見解策定へ 関係5学会 indexへ

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)らによる病気腎移植の医学的妥当性を検証している日本移植学会と日本泌尿器科学会は、新たに日本腎臓学会など三つの学会に呼びかけ、がんの腎臓を使うなどした「万波移植」について統一見解をまとめることを決めた。一部の例外的なケースを除き、基本的には容認できないとの内容になる見通しで、早ければ来年1月にも公表する方針だ。
 田中紘一・日本移植学会理事長の呼びかけで先週末、大阪市内で関係学会の理事と厚生労働省の担当者がこれまでの調査結果を踏まえて今後の方針を協議。個々の症例に即した具体的な調査が進む年明け以降、まとまって見解を示すことが必要との認識で一致した。
 この会議に出席した日本移植学会の幹部の一人は「現時点でも医学的常識から逸脱している例がいくつか見つかっている」と指摘する。がんで腎臓の摘出が必要な場合は通常、転移を防ぐために腎臓につながっている血管を縛り血流を止めてから摘出するが、万波医師らはそうした方法は取らず、移植を前提とした術式で摘出していたという。この幹部は「腎がんの治療目的での摘出ではないことは明らかで、標準的な治療とはかけ離れていると言わざるをえない」と話す。
 病気腎移植に関してはこれまで、外科医らでつくる日本移植学会と日本泌尿器科学会が対応してきたが、万波医師らが、薬物療法など内科的治療が一般的なネフローゼ症候群などの病気の腎臓を摘出して移植に使っていたことも明らかになっている。このため、両学会は内科医も加入している日本腎臓学会のほか、日本透析医学会、日本臨床腎移植学会にも参加を呼びかけることにした。

ファイザー、睡眠導入剤を自主回収 indexへ

 製薬会社のファイザー(東京都渋谷区)は25日、製造販売している睡眠導入剤「ハルシオン0.125mg錠」の自主回収を始めた、と発表した。有効成分が溶け出すのに規定以上の時間がかかり、体内への吸収も遅くなる可能性があるという。同剤は医師が処方する薬で、医療機関を対象に22日から回収を始めている。健康被害が発生する可能性は少ないという。

医療被曝紹介の冊子が好評 市民団体作成 indexへ

 コンピューター断層撮影(CT)検査などに伴う医療被曝(ひばく)について知ってもらおうと、市民団体「高木学校」(東京都)が小冊子「受ける? 受けない? エックス線CT検査」を作った。9月に1000部刷ったところ好評で、さらに3000部を増刷した。
 この冊子では、CTや陽電子放射断層撮影(PET)、マンモグラフィーなど放射線診療の種類や、放射線の単位「ミリシーベルト」などの用語について解説。日本放射線技師会が昨年から認定している「医療被ばく低減施設」も紹介した。
 CT検査1回で照射される放射線は、胸部X線検査の100倍以上になることもある。放射線診療が原因でがんになる可能性はよくわかっておらず、累積量に比例するとする考え方もある。
 検査を受けた場合、浴びた放射線量を記録できるように、健康保険証サイズの「医療被ばく記録手帳」も付録に付けた。小冊子は1冊300円で配布しており、ウェブサイトから請求できる。
 高木学校は「市民科学者」を育てようと98年、原子力資料情報室の代表を務めた故高木仁三郎さんが設立。今回の冊子は同学校が開いた市民講座の内容などをまとめた。「放射線は病気の治療に必要。CT検査を受けないのではなく、まずは医療被曝があるということを知ってほしい」としている。

細菌性髄膜炎、日本もワクチン承認へ indexへ

 厚生労働省は、重症率が高い乳幼児の病気、細菌性髄膜炎の主原因であるインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチン(商品名アクトヒブ)を承認する方針を固めた。26日の専門家による会議をへて、1月下旬にも承認される見通し。Hibワクチンは世界100カ国以上で承認されており、先進国で未承認なのは日本だけだった。
 厚労省などによると、細菌性髄膜炎の約6割はHibが原因。国内では年間、5歳未満の乳幼児1万人に1人程度がHibによる細菌性髄膜炎にかかると推定される。このうち5%が死亡し、25%に聴覚障害、てんかんなどの後遺症が残るという。
 初期診断や治療が難しいため、予防効果が高いワクチンが80年代後半から欧米を中心に承認され始めた。98年には世界保健機関(WHO)が乳児への定期接種を推奨する声明を出し、現在は、90カ国以上で公費負担などによる定期予防接種が実施されている。米国では予防接種の導入後、罹患(りかん)率が100分の1にまで減ったという報告もある。重い副作用は実質的にない。
 日本では罹患率が欧米の数分の一とされ、ワクチンの必要性がなかなか広まらなかった。03年3月にようやく、サノフィパスツール第一ワクチン(東京都)が新薬の承認を申請したが審査が進まず、05年6月には、日本小児科学会が厚労省に早期承認を要望していた。
 承認に時間がかかった理由について、専門家は「審査体制の人員不足に加え、製造過程で牛由来成分が使われることに極めて慎重だったのでは」とみる。
 承認後は当面、任意による接種となる。計4回の接種が必要で、3万円程度かかるとされる

受精卵使わずES細胞 国内で成功例相次ぐ indexへ

 受精卵を全く、あるいはほとんど使わずに、再生医療で期待される「万能細胞」を作ろうという研究が、国内で盛んに進められている。政府の総合科学技術会議は受精卵やクローン胚(はい)を「生命の萌芽(ほうが)」と位置づけており、宗教界の一部には受精卵などの使用に強い抵抗がある。受精卵を使わなければ、こうした生命倫理問題が回避できると期待されている。
 様々な組織や細胞になり得る万能細胞は、事故や病気で失われた機能を回復する再生医療の焦点だ。受精卵が分割を繰り返した「胚盤胞」を壊して作る胚性幹細胞(ES細胞)が代表格だ。
 だが、理化学研究所(神戸市)の若山照彦チームリーダーらは、マウスの未受精卵に化学物質で刺激を与えて分裂を起こさせ、未受精卵からのES細胞を作った。さらに、その細胞核を別のマウスの未受精卵の核と置き換えて、再びES細胞を作る「2段階方式」を編み出した。
 2段階目のES細胞が特定の神経などに分化する能力は、1段階目のES細胞の3〜4倍になった。未受精卵からのES細胞は、受精卵からのES細胞より分化能力が低いのが難点だったが、若山さんの2段階目は受精卵ES細胞の最大7割程度の分化能力を示した。
 一方、京都大再生医科学研究所の多田高・助教授らのグループは年明けにも、受精卵ES細胞に体細胞を融合させて、万能細胞にする研究を始める。すでにマウスでは成功している。この手法なら、受精卵の破壊は最初にES細胞をつくる時だけで済む。
 同じ再生研の中辻憲夫教授らは、未受精卵からのES細胞を別々に100株用意すれば、拒絶反応に影響するHLA型(人の白血球型)をほぼそろえることが可能だとする分析結果をまとめた。日本人の90%が、自分に合ったHLA型のES細胞からつくった細胞や組織を使うことで、拒絶反応の心配が少ない移植を受けられるという。
 中辻さんは「未受精卵からES細胞を作る研究は、米国でも積極的に進められている。今後、ES細胞バンクの設置が重要な課題になるだろう」と言っている。

白血球に血管再生促す働き 千葉大の研究で確認 indexへ

 腕から採血して集めた白血球の一種に、血管や心筋の再生を促す働きがあることが、千葉大の小室一成教授(循環病態医科学)らの研究でわかった。血管が詰まる病気で、脚の切断を迫られた患者の治療に使ったところ、症状が改善し切断を免れた人が少なくなく、心機能が回復した例もあった。新たな再生医療の方法につながる成果だ。
 再生医療では、骨髄の幹細胞が「血管を作ったり心筋細胞に分化したりする」と期待され、臨床研究が進められている。だが、最近、骨髄幹細胞には分化能力がないか、あっても治療に使えるほど効率的ではない、などと報告され、期待ほどの成果が出ていない。
 今回使った白血球の仲間は、単核球と呼ばれ、細菌などが体内に入った際にやっつける役割を担っている。小室さんらはこの単核球を集め、筋肉に注入すると骨格筋細胞が増え、それが血管新生を促す物質を出して血管ができていくことを基礎実験で突き止めた。
 そこで、脚の血管が詰まる閉塞(へいそく)性動脈硬化症や炎症などで同様の症状を起こすバージャー病の患者約50人に対し、腕の静脈から3時間かけ採血。取り出した単核球を1時間かけ脚に注入した。
 数週間後、痛みが和らいだり潰瘍(かいよう)が小さくなったりするなど7割の人で症状が改善し、26人が足首やひざから下を切断せずにすんだ。さらに13人は心臓の血流もよくなり、血液を送り出すポンプ機能の回復も確認できた。
 骨髄の幹細胞を採取しないですめば、患者に大きな負担をかける全身麻酔を使わないで、治療が可能になる。国立病院機構の矢崎義雄理事長(循環器内科)は「極めて興味深い結果だ。骨髄の幹細胞に分化能力があったとしても、高齢になると減るので治療に使うのは難しい。ただ、効果をきちんと判定する手法を確立する必要がある」と話している。

診療報酬過払い、05年度は60億円 厚労省発表 indexへ

 厚生労働省は22日、病院や診療所への指導・監査で判明した05年度の診療報酬の過払いが約60億6000万円あったと発表した。医療機関の請求ミスのほか、水増しなどの悪質なケースもあり、54施設と医師や薬剤師54人が、保険の指定取り消しや登録取り消し処分を受けた。
 総額は04年度よりも4億8000万円減ったが、医療機関の取り消しは6件増えたほか、保険医や薬剤師の取り消しも19人多かった。

未婚がん患者の卵子保存 不妊治療9施設が計画 indexへ

 がんの治療を受ける未婚女性の卵子を凍結保存し、将来の体外受精に備える試みを民間の9不妊治療施設が計画していることが分かった。実施申請を受け、日本産科婦人科学会(日産婦)も検討を始めた。若い女性のがん患者増加を背景に、患者の妊娠機能を温存する研究に関心が高まっており、対象を未婚者にも広げようという動きだ。多施設による本格的取り組みは、世界でも珍しい。
 臨床研究として計画を申請したのは国内約130の不妊治療施設でつくる「A―PART日本支部」(支部長=宇津宮隆史セント・ルカ産婦人科院長)。このうち、北海道や関東、九州などの9施設が参加する。
 計画では、白血病や悪性リンパ腫など、血液のがんと診断された15歳以上の未婚女性の卵子を凍結保存する。治療後の将来、パートナーが現れた時点で卵子を解凍、体外受精での妊娠率などを調べる。患者が未成年の場合は親の同意も求める。
 日産婦は現行の指針(会告)で、夫婦には卵子凍結を認めており、既婚の女性がん患者には従来も卵子保存の道があった。半面、未婚女性の妊娠機能温存に関しては考慮されていなかった。
 日産婦は21日の専門小委員会で計画を検討、さらに年明けには倫理委員会でも議論する予定だ。
 抗がん剤や放射線によるがん治療は正常な細胞や組織も傷つけやすく、がん治療を受けた女性の約6割が排卵が不規則になったりなくなったりする卵巣機能不全になったとの報告がある。治療前に卵子を保存しておけば、将来の妊娠率を高められる可能性がある。
 ただ、採卵のために一時、がん治療を止める必要があり、採卵の負担ががん治療に悪影響を及ぼす恐れも指摘されている。治療後に凍結卵子を使って出産した例は世界的にも知られていない。
 日産婦倫理委員長の吉村泰典・慶応大教授は「今がんにかかっている患者さんにとっては一刻を争う重要なこと。問題点をきちんと説明する仕組みさえ整えば、できるだけ早く承認すべきだと考えている」と言う。
 〈キーワード:卵子凍結〉 通常は体外受精のために採卵したものの、夫の精子が採取できなかった場合などに、卵子を無駄にせず保存する目的で使われる。最近は、自分の卵子を若いうちに採取・保存し、将来の妊娠に備える技術として注目を集めている。
 凍結卵子を使った体外受精による出産は86年、オーストラリアで最初に報告された。だが、卵子は凍結すると壊れやすく、通常の不妊治療では精子と合体させた受精卵にしてから凍結保存する例が大半を占めている。

子どものぜんそく増、虫歯は減 文科省の学校保健統計 indexへ

 ぜんそくにかかる子どもの割合が増える一方、虫歯のある子は減っていることが、文部科学省の学校保健統計調査(速報値)でわかった。新たに調査項目に入ったアトピー性皮膚炎は、幼稚園から高校までの各段階で2〜3%がかかっていた。
 健康状態の調査は、5〜17歳から22.5%に当たる約336万人を抽出して実施。21日に文科省が公表した。
 ぜんそくは、幼稚園2.4%、小学校3.8%、中学校3.0%、高校1.7%。いずれも、96年当時と比べて倍以上となった。アトピー性皮膚炎は幼稚園3.8%、小学校3.6%、中学校2.8%、高校2.2%だった。文科省ではこうしたアレルギー性疾患について本格的な調査を別途、進めている。
 中学生で虫歯がある生徒は59.7%で、84年にこの項目の調査を始めて以来、初めて6割を切った。12歳の平均虫歯本数(永久歯)は1.71本と、96年と比べて半分以下となった。文科省は「学校でのブラッシング指導や、家庭での虫歯に対する意識の高まりの効果を表しているのではないのか」とみている。

新型インフル診察用「陰圧テント」、厚労省が購入補助 indexへ

 厚生労働省は21日、新型インフルエンザが発生した際、臨時の診察室などになる「陰圧式テント」を公開した。室内の気圧を下げ、ウイルスの拡散を防ぐ。患者が感染しているかどうかを見極める時などに利用されるという。
 国が定めた新型インフルエンザの行動計画は、「陰圧」の病室などを備えた医療機関を治療の中心と想定しているが、財政難などから整備が進んでいない。このため同省は都道府県に、テント(1セット2台、計約1500万円)の購入費を補助し導入を後押しすることにした。
 テントは広さ20平方メートル、高さ2.8メートル。特殊な空気清浄機で室内の汚染された空気を殺菌処理し、外には常にきれいな空気だけを排出する。

便秘と大腸がんは無関係 厚労省研究班、6万人を調査 indexへ

 便秘と大腸がんは関係ありません――。便に含まれる有害物質が腸に長くとどまるため、古くからあった「便秘がちな人は大腸がんになりやすい」という俗説が、厚生労働省研究班(班長=津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)の疫学調査で否定された。米医学誌で発表した。
 調査は全国6地域に住む40〜69歳の男女約6万人を対象に93年から実施。開始時に便通の頻度などを聞き、平均8年間、追跡調査して大腸がんを発症したか調べた。
 その結果、便通が「週2〜3回」しかない便秘の人たちは、「毎日1回」「毎日2回以上」する人たちと比べても、大腸がんを発症する危険度は変わらなかった。
 また、普段の便の状態との関連では、「下痢」の人は、大腸がんの一つである直腸がんのリスクが高い傾向が出たが、対象人数の少なさなどが影響した可能性もあり、今後も検討が必要という。
 研究班の群馬大医学系研究科の大谷哲也助手(公衆衛生学)は「週2、3回しか便が出なくても悩む必要はない。より重い便秘や下痢が長く続く時は、ほかの病気の可能性もあるので、医療機関で検査を受けてほしい」と話している。

医療事故機関、全国8ブロックに 外科学会が来春から indexへ

 日本外科学会は19日、来年4月から、医療事故で患者が死亡した際、死因などを究明する評価機関を、全国8ブロックに分けて設置すると発表した。理由について、産婦人科医が逮捕された福島県立大野病院の事件をはじめ、医療事故が刑事事件として立件されるケースが相次ぎ、「医療現場が混乱しているため」と説明している。
 厚生労働省は昨秋から中立的な第三者機関が医療事故の死亡事例を検証するモデル事業に取り組んでいるが、実施は東京や愛知など6都府県と札幌市にとどまっている。
 これとは別に、同学会は、日本小児外科学会など関連5学会と協力し、全国8ブロックごとに10〜15人の「医療安全管理地域運営委員会」を設置。学会員が死亡事故を起こした際、医師や弁護士による調査委員会を派遣し、カルテなどから医療行為と死因との関係を検証する。

万波医師、前勤務先での病気腎移植13件 病院確認 indexへ

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)らによる「病気腎」移植問題で、万波医師の前勤務先の同市立宇和島病院は19日、万波医師の執刀で96年から03年までに計13件の病気腎移植が実施されたことをカルテなどで確認した、と発表した。このうち4件は、がん患者の腎臓が移植に使われていた。万波医師はこれまで同病院時代の病気腎移植について、「90年ごろから10〜15例を手がけた」と説明していた。
 同病院によると、万波医師は77年から04年までに計545件の腎移植を実施していた。このうち患者の記録が残っている82年以降の240件について調べた結果、96年8月〜03年2月に11人の腎臓病患者に対し、計13件の病気腎移植が行われていたことが判明。うち2人は2回手術を受けていた。最も多かったのは00年の5件。臓器提供者(ドナー)11人のうち、3人はほかの病院で腎臓が摘出されていた。
 ドナーの病名の内訳は、腎臓がん、尿管がん、腎動脈瘤(りゅう)、ネフローゼ症候群が各2人で、腎嚢(のう)胞、尿管狭窄(きょうさく)・壊死(えし)、アンジオ・ミオライポーマ(血管筋脂肪腫)が各1人。ネフローゼ患者の場合は両方の腎臓が摘出され、2人ずつに移植されていた。
 いずれも移植の可否を審議する倫理委員会は開かれていなかった。手術後、ドナー2人と移植患者2人の計4人が死亡しているが、移植との因果関係は調査中としている。
 泌尿器科の専門医によると、尿管がんは腎臓と膀胱(ぼうこう)をつなぐ尿管にできるがん。尿管や膀胱の一部を取る手術が一般的とされ、腎臓を摘出することは通常、あり得ないという。がんに侵された腎臓を移植に使う危険性を指摘する専門家も多い。
 一方、同病院は病気腎移植とは別に、親族間以外の移植が93年10月〜03年6月に万波医師の執刀で計10件実施されたことも明らかにした。市川幹郎院長は「病気腎、親族外移植とも予想より多かった。院内の調査委員会を早く発足させ、医学的な検証を進めたい」と話している。
 万波医師は04年9月以降、宇和島徳洲会病院で計11件の病気腎移植を手がけ、うち2件ががん患者からの移植だった。問題を重視した厚生労働省や日本移植学会が実態解明を進めている。
 万波医師は19日夜、朝日新聞の取材に、「96年以前の分は覚えていない。手術後の死亡例についてもカルテを見ないとわからない」と話した。

BCGがアレルギー防ぐ仕組みを解明 理研 indexへ

 結核予防のためのワクチン「BCG」が、本来無関係なはずのアレルギーを抑える仕組みを、理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターの谷口克(まさる)センター長らのグループが明らかにした。花粉症やアトピー性皮膚炎などの新しい治療法につながる可能性があるほか、「アレルギー患者の増加は衛生状態の改善が一因」とする説を補強する成果だ。米医学専門誌(電子版)に18日発表する。
 弱毒化したウシの結核菌をワクチンとして使うBCGは、国内では戦時中から集団接種が始まった。従来はツベルクリン反応(ツ反)検査で陰性の場合に接種していたが、05年4月からは乳児全員に生後6カ月までの接種が義務づけられた。
 過去の疫学調査で、感染やBCGで結核菌への抗体ができたツ反陽性の人は、抗体ができていないツ反陰性の人に比べ、ぜんそくの発生率が約4分の1と低いことなどが知られていた。しかし、なぜアレルギー疾患が減るのかは謎だった。
 谷口さんらが、BCGを注射したマウスを詳しく調べたところ、体内に侵入した細菌などを攻撃する免疫細胞の一種「ナチュラルキラーT細胞」(NKT細胞)が活性化されていた。NKT細胞は、アレルギー反応に関係するIgE抗体(たんぱく質)を作るリンパ球を死なせることで、IgEがむやみに増えるのを防いでいた。人にBCGを注射しても同じ結果が得られたという。
 アレルギー疾患は特に先進国での増加が著しいと言われ、衛生環境の向上で病原菌に触れる機会が減ったこととの関連を指摘する説がある。谷口さんは「今回の成果は、この説の裏付けになるのではないか」と言う。

リハビリ「最長180日」制限、専門医の56%問題視 indexへ

 今春の診療報酬改定で公的医療保険によるリハビリテーションの日数が「最長180日」に制限された問題で、日本リハビリテーション医学会が会員のリハビリ医らにアンケートしたところ、半数以上が「適切でない」と答えていたことが分かった。厚生労働省は制限にあたり、同学会などの意見も参考にしたとしているが、現場との考えの違いが浮き彫りになった。
 同学会は、リハビリにかかわる医師や看護師などで構成し、会員は約1万人。アンケートは8月に、同学会評議員の医師と無作為抽出した専門医計400人に実施した。回答率は56.5%。
 国民健康保険など公的医療保険を使って受けられるリハビリの日数が、発症から90〜180日に制限されたことについて、「適切でない」としたのは56%で、「妥当」は7%だけ。「設定は必要だが、日数に問題」も33%あった。
 リハビリの内容を、脳血管疾患▽手足の骨折など▽呼吸器疾患▽心臓や血管の疾患、という4疾患に分けたことについても、69%が「見直しが必要」とした。
 上限を超えてリハビリを継続する例外規定として厚労省が挙げた「身体機能に向上がある場合」という条件についても、「維持で可」が37%、「低下の程度を軽減できれば可」が26%と、反対意見が過半数を占めた。
 上限を超えてリハビリが打ち切られたり回数が削減されたりした患者がどれだけいるか、との問いには、全患者の「75%以上」が16%、「75%〜50%」が17%、「50%〜25%」が35%だった。
 また、制限は最大で9月末まで猶予期間が設けられていたが、8月の段階で45%が「長期外来患者にはすでに中止または回数削減」していた。
 アンケートを担当した昭和大医学部教授の水間正澄理事は「障害は一つでないことが多く、リハビリは横断的にしないといけないのに、できなくなったことへの不満が大きかった。学会として、厚労省に見直しを求めていきたい」としている。

50例目の脳死臓器移植 1例目の高知赤十字病院で indexへ

 高知市の高知赤十字病院で17日、入院中の成人女性が臓器移植法に基づく脳死と判定、心臓などの臓器が摘出された。97年の法施行後、脳死臓器移植としては50例目、脳死判定は51例目となる。また、今年になっての脳死提供数は10例目で、年間最多となる。
 同病院では99年2月、初めての脳死判定が行われている。
 日本臓器移植ネットワークによると、女性は臓器提供意思表示カードを持っており、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓(すい・ぞう)に丸をつけていたという。肺が東北大で40代の女性に、左の腎臓が岡山大で40代の男性に移植されたほか、心臓は国立循環器病センター(大阪府吹田市)で30代女性に、東北大で膵臓と右の腎臓が30代男性に、肝臓が40代男性に移植される予定だ。
 提供が脳死判定より1例少ないのは、00年6月に愛知県の藤田保健衛生大学病院で60代の女性が8例目の脳死と判定された後、医学的理由から移植が断念されたため。
 脳死判定51例目までの移植患者は、心臓39、肺30、肝臓35、膵臓4、膵腎同時26、腎臓57、小腸1の計192人。50例目までの生存率は、心臓95%、肺66%、肝臓74%となっている。
 提供が年間最多となったことについて、移植ネットの菊地耕三あっせん対策本部副本部長は17日、厚生労働省であった記者会見で、「提供病院への情報提供や社会への普及啓発で、少しずつ脳死移植への理解が深まった」と話した。

産婦人科医希望2割減 研修必修化以降、特に男性が敬遠 indexへ

 全国的に産婦人科医不足が問題となる中、2年間の臨床研修を終え、今年度、日本産科婦人科学会に入った医師は、これまでより、2割以上減ったことが16日わかった。学会のまとめでは、例年350人前後の医師が入会して産婦人科で働いていたが、今年度は285人になっていた。特に男性医師の落ち込みが激しいという。
 臨床研修が04年度から必修化され、研修医は2年間、各科を回った後、専門科を選ぶ制度になった。学会が02〜04年度に国家試験に合格した医師の学会入会者数を調べたところ、02年度346人、03年度366人だったのに対し、研修1期生の04年度(今年度入会)は285人に減少した。うち男性医師は、02、03年度は130人台だったが、04年度は82人しかいなかった。
 こうした状況が続くと、お産を担う医師が、さらに不足するため、学会は、医師勧誘のDVDをつくるほか、他の診療科に比べて高い訴訟リスクを低くするために診療ガイドラインを整備する。学会理事の吉川裕之・筑波大教授は「出産に、男子医学生の立ち会いを拒否するケースも増えており、希望者が減っているのだろう。女性医師を活用した働き方を検討しなければならない」と話している。

習慣流産の7組に受精卵診断を初承認 産婦人科学会 indexへ

 日本産科婦人科学会(日産婦)は16日、名古屋市立大など3施設から申請があった習慣流産の夫婦7組について「受精卵診断」の実施を認めた。体外受精させた受精卵の遺伝子情報を調べ、異常のないものだけを母親に戻す。日産婦が4月、こうした患者を実施対象に加える指針(会告)を決めてから初めての例となる。
 承認されたのは、名市大のほかセントマザー産婦人科医院(北九州市)、IVF大阪クリニック(大阪府東大阪市)。このほか、慶応大が申請したデュシェンヌ型筋ジストロフィーなど遺伝性の病気5件も承認した。

精子の保存期間、夫の生存中に限定 産科婦人科学会 indexへ

 生殖補助医療に使われる精子の凍結について、日本産科婦人科学会は16日、都内で理事会を開き、保存期間を「本人が生きている間」に限り、死亡した場合は廃棄とする会告(指針)案をまとめた。凍結精子を使い、夫の死後に生まれた子どもの認知を、最高裁が認めないとする判決もあり、学会として、「親の希望よりも子の福祉」を優先させるという姿勢を明確にした。
 指針案は今後、学会員の意見を聞いた上で、来年4月に行われる総会で正式決定される。
 精子の凍結は、人工授精や体外受精などの不妊治療の際に行われる。抗がん剤や放射線などのがん治療による影響を考え、将来、子どもが欲しい場合、事前に凍結しておくこともある。
 今回まとめた指針案では、今後、凍結精子を使用する場合、その時点で本人が生存していることを確認する。本人が廃棄の意思を示すか死亡した時は、廃棄される。精子の売買も認めない。
 最高裁は今年9月、夫の精子を死後に利用して生まれた子どもと、父親の親子関係を認めるように訴えた妻の請求を、「死後生殖について民法は想定していない」として、認めない判決を出している。これを受け、学会としての指針を示す必要があると判断した。日本生殖医学会も、精子の凍結保存期間は本人が生存中に限るとするガイドラインをつくっている。

「女性医師」学ぶ講義 育児や周囲の視点 信州大開設へ indexへ

 信州大医学部(長野県松本市)が来年度から、学生を対象に「女性医師のキャリア」をテーマにした講義を始める。医師全体に占める女性の割合は年々増えているが、出産・育児をしながらの生涯設計が描けず、医療現場から去る例も多い。家庭と仕事の両立や先輩たちの経験を学生時代から学ぶことで、医師を一生続けてもらうことを目指す。同大によると、全国初の取り組みという。
 講義は、同大医学部が地域で働く人材を育てるためにつくった「地域医療人育成センター」の主催で、4月から週1回、選択科目として行う。受講できるのは1〜6年生の男女学生。希望すれば、学内外の医師も聴講できる。性差医学などを教えている同大の片井みゆき医師(内分泌代謝)が担当する。
 講義では、育児や介護と医師の仕事との両立や、女性医師の現状、男性医師や患者ら周囲の人たちの視点などを教える。様々な分野で活躍している女性医師も招き、お手本にしてもらう。
 医師国家試験の合格者に占める女性は現在、3割を超える。しかし、家庭生活との両立に悩み、現場を離れる医師も多く、医師の不足や偏在に拍車をかけていると指摘されている。片井さん自身も12年前に育児休暇を取った時、「大学初」と言われ、暗中模索しながら仕事を続けてきたという。
 片井さんは「学生時代は女性医師と接する機会も少なく、医師になって初めて現実の壁につき当たるのが現状。出産前に人一倍勉強して『貯金』しておくとか、育児中は大学院で研究するとか、辞めずに済む生き方を伝えたい」と話した。

払いすぎ医療費通知、20年間怠る 福岡市 indexへ

 自営業者や無職の人などが加入する国民健康保険で、福岡市が、患者の医療費の払い過ぎを知らせる通知を過去20年間、怠っていたことが16日、分かった。これによって患者は、払い戻されるはずの金を受け取り損ねていたことになる。
 国保では、国民健康保険団体連合会(国保連)が医療機関から届く診療報酬明細書(レセプト)を審査し、検査や投薬が規定より多いなど過大請求がないかチェックしている。患者も窓口で自己負担分を支払っており、払いすぎている可能性がある。このため、厚生労働省は通達で、過大請求部分の自己負担が高額の場合、各運営団体が患者側に通知するよう求め、福岡県は1万円以上だと通知すると決めている。通知を受けた患者は医療機関に返還を求めることができる。
 市は11月、社会保険庁が運営する政府管掌健康保険での通知漏れ発覚を受けて調査を実施。通達が出た85年以降、通知を出した形跡がなかった。書類が残る01〜05年度の5年間で通知を怠っていたのは1181件。このうち05年度分では、過大請求部分の自己負担の合計は、単純計算では約950万円分になる。
 ただ、高額医療の場合は自己負担額の上限が収入別に決められているため、実際に患者が払いすぎていた額は、これより少額になる。市保険年金課によると、単純計算で自己負担が1万円以上になるのは、この高額医療にあたるケースが多いという。
 同課は「過大請求を通知しても患者が金を受け取れる例は少ないため、通知していなかった面がある。加えて、過大請求を知らせれば、患者と医療機関の信頼関係に影響すると配慮していた」と話している。今後は通知を徹底する方針。
 06年3月末現在、同市では約25万6000世帯が国保に加入している。

公立教員、病気休職7017人 精神疾患も過去最高 indexへ

 昨年度中に、病気で仕事に支障が出たりして休職処分を受けた公立学校の教員は7017人で、12年連続で過去最高を更新したことが15日、文部科学省のまとめでわかった。このうち6割にあたる4178人は、うつ病やストレスによる神経症などの精神疾患と診断されており、この数値も過去最多になった。文科省は「教員を取り巻く環境が厳しくなっている」とみている。
 文科省によると、病気休職者は93年度の3364人から年々増え続け、昨年度は2倍以上になった。このうちの精神疾患も92年度の1111人から増え続けており、4倍近くとなった。
 文科省は理由について、「分析はしていないが、上司、同僚との人間関係や、保護者らとの対応など職場を取り巻く環境が厳しくなっている」としている。
 文科省はほかに、懲戒などの処分を受けた教員についてもまとめた。それによると、総数は4086人で、前年度より10%増えた。
 内訳では、交通事故関連が過去最高の2406人。うち酒酔いまたは酒気帯び運転による懲戒は119人で、28%増となった。また、各教委とも厳罰化を打ち出しており、処分はすべて減給以上だった。
 このほか、体罰での処分は6%増の447人。最も重かったのは停職で、児童・生徒を殴ったり蹴(け)ったりして、鼓膜損傷や骨折などを負わせるケースがあった。
 また、児童買春やセクハラなどのわいせつ行為は15%減って142人。全体の半数は勤務先の児童・生徒・卒業生に対するものだった。

患者や職員38人、感染性胃腸炎 4人死亡 松山の病院 indexへ

 松山市保健所は15日、松山市高井町の松山リハビリテーション病院(友岡康雄院長)に入院中の患者38人と職員41人が嘔吐(おうと)や下痢など感染性胃腸炎とみられる症状を訴え、うち患者4人が死亡したと発表した。ノロウイルスが原因の可能性もあるとみて調べている。病院側は「4人には重篤な疾患があり、嘔吐や下痢などが直接の死因ではない」と説明しているという。
 同市保健所によると、4人は72〜100歳の男女で7〜13日に死亡した。死亡時には、うち2人の症状は冶まっていたが、2人は下痢が続いていたという。

成育医療センターがES細胞作製へ 文科省専門委が了承 indexへ

 人の胚(はい)性幹細胞(ES細胞)の作製で、国立成育医療センター研究所(東京都世田谷区)の計画が14日、文部科学省の生命倫理・安全部会専門委員会で了承された。ES細胞は、人体のさまざまな臓器や組織に成長する可能性があり、再生医療の切り札と期待される。了承は京都大再生医科学研究所に次ぎ、国内で2施設目となる。
 ES細胞は、不妊治療で必要がなくなった受精卵を提供してもらい、内部の細胞の塊を取り出し培養してつくる。京大は3細胞株の作製に成功、国内の研究機関に基礎研究用として分けている。だが、牛の血清やマウス細胞を培養に使っているため、将来、臨床で応用するには、未知のウイルスやたんぱくによる感染症の心配がある。
 同センター研究所は最大15細胞株をつくる予定。数年以内に動物の細胞を使わない培養法の確立を目指す。培養時に生じがちな遺伝子変異を少なくする方法も探る。

迷ったら#7119、緊急は119 来春から東京消防庁 indexへ

 「おなかが痛い。でも救急車を呼ぶほどでもないかも」「自力で病院に行けるけど、夜中だからどこが開いているかわからない」――。東京消防庁は「119番」を補完する新ナンバー「#7119番」で、こうした相談に応じるサービスを来年5月に始める。東京都内の救急車の出動件数は29年連続で増えて年間約70万件だが、6割は軽症だった。新ナンバーの活用で、本当に搬送が必要な重症患者に手厚い対応ができるようにする狙いがある。
 同庁によると、05年の都内の救急車出動件数(稲城市と東久留米市、島部を除く)は69万9971件。10年前に比べて25万件増えた。現場への平均到着時間も6分30秒と、1分以上遅くなっている。
 ところが、搬送した患者のうち、結果的に入院を必要としないなど軽症だった例が6割に及んだ。救急車を呼んだ人へのアンケート(複数回答)では、「軽症や重症の判断がつかなかった」(21.8%)、「どの病院に行けばいいかわからなかった」(8.1%)との回答が目立った。
 このため、同庁は来年5月に「救急相談センター」を新設。定年退職した救急隊員OBや看護師が、24時間態勢で「#7119」の電話に応じる。やりとりを通じて、救急車の出動が必要か▽必要ない場合でも、今すぐに病院にいった方がいいか▽最寄りの病院はどこか――などをアドバイスする。東京都が来年度予算に約2億円を盛り込んで支援する方針。
 「#7119」はこれまで、最寄りの病院などを案内する番号だった。119番を補完するサービスに格上げする試みは、全国で初めてという。同庁の救急部は「迷ったら、#7119へ。ただし、緊急性がある場合には迷わず119番を」と話している。

東洋大教授、診療報酬不正受給指南の疑い 警視庁が捜査 indexへ

 東洋大学(東京都文京区)の法学部教授(50)が都内の漢方薬局と三つの診療所に助言し、診療報酬などを不正に受給させていた疑いのあることが、関係者の話で分かった。この教授は弁護士も兼業し、医薬業に関するコンサルティング会社(渋谷区)の実質経営者。警視庁はこの会社を通じて不正受給の方法を指南したとみており、会社や診療所などの関係先を医師法違反の疑いで家宅捜索し、捜査を本格化させている。
 警視庁生活環境課の調べや関係者の話では、豊島区内で漢方薬局を経営する女性(51)は、薬局を訪れた患者を診察、自らの判断で患者に薬を出していたとされる。
 この薬局が患者に売った薬に見合う処方箋(せん)を出していたのは、渋谷区、港区、千代田区の三つの診療所。3診療所は実際には患者を診察しておらず、薬局の求めに応じて処方箋を渡したうえで、その診療報酬を不正に審査支払機関に請求し、健康保険組合などから報酬をだまし取っていたという。
 薬局の行為は薬事法違反や詐欺の疑いがあり、3診療所も詐欺や医師法違反の疑いがある。
 診療所から薬局に架空の処方箋を融通させる方法は、大学教授が指南していたとみられる。コンサルティング会社は医薬業に関する指導が中心で、薬局や3診療所は一連の診療、調剤報酬の不正受給の手口について、助言を受けていたという。
 朝日新聞の取材に対し、教授は「お話しできません」としている。
 千代田区の診療所の医師は取材に対し、代理人を通じて「薬局の依頼で患者を実際に診察したケースもあるが、電話やカルテだけで処方箋を出したこともあった。猛反省している」と答えた。
 薬局やほかの診療所は取材には応じなかったが、同課の調べなどに対し、「経営指導を受けていた教授の指示だった」と容疑をおおむね認めているという。

カリニ肺炎の感染防ぐたんぱく質、東大グループが特定 indexへ

 体の免疫機能が低下している人がかかりやすいカリニ肺炎の感染を防ぐ働きを持つたんぱく質を、岩倉洋一郎・東京大医科学研究所教授らのグループが特定した。エイズ患者や臓器移植を受けた人などでの治療に役立つ可能性があるという。米科学誌ネイチャー・イムノロジー(電子版)に発表した。
 カリニ肺炎は、カビや酵母などと同じ真菌類のニューモシスチスが引き起こす病気。この真菌はほとんどの人の肺などに存在するが、健康な人では免疫の働きにより病気を起こさない。
 岩倉教授らは、白血球の表面に存在するデクチン1と呼ばれるたんぱく質が、免疫系にも影響を与えていることを発見。デクチン1の遺伝子を人工的に働かなくしたマウスで、カリニ肺炎の感染についても調べた。
 その結果、デクチン1を作れないマウスは、通常のマウスに比べて肺の病状が悪化することがわかった。また、人工的に免疫不全状態にした場合も、デクチン1を作れないマウスの方が、症状がひどかったという。
 岩倉教授は「デクチン1は通常の免疫作用に加えて、活性酸素の働きでカリニ肺炎の感染を防いでいるとみられる。この性質を利用すれば、より効果的な新薬の開発につながる可能性もある」と話している。

パーキンソン病と潰瘍性大腸炎 公費負担「軽症外す」 indexへ

 厚生労働省の特定疾患対策懇談会(座長=金沢一郎・国立精神・神経センター総長)は11日、治療費が公費負担の対象となっている難病のうち、パーキンソン病と潰瘍(かいよう)性大腸炎について、症状の軽い患者を対象から外すよう提言した。難病の「患者数が5万人未満」という要件を大幅に上回っているため。厚労省は提言を踏まえ、早ければ来年10月にも支援対象を見直す可能性がある。懇談会は今年度中に、新たな対象疾患を追加するための議論に入る予定だ。
 懇談会は、パーキンソン病(約7万3000人)と潰瘍性大腸炎(約8万人)について、「5万人を上回り、希少性を満たさなくなった疾患を対象とし続けることは、それ以外の難病との公平性を欠く」と指摘。潰瘍性大腸炎の対象は「臨床的重症度が中等症以上」に、パーキンソン病は、5段階の重症度で3度以上から4度以上に引き上げるとした。
 厚労省の推計では、提言通りだと、潰瘍性大腸炎は66%、パーキンソン病は51%の患者が補助対象から外れるという。
 懇談会は一方で、厚労省に対し、軽症者の症状が悪化した際は迅速に支援すること、認定基準が適正に運用されているかを評価すること、難病治療の研究費を確保することなどを求めた。
 懇談会を傍聴した潰瘍性大腸炎などの患者団体・IBDネットワークの藤原勝世話人(43)は「患者がいかに苦しんでいるか、実態が分かっていない」と猛反発。全国パーキンソン病友の会の斎藤博会長(71)も「国が作った案を懇談会に認めさせたに過ぎない。絶対に納得できない」と怒りが収まらない様子だった。
 72年創設の「特定疾患治療研究事業」は治療費の自己負担分の全額または一部を公費負担しており、現在は45疾患(約54万人)が支援対象。患者数の増加で公費負担が膨らんだため、厚労省は今夏から、97年に定めた(1)患者数おおむね5万人未満(2)原因不明(3)効果的な治療法が未確立(4)生活への長期の支障――の4要件を基準に、対象の見直しを進めていた。

更年期障害ホルモン療法 乳がんリスク6割減 厚労省 indexへ

 女性の更年期障害の治療に「ホルモン補充療法(HRT)」を実施しても乳がんになるリスクは上がらず、逆に6割ほど下がることが、厚生労働省研究班(主任研究者=佐伯俊昭・埼玉医科大教授)の調査でわかった。HRTは、米国の臨床試験で「乳がんのリスクを高める」とされて以来、国内でも敬遠されがちだったが、研究班は「更年期障害に悩む日本人にとっては、利益の方が大きい」としている。
 調査は04〜05年秋に実施された。大阪府立成人病センターなど全国7施設で、過去10年以内に乳がんの手術を受けた45〜69歳の女性(3434人)と、がん検診を受けに来た人で、乳がんでなかった同年代の女性(2427人)の2グループに対し、HRTの経験など21項目をアンケートした。
 その結果、乳がん患者グループではHRT経験者が5%で、もう一方のグループは11%。統計上、HRT経験者の方が、乳がんになるリスクは57%低かった。女性ホルモンのエストロゲンを単独で使った場合と、エストロゲンと黄体ホルモンを併用した場合ではリスク差はなく、HRT経験者の半数近くは、期間は1年未満だった。
 経口薬などで女性ホルモンを摂取するHRTは、欧米では一般的な治療法。だが、米国国立衛生研究所が91年から15年計画で始めた大規模臨床試験で、乳がんや脳卒中などのリスクが高まることが指摘され、02年に試験も中止された。
 日本国内では更年期障害の治療は普及しておらず、HRTに関する大規模な調査もなかった。米国での試験中止以降は副作用を恐れる人も多く、現在、HRTを受けている人は数%とされる。
 日本人の乳がんリスクが低かった原因について佐伯教授は、米国人と異なり乳がん発症のピークが閉経前の45〜49歳にあること、HRTを何年も続ける米国人に比べて、使用期間が短いことなどを挙げている。
 「欧米のように閉経後の乳がんが増えれば、状況は変わるかもしれない。HRTを受けたから乳がんにならないというわけではなく、同時に検診を受けることが必要だ」と話している。

入院日数、格差2倍 厚労省が全国調査 indexへ

 都道府県別の平均入院日数は、山形県が28.4日と最も短かったのに対し、石川県は58.7日と最も長く、全国で2倍以上の差があったことが、厚生労働省の「平成17年患者調査」でわかった。慢性疾患の高齢者が主に利用する療養病床や精神病床の人口当たりの数が多い県は、入院日数も長くなる傾向があり、厚労省は療養病床の数を減らして医療費を抑制する方針を打ち出している。
 調査は3年に1度あり、今回は昨年9月の1カ月に退院した患者の平均入院日数を比べた。全国6594病院の患者の73%、212.8万人を無作為に抽出した結果をもとに全体を推計した。
 全国平均の入院日数は39.2日と、前回調査の02年に比べて0.9日減った。
 1カ月間だけの調査のため、前回60.6日だった三重が05年は44.5日に大幅に減るなど、変動が大きい県もある。ただ、最も短かった山形は99年、02年も全国最短だった。今回、山形に次いで短いのは長野の28.6日で、神奈川、東京、滋賀と続く。一方、長いのは、石川、佐賀、高知、愛媛、鹿児島の順。50日を超える8県のうち7県が、九州、四国地方だった。
 病床の種類別の入院日数は、主に急性期の患者が利用する一般病床が平均22.5日に対して、療養病床は203.2日、精神病床は372.1日と長い。
 05年の医療施設調査によれば、人口10万人あたりの療養病床と精神病床の合計は全国平均で559床。入院日数最短の山形は452床、長野は416床、神奈川と東京は300床台と、平均を下回る。逆に、入院日数が長い石川は777床、佐賀は1077床、高知は1516床と多い。療養・精神病床数の人口に対する比率が、平均入院日数に影響しているとみられる。
 厚労省は、療養病床の利用者の多くは病気の程度が軽く、医療の必要性は低いとみている。このため医師の配置が少なくて済む介護保険の老人保健施設やケアハウスへの転換を進め、現在38万ある療養病床を12年度までに23万床削減。医療費を抑制する計画だ。
 その一環として今年7月から、軽度の患者の割合が多い療養病床の診療報酬を引き下げたが、医療現場からは「急激な引き下げで療養病床の経営が成り立たなくなり、行き場のない高齢者が多数出るおそれがある」と反発が出ている。

「お墨付き」制度伸び悩み 病院の安全性や質を評価 indexへ

 病院の安全性や医療の質を第三者の立場から評価し、「お墨付き」を与える財団法人・日本医療機能評価機構の認定制度が伸び悩んでいる。これまでに全国4分の1の病院が認定されたが、新たに認定を求める病院数は04年度をピークに減少している。審査手順の煩雑さなどが理由とみられ、同機構は「このままでは制度が形骸(けいがい)化してしまう」と見直しに乗り出した。
 制度は97年、医療事故が相次ぎ、医療への不信が高まる中で、患者が病院を選ぶ目安にしてもらうため、国と日本医師会の肝いりで始まった。
 同機構の委託を受けた医師や看護師、病院事務経験者らが、申請があった病院を訪れ、医療体制やサービスの質などを審査して認定証を発行する。認定を受けた病院は「お墨付き」を看板などで患者にアピールできる。全国約9000病院のうち、認定病院は11月20日時点で2238病院(24.8%)ある。
 申請数は、開始からしばらくは年120〜130件だった。01年3月に規制緩和で認定病院を広告掲載できるようになったことや、翌年の診療報酬改定で一部の認定病院に加算が認められたことなどから増え始め、04年度は465件に上った。だが、05年度は341件、06年度は170件程度と一転して減少傾向になった。
 背景に、病院側の負担感がある。審査開始から認定まで、最短で4カ月程度かかる。評価項目は病院運営から患者の安全確保など約500に上り、原則すべてが5段階で3以上の評価が必要となる。基準に達しなければ、最初から審査を受け直さなければならない。
 このため同機構は来年度から、病院側の負担軽減のため訪問審査から4〜6週間で中間結果を病院側に示し、最終結果の前に改善してもらう。必要なら、補充審査も受けられるようにした。
 同機構は「診療報酬の引き下げなど病院を取り巻く環境が厳しさを増し、制度離れが進んでいる。手続きを効率化して少しでも多くの病院に浸透させていきたい」としている。

山下みらいちゃんの臓器移植手術成功、5臓器とも機能 indexへ

 腸の難病を治療するため渡米した山下みらいちゃん(9カ月)=愛知県春日井市=の多臓器移植手術が、日本時間の9日午前、米フロリダ州のジャクソン記念病院で終了した。みらいちゃんや家族を支援している日本の関係者に連絡が入り、12時間に及んだ手術は成功したという。
 費用の募金活動などをした「山下みらいちゃんをすくう会」によると、小腸、大腸、肝臓、ひ臓、胃の5臓器を移植し、どの臓器も順調に機能しているという。みらいちゃんは今後、集中治療室に入る。同会の住友隆介会長は「支援してくれた方々のおかげで手術が大成功した。感謝しています」と話した。

ノロウイルスQ&A改訂 厚労省が集団感染予防強化 indexへ

 厚生労働省は8日、全国で流行中の感染性胃腸炎の原因とみられるノロウイルスについて、対処法などをまとめたQ&Aを改訂し、集団感染を防ぐための注意事項を追加した。病院や福祉施設、学校での流行を防ぐのが目的。Q&Aは厚労省のホームページで見ることができる。
 改訂版には▽吐物や便は乾燥しないうちに処理し十分に換気▽汚物がついたシーツや枕カバーはもみ洗いの後、85度の湯で1分以上洗濯▽感染者が使った食器類のほかドアノブやカーテンも消毒――など、集団生活をする施設で発生した際に気を付ける点を追加した。

井戸水から乳児ボツリヌス症に 宮城の男児 indexへ

 厚生労働省は8日、宮城県内の0歳の男児が、ボツリヌス菌で起きる「乳児ボツリヌス症」を発症した、と発表した。自宅の井戸水から感染したとみられる。同症の感染源は主にハチミツとされてきたが、同省によると、井戸水が感染源とされた報告は世界でもないという。同省は同日、乳児に与えるミルクや水は、水道水か水質基準を満たす井戸水などを使うよう、都道府県などに指導を求めた。
 同省によると、男児は9月中旬、呼吸困難や便秘の症状になり県内の病院に入院。検査の結果、便からボツリヌス菌が見つかった。現在も入院しているが、回復に向かっているという。
 県が男児宅を調べたところ、敷地内の井戸水から菌を検出。炊事やミルクをつくる際などに井戸水を使用していたため、感染源と断定した。井戸は閉鎖された。
 同症は、土中などにいる菌の胞子が腸内細菌の少ない1歳未満の乳児の腸内で増えて起きる。筋肉のまひや呼吸不全などの症状を起こし、致死率は1〜3%。1歳以上の子供や大人は中毒を起こさないとされる。国内では過去20年間で20の感染例が報告され、確認できた12例の感染源はすべてハチミツだった。

がん告知医療機関の治療・説明、53%「納得できず」 indexへ

 がんを告知された医療機関での治療方針や医師の説明に納得していない患者は、がん患者全体の53%にのぼることが7日、医療政策のシンクタンクであるNPO法人「日本医療政策機構」のまとめで分かった。同機構は、こうした不満が、別の治療法を求めて病院を渡り歩く「がん難民」を招き、医療費増加にもつながっていると分析している。
 同機構によれば、53%を、日本のがん患者にあてはめると、推計68万人になるという。
 調査は昨年1〜6月、国内の約30のがん患者団体の会員や、患者向けの集会に訪れた人などを対象に、郵送とインターネットで実施した。治療中か、治療を受けたことがある1186人の回答を分析した。
 同機構の近藤正晃ジェームス副代表理事は「患者の声を具体的に議論し、方策を考えていくべき時だ」と話す。調査の詳細は、同機構のウェブサイトで公表予定。

新型インフル、情報交換・連携で一致 8カ国閣僚級会合 indexへ

 新型インフルエンザや化学テロなど健康危機について、日本を含む8カ国が対応を協議する閣僚級会合「世界健康安全保障イニシアチブ」が7日、東京都内であった。新型インフルエンザ発生に備え、各国が行動計画やワクチン製造について情報交換を進め、連携して対応していくことなどを提言した。
 日本代表の柳沢厚生労働相は、「日本がアジア諸国に呼びかけ、共同訓練など連携を強めていく必要がある」と述べた。
 会合ではこのほか、ロシアの元情報将校が亡命先の英国で変死した事件で、死因とされる放射性物質ポロニウム210についても採り上げられ、英国を中心に情報を共有することを確認した。
 同会合は、01年の米同時多発テロを受けて、米、加、日、仏、独、伊、英、メキシコの8カ国で同年11月から年1回のペースで開催。生物・化学テロや大規模な自然災害などに対する国際協力の枠組みを話し合っている。今回は7回目で、日本での開催は初めて。

ノロウイルス猛威 感染性胃腸炎、過去10年で最速増 indexへ

 「おなかのかぜ」と呼ばれる感染性胃腸炎が全国で猛威をふるっている。国立感染症研究所がまとめる全国約3千の小児科医療機関の定点調査では、過去10年間で最も速いペースで患者が増加。大半はノロウイルスが原因とみられ、抵抗力が低い乳幼児や高齢者は特に注意が必要だ。
 ノロウイルスによる感染性胃腸炎の症状は、下痢や嘔吐(おうと)、腹痛など。同研究所の感染症情報センターによると、11月13日からの1週間で定点1施設あたりの患者数は16.4人となり、昨年同時期の約2.7倍に達した。例年より1カ月ほど速いペースで、今後さらに増える可能性があるという。
 東京都の速報値(11月27日からの1週間)でも、1施設あたりの患者数が21.9人に。過去5年間で最多だった昨年の19.3人を突破した。
 都道府県別では、富山(1施設あたり37.5人)、宮崎(同29.9人)、大分(同27.8人)、群馬(同27.6人)、三重(同26.9人)が多く、計12府県で警報を出す基準の20人を上回った。患者は10月下旬から西日本を中心に増え、中部や関東へ拡大。大阪や奈良では、高齢者施設の入所者が感染し、死亡する例も出ている。
 ノロウイルスは、生カキなど加熱が不十分な二枚貝を食べるなどして感染するほか、患者の便や吐物などを介して二次感染する。保育園や高齢者施設などで集団感染を起こすこともある。治療法は対症療法しかなく、各自治体などは手洗いなどによる予防を呼びかけている。

乳腺「病院名使用はだめ」 最高裁、診療科目と認めず indexへ

 横浜市の医療法人が病院名を「よこはま乳腺と胃腸の病院」という名称に変更しようとしたところ、市が「『乳腺』は、医療法の規定では広告できる診療科名と認められていない」として認可しなかったことの是非が訴訟に持ち込まれた。法人側は「表現の自由の侵害で違憲だ」として不認可処分の取り消しを求めたが、一、二審で敗訴。上告したが、最高裁第一小法廷(横尾和子裁判長)は7日、「医療法の規定は合憲」として棄却する判決を言い渡した。病院側の敗訴が確定した。
 判決などによると、この医療法人は01年9月に名称変更を申請。しかし市は、「乳腺」について、「内科」や「眼科」などと違い、広告が認められていないため病院名には使えないとして認可しなかった。
 病院側はあくまでこの名前にこだわり、同月、いったん「乳腺」の文字を削って「よこはま  と胃腸の病院」と2文字空白にして申請し直し、認可を受けた。しかし、あきらめられずに翌年、「乳腺」を入れた病院名で再申請したが認められなかったため、提訴した。
 第一小法廷は、医業などについての広告を規制した医療法の規定について「広告することのできる診療科名を客観性、正確性を維持できるものに限定した」と解釈。広告できる診療科として同法施行令が列記した診療科名は、例示ではなく、限定的に列挙されていると解釈すべきだとする一、二審の判断を維持した。
 現在、同病院は、看板などは2文字を空白にしたままで、電話などには「乳腺」を入れて応答するという変則的な形で「抵抗」を続けている。

未払い治療費、保険者に返還請求へ 病院団体 indexへ

 治療費を支払わない患者が増え、病院経営が深刻化しているとして、全国の6割以上の病院が加入する四病院団体協議会(四病協、東京)は、未払い患者が加入する国民健康保険などの保険者に肩代わりを求める方針を固めた。各病院ごとの請求をへたうえで、来春にも全国一斉の「返還請求」に踏み切る可能性もある。把握できた病院側の未収金は、04年度までの3年間で計426億円。四病協は、患者の負担増やモラル低下などが原因と分析し、国にも解決策を求める。
 医師法は、患者に治療費の支払い能力がないことなどを理由に、医療機関が診療拒否することを禁じている。このため多くの病院は、未収金問題に打つ手がなかった。
 四病協によると、バブル後の不況下で生活困窮者が増えたうえ、高齢者の1割負担やサラリーマンの3割負担など、医療費の自己負担増が続いたことが不払いに拍車をかけた。診療報酬改定などで病院経営も厳しさを増しており、未収金問題への取り組みを強化せざるをえなくなってきた。
 四病協が今年8月にまとめた実態調査では、加盟5570病院のうち、回答した3272病院の94%が未収金を抱えていた。02〜04年度に続けて調査できた病院の累計は約426億円。1病院あたり1620万円で、公的病院は4424万円と著しく多かった。
 患者別では、国民健康保険の滞納者や産科の入院・外来患者、交通事故などで救急医療を受けた患者で未払い額が多い傾向があった。
 国民健康保険法と健康保険法は「医療機関が相当の徴収努力をしたにもかかわらず、患者から支払いを受けられない場合は、保険者が医療機関の請求に基づいて患者から徴収できる」などと規定している。これを根拠に四病協は「保険者に支払いを請求できる」と解釈。患者からの徴収は、企業の健康保険組合や国保の保険者である市町村などが担うよう求める。保険者が支払いに応じなければ訴訟も辞さない構えだ。
 一方、厚生労働省は「診療行為は、医療機関と患者の契約」(保険課)との立場。保険者が未払い患者から徴収することは可能だが、徴収できなくても肩代わりする義務はないとの見解だ。病院には、クレジットカードが使えるようにするなど、不払いを防ぐ自助努力を求めている。
 四病協の山崎学・日本精神科病院協会副会長は「国民のために診療義務を果たした病院が、巨額の未収金を背負うのは道理に合わない」と強調。支払い能力があるのに治療費を何度も踏み倒す確信犯や、患者を入院させて行方不明になる家族など、モラル低下に伴う悪質な例も少なくないとして、病院が治療費を徴収するガイドラインの作成なども国に求める。

女性医師の再就職支援へ「バンク」 来年1月から indexへ

 日本医師会は6日、出産や介護などを機に現場を離れた女性医師の再就職を支援する「女性医師バンク」を、来年1月末に始めると発表した。厚生労働省からの委託事業で、東京と福岡に事務局を置き、再就職前の研修支援も行う。女性医師を対象にしたバンクは各地にあるが、国のバンクは初めて。
 勤務先を求める女性医師は専用のホームページなどで、希望する勤務内容や勤務時間などを登録。医療機関が寄せる求人情報と共にデータベース化し、医師であるコーディネーターがあっせんする。就職後の相談も受け付ける。
 医師国家試験の合格者に女性が占める割合は約3分の1だが、女性医師は男性医師に比べ、出産などで現場を離れるケースが多い。長時間勤務などで育児と仕事の両立が難しいうえ、育児休暇をとることができても、研修などの機会が少ないため、復帰が難しいとされている。

奈良県内の3施設で集団感染173人 ノロウイルスの疑い indexへ

 奈良市は6日、同市杣ノ川町の知的障害者福祉施設で95人、同市古市町の養護老人ホームで60人が下痢や吐き気などの症状を訴え、いずれもノロウイルスによる感染性胃腸炎とみられると発表した。奈良県も同日、同県葛城市の特別養護老人ホームで18人が集団感染したと発表した。全員が快方に向かっているという。
 市によると、知的障害者福祉施設では先月28日から18〜53歳の入・通所者と職員が、養護老人ホームでは今月1日以降、22〜97歳の入所者と職員が発症した。

在宅医療ピンチ 訪問ステーションの看護師、大病院へ indexへ

 お年寄りの在宅医療を支える「訪問看護ステーション」で看護師の人材難が深刻になっていることが、関係財団の調査で明らかになった。今年度中に退職する看護師がいるステーションが6割近くにのぼり、病院に再就職する人が多い。看護師の大病院集中を招いている4月の診療報酬改定の余波とみられ、休止や閉鎖に追い込まれるステーションも出ている。医療費抑制のため「病院から自宅へ」の流れを進める厚生労働省だが、今回の改定が裏目に出て、在宅医療を危機に陥れている格好だ。
 看護師が自宅などに出向いてケアにあたる訪問看護ステーションは、医師が往診する「在宅療養支援診療所」とともに在宅医療を支える両輪と位置づけられる。厚労省は04年度までに全国で9900カ所と見込んでいたが、経営と労働環境の厳しさから今年4月で5700カ所にとどまる。
 調査は「看護師が集まらない」との現場の声を受け、日本訪問看護振興財団が10月に実施。看護師の離職状況について1210カ所にアンケートし、503カ所から回答があった。
 それによると、4月以降に辞めた看護師がいるのは181カ所(36%)。今年度内の退職予定者がいる105カ所(21%)と合わせると、計57%で今年度中の離職者・離職予定者がいた。
 再就職先が分かっているケースのうち、最も多かったのは病院の38件。病院で訪問看護を「続ける」は1件のみで「続けない」が31件だった。診療所は計18件で訪問看護を「続ける」3件、「続けない」11件。別の訪問看護ステーションへの再就職は26件だった。
 人材流出の理由としては「診療報酬改定で病院の看護師確保が激しくなり影響を受けている」など、今春の改定を挙げる答えが目立った。
 膨らむ医療費の伸びを抑えるため、発症後間もない「急性期」の医療を充実させて長期入院患者を減らす一方、受け皿として在宅医療を整備し、自宅で療養したり最期をみとったりできるようにするのが厚労省の方針。春の改定では急性期医療充実をめざし、看護師を増やすと高い報酬が得られるようにした。
 この改定後、都市部の大病院などが待遇や研修態勢を整えて全国から看護師をかき集めており、中小病院だけでなくステーションもこのあおりを受けた形。自宅で安心して医療が受けられる仕組みをめざす厚労省自らが、結果的にその実現を阻害している構図だ。
 同財団によると、05年度の1カ所あたりの看護師数は平均3.81人(常勤換算)。収益の7割強を占める介護保険では「看護職員2.5人(同)以上」が基準で、これに達しなければ休止せざるを得ず、1人でも辞める影響は大きい。
 財団の佐藤美穂子常務理事は「予想以上に厳しい結果。患者・家族への影響が心配だ」と話す。
 厚労省保険局は「今春の改定で現場に急速すぎる変化が起きているのは認識している。急性期医療の充実と同時に在宅医療の推進もめざしており、バランスがとれるようさらに検討したい」としている。
 〈訪問看護ステーション〉 数人程度の看護師らが所属してお年寄りの家庭などに出向き、医師と連携して健康状態の観察や在宅リハビリ指導、人工呼吸器の管理や痛みのコントロールなどをする。訪問看護は病院や診療所も行ってきたが、在宅医療を進め、ケアの質を高める目的で92年に制度化。今春の介護保険見直しでは、特別養護老人ホームやグループホームとの連携が強化された。

患者の意思なら「呼吸器外し」も 救急医学会が基準案 indexへ

 救急医療現場での終末期医療のあり方について、治療の基準作りを進めている日本救急医学会の特別委員会(委員長・有賀徹昭和大教授)は、東京都内で会合を開き、ガイドラインの原案をまとめた。患者本人や、家族を通じて患者の意思が判断できる場合、延命治療をやめ、人工呼吸器の取り外しができることを盛り込んだ。今後、学会の専門医から意見を聞き、来年2月に最終決定する。
 委員会の案は、終末期を「脳死と判定した場合」に加え、「治療を続けても数時間から数日以内の死亡が予測される場合」と定義するなど、より踏み込んだものとなっている。終末期にあるかどうかを判断する時は、主治医を含め複数の医療者で合理的、客観的に決めることなどとしている。

みずほ銀、最先端がん治療施設支援 川崎市に計画 indexへ

 NPO法人と民間企業が川崎市に計画している最先端のがん治療施設の建設で、みずほ銀行が融資や事業計画づくりの支援に乗り出す。みずほは現在、専門チームが全国約2000の病院に対して収支の改善やIT化、事務効率化などを手がけている。資金面だけでなく、培ったノウハウも提供して、「切らずに治す」がん治療施設を後押しする。
 「重粒子線(炭素線)」を使ったがん治療施設で、2010年の開業を目指している。電子より重い粒子を高速に加速し、がん細胞を狙い撃ちして殺す。従来のX線治療よりも副作用が少ないとされる。現状では巨大な加速装置が必要で、治療機器だけで120億円するという。
 この装置はすでに、千葉の独立行政法人と兵庫の県立施設にある。首都圏の病院で共同で使える施設を作ろうと、医師らによるNPO法人と富士通、石川島播磨重工業、日揮などの出資で企画会社を6月に設けた。
 みずほは協調融資などの形で約200億円の資金調達に協力するほか、事務効率化や資金繰りなどの面で事業計画作りに加わる。この治療には1人300万円以上かかるが、年間800人の利用で採算が合うとみずほは判断。今後、関西や九州などでも検討されている同様の医療施設の建設も支援する考えだ。

揺れる献血、安全・効率の400か若者啓発の200か indexへ

 16歳から18歳未満の高校生らが行う「200ミリリットル」の献血からつくる血液製剤が、使われないまま捨てられる事態が起きている。感染症などのリスクから、400ミリリットルの製剤が使われることが多いためだ。一方で、高校時代の献血経験がその後に生きるとも言われる。「安全で効率的な400ミリ」か、「啓発の200ミリ」か。採血基準の見直しを求める声が出る中、日本赤十字社(東京都港区)は啓発の効用について今年度内にも調査に乗り出す。
 日赤によると、病院からの赤血球製剤の注文は400ミリが9割で200ミリは1割程度だという。
 400ミリの需要が高い理由を日赤は「複数の献血者の血液を合わせるほど、輸血による発熱などの副作用の可能性が高くなる」と説明する。検査項目にないウイルスが混じっていた場合、単純に考えれば200ミリで感染する危険性は400ミリの倍だ。
 05年度に採血から21日たっても使われず、期限切れで廃棄された製剤は、全国平均で200ミリが6・8%で400ミリは2%だった。中には山口県のように、200ミリの廃棄割合が400ミリの14倍という地域もある。
 愛媛県では昨年6、7月、200ミリから作った製剤の約6割、1524本が期限切れで廃棄された。そこで同9月からは、200ミリ献血は松山市内の1カ所で、毎日必要な本数だけ受け付けることにした。高校に献血車が出向く時も、18歳以上が対象の400ミリ献血しか行わず、採血より献血の重要性を訴えるイベントに力を入れる。
 山口県などは18歳の割合が増える「卒業記念」の時期に高校3年生に400ミリ献血を勧める。
 一方で高校生の200ミリ献血を重視する所もある。昨年度、56高校で3853人が献血した群馬県は「学校での経験が今後の献血につながる。やめるわけにいかない」。県全体では400ミリの割合が6割以上だが、高校献血では200ミリが8割以上だった。
 400ミリ推進と高校での啓発の板挟みに悩み、「400ミリ献血が可能な年齢を下げてほしい」という声も出始めた。
 400ミリ献血が増えれば、ウイルス感染を防ぐためなどに年約250億円かかる検査費用を減らせるため、日赤にとってもメリットが大きい。
 日赤の献血推進課は「若者への啓発と400ミリ推進が両立しないのはわかっている。条件が整えば400ミリの一本化が望ましい。だが、高校のころの体験が大人になってからも献血を続ける理由になっているといわれ、どの程度影響を与えているのか、調査する」としている。
 400ミリ献血を18歳以上としているのは成長期の体に配慮してのことだが、献血年齢と採血量については、厚生労働省研究班が昨年度、400ミリ採血をした17歳男性と18、19歳男性を比べ、気分不良や顔面蒼白(そうはく)などの発生率などに差がなかったと報告した。主任研究者の河原和夫・東京医科歯科大大学院教授は「男子の場合は17歳に下げてもよいのではないか。科学的根拠に基づいた採血基準全体の見直しも必要だろう」と提言している。

猛威ふるうノロウイルス 西日本中心に過去最悪ペース indexへ

 ノロウイルスによる感染性胃腸炎が今シーズンに入り、全国で急増している。特に、抵抗力が弱い子どもや高齢者の患者が目立つという。
 小児科医療機関約3千カ所を定点調査する国立感染症研究所の感染症情報センターによると、11月13日からの1週間で1機関あたりの患者数は平均16・4人で、昨年同時期の約2.7倍に達した。過去10年間で最も速いペースで増えており、富山、京都、兵庫など12府県で警報を出す指標の同20人を突破。西日本を中心に流行が始まり、中部や関東に拡大したという。
 大阪府でも、11月の集団感染(10人以上)が4千人を超え、昨年同月(400人)の10倍に達した。感染で体力が落ちた10人以上の高齢者が肺炎などで死亡している。府によると、今年検出されたウイルスの大半は「GII4」と呼ばれる遺伝子型のもの。細胞に吸着する効率がよく、感染性が強いという。
 同感染症情報センターによると、ノロウイルスは生ガキのような二枚貝などに含まれる。汚染された貝を食べたり、調理したりする際に感染するほか、感染者の汚物が原因となって医療機関や福祉施設で集団感染を起こす場合もある。
 同センターは予防策として、(1)十分な手洗いや加熱調理(2)医療機関などで汚物を処理する際はマスクや手袋の使用や消毒を徹底――などを呼びかけている。

脳卒中の救急搬送に壁 都は病院情報を東京消防庁に伝えず indexへ

 年間約2万3000人もの脳卒中患者が救急車で運ばれている東京。だが、東京消防庁の救急隊員は、専門医がいる病院や新薬に対応できる施設などの重要な情報を持っておらず、一番近い受け入れ可能な病院に機械的に運んでいるのが実態だ。都は病院調査でこうした情報を把握しているが、「目的外に使用できない」などの理由で、消防庁に伝えられないという。3大疾病の一つで、一刻も早い処置が求められる脳卒中。適切な治療を受けられるかどうかは、「運」次第となっている。
 都内ほぼ全域をカバーする消防庁が運ぶ脳卒中患者は、03年から増え続け、05年は2万3000人を超えた。だが救急隊員は、「この症状ならこの病院」と判断しているわけではなく、最も近い病院に運ぶ。都内では、昨年10月に保険適用された脳梗塞(こうそく)の特効薬「tPA」を使える病院や、脳卒中集中治療室(SCU)がある病院が増えている可能性があるが、せっかくの医療態勢が生かされない形だ。
 脳卒中治療の9割は内科的治療だが、神経内科医不足もあり、「脳神経外科」で治療可能と告示している救急病院に搬送している。搬送を受け入れる施設は174あるが、大学病院から診療所まであり、医療レベルはさまざまだ。
 例えば、東京都済生会中央病院(港区)は、日本脳卒中学会の専門医が8人いる都内でも有数の病院だ。6月に脳卒中センターを開設し、医師と救急隊員とを結ぶホットラインも設けたが、一度も鳴ったことはない。特効薬tPAは保険適用されて以来、6件しか使われていない。
 都福祉保健局は今年10月、脳卒中やがん患者らが治療後に、リハビリや在宅医療を切れ目なく受けられるようにするための地域医療計画をつくる目的で、都内約660病院を対象に医療機能の実態を調査。tPAが使える病院や、SCUがあるかどうかなどの情報も集計中だ。
 しかし、これらの情報を消防庁に知らせる予定はないという。調査目的が異なり、目的外使用になるとの考えで、吉田勝副参事は「専門医がいる病院など専門的な施設を指定すると、そこに患者が集中してパンクしてしまう」とも話す。
 日本臨床救急医学会など3学会は、救急隊員向けに、tPAを適切に使うための搬送マニュアルを年内に作成する予定。だがマニュアルをまとめても、救急隊員がどこの病院でtPAが使えるのかを知らなければ、意味がない。

関与の全10病院調査へ 病気腎移植問題で学会方針 indexへ

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)らによる「病気腎」移植問題で、日本移植学会と日本泌尿器科学会は、移植に関与した10病院すべてについて、摘出手術と移植手術の医学的妥当性を調査する方針を決めた。早ければ年内にも調査結果をまとめる。すでに患者の病状や手術内容を明らかにするための質問票を作成しており、近くカルテの閲覧などを含む本格的な調査に入る。
 日本移植学会の田中紘一理事長ら複数の学会幹部によると、調査は学会が派遣する専門医を中心に、カルテや看護記録、検査結果を閲覧したり、手術にかかわった医師や必要な場合は患者にも聞き取りをしたりして、質問票の回答欄を埋める方法を取る。
 そのうえで回答結果を分析し、腎臓摘出手術の場合は、「摘出の必要はなく、明らかに医学的に妥当でない」というケースから「摘出にやむを得ない事情があり、議論の余地はある」というケースまで5段階程度で評価。調査結果としてまとめるとしている。
 病気腎移植に関与した10病院のうち、万波医師を中心とした通称「瀬戸内グループ」の移植医が勤務し、腎臓の摘出や移植手術を実施するなどしていた宇和島徳洲会病院と同市立宇和島病院、呉共済病院(広島県呉市)、香川労災病院(香川県丸亀市)の4カ所については、各病院が設置した調査委員会に学会側が専門医を派遣。摘出の是非などを慎重に調べる。
 一方、摘出した腎臓を移植用に送っていた6病院のうち、岡山、広島両県にある5カ所は、厚生労働省が学会側に協力を依頼して独自に設置した調査班が担当する。

周産期母子医療センターの「実力」調査へ 厚労省研究班 indexへ

 奈良県大淀町の町立病院で8月、重症の脳出血の妊婦(当時32)が次々に他の病院に搬送を断られた末に死亡した問題をきっかけに、厚生労働省の研究班は、全国61カ所にある「総合周産期母子医療センター」の診療態勢の調査を始めた。調査をふまえ、近隣の病院との連携やセンターの充実など、妊産婦死亡を防ぐ方策を検討する。
 奈良県内にセンターはないが、大淀町のケースでは、センターがあっても脳外科医がいなければ対応できなかったとの指摘があり、全国で実態調査をする。
 センターは、複数の産科医による24時間の診療態勢や新生児集中治療室(NICU)が9床以上あることなどが都道府県の指定の条件。妊産婦や新生児の救急搬送の「最後のとりで」とされる。しかし、子ども病院がセンターに指定されているところなどでは、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)で全身がけいれんしたりする子癇(しかん)などの治療はできても、妊産婦の脳卒中や急性心疾患、交通事故などへの対応が難しい。
 研究班は、各センターにアンケートを送付。成人用の集中治療室(ICU)のベッド数や専門医数▽脳卒中、急性心疾患の診療態勢▽成人の交通事故などに対応できる救命救急センターの診療態勢▽麻酔科医の勤務態勢や輸血の準備状況、などを調べる。昨年1年間に治療した、脳卒中や心疾患などを併発した妊産婦の数も尋ねる。来年2月ごろに結果をまとめ、公表したいとしている。
 厚労省は、センターが未整備の奈良や山形など8県に設置を働きかけている。主任研究者の池田智明・国立循環器病センター周産期診療部長は、「奈良の問題以降、センターのあるなしだけに注目が集まっているが、決して低くない国内の妊産婦死亡率を下げるには、まず実態把握が必要だ。近隣の病院との連携など現実的な対策を考える材料にしたい」と話している。

外出しないと歩行障害4倍 高齢者リスク調査 indexへ

 ほとんど家を出ない高齢者は、毎日外出する人たちに比べ、歩行が不自由になるリスクが4倍、認知機能が落ちるリスクが3.5倍もあることが、東京都老人総合研究所などの調査でわかった。もともとの健康状態とはかかわりなく、外出しないこと自体が危険性を高めるらしい。
 同研究所と新潟県与板町(現在は長岡市と合併)が続けてきた調査の一環。町内の65歳以上の約1500人に00年に面接、外出頻度や歩行能力などの健康状態を聞くとともに、MMSEというテストで認知機能を調べた。2年後に再度面接できた約1300人について、現在の健康状態などを分析した。
 1キロの距離を歩けないか、階段を上れない場合を「歩行障害あり」として、そうした状態になるリスクを「1日に一回は外出する」人たちと比較した。年齢や健康状態が同じになるように調整したうえで比べると、「2〜3日に一回」の人は1.8倍、「週一回かそれ以下」の人では4倍という結果だった。
 認知機能が一定以上下がるリスクも、「2〜3日に一回」で1.6倍、「週一回かそれ以下」は3.5倍になった。
 調査をまとめた新開省二・研究部長は「歩行障害を抱えても、外出する機会が多ければ、回復する可能性が高い。社会活動に参加するなど、外に出る習慣をぜひ保ってほしい」と話している。

日本眼科医会が監査要請 コンタクト水増し請求問題で indexへ

 コンタクトレンズ(CL)の購入希望者を専門的に検査する眼科診療所(CL診療所)が、診療報酬を水増し請求するケースが全国で相次いでいる問題で、日本眼科医会(三宅謙作会長)は30日、不正を行っている診療所に対する早期の監査を求める要望書を厚生労働省に提出した。
 要望書では、診療所から提出される診療報酬明細書(レセプト)を審査するだけでは不正を見つけるには十分ではなく、行政機関が直接診療所に立ち入って監査を行う必要性を訴えている。
 同会の内部調査によれば、全国に約1300あるCL診療所のうち約1000カ所で、水増し請求が行われている可能性が高いという。
 厚労省はすでに、不正の疑いがある診療所に対して年明けにも一斉監査する方針を固めている。不正が明らかになれば、水増し分の診療報酬の返還や、診療所の保険医療機関指定の取り消しなどの処分を行う。

診療報酬の早期見直しも 看護師不足で中医協が協議 indexへ

 全国の病院間の看護師獲得競争が激化し、一部病院が看護師不足に陥りつつある問題で、中央社会保険医療協議会(中医協)は29日、対応を協議した。看護師を手厚く配置した病院に入院基本料を上乗せする診療報酬改定が問題のきっかけとされるが、診療側、支払い側の双方から「軽度の患者が多く看護の必要度が低い病院にまで上乗せを認める必要はない」などの指摘が相次ぎ、診療報酬が早期に見直される可能性も出てきた。

福岡大で九州初の生体肺移植 4歳男児に母親の一部を indexへ

 福岡大学病院(福岡市)は29日、福岡市内の4歳男児に28歳の母親の肺の一部を移植する生体肺移植を行ったと発表した。生体肺移植は国内56例目だが、九州では初めて。生体肺移植を受けた患者としては国内最年少という。
 同大によると、男児は閉塞(へいそく)性汎細気管支炎が悪化し、約3週間前から呼吸困難になっていた。手術は28日に約7時間かけて行われ、男児の左肺をすべて摘出し、母親の左肺の一部を移植した。母子とも容体は安定しているという。

大病院も看護師不足 採用5割増、内定は7割 indexへ

 全国の病院間で看護師の獲得競争が激化している問題で、国立大学病院など423の大手病院が来春採用を予定する看護師は前年比5割増の1万8740人に上る一方で、現時点の内定者数は予定の約7割にとどまっていることが厚生労働省の調査で明らかになった。大病院の看護師採用急増の影響を受け、中小病院では採用活動がさらに難航している可能性が高い。来春以降、相当数の病院が看護師不足に陥ることは避けられない情勢だ。
 調査は看護師不足の実態を把握するため、厚労省が緊急に実施。29日の中央社会保険医療協議会(中医協)で結果を報告する。看護師を手厚く配置した病院に入院基本料を上乗せする今年4月の診療報酬改定が影響したとみられ、改定の再見直し論が浮上しそうだ。
 調査結果によると、国立大学病院は今年の2.2倍、計5420人の採用を予定し、すでに8割の内定者を確保している。一方、日本赤十字病院は92施設中、28施設が内定者ゼロ。計4109人の採用を予定しているが、内定者数は約半分の2126人で、昨年の実績も下回っている。
 大病院の中でも、勤務条件や仕事内容で就職人気の高い国立大学病院などに看護師が集まり、格差が生じている状況だ。
 同省の推計では、全国の医療機関で今年必要な看護職員数は約131万4000人なのに対し、実際の就業者数は127万2000人。約4万人の看護師が不足している上に、新卒看護師が一部大病院に集中すれば、地域医療が看護師不足で立ちゆかなくなる懸念がある。
 今年4月の診療報酬改定では、看護職員1人が受け持つ入院患者数で決まる入院基本料を変更。従来の患者15人、13人、10人の区分に加え、「7人」を新設し、急性期患者へのケアを手厚くして入院日数を短縮することを狙った。ただ、看護師の配置増が病院の収入に直結するため、各地の病院で採用予定を大幅に増やす動きが活発化した。
 東京大学病院では、来春の「7人」達成を「病院あげての最重要課題」と位置づける。「7人」基準の達成で年間9億7800万円の増収が見込まれ、人件費などを差し引いても7500万円の利益増になるという。
 医療関係者の間では「看護師の配置を手厚くするだけで増益になるのは問題」との見方もあり、一部病院への過度の看護師集中を避けるため、「7人」配置の診療報酬の見直しなどが検討される可能性も出てきた。

名古屋市に1700万円の賠償命令 医療過誤訴訟 indexへ

 名古屋市立東市民病院で胆のうの摘出手術を受けた際、医療過誤によって胆管炎になり、後遺症が残ったとして、愛知県江南市の男性が名古屋市を相手取り、約4700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が29日、名古屋地裁であった。市側は医療過誤を認め、訴訟は損害賠償額をめぐって争われ、加藤幸雄裁判長は「今後胆管炎を発症する可能性は低い」などとして、将来の逸失利益を大幅に減額するなどし、市側に約1700万円の支払いを命じた。
 判決によると、同病院は01年10月、男性の胆のう摘出手術で、誤って男性の総胆管を閉塞(へいそく)状態にし、男性は意識レベルが低下。その後、胆管炎と診断され、04年11月まで入退院を繰り返した。

乳酸菌食品で花粉症緩和 厚労省研究班「一定の効果」 indexへ

 乳酸菌食品を毎日とれば、スギ花粉症を含むアレルギー性鼻炎の症状を緩和する効果が一定程度あることが、厚生労働省の研究班(主任研究者=岡本美孝・千葉大教授)による調査でわかった。食品メーカーの研究でヨーグルトなどの効果を示した例はあるが、公的研究でも裏付けられた形だ。岡本さんは「食品だと安価かつ安全に摂取できる利点がある。ただ、薬ではないので、短期間で大きな効果は期待できないようだ」と話している。
 昨年11月から今年4月にかけて、花粉症を含むアレルギー性鼻炎の患者89人を無作為に2グループに分け、44人には特定の乳酸菌粉末50ミリグラムが含まれる食品を、45人には入っていない食品を、それぞれ毎日摂取させた。1日あたり、市販のヨーグルトだと100グラム程度にあたる。
 摂取した半年間、くしゃみや鼻水、鼻づまりの頻度、日常生活への支障の度合いなどを日記につけてもらい、症状なしから最重症までの5段階で点数化し、血液検査も実施して両者を比べた。
 その結果、鼻水と鼻づまりの症状で、乳酸菌を摂取しなかったグループは花粉飛散期に悪化していったが、摂取したグループではあまり変化がなく、最大で1段階ほど症状に差が出た時期があった。ダニによる通年性アレルギー性鼻炎も、摂取グループの方が医師の診断で改善傾向があった。
 研究に用いたのは死んだ乳酸菌。前年の研究では生きた乳酸菌を使ったが効果は表れなかったという。その差がなぜ出たのか、仕組みは不明だ。
 花粉症は、人の免疫系が花粉たんぱく質に反応して起きるが、今回の研究では、乳酸菌摂取で、血中のアレルギーにかかわるリンパ球や抗体の量で明確な差は出なかった。岡本さんは「来季も調査し、長期間摂取することで体質に何らかの変化が生じるか、その作用を検証したい」と話している。

程よい睡眠、うつ防ぐ? 日大医学部、2万5千人調査 indexへ

 睡眠時間が短すぎても、長すぎても、うつ状態が強くなる――。こんな結果が日本大学医学部の兼板(かねいた)佳孝・専任講師(睡眠疫学)らの研究で浮かび上がった。眠りとうつの関係についての大規模な調査は珍しい。
 厚生労働省による全国300地域・約2万5000人の調査データから、抑うつ状態や対人関係、身体症状などを点数化し、うつの状態を評価。睡眠の長さや「よく眠れたと思っているか」などとの相関を分析した。
 その結果、20代〜70代以上のすべての年代で、睡眠時間が7時間台の人たちのうつ状態の点数が最も低い健康的な状態だった。それより睡眠時間が短くても長くても、点数が高くなる傾向がみられた。
 またこれまで、早朝に目覚めてしまうことがうつの特徴的な症状の一つとされていたが、今回の調査では、寝付きの悪さのほうが、うつ症状とのかかわりが強いこともわかった。
 兼板さんは「因果関係はわからないが、うつの治療では寝付きなども注意する必要がありそうだ」と話している。

医師の偏りまざまざ 東北不足深刻 厚労省が初集計 indexへ

 医師の数が医療法の配置基準を満たしている病院の割合について、厚生労働省は都道府県ごとのデータを初めて明らかにした。大阪の96%や東京の94%をはじめ都市部が高い一方で、青森の43%、岩手の55%など東北や北海道の低さが際立ち、地域の偏在が顕著だ。また、常勤の医師で基準を満たす病院は全国の36%にとどまり、非常勤の医師頼りの現状が浮かび上がった。
 このデータは、厚労省が04年度に行った全国の病院8660カ所の調査結果を、都道府県ごとに集計し直した。医師の充足状況は病院が基準を満たしているかを調べるもので、医師不足を直接示すものではないが、地域によって深刻な勤務医不足に陥っている実態が改めて裏付けられた。
 医師の配置について、医療法は一般病院で入院患者16人に1人以上、外来患者40人に1人以上などと定めており、大幅に下回ると診療報酬が減額される。
 基準を満たした病院は全国平均で83.5%。都道府県別では青森が43.4%で最も低く、岩手(55.1%)、秋田(60.3%)、北海道(60.8%)、新潟(63.0%)と続き、東北などの病院が医師確保に苦労していた。
 一方、首都圏(東京93.6%、神奈川94.6%)や大阪圏(大阪96.2%、滋賀95.2%)を中心に12都府県で、90%を超える病院が配置基準を上回っていた。
 また、今回は常勤医で基準を満たすかもはじき出した。全国平均は35.5%。新潟(20.3%)、岩手(21.5%)など、こちらも東北や北陸などが低く、埼玉や千葉も26%台だ。10県が30%を下回った。大半の病院が常勤医を確保できず、非常勤医でやり繰りしていることがうかがえる。
 厚労省は「各病院で不足している医師数には幅があり、配置基準を下回る病院の割合が多いからといって、直ちに医師不足とはいえない。病院が多すぎる地域もある」と説明。医師不足が社会問題化しているが、医師は毎年3000〜4000人増えており、「全体では足りている」との立場だ。ただ、若手医師を中心に都市部に集中する「地域偏在」が進んでいることは認めている。

全ぜんそく患者に医療費、都が和解案提示 大気汚染訴訟 indexへ

 事実上の和解勧告が出た東京大気汚染公害訴訟で、東京都は28日、気管支ぜんそく患者への独自の医療費助成制度案をまとめ、東京高裁に提出した。原告に限らず、都内に1年以上住む患者が対象。現在は自己負担である医療費の3割分を、訴訟の被告の都などが負担する案で、その割合は国と都が3分の1ずつ、首都高速道路公団(現・首都高速道路)と自動車メーカーが6分の1ずつとしている。年間助成費は約40億円。都は今後、この案で原告との和解交渉を進めたい考えだ。
 一審で賠償責任を認められなかったメーカー7社が負担に応じれば画期的な制度になるが、各社の足並みはそろっていない。環境省も「大気汚染とぜんそくとの因果関係がはっきりしていない」としており、交渉は難航が予想される。
 石原慎太郎都知事が同日午後、控訴審の裁判官に面会し、提案した。
 都によると、助成の対象は1年以上都内に住む気管支ぜんそく患者で、都がすでに設けている医療費助成の対象にならない18歳以上。所得制限は設けないが、喫煙者は対象外。入院時の食費を除く医療費を助成する。
 環境省が進めているぜんそくと大気汚染の因果関係についての疫学調査結果を踏まえ、5年後に制度を見直す予定だが、都は「その時点で制度を廃止するという意味ではない」としている。また、原告が対象に含めるよう求めた「慢性気管支炎」と「肺気腫」は、「一審判決で因果関係が認められなかった」として対象外とした。
 02年10月の1次訴訟の一審判決を受け、都は控訴せずに賠償金を支払ったが、「裁判の流れに任せるだけでは抜本的な解決につながらない」と、助成制度の新設を提案。6次まである同訴訟の一括解決を求めている。

島根大、がん専門医養成コース新設へ 国の構想に先駆け indexへ

 都道府県初の「がん対策推進条例」を今秋作った島根県で、がん治療の専門医を養成するコースが、島根大学大学院医学系研究科に来年度新設される。文部科学省などのがん治療の専門家を育てる構想に先駆けた試みだ。
 新設されるのは、大学などをすでに卒業した医師を対象とする「腫瘍(しゅよう)専門医育成コース」。内科や外科など縦割りの枠を超えて、様々な部位のがんについて、化学療法などの臨床と研究をバランスよく経験させる。現在は全国に47人しかいない「がん薬物療法専門医」(日本臨床腫瘍学会)の認定を目指す。募集定員は若干名。
 島根県の05年のがん死亡者は人口10万人当たり333.4人で、全国平均(258.2人)を大きく上回る。出雲市在住でがん患者の全国組織代表だった佐藤均さん(昨年6月死去)らがこうした現状の解消を訴え、専門医の充実などを求めて活動。国のがん対策基本法成立にもつながった。
 文科省は、がん医療の担い手を育てるため大学院の教育を充実させようと、来年度予算に40億円を概算要求し、10〜15前後の大学を重点的に支援することにしている。同省医学教育課は、「腫瘍専門医の育成コース設置は、ほかには聞いていない。支援対象は地域バランスなどを考え選ぶが、島根大の取り組みは注目したい」としている。

新生児治療の指針「使っている」医師は3割 全国調査 indexへ

 重い病気をもつ新生児の治療方針を家族と医療関係者が話し合うためのガイドライン(指針)について、「現在使っている」とする新生児医療機関の医師は、3割にしか達していないことが全国調査でわかった。指針は、医療が進歩する中、重症新生児の延命治療をどう考えるかという「終末期医療」の道筋などを示したものだが、多忙などを理由に普及が進んでいない実態が明らかになった。
 広島大の横尾京子教授(周産期看護開発学)らが27日、さいたま市で開かれた学会シンポジウムで発表した。調査は今年2〜3月に実施。全国の主要な新生児医療機関262カ所を対象に、医師と看護師の責任者に質問紙を送り、回答を得た。回収率は53%だった。
 指針を「現在使用していて、今後も使用する」と答えたのは医師の29%、看護師の12%。「現在使用していないが、今後は使用する」は、医師の50%、看護師の58%だった。
 また、指針が「役立つ」と答えたのは医師で86%、看護師で90%。役立つし、使いたいが、使えていない現実が明らかになった。
 指針は、田村正徳・埼玉医大教授(小児科)を主任研究者とする厚生労働省研究班が、04年にまとめた。最新の医学的情報に基づいて判断することなどを定め、特に、生命維持治療を控えたり中止したりする場合は、医師だけでなく看護師や心理士など他の医療スタッフも同席し、父母と十分に話すことを求めている。対象の病気を明示していないが、心臓などに重い障害を起こすことが多い「18トリソミー」などで話し合いがもたれている。

 この結果について、田村教授は「米国の施設に比べ、日本は医師や看護師が少なく忙しい。父母の心を支える心理士らも少ない。ゆっくり話し合う部屋がない場合もある。指針が実行できる社会的支援策が必要だ」と語る。

注射針欠陥の原因判明 一部は出荷再開 日本ベクトン indexへ

 輸入販売している注射器用使い捨て針の一部製品に欠陥があったとして、自主回収していた医療機器メーカー「日本ベクトン・ディッキンソン」(本社・東京都)は27日、欠陥の原因が工場で針に付着した潤滑油が除去されていなかったためと発表した。当初2400万本としていた回収対象は、6製品に特定され、約1600万本だという。
 同社によると、糖尿病患者がインスリン注射をするのに使う注射針「B―Dマイクロファインプラス」のうち、欠陥が見つかり回収の対象として特定されたのは、6061207、6095680、6095682、6095683、6095684、6095697の6製品。安全が確認された製品については17日から出荷を再開した。
 問い合わせは、同社専用ダイヤル(0120・1214・55)へ。

薬局のサービス公表義務づけへ 夜間対応、カード可… indexへ

 どの薬局で薬を処方してもらうかを選ぶ参考にしてもらおうと、厚生労働省は07年度から全国約5万の調剤薬局に、開局時間や休日・夜間対応、サービス内容など28項目の情報開示を義務づけることを決めた。薬局は都道府県に届け出をし、都道府県がインターネットなどで公表する。
 改正医療法で、薬局も診療所などと同様に、医療提供施設として位置づけられたことを受けての措置。これまで薬局の情報公表は、それぞれの薬局の判断に任されていた。
 開示するのは(1)薬剤師の数や特定分野の薬に詳しい専門薬剤師がいるか(2)緩和ケアなどに使用する麻薬調剤が可能か(3)クレジットカードが使えるか(4)患者の満足度調査をしているか、など。
 薬局が情報開示を拒んだり、虚偽の報告をしたりした場合は、都道府県知事が是正命令を出せる。
 厚労省は近く、国民に意見を聞くパブリックコメントを実施し、年内に省令を改正する予定。

万波医師支援の会に、移植患者ら700人 indexへ

 「病気腎」の移植を重ねていた宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)を支援する「移植への理解を求める会」(向田陽二代表世話人)の設立総会が26日、同市内で開かれた。移植患者ら約700人が会員となったことが発表され、病気腎移植を前向きに検討するよう求める要望書を、27日に厚生労働省や日本移植学会などに送る方針を決めた。
 総会には、万波医師から腎移植手術を受けた患者ら約120人が出席。病気腎移植について、公平性や公開性など改善すべき点を改めたうえで、正当な医療行為として認めるよう国などに申し入れることを確認した。

無資格助産容疑で院長、看護師ら書類送検 横浜の堀病院 indexへ

 年間出産数が国内有数の約3000人に及ぶ横浜市の堀病院による無資格助産事件で、神奈川県警は27日、堀健一院長(78)と看護部長の女性(69)、看護師、准看護師ら計11人を、助産行為ができる資格者を定めた保健師助産師看護師法違反容疑で横浜地検に書類送検した。県警の聴取に対し、堀院長は、産道に手を入れて胎児の位置などを確認する内診行為を看護師にさせていたことを認めたうえで、「内診は法律で定める助産行為ではない」などと犯意を否認し、看護部長ら10人は違法性を認識していたと供述しているという。
 生活経済課などの調べでは、同病院では医師や助産師の資格のない看護師、准看護師が03年12月29日〜06年5月23日ごろの間、名古屋市内の女性(当時37)ら17人が出産する際、堀院長らと共謀して内診をした疑い。
 県警が約8260人分のカルテを押収して調べた結果、03年11月26日から06年8月18日まで内診を受けたことが確認できた妊婦は7912人おり、うち約7500人は看護師、准看護師が内診をしていたという。
 厚生労働省は02年11月と04年9月、看護師による内診行為の禁止を都道府県に通知。2回目の通知では、医師の指示があっても看護師は内診をしてはならない、とした。県警は、2回目の通知後も堀病院で無資格内診が続けられていたことを悪質と判断した。
 堀病院は8月に家宅捜索を受けて以降、看護師による内診を中止。内診をさせていた理由を、堀院長は記者会見などで「医師に胎児の取り上げをさせていたため、取り上げをしたい助産師が辞めていった。その後、通知もあって助産師を集めようとしたが、集まりにくく、看護師にやらせていた」と説明している。
 一方、横浜市は8月以降、4回にわたって立ち入り調査を実施。だれが内診をしたかカルテで確認し、助産師確保に努めるよう指導している。市によると、当初より4人の助産師が増え、現在は常勤・非常勤合わせて10人になったという。

移植腎の病名を2患者に告げず 万波医師 indexへ

 病気の腎臓を使った移植を繰り返していた愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院は26日、万波誠・泌尿器科部長(66)が執刀した11件の「病気腎」移植についての調査結果を発表し、移植を受けた患者のうち2人に対して「病気の腎臓」との説明はあったが、病名を告げていなかったことを明らかにした。万波医師はこれまで「事情を十分に説明した」と強調していたが、一部の患者については不十分だった実態が浮かび上がった。
 同病院から委嘱された弁護士が今月、臓器提供者(ドナー)になった患者と移植患者計14人に聞き取り調査した。その結果、移植患者2人について、摘出された腎臓の検査データを示して機能していることを説明したが、病名(尿管狭窄(きょうさく)と腎臓結石)の説明はなかった。病院側は「2人とも万波医師を信頼しており、何の問題もない、と明言した」としている。

呼吸器外しの指針を明文化 秋田赤十字病院 indexへ

 脳死と判定された患者の終末期医療について、秋田市の秋田赤十字病院(宮下正弘院長)は「本人の意思が確認できる場合に限って人工呼吸器を取り外すことができる」と定めた指針を策定していたことが26日、わかった。こうした指針を病院独自で明文化したことは珍しいという。国も終末期医療を巡る法律や指針の明文化について検討している。
 指針は、脳出血や頭部外傷などの急性疾患で、手術などのあらゆる治療を施しても回復せず、死期が迫った状態の患者が対象。外部委員を含む同病院の倫理委員会で策定し、9月から運用を始めた。
 家族が、患者本人が延命治療を望んでいないことを示す「申し出書」と、延命治療の中止を求める「申請書」を病院長に出す。病院長が承認後、臓器移植に必要とされる「法的脳死判定」と同じ基準で脳死を判定する。脳死と判定できない場合は、呼吸器の停止は選択できないとした。
 11月に、家族が人工呼吸器の停止を求めるケースがあったが、本人の意思がはっきりしなかったため、見送ったという。
 策定にかかわった同病院の皆河崇志脳神経外科部長によれば、これまでは、現場の医師が個人の判断を迫られることがあったが、明文化されたことで、責任の所在も含めて対応しやすくなったという。
 終末期医療を巡っては北海道立羽幌病院で呼吸器を取り外した医師が殺人容疑で書類送検された例や、富山県の射水市民病院で呼吸器を取り外された後に7人が死亡した例が明らかになっていた。
 がんなどで病状が進み、緩和治療が必要な場合については、現在検討しているという。

病気腎で「ドミノ移植」 万波医師ら6年前に indexへ

 病気の腎臓を使った移植を重ねていた宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(66)らが、前勤務先の同市立宇和島病院で6年前、親族からの生体腎移植を受けたネフローゼ症候群の患者から2個の腎臓を摘出し、同時に2人の腎不全患者に移植する「ドミノ病気腎移植」を実施していたことがわかった。生体肝移植などで用いられるドミノ移植を腎臓に適用したのは、国内では極めて異例。複数の専門医は、その有効性に疑問を投げかけている。
 市立宇和島病院などによると、00年8月、当時21歳だった難治性ネフローゼの男性患者が再発を繰り返し、薬物療法に難色を示したため、男性の兄を臓器提供者(ドナー)にして生体腎移植を実施。摘出された二つの腎臓はその日のうちに、いずれも腎不全を患っていた愛媛県内の50代男性と高知県内の50代女性に移植された。
 3人の移植手術はすべて万波医師が執刀し、ほかに同病院の医師らが立ち会った。術後2年が過ぎた時点で3人とも経過は良好だったという。かかわった医師の一人は「米国で既に、病気腎を使って同様のドミノ移植が行われていたのを知っていた。患者の状態も良かった」と話す。この移植については、02年に高知市で開かれた研究会で報告していた。
 一方、ネフローゼ患者の移植については、「さまざまな治療薬を使って体内に残すのが通常の選択」など、否定的な意見が多い。国内で初めて成人間の生体肝移植を執刀した土肥雪彦・広島大名誉教授は「腎臓のドミノ移植は聞いたことがない。腎臓と肝臓とでは緊急性が違う。肝臓には機能を代替する機械がないため、問題のある肝臓でも移植するが、腎臓の場合は安全に透析治療ができるのだから、ドミノ移植をする論理は成り立たない」と指摘する。

比の犬、狂犬病予防接種は1割 保健相が調査指示 indexへ

 フィリピンのドゥケ保健相は23日、フィリピンに滞在した日本人男性2人が相次いで狂犬病を発症したことを受け、調査と予防措置の徹底を命じた。保健省によると、フィリピンでの狂犬病の死者は05年で271人。800万匹と推定される犬のうち狂犬病の予防注射を受けているのは1割程度という。
 同省によると、05年にフィリピン国内で動物にかまれ、全国200カ所にある狂犬病対策のセンターを訪れた人は約12万人。約半数が15歳以下の子どもだった。

病気腎移植「手続き問題なし」 宇和島徳洲会病院が見解 indexへ

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)らによる「病気腎」移植問題で、同病院は、臓器提供者(ドナー)となった患者と移植を受けた患者計15人から聞き取り調査した結果、「説明と同意など手続き面でおおむね問題はなかった」との見解をまとめた。25日に東京都内で開かれる同病院の調査委員会に報告される。ただ、医学的見地から今回の問題を検証する「専門委員会」は、まだ調査委内に発足しておらず、日本移植学会などからは「自らに都合の良い調査を先行させている」との批判も出ている。
 関係者によると、聞き取り調査は病院側が依頼した弁護士によって行われ、病院のスタッフも同席した。対象となった患者は、同病院で04年以降に実施された計11件の病気腎移植の際、腎臓摘出手術を受けた5人と、移植手術を受けた10人。同病院以外で腎臓を摘出された5人の調査は、手術を実施した各病院に委ねることにした。
 腎臓を摘出された患者については、摘出手術に関して十分な説明があったか▽ほかの治療法について説明を受けたか▽強引に摘出を勧められていなかったか▽摘出した腎臓を移植に使うことの同意があったか――を検証。その結果、説明と同意は患者本人だけでなく、家族が同席して行われており、「摘出については説明を受けたが、移植のことは聞いていない」と答えた1人を除き、ほぼ十分な説明がなされたと判断した。
 一方、移植を受けた患者には、どういった病気の腎臓なのかや、病気腎の移植に伴う危険性などの説明を受けたかどうかを調査。「説明は十分になされ、ほぼ全員が治療の結果に満足している」とした。半面、文書による記録は残しておらず、院内に倫理委員会を設置していなかった、などの問題点も認めている。
 今後は、日本移植学会と日本泌尿器科学会から調査委に派遣される専門医らが、カルテの閲覧などを通して医学的な検証作業を進める予定。今回の病院側の見解について、日本移植学会の幹部は「調査委にはこれまで、検証に必要な資料は一切、提出されておらず、評価のしようがない。病院側は早急に態勢を整え、外部の専門家に資料を開示すべきだ」と指摘する。

コンタクト診療報酬水増し請求、一斉監査へ 厚労省 indexへ

 コンタクトレンズ(CL)の購入希望者を専門的に検査する眼科診療所(CL診療所)が、診療報酬を水増し請求する例が全国で相次いでいる問題で、厚生労働省は24日、来年初めにも全国各都道府県で一斉に、不正の疑いが強い診療所に対して監査に入る方針を固めた。不正が明らかになれば水増し分の診療報酬の返還や、診療所の保険医療機関指定の取り消しなどの処分を行う。
 厚労省はすでに、不正の疑いが強い全国六十数カ所の診療所を把握している。しかし、コンタクト販売のチェーン店が中心となって組織的、広域的に不正が行われているケースも多いとみており、各都道府県の社会保険事務局が個別に指導・監査を行っても効果は薄いと判断。一斉監査を行うことにした。
 年内に全国の社会保険事務局の特別監査担当者会議を開き、情報交換をして、監査対象となる事業所をリストアップした後、全国で監査に入り、不正の全容解明を目指す。
 CL診療所は全国約6500の眼科診療所の約5分の1を占め、大半がCL量販店と患者紹介などの協力関係を結んでいる。4月の診療報酬改定では医療費削減を目的として、CL患者が全体の7割以上を占める診療所では保険点数が約半分に引き下げられた。
 しかし、4月以降も、CL患者の比率を実際よりも低く偽るなどして、以前と同レベルの診療報酬を請求している診療所が多数あるとみられ、日本眼科医会の内部調査では、8割近くの診療所で水増し請求が行われている可能性が高いという。

「たばこ病」早期発見に向け問診実施へ 結核予防会 indexへ

 患者の9割以上を喫煙者が占め、「たばこ病」とも呼ばれる肺の病気の早期発見・治療につなげようと、財団法人・結核予防会が問診を加えた健康診断を始める。10月に東京、大阪など5カ所で試験導入したのに続き、来年4月から5年間の予定で全国でも行う。
 この病気は正式には慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)と呼ばれる。40歳以上に多く、せきや息切れなどの症状が出て、呼吸機能が徐々に低下する。患者数は530万人と推定されるが、治療を受けているのは21万人とされる。

ヒトゲノム、遺伝子重複の個人差は1447カ所 indexへ

 父母から一つずつ受け継いで通常は各細胞に二つずつある遺伝子が三つ以上あったり、一つしかなかったりする領域が、ヒトゲノム(遺伝情報全体)の中にざっと1500カ所あることが世界で初めてわかった。遺伝子の重複数の違いは病気のなりやすさなど個人差を生む一因として注目されており、将来、個人に合わせた医療に結びつくという。
 東京大先端科学技術研究センターの油谷(あぶらたに)浩幸教授、石川俊平助手ら日米英などの研究グループが、23日付の英科学誌ネイチャーに発表する。
 日本、中国、米国、アフリカの計270人のゲノムを比較、計1447カ所の領域で遺伝子の重複数に個人差がみられた。この領域の長さを合計すると、ヒトゲノムの12%にもなる。
 ふつうは各細胞に二つずつ含まれる遺伝子が、少なかったり、多すぎたりすると、遺伝子から作られるたんぱく質の量が変わり、病気のなりやすさや薬の効き目に影響すると考えられる。
 最近、アルツハイマー病や腎炎のなりやすさや、エイズウイルス(HIV)の感染しやすさが遺伝子の重複数で左右されることが判明している。今回見つかった重複領域には、病気に関連すると指摘された遺伝子が285個あり、今後の研究でがんや免疫疾患などとの関係も明らかになるとみられている。
 遺伝的な個人差と病気の関連では、染色体の数の違いや、DNAを構成する1個の部品の違い(一塩基多型)の研究が進んできた。遺伝子重複数の違いがわかってきたことで病気の解明がさらに進むと考えられる。

「増収目的に入院延長指示」労組が文書 済生会中央病院 indexへ

 東京都済生会中央病院(東京都港区、535床)の労働組合「中央病院ユニオン」(安芸都司雄執行委員長)が、同病院が増収目的で患者の入院延長を医師らに指示しているとして、柳沢厚生労働相に調査を求める文書を出した。22日、同ユニオンが明らかにした。
 組合によると、04年7、9月、病院幹部が医師と看護師長計約40人に、「病床利用の促進の緊急アピール」などと題した文書を配布。救急外来に来た患者の経過観察は入院させて行う、検査入院を促進するなどの項目をあげ、「入院数の確保が必要」と指示したという。以後も会議で口頭で指示されることは何度もあったという。
 同病院総務人事課は「文書の内容がわからないので詳しいコメントはできない。もしそのような指示があったとしても適切な医療の範囲で行われてきた」としている。

過払い医療費通知怠る 社保庁、「最大1万8千件」 indexへ

 社会保険庁は22日、同庁が運営し、中小企業の従業員が加入する政府管掌健康保険(政管健保、1916万人)で、医療費を払い過ぎた患者に対する通知を怠っていた事例が、03年度以降、最大で1万8000件に上る可能性があると発表した。患者は通知をもとに、支払った医療費の一部を医療機関に返還請求できるが、通知漏れがあった過払い分は数億円になるとみられる。5県の社保庁の出先機関では、通知した事実がないのに、本庁に「通知した」と虚偽報告していた。
 保険の運営団体は、医療機関が請求した診察費や薬剤費が過剰だと認めた場合、請求を減額査定することができる。その場合、患者が窓口で払った医療費も減額され、過払いが生じる。
 政管健保や健康保険組合など被用者保険では、過払いが1万円を超えた場合は本人に通知する取り決めになっている。患者はこの通知をもとに医療機関に返還を請求できる。
 社保庁は外部からの指摘を受け、関係文書が残っている03年度から3年間の状況を調査し、通知書を送っていないケースが全国に多数あることが分かった。
 各都道府県の社会保険事務局のうち、埼玉、神奈川、愛知、鳥取県の4事務局では3年間、通知書を全く出していなかった。山形県は05年度の通知を怠っていた。いずれも毎年5月にある本庁への報告では事実を偽っていた。
 同庁は「申し訳ない」と陳謝し、通知書を出していなかった状況をさらに詳細に調べ、年内に必要な通知書を発送するとしている。
 通知を怠っていた事務局は「過払い分の返還をめぐって、医療機関と患者の間で発生するトラブルに巻き込まれたくなかった」などと話しているという。

横浜の男性が狂犬病発症 「比で犬にかまれた」 indexへ

 横浜市は22日、フィリピンに滞在し横浜市内の家族宅に一時帰国した男性(65)が、狂犬病を発症したと発表した。男性は市内の病院に入院しており、重症。フィリピンで犬にかまれて感染したとみられる。
 市感染症課によると、男性は10月22日に帰国した。2年前からフィリピンで暮らしており、家族には「8月ごろ右手首を犬にかまれた」と話していたという。11月中旬から発熱や肩の痛みを訴え、病院で診察を受けたが悪化。20日に、水や風を恐れる狂犬病特有の症状が出て入院した。唾液(だえき)と血液を国立感染症研究所で調べた結果、狂犬病ウイルスの遺伝子が確認された。
 狂犬病では、フィリピンで犬にかまれた京都市の男性が帰国後の11月に発症し死亡している。70年以来の国内発症例となったこのケースに続く事態に、厚生労働省は、フィリピンでの狂犬病の発生状況を調べるほか、注意を呼びかけるポスターを全国の空港や港などに掲示するなどの対策に乗り出すことを決めた。
 厚労省は「狂犬病による死者は世界で年間5万5000人とも推計されるが、海外に渡航する日本人は増えており、36年間もなかったことが驚きなのかもしれない」としている。

堀病院、院長ら書類送検へ 無資格者、内診の疑い indexへ

 横浜市の堀病院による無資格助産事件で、神奈川県警は週明けにも、堀健一院長(78)ら医師と看護師、准看護師ら計約10人を保健師助産師看護師法(助産行為の制限)違反容疑で横浜地検に書類送検する。厚生労働省は看護師の内診を禁ずる通知を2度出しており、県警は2度目の通知以降も堀病院が無資格での内診を続けていた点を悪質と判断した。産科医や助産師不足のなか、看護師が内診を行っていた医療機関が各地にあることが明らかになっており、地検の処分が注目される。
 調べでは、03年12月〜06年8月、神奈川県大和市の実家から通っていた女性(当時37)ら十数人が出産する際、院長らは看護師や准看護師に指示し、産道に手を入れて胎児の位置などを確認する内診行為をさせた疑い。
 厚労省は02年11月と04年9月、看護師による内診の禁止を都道府県に通知。1度目は助産行為の定義、2度目では医師の指示でも看護師は内診をしてはならないとした。
 堀院長は朝日新聞の取材に対し、「通知は一つの見解だと思っていた」などと語った。
 堀病院では40年ほど前から看護師による内診が行われていた。内診方法については、医師や助産師、ベテランの看護師が、新人看護師を指導。堀院長らは「訓練すれば内診をやらせても安全」と供述したという。
 無資格助産をめぐり、千葉地検は千葉県茂原市の産婦人科医院長を略式起訴し、同院長は04年2月に罰金50万円の略式命令を受けた。一方、名古屋地検豊橋支部は11月、「違法だという明確な認識がなく、健康被害の危険性も認められない」という判断で愛知県豊橋市の産婦人科医院長らを起訴猶予とした。

水増し検査「甘い」 コンタクト診療所の医師証言 indexへ

 診療報酬の水増し請求疑惑が発覚したコンタクトレンズ(CL)診療所で、社会保険事務局の指導を受けた後も水増しを続けているケースがあることが、日本眼科医会の調査でわかった。医会は来週にも、厚生労働省に対し、水増しの疑いがあるCL診療所に対する指導・監査の強化をあらためて要請する予定だが、社会保険事務局の指導の甘さも浮かび上がった。
 「ついに来たか」
 首都圏のCL診療所の医師は約2カ月前、社会保険事務局の担当者に呼び出された。最近のカルテ30枚を持参するよう言われた。
 心当たりはあった。
 4月の診療報酬改定で、患者全体に占めるCL患者の割合が70%以上の場合、保険点数が一般眼科の約半分に減った。量販店に隣接する自身の診療所も、ほぼ全員がCL患者のため引き下げの対象だった。
 だが、医師は、CL患者の割合を70%未満と偽って高い検査料を請求。ほかにも、CL利用者を未経験者と偽るなどして改定前と同程度の保険点数になるようにしていた。
 「まじめに請求したら6割の収入減になる。量販店に払うコンサルタント料は変わらないので、水増ししなければ、とてもやっていけない」
 このため、約半数の患者にCL検査以外の不要な治療をして、1人の患者にCL検査用と一般の眼科検査用の2種類のカルテを作っていた。持参したカルテ30枚のうち、でっち上げた一般眼科検査用のカルテ11枚を混ぜてCL患者の割合を70%未満と見せかけた。11人分のCL検査用のカルテは一時的に自宅に持ち帰った。
 だが、社会保険事務局の指導は思ったほど厳しくなかった。
 「CL利用者と未経験者をきちんと区別するように言われただけ。CL患者の割合は、ひと言も聞かれなかった」
 これなら大丈夫だ。
 この医師は、指導後も水増しした検査料で請求を続けた。
 この社会保険事務局の担当者は朝日新聞の取材に対し「個別の指導内容は答えられない」と答えた。
 関係者によると、九州地方でも今秋、複数のCL診療所に対して社会保険事務局の指導があり、CL利用者を未経験者と偽るなどの不正が大半で認められた。ただ、いずれもCL患者の割合は問われず、患者1人に1回しか算定できない初診料を繰り返し請求していても、自主返還の対象にならなかったという。
 日本眼科医会によると、各都道府県で社会保険などの審査委員を務めている医会の会員からは「審査で水増しの可能性を指摘しても行政がなかなか動いてくれない。行政が指導しても、それまでと変わらない件数や金額で保険請求を続ける診療所が多い」との報告が相次いでいるという。
 厚労省保険局は「各社会保険事務局は必要な指導・監査を行っていると認識しているが、CLにかかわる診療報酬は今春の改定で大きく変わった分野であり、今後、重点的に対応することも検討したい」としている。
 〈社会保険事務局〉 厚生労働省の外局である社会保険庁の地方組織として47都道府県ごとに置かれており、国が運営する健康保険などの実務を担当している。
 診療内容や診療報酬の請求に不正が疑われる場合などは、都道府県や厚労省と共同で監査を実施。診療報酬の返還を求めたり、保険医療機関の指定や保険医の登録を取り消したりする。

歯科医師の養成、1割削減を 厚労省検討会、提言へ indexへ

 このままだと歯科医師が増えすぎて将来大幅に過剰になりかねないとして、厚生労働省の検討会(座長=斎藤毅・日大名誉教授)は21日、大学歯学部の入学定員の削減などで、新たに養成する歯科医師の数を、少なくとも毎年1割程度減らすよう提言する報告書をまとめた。国家試験についても、合格基準の引き上げや出題内容について幅広く検討すべきだとした。
 同省の04年調査によると、歯科医師の届け出数は約9万5200人。毎年約1500人のペースで増えているのに対し、患者数の推計は96年の約130万人をピークに減少傾向が続いている。
 報告書は、このままの状態が続けば、歯科医師の数は2025年に約1万1000人過剰になると推計。専門職としての魅力が低下し、歯学部の入学者の質が低下するとともに、教育・研修に必要な患者数が足りなくなり、未熟な開業医が増えて患者にも悪影響を及ぼす、などと指摘している。
 歯科医師数をめぐっては、80年代までに私立大学を中心に歯学部の開設が相次ぎ、厚労省の検討会は98年にも歯科医師の10%削減を提言したが、これまで入学定員は1.7%しか削減されていない。このため今年8月、厚労相と文部科学相は、入学定員削減と国家試験の合格基準引き上げに積極的に取り組むことを再確認していた。

世界のエイズ患者、約4千万人 国連報告 indexへ

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)と世界保健機関(WHO)は21日、来月1日の世界エイズデーを前に、エイズウイルス(HIV)感染者数などの06年の最新推定値を発表した。感染者数は3950万人で、04年から260万人増。06年の新たな感染者は430万人、エイズによる死者は290万人。世界すべての地域で感染者は増え続けている。
 サハラ砂漠以南のアフリカ諸国での感染がなおも深刻で、同地域に世界の感染者の63%が集中している。新たな感染者もこの地域で280万人にのぼる。新たな感染者は南・東南アジア(86万人)、東欧・中央アジア(27万人)で増加が目立つ。
 南・東南アジアでは買春による異性間性行為での感染が41%と最も多く、東欧・中央アジアでは注射器による麻薬使用による感染が67%にのぼっている。
 抗レトロウイルス薬(ARV)による治療を受けることができた途上国の感染者の割合は、中南米・カリブ海地域の75%から中東・北アフリカ地域の5%までばらつきがある。世界全体では24%と低い水準にあるが、UNAIDSは「03年が7%だったことを考えれば、着実に拡大している」としている。

抗生物質で劇症肝炎、3人死亡 厚労省、副作用の記載を indexへ

 肺炎などの感染症治療に使われる抗生物質「セフトリアキソンナトリウム」を注射で投与された後、副作用とみられる劇症肝炎となり、3人が死亡したとして、厚生労働省は21日、この成分が含まれた薬剤の添付文書に、劇症肝炎を重大な副作用として新たに記載するよう製薬会社9社に指示した。医師らにも注意喚起を求めた。
 厚労省によると、今年6月までの3年間に、気管支炎などを発症した80代男性が2日間の投与後、薬剤性肝障害が疑われる症状で死亡したほか、80代女性と50代男性が劇症肝炎となり死亡した、との報告があった。同省は因果関係が否定できないと判断した。
 この成分が含まれた薬剤は推計で年間約104万人に投与されている。

毒性強い院内感染菌、国内で初確認 北米では死亡例 indexへ

 3年ほど前から北米の病院や高齢者施設で広がり、重症の大腸炎や下痢などで死者を出している院内感染菌「クロストリジウム・ディフィシル」の変異株が、国内で初確認された。国立感染症研究所などのグループが学会で報告、「今後国内でも広まる可能性がある」と医療機関などに注意を呼びかけている。
 感染研によると、中部地方の病院で昨春、潰瘍(かいよう)性大腸炎で入院していた30代の女性が下痢を起こし、直腸などにこの菌特有の病変が見つかった。1カ月後にも下痢を再発したが、その後回復した。直腸内から菌とこの菌がつくる毒素を検出。米国で見つかったのと同じ変異型と判明した。国内への侵入経路は不明という。
 この菌は健康な人の腸でも見つかり、抗生物質を使うと、腸内でこの菌だけが異常増殖することがあった。今回見つかった変異株は大量に毒素を出すため、北米では発症者の死亡率が2〜3割に達している。カナダでは10万人あたりの重症例が91年の35.6人から03年は156.3人に上昇。特に65歳以上での重症化が目立ち、一部薬剤への耐性も確認されている。
 米疾病対策センター(CDC)は昨年12月、「これまでリスクが低かった健康な人も危険性がある」と指摘している。患者の便などを介してうつるので、感染予防には手洗いの徹底が有効だ。
 感染研の荒川宜親・細菌第二部長は「日本では患者が見落とされている可能性がある。医療施設での流行状況を早急に把握する必要がある」と言っている。

出生前親子鑑定「協力しないで」 人類遺伝学会など要望 indexへ

 日本人類遺伝学会と日本遺伝子診療学会は20日、胎児のDNAを使って遺伝上の父親を調べる「出生前親子鑑定」に協力しないように求める要望書を、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会に送った。要望書では、遺伝情報が医療以外で不適切に扱われることが心配される、としている。
 出生前親子鑑定は、胎児の遺伝的な父親が誰かがわからない場合、妊娠中に羊水などに含まれる細胞を取り出して胎児のDNAから親子関係を調べるもの。日本人類遺伝学会によるとウェブサイトで鑑定の利用を募っている企業があり、細胞取り出しは産婦人科医ら医師が協力している。
 要望書では、法的措置の場合を除いて、出生前親子鑑定など医療目的でない遺伝子解析・検査のための行為を行わないように会員の医師に通知することを求めた。
 胎児の病気を調べるための医学的な理由による出生前診断については関係学会のガイドラインがあり、十分な説明をして同意を得るなどのルールがある。しかし、出生前親子鑑定はルールの谷間になっている。
 日本人類遺伝学会倫理審議委員長の福嶋義光・信州大教授は「遺伝情報は不適切に使われるべきではない。遺伝情報を知りたいということで、何でもできるとなると、歯止めがなくなってしまう」と話している。